第134話 秋ヶ瀬ウォリアーズ11
秋ヶ瀬ウォリアーズの3人は午後に入ってからも特に問題なくモンスターをたおしていった。
初心者だと2階層はソロでは厳しいかもしれないが、3人いれば問題ないようだ。
3人のチームならAランクでも2階層に潜れるようにすればいいんじゃなかろうか?
今度ダンジョン管理庁の河村さんにご意見しちゃおうか。
Sランク冒険者の付き添いシステムがあるんだから、システム的には難しくなさそうなのだが。
そうすれば1階層がかなり広くなるし。
2時ごろ、2階層のマップなど基本的に覚えていないことを思い出した。
上がりを3時に予定しているので、それまでに階段下にたどり着きたいのだが、階段下から今まで通った坑道も、頭の中で帰りは転移と思っていたようで全然意識しておらず覚えていない。
したがって今自分がいるところが全く分からない。
とはいうものの目の前の標識は階段下を原点にした現在位置の座標を表しているので迷うということはない。
数字が少なくなる方向に進めばいいだけだ。
そう言うことなので、そこからの1時間は少しずつ階段下に近づくようにモンスターを選んで斉藤さんたちを誘導した。
そして結局午前午後合わせて22個のモンスターの核を手に入れた。
3時ピッタリではなかったのだが、なんとか無事階段下の空洞にたどり着けた。
初めてのSランク冒険者としての付き添いは合格点だろう。
階段を上って階段小屋から出たところで、俺は今日の核の分け前は要らないと3人に言った。
お金のことはちゃんとしないといけないと斉藤さんが言ったのだが、俺はメディアにある意味追われているので買い取り所には入りづらいことと、その関係で自分には専用個室があることを説明しておいた。
「分かった。
じゃあ、これからだから3時45分にハンバーガー屋さんの前で集合。
それでいい?」
「それでいいよ。
3人は先に行っててくれるかな。
一緒に渦を出ると3人まで面倒なことになるかもしれないから」
「そうか。有名人の女だって思われちゃうんだ」
「キャッ!」
「わたし、有名人の女になるの?」
「いや、ならないから」
「先に行くね」
「じゃあ」
「それじゃあ」
3人が先に行ったので、俺の方は人がまずいない階段小屋の裏手に回りそこから専用個室に転移した。
そう言えば公務員に準じるセンター職員には守秘義務があるのだろうが、多くのサイタマダンジョンセンターの職員さんたちは俺が転移で移動していることを知っているんだろうし、周囲に俺が転移を使えることを隠すことに今さら感はある。
そのうち外部に漏れる前提で考えていた方がいいんだろうが、具体的に何をどう身構えるのかは分からない。
転移を使わないのが一番なのだろうが、これほど便利な能力を今さら
約束の3時45分までまだ30分以上ある。
武器をロッカーにしまって、床に体育座りして暇をつぶすことにした。
3時40分になったところで、カードリーダーに冒険者証をかざしてバーガーショップの駐車場の隅辺りに転移した。
うちを出た時は晴れていたのだがこの時間曇り空だった。
バーガーショップの近くにも桜の木があり、確かに満開だった。
風がなくても桜の花びらが落っこちる速さが秒速5センチメートルかどうかはわからないけれど、桜の花びらは揺れるように宙を滑ってゆっくり落ちていた。
ハンバーガーショップの入り口に回ったらちょうど斉藤さんたちがやってくるところだった。
4人揃って店に入り、いつものようにハンバーガーセットを持って2階に上がって4人席に着いた。
ハンバーガーセットを食べながら。
「長谷川くん、今日の買い取り額は24万2400円になっちゃったよ。
3人で分けてひとり8万800円。
長谷川くん、Sランク冒険者だからすごい大金持ちということは分かるけど、ホントに良かったの?」
「もちろん大丈夫」
「ねえ、長谷川くん、実際のところいくらくらい儲けてるの?」
「こら! 中川、よしなさいよ」
「ゴメン」
「それでね長谷川くん、ここに来る間スマホで明日の天気調べたんだけど雨みたいだったよ。それも本格的な。
お花見はまず無理そうって話してたの」
「それなら植樹かな?」と、日高さん。
「ホントにそれするの?」
「斉藤、植樹してみようよー」
「わたしも興味あるなー」
「じゃあどこで集合する?」
「〇×ホームセンターの入り口の中かな?」
「外より中の方がいいよね。
あそこって何時から開くの?」
「ちょっと待って、……」
斉藤さんがスマホを操作したところ、
「10時からだった。
ちょっと遅いよね」
「じゃあ、ホームセンター△□は?」
「ちょっと待っててね。
……。
あっ! ここって6時半から開いてる。
極端に早いんだ。いいけど。
じゃあ、ホームセンター△□でいいかな?」
「「オッケー!」」
「了解」
「時間はどうする?」
「買い物が終わったらダンジョンセンターに行って着替えたりするから、8時でいいんじゃない」
「「オッケー」」
「長谷川くんは8時で大丈夫?」
「大丈夫」
「あそこならバスでダンジョンセンターへ行く途中だからちょうどいいよね」
「雨だし荷物が多いようならタクシーでもいいし」
「なにせ今日は8万円だもんね」
女子高生で1日8万円は大きいものな。
やはり、2階層のAランクチームへの開放は意味があるような気がする。
もちろん今日は俺が誘導したからそれだけの収益があったわけだけど、俺が居なくても半分程度の収益はあるんじゃなかろうか?
それでも1日4万円。
まあ、斉藤さんたちが専業冒険者になることは考えにくいが、専業なら月20日潜って80万円。かなりの金額だ。
真面目に1年潜ればBランクへのハードル累計買い取り額1000万円に手が届く。
今すぐにどうなるわけではないのだろうが、もう何年かしたら上位冒険者にとって魔法が一般的になるだろう。
そのころまだ秋ヶ瀬ウォリアーズが活動していたらクロ板をプレゼントしてもいいな。
3人が今日の2階層でのモンスターのことを話しているのを聞きながら俺はそんなことを考えて、ときおり振られる話に合わせて受け答えしていた。
その日もハンバーガーセットを食べ終わった辺りでお開きとなり、斉藤さんたちはバスに乗って帰っていった。
俺は
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