第127話 ダンジョン管理庁管理局企画課3。掲示板9


 週が明け月曜日。

 場所はダンジョン管理庁管理局小会議室。

 河村企画課員が一昨日の長谷川一郎からのメールと昨日長谷川一郎に会った内容について小林企画課長と山本企画課長補佐に報告していた。


「一昨日長谷川さんから24階層と25階層のゲートキーパーを撃破したというメールがわたしの元に届きました。

 メールにはゲートキーパー撃破前後の写真が何枚か添付されていました。

 その写真には撮影日時と時刻が写っていたのですが、24階層のゲートキーパーを撃破して25階層のゲートキーパーを撃破するまでわずか1時間しか経っていませんでした」

「まさに現代の超人だな」

「ゲートキーパー撃破については発表せざるを得ないが、その写真を本人の了承を得た上で公開するにしても撮影日時、時刻は出さない方がいいだろうな」

「河村くん、それだけかね?」

「いえ、本題はまだでして」

「まだあるのかね?」

「なんだか、空恐ろしいな」


「いえ、おそらくダンジョン管理庁と言いますか冒険者にとってとてもいい話だと思います」

「ほう?」

「はい。

 特定の魔法だけですが誰でも魔法が使えるようになるアイテムを26階層で見つけたという話でした」

「なんと!」

「やはりそういったアイテムがあったわけか」

「ゲートキーパーをこうも易々と撃破してしまったことは驚きだが、それにもまして魔法が使えるようになるアイテムとはな」


「わたしもその一つを見せてもらったんですが見た目はスマホのようなツルツルで真っ黒い板でした。

 長谷川さんによるとそれを両手で折れば、折った人がそのアイテムに対応した魔法を使えるようになるという話でした。

 そこでは実際に折ったわけではないのですが、長谷川さんが嘘を吐くとは思えませんので真実と考えてよいと思います。

 これが長谷川さんが手に入れたそのアイテムによって得られる魔法の種類です」

 河村課員が小林課長と山本課長補佐に魔法の種類を書いたペーパーを渡した。


「こんなにあるのか」

「ケガを治す魔法とか、こんなのが外部に漏れたら医師法なんかの絡みで大ごとになりそうだ」

「課長、そっちはそれでもプラスの話ですが、このファイヤーアローとかストーンバレットとか明らかに殺傷性のある魔法の方が問題では?」

「市中で使われたら大ごとだろうな。

 ざっと考えただけでも犯罪捜査方法の抜本的見直し、刑法関係の改正とかいろいろやらなければならなくなるだろう。

 とはいえ、われわれの仕事はあくまでもダンジョンの振興。

 そういった細々したことは警察庁と法務省に任せておけば間違いないだろう。

 話がそれてしまったが、長谷川くんはどうやってそのアイテムにそのような効能があることを知ったんだね?」

「長谷川さんはいわゆる鑑定能力を持っているんじゃないでしょうか。

 本人は誤魔化して『なんとなく分かる』とか言っていましたが、そのペーパーに書いてあるのはなんとなく分かるようなものじゃないことは一目瞭然ですし」

「確かに。

 とはいえ、本人が明かしたくない事ならこちらがとやかく言う権利などないからな」

「了解です。

 話は少し飛びますが、実はわたし、新人研修で自衛隊の研究所に行ったことがあるんです」

「うん?」

「その研究所ではナガノダンジョンで見つかった用途不明のアイテムを多数保管していたんですが、その中に黒い板があったの思い出したんです」

「自衛隊はかなり深部まで探索してるようだから26階層も当然探索済みだろうし、黒い板を保管しててもおかしくないか。

 よく河村くんはそんなものが自衛隊に保管されていたと覚えていたな」

「その時もスマホに見えたもので何となく思い出しました」

「河村くん、今回もお手柄だ。

 防衛省に掛け合って、その黒い板を自衛隊から取り寄せ、長谷川くんに鑑定してもらおうじゃないか。

 防衛省については、わたしの方から局長にお願いしておこう」


「課長、民間人に依頼するわけですから謝礼はどうします?

