第145話 新世界?
夕食の焼肉を食べ終え後片付けをしたのだがまだ午後7時だった。
何もすることはないので、まずは毛布を敷いて寝る準備だけはしておいた。
そこでふと思ったのだが、ここでホームセンター△□のキャンプ用品売り場で売っていたテントを買って持ってくればいいんじゃないか?
いや待て待て。
そんなものを買うより、自分で作った方が楽しいんじゃないか?
森は雑木だが、まっすぐに伸びた木もいくらか生えていたし、工具とロープとか釘といったそれなりの資材を揃えればDIYいけるような気がし始めた。
失敗したところでどうってことないし。
俺はランプを灯したままさっそくホームセンター△□に転移で跳んでいった。
どこにいようとひとっ飛び。
転移さまさまだ。
ホームセンターの脇を通って入店し、そのまま2階に上がり、天井のプレートを見ながらカートを押して工具売り場にたどり着いた。
金づち、のこぎり、
もう夜だったので2階のレジは空いていてすぐに清算は終わった。
買った物はリュックに入れながらそのままタマちゃんに収納してもらった。
明日は大工仕事だ!
池の前に戻ったらもう8時というかまだ8時だった。
俺はタマちゃんにLEDランタンとガスレンジとヤカンを出してもらって、湯を沸かした。
お腹もだいぶ落ち着いてきたので買っていたきんつばを食べようと思ったからだ。
緑茶のティーバッグとコップ、それにきんつばの入ったパックを用意して沸騰した湯が冷めるのを待った。
お湯のころ合いを見て緑茶ティーバッグの入ったコップに注いだ。
少し待って一口飲んだところ実においしいお茶がはいった。
きんつばを1つ摘まんで半分かじってお茶を飲む。
ダンジョンの中だということを忘れるまったり時間だ。
きんつばの角の辺りのアンコをわずかに手で取ってフィオナに渡した。
フィオナは顔をくっつけて食べようとしたけど、小豆の粒が大きかったのか食べにくそうだった。
こしあん入りの何かを買ってやればよかった。
俺は3つきんつばを食べて、残りの3つはタマちゃんに食べさせた。
コップに水を入れて口をゆすいでから、タマちゃんに寝ている間の警戒を頼んで毛布の中に入った。
翌朝。
空が明るくなって目が覚めた。時計を見たら午前5時だった。
やはりこの階層は超大空洞ではなく新世界のような気がする。
タオルをウォーターの魔術で作り出した水で濡らして顔を拭き、同じくウォーターの魔術で作り出した水を入れたヤカンをガスコンロの上に置き火を点けた。
確かにウォーターの魔術は価値がある。
Sランク冒険者ならウォーターのクロ板の暫定価格1000万円は決して高くはないだろう。
お湯が沸いたのでコップに紅茶のティーバッグを入れてお湯を注ぎ、2つ目のレモンを輪切りにして1枚コップに入れた。
レモンティーも癖になるな。
朝食用のサンドイッチと、調理パンをレモンティーでいただいた。
うーん。贅沢だ。
地面に直置きして食べているところは贅沢ではないので、住居を作ったら椅子とテーブルくらいは用意しないとな。
朝食の後片付けをして、住居建設予定地の下見をすることにした。
池の周りの草地は20メートルくらいの幅があるので、建設場所には事欠かない。
屋根用の帆布の広さが3.6メートル×5.4メートルくらいなのでそれくらいの広さの物を建てればいい。
タマちゃんに帆布を出してもらって、池から10メートルほど離れた場所に池に対して横向きに帆布を広げてみた。
見た感じ非常に狭い。
3.6メートル×5.4メートルということは2間×3間=6坪=12畳。こう考えるとかなり広いのだが壁がないと狭く感じるのか?
屋根のある所で横になって寝られれば上出来だし、12畳もあるなら十分な広さだろう。
足りなくなれば増やすだけだし。
まずは材木集めだ。
あまり太い木は運べないので木を選ばないといけない。
俺の肩の上に止まっているフィオナは俺の頭上を中心にして飛び回っている。
危険が無いということなのだろう。
タマちゃんもリュックから出て俺の後をついてきている。
タマちゃんも運動した方がいいしな。
森の中に入っていったのだが、家の柱や梁に使えそうなまっすぐな木はほとんど見当たらなかった。
これじゃあ何もできないぞ。
針葉樹林がどこかにあればまっすぐな木が手に入ると思うのだが、見当たらないものは仕方がない。
なるべく曲がりの少ない木を選んで、使うほかないな。
安易にDIYとか考えたが、そう簡単ではないみたいだ。
目に付く灌木以外の木はどれも下の方の幹が60センチはある大木だ。
これを切り倒すことは魔術でできそうだが、加工はできるのだろうか?
