第137話 秋ヶ瀬ウォリアーズ14


 昼食前にお菓子を食べ過ぎたせいで3人とももうお腹いっぱいと言ってお弁当を半分くらい残してしまった。大人な俺はだから云々とは言わなかった。

「長谷川くんとタマちゃんもらってくれる?」

 そう言って唐揚げを弁当箱の蓋の上に2つのっけてくれて差し出してくれた。

 タマちゃんと仲良くひとつずつ分け合った。

 おいしい。


「わたしのもよかったら」

 今度は日高さんがサンドイッチを二切れくれた。

 これもタマちゃんと分け合った。

 玉子サンドおいしい。


「わたしでもいいよ」

「中川、訳の分からないことをまた言って。

 長谷川くん困るじゃない」

「あら、斉藤、やきもち焼いてるの?」

「そうじゃないわよ」

「ならいいじゃない」

「じゃあ好きにして」

「好きにする。

 これほどの優良物件にツバつけないなんてあり得ないからね」

「中川、それって打算そのものじゃない」

「愛とか恋とかひと時の感情なんか経済的安定に比べれば些細のことなの」

 確かに一理ある。


 冗談だったのか本気だったのかは分からなかったけど、中川さんからタッパーに入ったブドウを貰った。

 タマちゃんと3粒ずつ分け合った。

 おいしかった。


「午後からどうする?」

「なんかもう疲れちゃったねー」

「そーだねー」

「じゃあカラオケ行こうか?

 今日は春休みだけど大雨だから空いてるよ」

「いいんじゃない」

「賛成ー!」


 そういうことでカラオケに行くことになった。

 センター前のバス停はひさしがあるのでそれほど濡れないし、駅前のバス停はカラオケ屋の入っているビルの真ん前なので雨は何とかしのげる。



 3人を連れて渦から300メートルの辺りに転移してそこでいったん別れた。

 再集合場所はカラオケ屋の受付まえ。

 集合時間は1時間後とした。


 スコップを持って専用個室に転移で戻った後、タマちゃんにきれいにしてもらい、そのままタマちゃんにロッカーにしまってもらった。

 これでよーし。

 ダンジョン入出用とセンター入出用カードリーダーに冒険者証をかざしてうちの玄関前に転移した。

 雨脚は少しは弱まってきていたけど、まだ本格的だった。


「ただいまー」

『今日は早いのね。ご飯あるけど食べる?』

「昼は食べてきたから大丈夫。

 これから友だちとカラオケに行くからまた出るんだけど、待ち合わせ時間まで時間があるから時間調整してから出ていく」

『そう。気をつけなさいよ』


 俺は2階に上がって部屋に戻ったらフィオナは1階にいるようで姿は見えなかった。

 フィオナって俺の気配察知程度じゃほとんど察知できないんだよなー。

 タマちゃんは俺がリュックを床に置いたところで中から這い出して自分のおうちで四角くなって寛いだ。

 防具から普段着に着替えて机の椅子に座ってスマホで音楽を聞いて時間調整した。

 聞いているのは北降雪の夢十夜。もちろんカラオケで歌えるはずなどありませんヨ。


 約束の時間の10分前に玄関先で傘を差してそのままカラオケ屋の少し手前に転移した。


 雨の中小走りにカラオケ屋のあるビルのエレベーター前に走り込んだらちょうどバスがやってきた。

 バスの中から乗客が傘を差しながら降りてきて最後に3人が降りてきた。


 3人とも傘を差さずにビルの中に飛び込んできた。

「長谷川くん、珍しく今日は普段着だ。

 着替えたの?」

「いったんうちに寄って着替えてきた」

「そうなんだ。

 アレ使ったんでしょ。アレってすごく便利だよね」

「まあね」


 4人でエレベーターに乗って受付階で降りた。

 そう言えばカラオケもこの3人と去年の夏に来たきりだった。

 受付の人にすぐにカラオケルームに案内されたが、お客は極端に少なそうで途中の部屋はみんなからだった。

 

 部屋に入ったあと、みんなお腹がいっぱいだったようで飲み物だけを注文した。

 注文した飲み物はすぐにやってきた。と言ってもすでに日高さんはマイクを持って歌っていた。


 どんどん3人で歌っているうちに、俺の方は何か食べたくなってきたので、タコ焼きを注文することにした。

 そしたら、みんな食べたいというのでたこ焼き4人前と飲み物を注文しておいた。

 たこ焼きはこういったところで食べるとなぜかおいしく感じるんだよ。

 いや、場所じゃなくってこういった雰囲気の中で食べるとおいしく感じるんだろうな。


 この日もカラオケは3時間でお開きになった。

 俺は結局1曲も歌わなかった。

 ここの代金も俺はいいからと言われ、3人で払ってくれた。

 俺って美少女に養われてる感じがしないでもない。


 次回一緒に潜る日付はゴールデンウィーク辺りになるので、家族旅行などの予定が入っている子もいて予定は立てられなかった。

 月末近くになったら斉藤さんが連絡くれるとのことだった。




 うちに帰ってスマホを見たら、ダンジョン管理庁の河村さんから例のクロ板の個数をできたら教えてくれとメールが届いていた。

 個数を知りたいということはそろそろ買い取り値段の目安が分かるのだろうか?


 整理していたのですぐに返信しておいた。

 明かりの魔法×51

 水を作る魔法×52

 炎の矢を撃ちだす魔法×26

 石のつぶてを撃ちだす魔法×22

 罠を解除する魔法×21

 毒を中和する魔法×18

 ケガを治す魔法×29

 疲れをいやす魔法×25

 力を増す魔法×16

 素早さを増す魔法×12

 宝箱を開ける魔法×15

 罠を見つける魔法×13


 これに加えて、冒険者歴8カ月の高校1年生女子3人チームを2階層に連れて行ったところ、3人いれば全く危険はなかったことと、ついでに1階層の壁の途中の岩棚にレモンの木を植樹したことを書いておいた。

 植樹してはいけないと講習では習っていないし、ダンジョン内でやってはいけない事リストにも載っていなかったので大丈夫とは思う。

 それより、ちゃんと大きく成ってくれるかという方が心配だ。


 夕食時に、来週の月曜から2泊3日でダンジョンに潜りたいと父さんに言って了承してもらった。

 お泊りセットは去年の夏に揃えているので特にそろえなければならないものはないのだが、ダンジョンの中で温かい物も食べたいので鍋、ヤカン、フライパン、携帯コンロを揃えておくか。

 今日のホームセンター△□で買えばいいな。あそこは朝も早いし。

 明日は鶴田たちと1階層だから無理だから、明後日にでも買いに行こう。



[あとがき]

北降雪の夢十夜:ここまで変形してしまうともう何が何やら。

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