第99話 フィオナ3

[まえがき]

誤字報告等まことにありがとうございます。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 冬休みが明けた。

 木金の2日登校すれば土日の連休+月曜祝日の3連休だ。

 今回の祝日は氷川と約束していない。

 あいつは専業冒険者だからもう6階層もかなり潜っているだろうし、そろそろ7階層に挑むのかなー。


 3学期初日の今日は始業式とホームルーム。

 そして後ろに30分ずつずれて早くも普通の授業。

 教科によっては冬休み中に宿題が出ていたが、俺は宿題が出た当日、つまり2学期の間に済ませてしまっている。

 できる生徒の常識だ。


 冬休み中冒険者資格を取ると言っていた4人とも冒険者資格を取ったようだ。

 それで冬休み中4人で数回潜ったらしい。

 

 モンスターの気配が探れるわけでもないだろうからそれほどモンスターに遭遇できるわけでもないだろうに、モンスターにそれなりの回数遭遇して無難にたおし核を回収したそうだ。

 4人で割ればそれほどの儲けにはならなかったようだが、いい運動になった上に高校生の小遣いとすればそこそこの現金が手に入ったと喜んでいた。

 何よりである。


 教科によっては宿題に基づいて小テストもある。

 もちろん俺は小テストでことごとく満点を取っている。

 宿題出すときの教師の言葉つきからしてその可能性程度見抜けないようではSランク冒険者とは言えないのだよ。

 ってことはないが、だいたい予想は付く。



 新学期2日目。

 この日の体育の時間は持久走だった。

 みんな嫌そうな顔をしていたし、実際ぶー垂れる連中もいたが、俺にとっては何の負担もない。

 走る時間も50分の時間の中で準備体操などで時間を取られるので実質走るのは40分もない。

 1周200メートルのトラックをグルグル回るだけなので飽きてくるが、それも教育だ。

 初回の今日は全員整列してのジョギングだった。


 たらたらし過ぎでも勝手に前にも出られないので普通に走るより神経を使ってしまった。

 次回からはフリーで走っていいそうなのでそしたら頑張るぞ。



 こうして俺は3学期初日と2日目を華麗に乗り切った。



 そしてお待ちかねの土曜休日。

 いつも通り7時にうちを出て、7時50分には11階層に立っていた。


 まずはディテクター×2。

 数カ所で反応があった。


 先日のお風呂でフィオナが階段を見つける手段を持っていそうだと分かったので、まずはその確認だ。

「フィオナ、ここから下に続く階段のある方向が分かるか?」と、右肩に止まっているフィオナに聞いてみた。

 フィオナは一度コクリとうなずいて肩から飛びあがり、そのまま坑道の先の方に5メートルほど飛んでいき、そこでいったん宙に浮いたまま止まってくれた。


 これは自分について来いということだな。


 俺がフィオナに近づいて行くとフィオナは再び飛んで俺を誘った。


 俺が少し足を速めたら、フィオナも速く飛び、そのうち俺は普通に走っていた。

 20分ほどそうやって坑道の中を走り回っていたらいきなり坑道が広がり行き止まりの空洞となっていた。

 そしてそこには下り階段があった。


「フィオナ。スゴイじゃないか。ありがとう」

 フィオナは俺の頭の周りを数回回って右肩に止まった。


 長期戦を覚悟していたがフィオナのおかげで下り階段を見つけることができた。

 しかも、これから先は無駄なく階段を見つけられそうだ。

 この調子なら最前線まで明日中にたどり着けそうだ。


 しかし、ゲートキーパーを撃破して最前線を更新した場合、どうやってそれを証明するんだろ?

 勝手にどんどん進んでゲートキーパーをたおしてしまっていいものなのだろうか?

 意外と世の中単純じゃないよな。


 帰ったら氷川にでも相談してみるか。


 では、謹んで階段を下りてみよう。

 12階層。どんなだろう?