 謝礼となると税金の対象になりますから本人は嫌がりそうですが」

「最低でも10億は稼いでいる超高校生でもあるし、依頼内容は彼にしかできないという意味でも難易度は超高難易度。

 となると報酬はかなりの高額になるな」

「アルバイトの場合年間100万円以下なら免税だったはずですから、100万円の線でいいんじゃないでしょうか」

「詳しい金額は調べることにして、その線でいこうじゃないか」

「了解しました」


「あと課長、その黒い板でだれでも魔法が使えることが確認できた場合どのように発表します?」

「26階層で見つかったアイテムだと発表するしかないだろうな」

「価格についてはやはりオークションの落札価格を参考ですよね」

「最低落札価格を決める必要はあるが、ちゃんとした価格などわれわれでは見当もつかない以上そうなるな。

 これまで通りオークションにかけて落札価格の7、8割で買い取り価格を決めることになるんじゃないか。

 そこらへんはダンジョンセンターがプロだから任せておけばいいだろう」

「了解しました」

「今回は自衛隊の黒い板の調査ですが、今後長谷川さんが持ち込む黒い板についてその種類の特定を長谷川さんに頼まざるを得ませんが、その場合報酬等はいかがします?」

「申し訳ないが、自己申告してもらおう」

「了解です」




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 学校からうちに帰ったらダンジョン管理庁の河村さんからメールが届いていた。

 24階層、25階層のゲートキーパー撃破の情報は今週の木曜日と来週の木曜日の正午にダンジョン管理庁のホームページに載せることが決まったそうだ。

 その際俺がメールに添付して送った写真をホームページに掲載しても良いか聞いてきたので、俺の顔が映っていないものなら適当に使って構わないと返事しておいた。


 それと、自衛隊が保管している黒い板を『なんとなく調べる』ことについては俺の都合のいい時いつでもいいのでお願いしたいとあったので、次の土曜日の午後2時と返しておいた。

 そしたら、管理棟の改札前で待っていると返事があった。

 自衛隊の黒い板の数がどれくらいあるのか分からないが、相当あるんだろうなー。


 その後、丸盾と剣の買い取り代金が振り込まれているはずなので累計買い取り額を調べたところ、累計買い取り額はちゃんと4256万円増えて、72億5646万7000円になっていた。


 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 木曜正午。

 サイタマダンジョンの24階層のゲートキーパーが撃破されたとダンジョン管理庁のホームページに掲載された。

 今回ホームページ上に24階層の討伐前のアリの大群が写された写真も同時に公開された。

 少なくともサイタマダンジョン関係者は16歳Sランカー、通称フィギュア男による偉業だと理解していた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


1.名無し


サイタマダンジョンCランク冒険者用情報スレその2(41)。マナー厳守!


次スレは>>970を踏んだ人


 ……


215.名無し


とうとう24階層のゲートキーパーもかのご仁が撃破しましたな


20XX年3月12日 18:20


216.名無し


>>215.前回から約2カ月。かのご仁からすれば時間がかかったんじゃないか?


20XX年3月12日 18:21


217.名無し


>>216.あのアリ大きさは不明だが、多すぎて何匹いるのかも分からなかったぞ。あんなのひとりでたおせるか?ふつう


20XX年3月12日 18:22


218.名無し


>>217.普通じゃないから


20XX年3月12日 18:23


219.名無し


このニュースでまたフィギュア男を取材しようって連中が湧いて出そうだな


20XX年3月12日 18:25


220.名無し


そういえば最近フィギュア男の姿を見ないな。以前はよく売店で見かけたのに


20XX年3月12日 18:26


221.名無し


>>220.何せSランクと言えば10億円だぞ、売店なんかで買い物しないだろ?


20XX年3月12日 18:27


222.名無し


Sランクって1日潜ってどれくらい稼ぐんだろ?


20XX年3月12日 18:28


223.名無し


>>222.フィギュア男はおそらく高校生だ。となると登録してから100日も潜っていないだろう。100日として、10億稼ぐには1日1000万だ。Aランク、Bランクの時も含めてだからSランクの今1日2000万は簡単に稼ぐんじゃないか?


20XX年3月12日 18:40


224.名無し


>>223.!!!!


20XX年3月12日 18:41


225.名無し


わたし心は女だからフィギュア男くんのお嫁さんになりたい!


20XX年3月12日 18:43


226.名無し


>>225.こら、やめんか!


20XX年3月12日 18:44


……

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