第100話 22階層

[まえがき]

誤字ばかり多くて申し訳ありません。誤字報告重ね重ねありがとうございます。

とうとう100話。元日から投稿を始めて50日目ということになります。

おかげさまでPVがすごいことになりました。

最低でもあと128話は続くのでよろしくお願いします。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 フィオナのおかげで午前中だけで17階層まで下りてきてしまった。最前線まであと5階層。

 階段下で腰を下ろしておむすびを頬張り、緑茶のペットボトルから緑茶を飲む。

 食べながらも自然と顔がニヤケてしまう。


 勇者時代、こうもあからさまに顔がニヤケたことなど一度もなかったような気がするが、俺は自分の世界に戻って気が緩んでしまったのだろうか?

 いや、そんなことはない。

 この世界があっちの世界と比べてあまりにぬるいのだ。

 慢心は大敵であると頭では理解しているが、こうもいろいろうまくいくとつい世の中を甘く見てしまう。

 仕方ないよな。


 いくら俺が26年間も生きているとはいえ、体はまだ16歳。

 精神が肉体に引きずられてしまうのも事実だろう。

 しかし、頭脳は大人な探偵少年は肉体に精神が引きずられているようには見えなかったから、精神は肉体に引きずられてしまうというのは真理ではない可能性が高い。

 などとおむすびを食べながら考えたものの、よく考えなくても26歳の精神と16歳の肉体が共存している現状を変える手段がない以上どうでもいいことだった。


 むすびセットを食べ終えた俺は12時15分まで休憩して、午後のランニングに取り掛かった。

「フィオナ、頼む」


 今回はすんなり30分ほどで18階層に続く階段を見つけることができた。


 18階層への階段を駆け下りたところ、やはり代わり映えのしない空洞とその先に続く坑道があるだけだった。


 そんな感じで30分ちょっとで階層を横切り、3時10分には最前線の階層、22階層にたどり着いてしまった。

 ディテクター×2を発動したところ、ありがたいことにこれまでの階層と比べ格段にモンスターが濃い。

 


 今日も俺の撤収予定時刻は4時半と考えているので、このままいけばおそらくゲートキーパーまでたどり着けてしまう。

 22階層のゲートキーパーはかなり長い間『はやて』が挑んでいるもののいまだにたおせていないゲートキーパーだ。

 どうせ大したことのないモンスターだろうから俺なら簡単にたおせると思うけど、俺が本当にたおしちゃっていいのだろうか?


 ゲートキーパーに手を出すのは専門の学校で学んでいる氷川に相談してからの方がいいような気がする。

 今日は22階層のゲートキーパーには手を出さず、今日の残り時間はそこらのモンスターを狩っておこう。

 

 それでは一番近そうなモンスターから。

 最初のモンスターは、クロヒョウ?

 ツヤのある真っ黒な体に2つの目が光っている。

 見た目はしなやかで敏捷そうだが所詮は猫が大きくなったようなものだ。

 そいつが6匹ほど俺を見つめて唸っている。

 そんな暇があるならかかってこいよ。

 オラオラオラオラ!


 俺が突っ込んでいったらクロヒョウは俺に向かって飛びかかってきた。

 羽の付いていない豹では空中での方向転換は無理だ。

 そんなのは枕投げの枕と何も変わらない。

 一歩横に避けてクロを振り下ろして首を狩り、2匹目に対しては下から切り上げる。

 3往復で6匹のクロヒョウの頭と胴体が泣き別れた。


 クロヒョウからはいい毛皮が取れそうだが、タマちゃんを利用して運ぶわけにもいかないし、16歳の俺が解体して毛皮だけ納品なんかしたらもっとおかしいし。

 いろいろと面倒なので全部タマちゃんに処理してもらった。

 手に入れた核はやはりそれなりに大きかった。


 次のターゲットは1匹のスライムだった。

 キャップランプの白い光の中でそいつの体は22階層で現れるモンスターの割にやけに貧相だ。

 たった1匹でこんなところにいるスライムに少し疑問が沸いたが、どうでもいいと言えばその通りなのでメイスで叩いたら簡単に潰れた。

 潰れた後に残った核はこぶしほどの大きさで虹色に光を反射していた。

 今のスライム、もしかしてレインボースライムじゃ?

