第73話 氷川涼子6。Dランク昇格
昼の休憩時間、氷川に赤ウサギのことを話した。
氷川を含め一般冒険者は赤ウサギに遭遇しないことを祈るしかないという身もふたもない結論に至った。
俺自身は今度赤ウサギに遭遇したら、赤ウサギが何回くらい転移を連続で使えるのか確かめるつもりだ。
前回は10数回転移していたが、もしかしたら限界に近かったかもしれないし、俺みたいに無制限かもしれない。
100回も転移されたら、諦めてタマちゃんに処分してもらおう。
昼食を食べ終わりしばらく休憩してから午後からの仕事に取り掛かった。
「さて、行くか」
ディテクターですぐにアタリがありそこに向かってふたりでかけていった。
午後の最初のターゲットは2匹のオオカミだった。
氷川が前に出て鋼棒を振るう。
2匹目がすぐそばまで迫っていた関係で最初のオオカミへの一撃は手負いにはできたものの致命傷には至らなかった。
氷川にすれば動きの悪くなった1匹目を追撃したいところだが2匹目が邪魔をする。
俺には少々連携が高かろうが差はないのだが、オオカミはその辺の連携がうまいのでそれなりに厄介なのだろう。
ここで1匹目への攻撃を囮にして2匹目を誘い出し、2匹目へ一撃必殺の攻撃を放てば楽勝なのだが。
一撃必殺。
氷川にはこれがまだないんだよなー。
だから、手こずる。
2分近くかかったが氷川は2匹のオオカミをたおし切った。
たおしたオオカミはタマちゃんが処理して、核を氷川に渡してやる。
「次行くぞ」
少し荒い息をしている氷川に声をかけ、次のターゲットに向けて駆けていく。
次のターゲットもオオカミ。
今回は3匹だったので、俺が前に出て、3匹の頭蓋を一瞬で破壊。
タマちゃんが処理して3個の核をゲット。
「次行くぞ」
……。
上がり予定の3時半少し前。
3匹の大トカゲを俺がたおしたところで今日のお仕事は終了とした。
午前中の成果は、俺が54個。氷川が24個。
午後からの成果は、俺が36個。氷川が14個。
合計で、俺が90個、氷川が38個の核を手に入れた。
「それじゃあ、帰ろう」
「うん」
氷川が俺の手を取ったところで4階層へ転移。
4階層の階段を上って3階層へ。
3階層の改札を出て、2階層へ。
2階層から階段を上って1階層の階段小屋に。
階段小屋の改札を通って渦まで急ぎ、渦を通ってダンジョンセンターに。
ダンジョンセンターの改札を抜けて、買い取り所に入った。
この日の買い取り総額は90個の核で181万3千円。
累計買い取りは8263万4500円+181万3千円=8444万7500円となった。
あの赤い核が追加でゼロ円だとしても、あと10回、2カ月も潜れば累計買い取り額は1億の大台に乗り俺はDランク冒険者だ!
ニヘラ笑いしながら買い取り所を出たら氷川が待っていた。
「そんなに買い取り額が良かったのか?
いつもの長谷川ならわたしがいない分もっと稼いでいるのではないのか?」
「買い取りの話と言えばそうなんだが、いまのは関係ない。
もう2カ月もすれば俺もDランクになれそうだってな」
「言いたくなければそれでいいが、長谷川、お前の累計買い取り額は一体いくらなんだ?」
「8千4百万」
「お前、冒険者になって実質2カ月なんだろ!?
いや、まあ長谷川だし、驚くだけ無駄か」
氷川の累計買い取り額には興味があったが、氷川がDランクになれば分かることだし聞かないでおいた。
武器預かり所で氷川との別れ際。
「次一緒に潜れるのはいつになる?」と、氷川に聞かれた。
「次の祝日でどうだ?」
その時、うまくすれば俺はDランク。
さしもの氷川も驚くだろう。いや、そうでもないか。
「分かった、確かスポーツの日だったな」
スマホを見たら10月13日の月曜日だった。
「先の話だし、何があるか分からないから、メールのアドレスを教えてくれないか?」
と氷川が言うので、お互いのメールアドレスを交換しそこで別れた。
週が明けた。
今週学校は金曜日までで、土曜日は休み。
日曜日は秋ヶ瀬ウォリアーズの3人との1階層。
学校では小テストなどよくあるのだが、習った範囲なので当然いつも満点だ。
もちろん宿題も出るが、帰宅部の俺はたいてい夕食前には済ませている。
これだけ学業のスペックが上がったのは、向うの世界での経験?によるところが大きい。
加えて、ダンジョンで走り回っているのも大きいのではなかろうか?
将来的には、日本の研究者はダンジョンに入って知的能力を上げることで、これまで以上の成果が上がるようになるかもしれない。知らんけど。
学校の方はそつなくこなしていき、木曜日の夜。
思い出して累計買い取り額をスマホで調べたところ、1億2444万7500円と表示されていた。
あの赤い核は5000万円だったようだ。
赤い大ウサギさまさまだ!
これで、免許を更新すれば俺は晴れてDランク冒険者だ!
そして土曜日。
支度を整えて時計を見たら時刻はまだ7時過ぎ。
免許センターが開くのは9時。
まだだいぶ時間がある。
俺は時間調整も兼ねてセンター近くの店で朝食をとることにした。
センターの近くで開いていたのはいつものハンバーガーショップとファミレスと牛丼屋。
俺はファミレスに入った。
ファミレスの中の客は一見して冒険者と分かる連中ばかり。
そういった連中で店は結構込んでいた。
俺は案内されたカウンター席に座った。リュックは足もとだ。
注文を取りに来たウェイトレスのおばさんにメニューを見ながら生玉子かゆで玉子を選べる和風朝食セットと追加でポテトフライを頼んだ。和風朝食セットの玉子は生玉子にした。
ポテトフライはタマちゃん用だ。
フィオナはかわいそうだがフィギュアの真似をしてもらうことになる。
待たされることなく朝食セットとポテトが出てきた。
朝食セットは、お代わり自由のご飯に、塩じゃけ、玉子焼き、ほうれん草のお浸し、生玉子、納豆、焼きのり、味噌汁、たくあんだった。
お茶と水とコーヒーと紅茶は自由。
俺は朝食セットを食べながら、足元に置いたリュックの中にポテトを突っ込んでやる。
朝食を食べながら腕時計を見ても針は思った以上に進んでいない。
ゆっくり食べたと思ったけれど食べ終わったのが7時30分。
あと1時間半もある。
ファミレスを出た俺は、Dランクの対象階層である、6階層から10階層までのマップと今日の昼食用の食料を買うためダンジョンセンターの売店に向かった。
売店に入って地図売り場に回り、6階層から10階層までの地図を店のカゴの中に入れていたら、周囲から変な目で見られた。
そもそもそういった目で見ている連中のストラップは
変な奴らだ。
そのあと、いつものようにおむすびセットと緑茶のペットボトルを定数かごに入れて精算した。
時刻はまだ7時50分。
長い。
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