第143話 26階層8、ゲートキーパー


 26階層のゲートキーパーに向かって1日半。

 まだゲートキーパーに遭遇していない。

 できれば今日中に相対したいが、俺の都合で相手が近づいてきてくれるわけではない。


 何もご利益はないのだろうが扉を開けるたびに口に出てしまう。

 出てこい、出てこい、ゲートキーパー。


 あまり意味のないことをしながら、フィオナの指示通り石室の扉を開けて進んでいく。


 爬虫類スケルトンを撃破して物品を回収したあと、緑茶のペットボトルを出して一口飲み次こそは。の精神でフィオナが指し示す扉に手をかける。

 フィオナが肩からリュックの方に移動したところで、手に力を込めて扉を押し開いた。


 今度の扉の先の部屋は今までの部屋の何倍もある広大な部屋だった。

 その部屋の真ん中に巨大な爬虫類スケルトンが立っていた。

 そいつの後ろに階段は見えなかったがゲートキーパーに違いない。


 身長は5メートルほど。

 腕が6本あり、それぞれに巨大な幅広剣を持っている。

 盾のたぐいは持っていないので、自分の固さに自信があるのかもしれない。


 ゲートキーパーらしく俺を見ても攻撃してこないようなので写真撮影のチャンスだ。

 タマちゃんに預かってもらっていたスマホを出してもらい、だいぶ距離はあったが数枚巨大スケルトンの写真を撮った。


 スマホをタマちゃんに預かってもらった俺はスケルトンに近づいていった。

 30メートルくらいまで接近したところでスケルトンは俺に反応して剣を構えて向かってきた。

 巨体の割に動きはスムーズで、足音もそれほど響いていない。


 せっかくなので大剣で迎え討ってもいいが、なにもそこまで付き合う必要もないと思い、まずはストーンバレットを連射してやった。

 15メートルほどまで近づいてきていたスケルトンに石つぶてがバシバシと音を立てて命中していく。

 さすがにその程度では巨大スケルトンは無傷のようだったが、足は止まってしまった。


 俺は、右手でストーンバレットを連射しながら、今度は左手でウォーターカッターを発射した。

 今までそんな器用なことはできなかったのだが、今回はそういったことができるような気がして実際にやってみたらできてしまった。


 三日月型の水の刃がスケルトンの右膝に命中した。

 水の刃は何かが擦れるような音と一緒にスケルトンの右ひざを砕いて散っていった。


 スケルトンは右下の剣を杖代わりにすることで倒れずに踏ん張った。

 しかし、俺のストーンバレットがスケルトンの体のいたるところに命中して、骨の一部が欠け始めている。


 そろそろ一気に決めてやろうと思った俺は、右手で連射中のストーンバレットを止め、両手でウォーターカッターを連射してやった。

 水の刃がスケルトンの体に当たると、横隔膜に響くような音と一緒にスケルトンの骨の一部が砕けて外れていく。


 水煙の立ち込める先のスケルトンがだんだんと小さくなってきている。

 20発ほどウォーターカッターを撃ったところ、床は水浸しで、そこら中に骨の残骸が転がり、スケルトンは跡形もなくなっていた。


 使用後の写真が撮れなかったじゃないか!

 脆いお前が悪い。


 俺は水浸しの床の上で核を探していたら、金色の宝箱が知らぬ間に出現していた。

 最初にはなかったハズなので、ゲートキーパー撃破のご褒美に違いない。

 宝箱は見つかったものの、階段がどこにもない。

 金色の宝箱もあるし、見つけた核はそれ相応に立派だったので巨大スケルトンはゲートキーパーだったと思うのだが違ったのか?


 核は回収したがスケルトンの持っていた大きな剣6本は人で扱えるような大きさではなかったため放置し、金色の宝箱を開けてみることにした。


 いつものように宝箱が開くように念じたところ、いつものように宝箱が展開図のように開いた。

 金色の宝箱の中に入っていたのは、


 カギ?


 かなり大き目で立派な装飾の施された金色のカギが1本だけ入っていた。

 何かの重要アイテムであることは予想できるが、このカギをどこに差せばいいのか見当もつかない。

 

 あてはまったくないので、防刃ジャケットのポケットにカギを突っ込んだ俺は、可能性が一番高いこの石室の中を見て回ることにした。


 あらためて見ると、この石室は広大な石室で一辺が100メートルはある。

 天井もすごく高くて20メートルくらいはありそうだ。

 その代り出入り口は俺が入ってきた扉がひとつだけ。


 カギ穴あったとして目の高さ辺りなら見つけやすいが、巨大スケルトン仕様でとんでもなく高いところにあったらお手上げだ。


 とにかく、調べられるところを調べよう。


 扉の正面の壁から調べようと思って歩いていったら、肩の上に戻っていたフィオナが飛び上がって俺より先にその壁の方に飛んで行った。

 俺が何をしようとしているのか悟ってカギ穴を探してくれるのか?


 フィオナの後に続いて壁まで行ってみると、真正面、俺の顔の高さにちゃんとカギ穴があった。

 親切設計だった。


 俺はホクホク顔でさっきのカギを防刃ジャケットのポケットから取り出してカギ穴に差し込んでみた。

 カギはすんなりはまった。

 右回りか左回りか分からなかったが、とりあえず右に捻ってみた。

 そうしたら動かなかったので、左側に捻ったら半回転してそこで止まった。

 カギを回せば壁の中の隠し扉かなにかが開くだろうと思っていたのだが、壁は黙して語らずなんの変化もない。

 親切設計ではなかったのか?

 俺は数歩下がって正面の壁全体を見回したのだが、何も変化もないように見える。


 おかしいなー。


 カギはカギ穴に差したままにして思案に暮れていたら、肩に戻っていたフィオナが俺の頬っぺたをチョンチョン突っつく。

 首を回してフィオナを見たら、フィオナが飛び上がって後ろの方に飛んでそこで止まっていた。


 そのフィオナの先にはいつの間にか水の乾いた床の上にダンジョン入り口と同じ渦ができていた。



 新たに現れた渦の先がどうなっているのか確かめないわけにはいかないのだが、ちょっと怖い気もする。

 俺は床に転がっていたスケルトンの骨の欠片を渦に向かって投げつけてみた。


 そしたら、骨の欠片は渦の中に消えてしまった。


 よーし。


 やはり渦はゲートだ。


 渦の前に立った俺は恐るおそる指を突っ込んでみたところ、指の先は渦の中に消えてしまった。

 手を引っ込めたらちゃんと指は繋がって戻ってきた。


 俺は意を決して渦の先を調べるべく渦に向かって歩いていった。




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