第124話 26階層2


 フィオナ探知機の指示に従って移動すること2時間。

 その間爬虫類スケルトンを14体たおして1体たおすたびに宝箱から黒い板を手に入れた。

 スケルトンは核の他丸盾と幅広の剣を必ず装備していたのでそれも全部回収している。

 買い取り所でリュックからどんどん出すわけにはいかないので、小出しにするしかない。

 そう言えば専用個室で物品は買い取ってもらえるのだろうか?



 どこまで行っても同じ部屋ばかりなのですこし飽きてきた。

 時刻は11時半。

 少し早いが昼食をとることにした。


 石室の壁にもたれるように床に座り込んで、おむすびを頬張りペットボトルから緑茶を飲む。

 たまに自分の食べてるおむすびからご飯つぶを取って肩に止まるフィオナに食べさせる。

 いつも通り。

 10分もかからずいい線お腹も膨れてきたところでごちそうさま。


 12時まであと20分休憩だ。


 黒い板はだいぶ集まった。

 数があるということは、それほど希少なアイテムではないのだろう。

 俺は防刃ジャケットのポケットの中から、25階層のゲートキーパーゴリラをたおした時に手に入れた金の指輪を取り出した。


 見た目は装飾も何もない金の指輪。

 とは言え金の宝箱に入っていた指輪がただの指輪なわけはない。と、思いたい。

 何か特別な力が宿っているはずだ。

 例えば、はめていると眷属が見つかるとか?(注1)

 眷属が見つかったとして、俺のうちで一緒に住めるわけじゃないからちょっと困るけどな。


 どうしようか?

 はめてみるか?

 何か手掛かりがつかめるまでこのままにしておくか?

 しかし、どこかに説明書があったとしても、ダンジョン語で書かれているだろうし、そんなものは何の役にも立たないわけで手がかりなど見つかるはずない。


 はめてみるしかないな。

「フィオナどう思う?」

 右肩に止まったフィオナを見たらあくびをしていた。

 かわいいなー。


 そのフィオナが俺の顔を見てうなずいた。

 うなずいたのかあくびを途中でやめたのかは判然としないところもあるが、うなずいたと思って俺は思い切ってその指輪を左手の中指にはめてみた。


 俺の指は結構太い方だと思っていたがブカブカだった。

 これでは親指にはめるしかないと思い抜こうとしたら、指輪がぴったりの大きさに縮んだ。

 今度は抜けなくなった! と、思って引っ張ったら簡単に抜けた。

 少なくともあの系統の呪いの指輪ではなかったようだ。

 もう一度左手の中指にはめたらすんなりはまった。

 全然違和感がない。


 サイズが勝手に変わったところは確かに魔法の指輪なのだが、それ以外何も変わったことが起きない。

 サイズが勝手に変わる指輪は学術的にはものすごく貴重だと思うが、俺にとっては何の意味もない。

 いったいこの指輪は何なんだろう? と、指輪を観察する目で見たら、急にその指輪が何だか分かってしまった!


 はめていると目にしたものが何であるのか分かる指輪だった。

 名まえが分かったわけではないのだが『鑑定指輪』と言っていいのだろう。

 これは大変なものだ。

 試しに、俺の横に置いたヘルメットを鑑定する目で見たのだが、何も特別なことは分からなかった。

 俺はこれをフルフェイスのヘルメットであることを知っているので、新たな情報がないのか、指輪の能力がダンジョン由来のもの限定なのか。

 おそらく後者なのではなかろうか。


 次に俺はタマちゃんに黒い板を1枚手渡してもらい鑑定を試みた。

 明かり魔法が使えるようになる板だった。

 使い方は板を折るだけでいいらしい。

 俺の場合は明かりの魔術ライトなので、明かりの魔法**となるとライトとは少し違うのだろう。

 その後残りの13枚を出してもらってどんどん鑑定していった。

 明かりの魔法×3

 水を作る魔法×3

 炎の矢を撃ちだす魔法×2

 石のつぶてを撃ちだす魔法×1

 罠を解除する魔法×1

 解毒する魔法×1

 ケガを治す魔法×1

 力を増す魔法×1

 宝箱を開ける魔法×1


 罠を解除する魔法はありがたいが、そういった魔法があるということはやはり罠があるということだろう。

 心せねば。

 残念ながら罠を見つける魔法はなかったが、午後から見つかるかもしれない。


 石のつぶてを撃ちだす魔法、罠を解除する魔法、解毒する魔法、力を増す魔法、宝箱を開ける魔法については俺の魔術に相当するものがなかったので、板を折ってみることにした。


 まずは石のつぶてを撃ちだす魔法。魔術だとストーンバレット。それ系統は全然ダメだったんだけどどんなものか?


