第101話 22階層ゲートキーパー
フィオナのおかげで22階層に到達した日の夜8時ごろ。
俺はゲートキーパーの件で氷川にメールした。
『22階層に到達したんだけど、ゲートキーパーたおしていいのかな?』
メールして5分ほどで返信があった。
『22階層という言葉にいささか驚いたが、とうとうSランクになったわけだ。
おめでとう。もちろんゲートキーパーをたおしてもいい。普通のチームならその様子をカメラで記録するが、長谷川の場合いろいろあるから記録できないだろう』
『ありがとう。
ゲートキーパーをたおしたらどこかに届けないといけないのかな?』
これは1分ほどで返信があった。
『センターの係員に一言いった方がいいだろう。ゲートキーパーの核を買い取り所に持っていきそこで一言いえばいい。その核で十分証明になるはずだ』
『ありがとう』
『どういたしまして』
持つべきものは信頼できる友達だな。
明日は、モンスターをたおしながら、23階層への階段に向かっていって、ゲートキーパー撃破だ。
メールしたついでだから次回氷川とダンジョンに潜る約束をすることにした。
『氷川、次一緒に潜るのいつが都合いい?』
と、メールしたら5分くらいして、
『2月11日の祝日がいい』と返事が返ってきた。
『了解。2月11日、9時、いつもの場所で』
『分かった。楽しみにしている』
翌日。
世間さまは3連休の
もちろん俺もそうなんだけど、俺にとっては3連続ダンジョン討ち入りの中日。
朝7時にダンジョンセンターに到着して食料、飲料を購入した。
武器預かり所で武器を受け取り準備を整えて渦に直行。
いつもならサンドや調理パンを歩きながら食べるのだが、今日は気が
そこからはフィオナの示す方向に駆けていく。
進路上のモンスターはその都度撃破しながら1時間ほど進んだところで前方からモンスターの気配がしてきた。
人の気配はなかったので『はやて』の面々が状況をうかがっているわけでも、ましてや戦っているわけでもないようだ。
俺はそこで駆けるのを止めて立ち止まり、キャップランプの明かりを絞ってから歩いてモンスターの気配に近づいていった。
ゲートキーパーが視界に入った。
サイじゃないか。
ゲートキーパーは立派な角を生やした巨大なサイだった。
タダのサイも実物では見たことがなかったのだが、
そこらの冒険者による打撃でどうこうできる感じではないし、斬撃も効きそうにない。
弓矢かクロスボウ、ないし槍などの刺突系の攻撃が通じるかどうかといった感じだ。
これでは確かに撃破は困難だろう。
クローラーキャリアを盾にして戦うにしても横幅の狭いクローラーキャリアだとサイの突進を喰らえば横転してしまうだろうし、運が悪ければ横転に巻き込まれてしまう。
サイの攻撃に耐える盾になるものと強力な飛び道具を用意しないと、ただの冒険者では撃破は無理そうだ。
俺にはそんなこと関係ないので、クロを背中の鞘から引き抜いて無造作にサイに近づいていった。
ゲートキーパーというだけあって、やみくもには持ち場を離れないようで、俺が近づいていってもサイは俺を睨むだけで動かなかった。
縄張りというか、どこかの境界を侵入者が踏み越えると襲ってくるのだろう。
その一線は定位置から15メートルくらいだったようで、そこに俺が踏み込んだとたんサイは俺に向かって突進してきた。
路面を振動させて迫るサイは迫力がある。
こんなのが迫ってきたら普通はビビる。
とはいえ、ただ突っ込んでくるだけのサイでは俺にとって何の脅威にもならない。
鼻息を荒げて突っ込んでくるサイを直前で右にかわし、上段からサイの太くて短い首に目がけてクロを振り下ろしてやった。
サイの首が太すぎて両断はできなかったが、首の骨は断っている。
首の切り口がパックリ割れ、下がった鼻先を路面にこすりつけながら数歩進んだサイはそこで力尽き大きな音を立てて横倒しになった。
数秒間だが倒れたサイの首の切り口から鼓動に合わせて血を吹き出ていたがそれも止まり、サイは動かなくなった。
こいつ一体何トンあるんだ?
サイの死骸はタマちゃんに処理してもらったのだが2本突き出ていたうちの大きい方の角が立派だったのでその角だけ残してもらった。それだけでも10キロはありそうだ。
リュックに入れたところかなりかさばったのでタマちゃんに収納してもらった。
それで、タマちゃんが渡してくれた核だがこいつもかなり大きかった。
以前『はやて』の面々が20階層のゲートキーパーを撃破した映像を見たことがあるがその時のゲートキーパーの核は黒光りするソフトボール大ほどの大きさだった。
今回の核もそれとほとんど変わらない感じだが、どれくらいの値段で買い取ってくれるのだろう?
ゲートキーパーは撃破してしまったし、少し先に23階層に続く階段が見えているのだが下りて行っていいのだろうか?
目の前の階段を見てても仕方がないので、キャップランプの明かりを元に戻して23階層に下りていった。
23階層は22階層とほとんど変わらなかった。
腕時計を見たら時刻は9時を少し回ったくらい。
まだ朝だ。
ディテクター×2を発動したところ、22階層同様かなりモンスターが濃い。
それでも階段下近くにモンスターはいないようだし今日は気がせいてしまって途中何も食べていなかったので、リュックの横についているフックにぶら下げたレジ袋の中からサンドイッチを取り出して立ったまま壁に寄りかかってかぶりついた。
サンドイッチを食べ終えた後は調理パン。
今日の調理パンはソーセージパンと焼きそばパンだ。
ソーセージをパンにはさむ発想はごく普通だと思うが、焼きそばパンを考えた人間は天才ではなかろうか?
奇人と天才は紙一重というか、普通の人間では思いつけない発想だ。
お好み焼きがご飯のおかずになる関西人が発明したに違いない(注1)。
未だ見たことはないが、この広い世界の片隅でたこ焼きパンも販売されているに違いない(注2)。
朝から何も食べていなかったのでお腹もすいていたし、ひと仕事終えた後の食事は特においしいなー。
時計を見たら時刻はまだ9時10分。
1時間で次の階段までいけるとすると、あと6階層分下れる計算だ。
うまくすれば30階層くらいまで今日中に行けそうなのだが、ちょっと派手過ぎるよな。
しばらくこの階層で遊んでおくか。
遅い朝食を食べ終えた俺は、ディテクター×2で見つけていた一番近いターゲットに向かって駆けだした。
23階層でも22階層とそれほど変わらないモンスターが出てきただけだった。
昼食をはさんで延べ6時間みっちり働いたおかげで、23階層で手に入れたモンスターの核の総数は656個。
22階層でゲートキーパー前まで移動する途中で手に入れたモンスターの核が48個。
今日は大収穫だ。
レジ袋も満杯で、途中からそのままリュックの中にジャラジャラと核を突っ込んだ。
リュックが核で膨らんでいる。
タマちゃんは窮屈だろう。
あまり窮屈なら、いったん核を体内に収納してもらってもいいが、タマちゃんは今のところ不平を漏らしてはいない。
口も付いてないし。
注1:
関西じゃなくって、東京発祥のようです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%84%BC%E3%81%8D%E3%81%9D%E3%81%B0%E3%83%91%E3%83%B3
注2:
調べたらホントにありました。
世の中広い。
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