第106話 クラスメートとの親交も大事2。魔法リーク
正午を少し回ったところで昼にしようということになり、各人武器を置きリュックを下ろして地面にじかに腰を下ろして昼食を食べ始めた。
4人はセンターの売店で買ったらしい弁当だった。
「しかしホントにいい天気だなー」
「太陽がないくせに謎だな」
「長谷川、2階層の坑道ってかなり暗いのか?」
「歩くには支障がないくらいの明るさが坑道自体から出てるな。
発見しづらいモンスターもいるから。キャップランプは必須だ」
「まあ、俺たちじゃ10年かかってもBランクにならないから心配ないだろう。
ところで長谷川、お前は短期間でBランクになったけれど何か秘訣があるのか?」
「たまたま特殊なモンスターをたおしたところ、その核が高額で売れたんだ」
「ほう。
Bランクということは1千万以上ということだよな。
しかし、棚ぼたでBランクになってしまうと後が大変じゃなかったか?」
「そうでもないな」
「そりゃそうだ。長谷川の体育での動きを見てると長谷川ならモンスターくらい何ともなさそうだしな」
「何であれ、長谷川は俺たちのホープ、ないしはヒーローだからな」
「文武両道を極めし男だ」
ここにきてエライおだてようだな。
でもうれしいぞ。
……。
「そろそろ行くか」
30分ほどで昼休憩を切り上げて午後からのモンスター狩を開始した。
午前と同じく和田が先導している。
ビギナーズラックとでも言うのだろうか、午後からも好調で、結局上がりと決めていた3時までに12個の核を手に入れた。
午前と合わせて22個。
買い取り所の小部屋に5人で入って核をトレイに入れて買い取り額を計算してもらった。
買い取り所の係りの人はよく見る人だったので当然俺のことを覚えていた。
「長谷川さん、今日はお友達と」
「はい。この冬休みに冒険者になったばかりの連中なので今日は一緒に」
「長谷川さんと一緒に潜れるとは運がいい」
「ハハハハ」
今のは俺の乾いた笑いだ。
4人は係の人の言葉の意味が分かっていないようだ。
何せ俺はただのBランク冒険者だからな。
総買い取り額は10万6400円。
これを5等分する約束だったのだが、俺は断った。
理由は10円台の端数が出るという大人の事情からだ。
買い取り所を出てからエスカレーターを上り、武器の預かり所で武器を返したところ、4人とも荷物をロッカールームに預けているという。
「長谷川、お前その格好でここまで来たのか?」
「ああ」
「その格好で寒くなかったのか?」
ダンジョンワーカーの防刃ジャケットはもちろんダンジョン用なのでダンジョン内の気温や湿度に合わせてあり通気性が優れている。
そのため冬季にダンジョンの外でそれだけ着用するとかなり寒いだろうが、その程度、俺にはあまり関係ない。
「いや全然」
「まあいいや。
それじゃあ長谷川、この建物の出口あたりで待っててくれ。
俺たち着替えてすぐ行くから」
「分かった」
俺が本棟の出口前の椅子に座っていたら、10分もかからず和田たちがエスカレーターから下りてきた。
「みんなで何か軽く食べに行こうぜ」
ということになり、秋ヶ瀬ウォリアーズの3人と同じように結局俺にとってはいつものハンバーガーショップに行くことになった。
俺はいつも通りハンバーガーセット。
今日はタマちゃんはいないのでポテトは普通だ。
俺の代金は和田が払ってくれた。
こいつら口はうるさいが悪い奴らじゃないよな。
各自トレイを持って2階に上がって、4人席と2人席をくっつけて5人で座った。
「ところで長谷川、お前文化祭の時女子3人連れていただろ?
あの3人は一体どういう3人なんだ?」
隠すようなことではないので根掘り葉掘り答えてやることにした。
「俺が初めてダンジョンに入った時、たまたま中学の時の同級生に会ったんだ。
それがあの3人のうちのひとりで、残りの2人は彼女と一緒にいた彼女の友だちの冒険者だ」
「彼女だと!」
「彼女なのか?」
「けしからん!」
「いや、ただの人称代名詞だから」
「それだけなのか?」
「月に一度くらい一緒にダンジョンに入ってる」
「3人と?」
「3人チームだからな」
「何と!」
「毎月!」
「けしからん!」
……
話も終わり各自食べ終えてしばらくして店を出た。
4人はバスで駅まで帰るというので俺も付き合いバスを降りたところで解散した。
「長谷川、今日はありがとうな」
「サンキュウ長谷川」
「ありがとな長谷川」
「長谷川、じゃあなー」
4人とも手を振りながら駅に消えていった。
Aランク冒険者となった和田たち4人と楽しい時間を過ごせたことを神に感謝。
というほどでもないが、一応クラスメートとの親交は図れたと思う。
無駄ではなかったはずだ。
要は気の持ちよう。
週が明けた。
今週の土日は連休なので、4日間の登校になる。
火曜日の夜。
学校から帰ってスマホを見たらダンジョン管理庁の河村さんからメールが届いていた。
内容は明日の昼頃ダンジョン管理庁で『魔法』の発見についてリークするというものだった。
リークの意味はよく分からなかったが、俺に迷惑がかからないのなら適当にやってくれて構わない。
『了解しました』とだけ書いて返信しておいた。
俺は基本的に休憩時間に校庭に出ることもなく席を離れることは滅多にない。
その週和田たち4人がよく俺のところにきて話しかけてくるようになった。
鶴田たち哲人3人も良く話しかけてくる。
少しずつ世界が変わってきているのかもしれない。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その週の半ば。
ダンジョン管理庁の高官による『
その情報を受けた海外を含む各メディアはダンジョン管理庁に情報の真偽について問い合わせを行なったが、ダンジョン管理庁では肯定も否定もしなかった。
そのかわり、この件について一線を踏み越えるような取材等があった場合、ダンジョン管理庁は機密保護法、個人情報保護法の観点より厳正な対応をすると通達した。
つまり、魔法は存在する。しかし公表できない
そして、その事情とは
各紙に踊った夕刊やニュースのwebページの見出しは『ダンジョン管理庁、魔法の存在を否定せず!』『魔法時代の到来か!?』
ダンジョン管理庁の思惑通り、世間は魔法について盛り上がっていった。
同じ週『はやて』を除く有力冒険者チームが相次いで各々がホームとするダンジョンの22階層のゲートキーパーを撃破したと発表した。もちろん動画も公開されている。
どのチームも発想は同じで、装甲板で補強し転倒防止機材を取り付けたクローラーキャリアを盾にして大型のクロスボウを使い15分ほどでサイを撃破していた。
初めての動画ではあったが最初の撃破ではなかったことと、魔法についての発表の前後だったこともあり、反響は限定的だった。
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