第98話 11階層
俺以外のSランク冒険者は全員どこかのチームに属しているそうだ。言い換えるとSランクのソロプレーヤーは俺だけらしい。
そして各ダンジョンの11階層以深の情報は、Sランク冒険者
そして民間の最深記録よりはるかに深い階層を攻略中のはずの自衛隊は占有している第12ダンジョンの情報を持っているが、こちらも各階層に関する情報は一切公開していない。
そういうことなので俺は自力で11階層を探索して12階層に下りていく階段を見つけなければならない。
当然あては全くないのでディテクター×2を頼りに見つけたモンスターを狩りながら未探査の部分を潰していくことにした。
最初に見つけたモンスターはオオカミだった。
数は12匹。
何匹いても同じなのだから波で押し寄せてもらいたいものだ。
11階層のモンスター核の値段は不明だが、少なくとも10万円はするはずなので、クロを引き抜いて慎重に首を落としていった。
11階層のオオカミと戦った感じ、10階層のオオカミと比べて少し動きが良くなったような気もしたが、微妙なところだった。
こうなると、核の値段も推して知るべし程度かも知れない。
次のモンスターは新顔の大サソリだった。
しっぽに毒がありそうなのだが、しっぽに刺されなければいいだけだ。
見た目はツルツルしてたので固そうに見えた表皮もペラペラで、クロを叩きつけると切るというより潰すという感じだった。
そうやって午前中いっぱい、約2時間ほどモンスターをたおしながら12階層への下り階段を探したものの見つからなかった。
いつものように坑道の壁を背にして座りこみ、タマちゃんとおむすびパックを食べながら、たまにご飯つぶをフィオナにやって昼食をとった。
昼食を食べ終え少し休んでから午後からもサーチアンドデストロイを繰り返しながら階段を探したが、見つからなかった。
この日手に入れたモンスターの核は360個。
総買い取り額は4716万円となり逆算したら単価は13万円くらいだった。
累計買い取り額は11億5099万600円+4716万円=11億9815万6百円となった。
Dランクになって10階層に行った時ほど劇的に儲けが増えたわけじゃないけど、そこそこといったところだろう。
翌日。
今日は冬休みの最終日。
午前7時にうちを出て、7時50分には11階層に到着した。
到着した位置は昨日最後に立っていた場所だったのだが、転移で現れたら目の前に大トカゲの集団がいた。
こんなのは初めての経験だったけど、幸先がいい。
目の前に現れた
俺は背中の鞘からクロを抜き放って、大トカゲの中に突っ込んでいった。
クロを振り回して大トカゲを退治していく。
……。
大トカゲは11匹いた。
こいつらの美徳は、味方がいくら簡単にたおされようと、ひるまず突っ込んでくることだ。
逃げることをしないので手間が省けてありがたい。まさに『美徳の不幸』だ。
大トカゲの核をタマちゃんから受け取りながら、ディテクター×2を発動し周囲を探ったところ、アタリが数個あった。
順番にたおしていきその都度ディテクター×2を発動させて無駄のないように次のターゲットを決めていく。
次のターゲットはムカデだった。
この系統は集まるとグロテスクさが半端ない。
だからと言って何がどうなるわけでもないので、クロを振りまわしてサクサク頭部を胴体から切り離していった。
ムシ系統は頭が胴体から離れてしまっても胴体はしばらく動くのでウザい。
頭がなくなったことをしばらく気付けないほど知能が低いのだろう。
切り飛ばすかわりに、頭を叩き潰すとすぐに動かなくなるので甲虫以外のムシ系統には俺のやわなメイスでもメイスを使った方がいいかもしれない。
その次のターゲットはクマだった。
10階層では1匹だったが、今回は2匹。
2匹の首を斬り飛ばして簡単に終了。
できれば10匹まとまって出てきて欲しかった。
……。
今日は昨日よりスタートも早かったこともあり午前中に271個の核を手に入れたが、依然として下り階段は見つかっていない。
昼の休憩を挟み午後から4時半までモンスターをたおしながら階段を探したが、空振りだった。
なるべく早いうちに最前線に立ちたかったのだが、そう簡単ではないようだ。
じっくり行くしかないってことだな。
午後から手に入れた核は210個。
午前とあわせて手に入れた核は481個。
総買い取り額は、6306万円
累計買い取り額は11億9815万6百円+6306万円=12億6121万600円となった。
最初父さんに5万円借りただけで高校1年生が12億も稼いでしまった。
これだけあれば一生働かずに食べていける。
大学に入って、どこかの会社に入ったとし、何を言われようが精神的勝利を収めることも可能だし、いつでも辞めることができる。
雇う方からすればあまりいい社員ではないだろうが、雇われる方からすればおそらく理想の社員像だ。
うちに帰って夕食前に風呂に入った俺は、湯舟の中で今日の階段探しの空振りのことを思い出していた。
なにか画期的な手がないだろうか?
ディテクターはモンスターとか冒険者といった生き物を探知するだけの魔術だ。
アレが何とか進化して階段が発見できるようになるか、ほかの便利魔法がないものか?
『階段を見つけるような便利な魔法ってないかなー』
と、ついぼやいてしまった。
その日は珍しく俺が風呂に入るのにフィオナがついてきたのだが、俺のつぶやきを聞いてそれまで俺の頭の上に乗っていたフィオナが飛び上がって俺の頭の周りを回り始めた。
「フィオナ何かあるのか?」
俺がフィオナに聞いたら、俺の目の前で宙に浮いたフィオナがコクリとうなずいた。
何か良い手があるのか。
しかし週末にならないと確かめようがない。
今週の土曜は学校は休みなのでそれまでの辛抱だ。
どういう形で階段までの道が分かるようになるのかは見当もつかないが、フィオナも4枚羽になってずいぶん役立ってくれるなー。
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