 いきますよー。

 スマホを折るようで若干気になるのだが、心を鬼にして黒い板をへし折ったら、2つに割れた黒い板が手の中でサラサラの灰色の砂に成って崩れていき、床の上にこぼれてそのうち消えてなくなった。


 ストーンバレットはどうやって撃てばいいのか分からなかったが、右手のひらを開いて手を突き出し、石のつぶてをイメージしながらストーンバレットとつぶやいたら、こぶし大の丸石らしきものがものすごい速さで向かい側の壁に当たって粉々に砕け散った。

 丸石が当たった壁も抉れていた。

 なかなかの威力だ。


 ついでに連射を試してみた。

 特に反動が来るわけではないのだが、ものすごい勢いで石のつぶてが連射されて行った。

 向かい側の壁が粉塵を巻き上げて大きく抉れてしまった。

 俺の魔術もたいていのものは連射できるが、このストーンバレットの連射速度はけた違いだ。

 魔術と魔法は似て異なるものなのだろう。


 次に力を増す魔法の黒い板を折ってみた。


 そのあと罠を解除する魔法の板、解毒する魔法の板、宝箱を開ける魔法の板を順に折った。

 その都度何が変わったわけではないが、意識すれば罠は解除できそうだし、毒も解毒できそうだし、宝箱もなんなく開けられる。

 宝箱はタマちゃんが全部収納してくれているので試せたんだった。

「タマちゃん、金色の宝箱を出してくれるかい?」


 金色の宝箱をタマちゃんから受け取った俺は、宝箱に向かって蓋が開くよう念じたところ、宝箱が直方体の展開図のように開いた。

 当然中には何も入ってなかったのだが、この開き方は予想外だった。

 試しに元に戻れと念じたら、展開図から宝箱が組み上がった。

 宝箱自体がマジックアイテムなのかもしれない。

 組み上がった金色の宝箱はタマちゃんに再度収納してもらった。


 そこで時計を見たら12時10分だったので、装備を急いで整えた俺はフィオナに従って次の扉を開けた。





 金色の指輪が鑑定指輪、黒い板が魔法を習得する板だと分かって更にやる気が出てきた。

 ゲートキーパー撃破は後回しにしても黒い板を見つけたくなるのが人情だ。

 なので俺は片っ端から扉を開けていくことにした。


 午後から手に入った黒い板は全部で32枚。その間罠に出くわすことがなかったので、これから先下の階層に下りていけば罠があるのだろうが、この階層には罠はないと思って良さそうだ。


 罠を見つける魔法の黒い板は鑑定したところですぐに折ってやった。

 やっと罠を見つける魔法が手に入った。

 ほかに疲れをいやす魔法、素早さを増す魔法の黒い板を折ってやった。

 

 明かりの魔法×4

 水を作る魔法×4

 炎の矢を撃ちだす魔法×4

 石のつぶてを撃ちだす魔法×2

 罠を解除する魔法×2

 解毒する魔法×2

 ケガを治す魔法×3

 疲れをいやす魔法×3-1

 力を増す魔法×2

 素早さを増す魔法×1-1

 宝箱を開ける魔法×2

 罠を見つける魔法×3-1


 午前中見つけた黒い板と合わせて、

 明かりの魔法×7

 水を作る魔法×7

 炎の矢を撃ちだす魔法×6

 石のつぶてを撃ちだす魔法×2

 罠を解除する魔法×2

 解毒する魔法×2

 ケガを治す魔法×4

 疲れをいやす魔法×2

 力を増す魔法×2

 宝箱を開ける魔法×2

 罠を見つける魔法×2





注1:はめていると眷属が見つかる

常闇の女神シリーズ、その1

『闇の眷属、俺。-進化の階梯を駆けあがれ-』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054896322020 よろしく!

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