第141話 26階層6、ゲートキーパーに向かって
[まえがき]
ここから第2部的な何かになります。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
キャンプ用品と食料飲み物などをタマちゃんに預けて、2泊3日の26階層ゲートキーパー探索旅行に出発した。
週明け月曜日からクロ板を買い取ってくれるという話なので、うまくすればゲートキーパー撃破の報告もできそうだ。
「いってきまーす」
『一郎、気を付けて行ってらっしゃい。
帰ってくるのは
「夕方5時くらいかな。じゃあいってきまーす」
7時にうちを出て専用個室経由でまずはレモンの木のある岩棚に転移した。
おー、見事にレモンが黄色く生っている。
2つほど摘んでリュックに入れておいた。
次に26階層のスタート地点に転移し、そこから朝食のサンドイッチを左手で食べながらフィオナの指示通り進んでいった。
午前中は既に通った石室を通っているはずなのだが、もちろんちゃんと爬虫類スケルトンが出迎えてくれた。
簡単にたおせるお客さまなので、俺は左手に鑑定指輪をはめてホクホク顔で後に残ったアイテムをタマちゃんに預かってもらい、宝箱からクロ板を手に入れるたびに鑑定していく。
特にケガを治す魔法の入ったクロ板が手に入ると儲けた! って気になる。
なにせ、最低買い取り金額が1億2000万円だもの。
正午までそうやって石室を進んでいったけどもちろん何も変化はなかった。
何もない石室の中でいつも通りおむすびで昼食をとり、昼食と合わせて30分ほど休憩して午後からの移動を始めた。
午後6時までそうやってフィオナの示す方向に向かって進んでいったが、やはりいつまでもどこまでも同じ石室が並んでいるだけだった。
今日1日で手に入れたのは70数個のクロ板とそれに相当する剣と盾と銀の宝箱。
石室の隅に陣取った俺は、夕食の準備に取り掛かった。
タマちゃんに預かってもらっているもろもろを一度床に並べ、それから今必要なものを残してまた預かってもらった。
初日の今日はステーキにすることにした。
肉は400グラムほどの平べったい牛肉でパックにはサーロインと書いてあった。
まな板の上にステーキ肉を載せて塩コショウを振りかけ、ひっくり返してまた振りかける。
準備はそれだけ。
ガスコンロの上にスキレットという名の謎のフライパンを置いてその上にステーキ肉に付いていた脂の塊を置きしばらくフォークで動かしていたら脂が溶けてピチピチ音がし始めたのでステーキ肉をトングで摘まんで入れた。
まな板は一度ウォーターで水洗いして、今日摘んだレモンをひとつ取り出して半分に切り、残った半分はタマちゃんに収納してもらった。
まな板の上に残したレモンを紅茶用に2枚輪切りにしておいた。残りは絞ってステーキに垂らそうという魂胆だ。
ジューっといい音がして湯気と煙が上がったのでスキレットに付いていた蓋をかぶせた。
1分ほどそのままにしてから蓋を開けて、トングでひっくり返してまた蓋をして1分。
スキレットの中ででき上ったステーキの上にトボトボとステーキソースを掛けたら、それがスキレットの鉄板に触れてまたジューって湯気が上がった。
そのあと、ステーキの端の方だけレモンを絞ってかけてやった。
香ばしいようないい匂い。
熱々のスキレットを皿代わりにしてナイフとフォークで牛肉をいただく。
ウッホッ! 変な声が出るほどうまい!
ひとりじゃないと行儀悪くフライパンから直接食べられないけれど、スキレットという名のフライパンはなかなかいい。
火を点けているわけではないのに肉厚なのでいつまでも鉄板が熱いままなのだ。
もちろん火を落としているので肉が焦げることもない。
ステーキソースをかけたところもおいしかったが、レモンを垂らしたところもおいしかった。
俺は野菜ジュースをタマちゃんに出してもらい、カップに入れてごくごく飲んだ。
口の中の脂が洗われるようでさっぱりしているし、飲んでみると結構おいしいものだな。
スプーンに野菜ジュースを入れてフィオナに勧めたら、結構飲んで最後にげっぷをした。
相変わらずウェットティッシュの持ち合わせがないのでタオルで顔を拭いてやった。
タオルは洗濯屋タマちゃんできれいになるので問題ない。
400グラムの肉と野菜ジュースで結構お腹は膨らんだ。
最後に締めとして梅干しのおむすびをひとつ頬張った。
満足じゃ。
タマちゃんの耐熱性能がどれくらいか分からなかったので、スキレットが冷えるのを待って、そのほかの調理具といっしょに掃除してもらい、それから収納してもらった。
片付けもあっという間だ。
天井が明るいので時間感覚は狂うが、時計を見たら時刻は6時40分。
このまま寝てしまうと確実に12時前に目覚めてしまう。
今日は料理しないといけないからと思って6時でお仕事を切り上げたけれど、ちょっと早すぎた。
仕方ないのでヤカンにウォーターで水を入れてガスコンロにかけて沸騰したところで火を止め、紅茶のティーバッグを入れたカップに注いだ。
カップは野菜ジュースを飲んでタマちゃんにきれいにしてもらったカップだ。
それにレモンの輪切りを1枚入れる。
ティーバッグはカップに入れたままだ。
かき混ぜることなくそのまま紅茶をすする。
レモンのせいで紅茶は見た目薄くなったが、じつにおいしい紅茶だ。
一番は緑茶だが、レモンティーも捨てがたい。
1杯目を飲んでそのままお湯を足して、レモンだけは取り換えて2杯目を飲んだ。
こんなに便利なのに、いままでガスコンロを使わなかったことが不思議だ。
俺に限らず、いままでダンジョン内でガスコンロを使っている冒険者に一度も出会っていない。
ガスコンロとかヤカンは大きいし重たいから少しでも荷物は減らしたいかも知れないが、泊まり込みでもぐるような連中や、クローラーキャリアを使うような連中ならさすがに必須アイテムじゃないか?
とか勝手にどうでもいいこと考えながらお茶を飲み終わってもまだ7時10分だった。
明日は8時まで頑張ろう。
本格的に片付けを終え、タマちゃんに収納してもらった後、毛布2枚と枕代わりのバスタオルを出してもらって寝る準備をした。
「タマちゃん、俺が寝てる間にモンスターが現れたら適当にたおしちゃって」
そうタマちゃんに頼んで俺は寝ることにした。フィオナは俺の枕にしているバスタオルの端で横になって目を閉じた。
しばらく寝つけなかったがそのうち眠ったようだ。
朝になったのかと思って腕時計を見たらまだ11時半だった。
どうすればいいんだ?
とにかく天井が明るい。
仕方ないのでタオルを出して目の上にかけてそれで目を瞑ったらそのうち寝てしまった。
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