 確か虹色の核は3500万円だった。

 今回も前回同様3500万円で売れるなら大儲けだ。


 レインボースライムがいたとなると、あの金色のスライムが出てこないかなー。


 どんどん行くぞー!


 今度は、トカゲが1匹。

 大きさは10階層で出てきた大トカゲと変わらない。

 10階層の大トカゲはこげ茶がかった黒色だったが、こいつはおしゃれとは程遠い黒地に禍々しい赤いまだら模様で覆われていた。

 見た目だけはヤヴァいのだが、はたしてどれほどのものか?


 俺がクロを構えて突っ込んでいったら、こいつはいきなり俺に向かって火を吹いた。

 簡単にかわせるゆるい火の弾で、火力も大したことはなさそうに見える。

 当たったところで俺自身には何ともないような火の弾だったが、俺の防刃ジャケットの表面はケブラーではないので燃える可能性もある。


 着ている服が燃えちゃうと着替えなどリュックには入れていないのでちょっと困る。

 焦げた服を着たままうちに帰って母さんを驚かさないよう、靴を脱いで自室に転移すれば着替えは何とでもなると言えばその通りなのだが、面倒だし何よりもったいない。


 そんなことを考えているあいだに、火吹きトカゲの頭が地面に転がっていた。

 所詮しょせんこの程度。

 とはいえ、俺以外の冒険者が盾もなしに直撃を喰らえば火傷は必至だ。

 火傷すれば動けるにしても戦力低下は免れない。

 これだけモンスターが濃い場所だ。火吹きトカゲをたおした後にも戦闘は控えているのできびしい戦いがつづき、さらに戦力が低下していく。

 負傷者が出た場合はすぐに撤退というのがセオリーのような気がする。

 何せセンターからここまで一般冒険者なら行動時間として丸1日かかるのだから。


 次に出てきたのは大蜘蛛。

 今までの大蜘蛛は上の階層の大トカゲ同様黒っぽかったけれど今度の大蜘蛛は毒々しい緑っぽい色をしていた。

 いかにも毒を持っていそうな大蜘蛛だ。

 そいつが6匹ほど固まっていた。

 俺に気づいて6匹が一斉にこっちを向いたが襲ってこない。


 さっきの火吹きトカゲと違って毒を吐きだすにしても射程が短いのか?


 こっちにはフィオナもいるし、核が壊れるかも知れないが面倒だったのでウィンドカッターを連射してやった。

 見た目は派手だったが、思った以上に防御力がなかったようで、緑大蜘蛛はみじん切りになって体液と一緒に地面にばらまかれたしまった。


 タマちゃんに処理してもらい、回収した核にはどの核にも傷がなかった。

 核はこの程度では傷つかないようだ。

 これからはこういったムシが増えていくだろうから甲虫以外のムシ系統はウィンドカッターでいいだろう。

 

 とにかく、モンスターが濃い。


 イケイケ、ドンドンだ!


 俺は5、6分ごとにモンスターの一群をたおしていった。

 その結果、22階層で1時間20分走り回っていただけで148個の核を手に入れていた。

 22階層、おいしすぎ。


 40分ちょっとかけてセンターまで戻り買い取り所の個室に入った。

 15階層と16階層の核、合計27個で総買い取り額は1003万円となった。

 22階層での148個の核で6364万円。

 やはり虹色の核はレインボースライムの核だったようで今回はすんなり3500万円の買い取り額となった。

 締めて、1003万円+6364万円+3500万円=1億867万円

 累計買い取り額は11億9815万6百円+1億867万円=13億682万600円となった。


 今日はレインボースライムの核というラッキーアイテムのおかげで1億円の大台に乗ってしまった。明日、明後日はじっくり腰を据えてモンスターを狩るぞ!


 あっ、その前に22階層のゲートキーパーどうするか、氷川と相談するんだった。


 その日うちに帰った俺は、フィオナにハチミツを食べさせたのは言うまでもない。



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