建設予定地まで運べるのだろうか?
俺が腕を組んで大木を眺めていたら、フィオナが肩に止まって俺の頬っぺたをチョンチョンする。
そっちを向いたらフィオナは飛び上がってタマちゃんの頭?の上でくるくる回り始めた。
何だろうと思って見ていたら、フィオナは俺が見ていた大木の幹の周りを回り始めた。
あっ!
タマちゃんに切ってもらって、タマちゃんの中で加工してもらえって言うことか。
フィオナ、あったまいいー!
さっそくタマちゃんに目の前の大木を根元で切断して、そのままの形で収納してくれるよう言ってみた。
そしたらタマちゃんが大木の根元に向かって移動しそこから薄く広がって木全体を覆った。と、思ったら、手品で布の下で隠されていたものが急になくなって布が落ちていくように金色のタマちゃん風呂敷が下に落ちてきて、さっきまであった大木は消えていた。
まさにマジックだ。
「タマちゃん。
今の木でまっすぐな柱が作れるかな?
まずは長さは5.4メートルの柱だ」
俺はその場でコンベックスを5.4メートルの長さに伸ばしてやった。
「長さはそれで太さは12センチ×12センチくらい」
コンベックスを元に戻して12センチまで伸ばし、左右の親指と人差し指で四角を作ってみせたやった。
タマちゃんは賢いから俺の言ったことは理解できるはず。
大切なことを忘れていた。
「柱を作る前に乾燥できるなら生木を乾燥してくれ」
言い終わって10秒ほどでタマちゃんの体からきれいに製材された材木が湧いてきた。
地面に置いて長さを測ったらピッタリ5.4メートル。太さは12センチ×12センチだった。
タマちゃん製材所だ!
俺は柱を担いで建設現場に戻って、柱を地面の上に置いた。
見たところ柱は十分乾燥しているようだ。
「タマちゃん、今の材木をもう3本作れるかな?」
今度は5秒ほどで次の柱が湧き上がってきたので、それをさっきの柱の隣りに置き、その後も同じように全部で4本の材木を並べて置いた。
そろそろ材料の木も足りなくなりそうだけど、行けるところまで行ってみるつもりで同じ太さで長さが3.6メートルの柱を作ってくれるよう頼んだ。
材料は足りたようで4本の3.6メートルの材木ができ上った。
今までの柱は床と天井の横枠のつもりなので今度は本当の意味での柱を作ってもらうことにした。
長さは2.7メートル。太さは同じで12センチ×12センチ。4隅に4本と1間間隔で壁の柱を立てたいので全部で10本。
これも長さをタマちゃんに教えて5秒ほどでタマちゃんから最初の1本が湧き上がってきた。
これで枠組み用の柱は揃った。
それはそうと、いくら大木だったとはいえ曲がった木だったのでそれほどまっすぐな部位はなかったと思ったのだが、ちゃんとタマちゃんが製材したところを見ると、まっすぐな部分があったということなのだろう。
下草がいくら短いとはいえそんなものが家の中に生えていたらちょっと変なので、俺は地面をある程度掘ってから家を建てることにした。
柱を立てる都合もあるのでなるべく枠組みの大きさにピッタリの広さで地面を掘りたい。
レモンの苗木の植樹用のスコップはタマちゃんが預かっているので、それを出してもらって穴掘りを始めることにした。
一度枠組みを地面の上に並べて掘る大きさを決めて掘っていく。
俺が数回スコップを土に突き刺して穴を掘っていたら、またフィオナが俺の頬っぺたをツンツンする。
何だろうと思って見るとまたタマちゃんの上で回り始めた。
そうか。タマちゃんに掘ってもらえばいいんだ。
俺は土台用の枠を一度地面に並べて、枠で囲まれた広さで、30センチほどの厚さの土を収納するようタマちゃんに頼んだ。
タマちゃんから偽足が数本伸びてそれこそあっという間に下草ごと地面が30センチほど掘り下げられた。
今回30センチの長さをタマちゃんに見せていなかったのだが、ちゃんと30センチの長さは分かったようだ。
タマちゃんの作った穴はデコボコが全くない表面がツルツルの穴だった。
その穴の中に土台用の木材を並べていく。
長い方の辺に2本の5.4メートルの木材を並べその両端に内側から3.6メートルの木材をはめたら、きついくらいでぴったりはまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます