第109話 23階層ゲートキーパー
[まえがき]
2024年2月23日20時過ぎ、300万PV、アンド、1万フォロワーほぼ同時達成しました。ありがとうございます。元日に投稿開始して1日2話投稿で54日目。ありがとうございます。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
俺はいったん立ち止まり、振り返って河村さんに前方の気配のことを伝えた。
「河村さん、この先に大物の気配がします。
おそらくゲートキーパーです。
たまたま、階段近くまで近づいていたということでしょう。
たおしちゃっていいですよね」
「もちろんです」
「それじゃあ、ここからは歩いて近づいていきましょう。
それとキャップランプのあかりを半分くらいに落としておいてください」
河村さんがうなずいてキャップランプの明かりを絞った。
「それと、何か飛んでくるかもしれないから、俺の真後ろをついてくるようにしてください」
河村さんはこれもうなずいて返事をした。
そこから坑道の曲りに沿って3分ほど歩いていくと、その先の空洞にモンスターが見えた。
まだ距離はあるけれど、見た感じはハチだ。
はっきりした大きさも分からないが、5、60センチはありそうだ。
そういったハチが何十匹もぶんぶん羽音をたてて飛んでいた。
ハチの飛んでいる真ん中には泥の塔のようなものが路面から空洞の天井に伸びていた。
ハチの巣だ。
まだ連中はこっちに気づいていないようだし、気付いていても距離があって襲ってこないのだろう。
こっちには河村さんもいるので、ここは一網打尽にしなければ面倒だ。
となると、ファイヤーボールの出番だな。
ファイヤーボールを連射してやればなんとかなるだろう。
まずはファイヤーボールを10発くらい連射してハチの巣を吹き飛ばしてから、順に手前に着弾させておけば飛び回っているハチもこっちに来ないだろう。
「河村さん。
ハチはこっちに来ないようだから、ここからファイヤーボールを放って仕留めます。
爆発するので、気圧が急に変わるから耳をふさいで口を開けててください」
俺はその程度何ともないけれど、一般人には注意しておかないとな。
「ちょっと待ってください。
その前にデジカメで撮影しておきます」
河村さんは手袋を外してジャケットから小型のカメラを出した。
こうなってしまうと耳は塞げないが、口を開けていれば鼓膜が破れることもないだろう。
「準備出来ました」
「それじゃあいきます」
俺はスポーツバッグを路面に置き、クロを左手に持って、右手の平を突き出しファイヤーボールを連射した。以前より威力が増しているのか妙に明るい光を放ってファイヤーボールが目標に向かって並んで飛んで行った。
10発のファイヤーボールのうち4発が巣の周りを飛んでいたハチに当たって爆発した。
残りの6発は何に当たったのか分からなかったが、とにかく爆発した。
10発に続いて4発巣の手前辺りに着弾するようファイヤーボールを撃っていたので、それも次々に着弾して爆発した。
こっちに飛んでくるハチはいなかった。
しばらくして爆発の粉塵がおさまったのだが、ハチの巣は跡形もなく、飛んでるハチも1匹もいなかった。
「いなくなったみたいです」
「はい?」
さっきのファイヤーボールの爆破で耳が聞こえなくなったのか?
「い・な・く・なっ・た・み・た・い」
大きな声でもう一度言ってやった。
「すみません。耳の中がキーンとしてしまって。
思った以上に大きな音でした。
長谷川さんは、……、何ともないみたいですね」
「慣れてますから。
じゃあ、行ってみましょう」
クロを背中の鞘に納めスポーツバッグを持って、キャップランプの明かりを元に戻してからハチの飛んでいたところまで歩いていった。
バラバラになった無数のハチの残骸が元はハチの巣だった乾いた土まみれになって転がっていた。
ハチの巣のあったところの先に階段が見えた。
やはりハチはゲートキーパーだったようだ。
「タマちゃん、核を残してハチを食べてくれるか」
背中のリュックから偽足が10本ばかり伸びて、あっという間にハチの死骸が見えなくなってしまった。
それから核が順番に俺の手に届けられ、俺はそれをどんどんスポーツバッグに入れていく。
その数240個。
そして最後に1つ大きな核が渡された。
女王バチの核なんだろう。
その核だけはリュックに入れておいた。
「23階層のゲートキーパー、たおしちゃったけど、よかったんですよね」
「もちろんです」
「さっき撮影していた動画どうします?」
「いちおう分析はしますが、発表はしないと思います。
なにせ、一撃でゲートキーパーをたおす魔法なんか見せられませんから」
「一撃じゃなかったんですけどね」
「素人では差なんて分かりませんから」
確かに。
「ここにいても仕方ないから、24階層に行ってみますか?」
「えっ? 行っちゃうんですか?」
「まだ1時半だし、どこまで行っても帰るのは一瞬ですから。
その気になれば、24階層のゲートキーパーも3時までにはたおせますよ」
「いえいえ、24階層はいいとしてもゲートキーパーは止めておきましょう」
「わかりました。
取りあえず、階段を下りていきましょう。
ハチの巣の残骸の土が階段の上に溜まってるから気を付けてください」
「は、はい」
俺が前に立って階段を下りていった。
24階層は予想通り23階層と見た目は同じだった。
「ここが24階層。
23階層の時もそうでしたが、わたし一番深い階層にわが国で2番目に立ったんですね。
ちがった。ダンジョンは日本だけなんだから世界で2番目だった」
感慨にふけっていても仕方ない。
ディテクター×2を発動したところここもモンスターは濃かった。
ありがたや。
しかも、かなり近いところにもモンスターがいるようだ。
なんだかいつもとは反応が違う。何だろう?
何だかわからないが行ってみればわかること。
「そろそろ行きますか」
「はい」
階段のある空洞を出てそれほど移動することなくターゲットが目に入った。
うわっ! 今度はクロアリだ。
数が半端ない。
黒い波がゆっくりとこっちに向かってくる。
一匹の大きさはさっきのハチと同じくらい。
近づいてくるアリを見ていたら足音は聞こえないのだが聞こえるような錯覚を覚える。
これも魔術案件だな。
爆発系がいいか? カッター系がいいか?
距離も近いしカッター系だな。
表皮は固そうじゃないからウィンドカッターで十分だろう。
なぎ払え! ウィンドカッター!
声には出さず、ウィンドカッターを連射していった。
文字通りアリはなぎ払われて行くのだが、数が多い上、ある程度なぎ払ったあとは死骸を切り刻むばかりで後続までウィンドカッターが届かない。
数は力とはよく言ったものだ。
「タマちゃん、アリを食べてくれ。
生きてるのも死んでるのも一緒でいいぞ」
俺はアリの群れの方に歩きながらタマちゃんに頼んだ。
今回もリュックから金色の偽足が10本ほど伸びて、アリを掃除していく。
掃除機のコマーシャルみたいにどんどんアリが消えていく。
爽快だ!
タマちゃんに任せて30秒ほどでアリが片付いた。
俺は路面に置いたスポーツバッグにタマちゃんから渡される核を入れていく。
アリの核は255個だった
「長谷川さん、えーと、タマちゃんは生きてるモンスターも食べちゃうんですか? それに際限はないんですか?」
「際限はないみたいです。それと何でも食べちゃいます。
その気になれば周りの岩もいけるんじゃないかな」
「そうなんですか」
「試したことないけれど、モンスターの骨も関係なくあっという間に吸収しちゃうから何とかなるでしょう」
「タマちゃんだけでゲートキーパーを撃破できるんじゃないですか?」
「できるでしょうね」
「ということはタマちゃんはゲートキーパー以上」
「そうでしょうね」
「危険じゃないですか?」
「危険じゃないと思いますよ。
俺の言うこと聞くし。
問題ありますか?」
「いえ。
モンスターを飼い慣らしてはならないという法律も規則もありませんから」
これはちゃんと言っておいた方がいいな。
「言っておきますが、今後そういった規則や法律ができるようなら、俺は一切協力しませんよ」
「はい。承知しました」
それから、3時まで適当にモンスターを狩って行き、1階層で
いつも通り何気ない顔をして5分ほど歩いて渦から出て、そのまま河村さんを引き連れて買い取り所に入った。
「お願いしまーす」
「長谷川さん、今日も大漁でしたか?」
「今日はかなりです」
「それは頼もしい。
今日はおふたりのようですが、こちらの方は?」
「わたくし、ダンジョン管理庁企画課の河村と申します。
今日は無理を言って長谷川さんに同行させていただきました」
「そうでしたか。ご苦労さまです」
俺は核がぎっしり詰まったスポーツバッグを床に置いて両手で核をすくってどんどんカウンターの上のトレイに移していった。
最後にリュックを下ろして中からひときわ大きい核をトレイの上に置いた。
「長谷川さん、これはゲートキーパーですね?」
「はい」
「22階層に続き、短いインターバルで今度は23階層。
驚きです」
「ありがとうございます」
今日の成果の核は、
23階層午前、273個
23階層午後、65個+240個(ハチ)+ゲートキーパー?
23階層合計、578個+ゲートキーパー?
24階層、255個(アリ)+118個=373個
総買い取り額は、23階層2億6645万円+24階層1億8239万円=4億4884万円
累計買い取り額は22億522万600円+4億4884万円=26億5406万600円
となった。
ゲートキーパーの核については明日の午前中に査定金額が振り込まれるという話だった。
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