 俺の予想だと、今まで通りで若干坑道が広がり出てくるモンスターが少し強くなって少し数が増える。

 結局何の代り映えのない階層だろう。


 モンスターについてはこれからだが、12階層の見た目は予想通りだった。

 念のためディテクター×2を発動してモンスターの位置を確かめ、それからフィオナに先導してもらって13階層への階段があると思われる坑道に向かった。


 20分ほどフィオナの後について坑道の中を駆けたら階段が見つかった。

 こうなってくるとフィオナさまさまだ。

 フィオナが俺の肩に止まったところで13階層への階段を下りていった。


 13階層の見た目は今までの階層と一緒。

 14階層を目指そうと思ったのだが、どうもフィオナが疲れてしまったようで、階段を下りても俺の肩に止まったままだった。


 ハチミツを持ってきていないのが悔やまれる。

 階段下の空洞の壁に寄りかかるようにしてフィオナの回復を待っていたら10分ほどしてフィオナが飛び上がった。


 今回も20分ほど駆けていったら14階層への階段が見つかった。

 時計を見たらまだ9時20分だった。


 30分で1階層クリアできるとなると最前線の22階層まで今日中に着いてしまう。

 いいのか?


 フィオナを肩に乗せて階段を下っていき14階層に出た。

 ディテクター×2を発動して近くにモンスターがいないことを確認して階段の下で10分ほど休憩。


 そこで思いついたのだが、フィオナが飛ぶから疲れるので、坑道の分岐などの要所要所でフィオナが方向を示してくれればいいことに気づいた。


「フィオナできるか?」

 右肩に腰かけたフィオナにたずねたらうなずいた。


「それじゃあ、まずはどの坑道に入っていけばいいのか教えてくれ」

 階段下の空洞からは4本の坑道が伸びていたがフィオナはその中の1本の方に向かって飛んだ。

 俺がフィオナに追いついたところでフィオナは俺の肩に止まった。


 途中分岐が何個所かあったがその都度飛んでどっちに進めばいいのか教えてくれたので、今回も20分ほどで階段を見つけることができた。


 階段を駆け下り15階層に辿り着いたところで時計を見たら10時ちょうどだった。

 ディテクター×2を発動したところ、かなり近くにモンスターがいることが分かった。

 どうせなので、様子見を兼ねて戦ってみることにした。


 現れたのはオオカミのようだが、かなり大きい。数は12匹ほど。

 いきなり襲ってこず、こちらの出方をうかがっているように見える。

 知能が高いとみてよさそうだ。

 とは言え、そういったことが戦いに影響するのは互いに力が拮抗した場合だけだ。

 そう言うことなので俺は構わずクロを振りかぶりオオカミの群れの中に突っ込んでいった。

 

 確かに動きもいいし、牙も鋭そうだ。

 とは言え、オオカミは所詮オオカミなので、突っ込んでいってから10秒近く時間はかかったものの12匹のオオカミの首を難なく切り飛ばしてやった。


 タマちゃんが処理して持ってきてくれた核はそれなりに大きかったので高く売れそうだ。


 その位置から16階層に向かったところ、いったん階段のある空洞に戻ってそれから別の坑道をフィオナが示した。

 完全な寄り道だったようだ。


 そこから30分かけて階段のある空洞にたどり着いた。

 階段を駆け下り16階層。


 ディテクター×2を発動したところまたモンスターが近くにいたけれど、寄り道になっては嫌なので無視してフィオナについていった。


 今回は結構遠くて1時間近く坑道を駆けることになった。

 途中、サソリとコウモリに出くわし、全部で25個の核を手に入れた。


 サソリは大きくなったもののどうせペラペラ装甲だと思いメイスでぶったたいたらやっぱりペラペラ装甲で簡単に頭を潰すことができた。

 コウモリは超音波攻撃でもしてくるのかと思って少し警戒したのだが、うるさく飛び回るだけで片っ端からクロで叩き落してやった。

 もしかしたら超音波攻撃を食らっていたのかもしれないが、確かめようはない。


 17階層に下りたところで時間は11時45分。

 少し早いが階段下の脇の辺りで昼食をとることにした。

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