第6話 ダンジョン


 体育のバスケでは思わぬハプニングもあったがまぐれということでいちおう終了し、その後の理科の授業も無難に終わった。


 そのころにはクラス全員の名まえを思い出していた。

 隣の席の女子の名まえは斉藤だった。

 三つ編みを左右に垂らして結構可愛い。


 理科の授業の後、担任の前川先生がやってきて進路調査のプリントを配っていった。


 今週の俺は掃除当番だったようで、掃除を終えた帰宅部の俺は荷物を持って家路についた。



 うちに帰った俺は、進路調査のプリントを机の上に置き、昨日できなかったダンジョンについての調査を始めた。

 調査と言ってもスマホで調べるだけだけだ。


 何なに?

 俺が生れたのと同じ15年前にいきなり日本にダンジョンへの入り口が出現した。それも64個。おそらく同時に。

 付け加えるとダンジョンは日本だけにしか現れなかった。

 日本の陸地面積が地球に占める割合はかなり小さいと思うが、とにかく発見されたダンジョンの入り口は全て日本の陸地に集中しているということだった。


 ダンジョンの入り口が発見された当初は内部で繋がっている可能性が指摘されていたが、今のところ内部で繋がっている個所は発見されていない。

 要するに64個の独立したダンジョンが存在しているという認識だ。

 ダンジョンは発見された順に第1ダンジョンから第64ダンジョンと名づけられた。

 俺の街の近く。具体的には俺のうちから自転車で30分ほどの場所に第3ダンジョン、通称サイタマダンジョンがある。


 サイタマダンジョンの正式名称は政府指定特殊空洞03。

 ちょっとカッコいい。


 ダンジョン出現時、それなりの事件事故が起こったあとで政府は全ダンジョンを自衛隊の手により封鎖し、自衛隊を使ってダンジョンの調査を開始した。


 調査を開始して短時間でダンジョンは資源の宝庫であることが分かった。


 それからすったもんだのあげく、特殊空洞ダンジョン管理庁なるものが生れ、さらにすったもんだのあげく特定の免許を持った者へ63**個所のダンジョンが解放された。

 その免許のことを特殊空洞指定労働者証と言うそうだが、一般的にはダンジョン免許とか冒険者証と呼ばれている。


 ちなみに、一般公開されてないダンジョンが1つだけある。

 そのダンジョンは長野県にある第12ダンジョンで、自衛隊専用となっており、そこでどういった活動が行なわれているのか一切の情報が秘匿されている。


 ダンジョンに潜ってなにがしかの資源を持ち帰ったりする者のことを正式には特殊空洞指定労働者というらしいが、冒険者証同様、冒険者という呼び名の方が定着しているという話だ。


 冒険者がダンジョンで手に入れたものはダンジョンの出口で全て政府の委託を受けた特殊法人ダンジョンセンターが買い取ることになっている。

 買い取り価格には20パーセントの所得税+復興開発税が源泉で差し引かれているため、ダンジョンでの収益については経費を控除する必要がないなら申告する必要はない。

 ということなのでほとんどの冒険者は申告していないそうだ。


 ダンジョン免許=冒険者証には5種類あり、種類によって潜れる階層が制限されている。

 Aランク免許:第1階層だけ(ライトブルー免許)

 Bランク免許:第3階層まで(ブルー免許)

 Cランク免許:第5階層まで(グリーン免許)

 Dランク免許:第10階層まで(シルバー免許)

 Sランク免許:階層制限なし。(ゴールド免許)


 現在確認されているダンジョンの最深部はコンビニで見た新聞に載っていた通り第3ダンジョン、通称サイタマダンジョンの21階層。

 もっとも、火器を自由に使える自衛隊が専有している第12ダンジョンは50階層辺りまで確認されているのではないかと言われているがもちろん真偽のほどは定かではない。



 Aランク免許は18歳以上の者が運動能力テストと2日に渡る10時間の講習を受けることで取得できる。

 運動能力テスト自体は簡単なもので、よほど体力がないか不器用でない限り合格すると言われている。


 現在免許の年齢制限を16歳以上にまで引き下げる方向で国会で審議されており、来春には引き下げられるらしい。

 ということは俺の誕生日は7月1日なので、高校に入って最初の夏休みには免許を取ることができるということだ。


 Bランク以降の免許はダンジョンから持ち帰ったものをダンジョンセンターが買い取った累計買い取り額で判断される。

 Bランクの場合は1千万円。Cランクで5千万円。Dランクで1億円。Sランクで10億円とされる買い取り額を上回ることで上のランクへ免許証の切り替えが許される。


 その他の情報として、全国7カ所に国立のダンジョン高校なるものがあり、その高校を卒業するとCランク免許が交付される。従って彼らの累計買い取り額は5000万円かさ上げされてからのスタートとなる。


 さらに自衛隊では、自衛隊独自のカリキュラムを修了した自衛隊員に対し除隊後Dランク免許が交付される。彼らはダンジョン高校卒業生と同じように累計買い取り額1億円からスタートすることになる。


 現在Sランク免許取得者は98人。

 彼らはダンジョン100傑と呼ばれているらしい。

 さらにSランク冒険者は年初の自分の累計買い取り額が今何位であるか分かるとも言われている。

 これはSランク冒険者たちにとってかなりのモチベーションになっているそうだ。


 もちろん各個人の累計買い取り額は公開されていないが、Sランク冒険者の平均累計買い取り額は毎年初ダンジョン管理庁から公表されており、去年のSランク冒険者の平均累計買い取り額は25億円だった。

 おそらくトップは70億円から80億円ではないかとちまたではうわさされている。

 あと、Sランク冒険者はダンジョンセンターに申請することにより人数制限はあるものの下位冒険者を11階層以下まで引率できる。

 逆に言えば、Sランク冒険者がチームにひとりいればどの階層にも行けるということだ。


 夢があるなー。


 さらに攻略チームというSランク冒険者のみで構成されたチームがある。

 現在ナンバーワンと目されているのはチーム『はやて』。

 2番手、3番手は『東京ボンバーズ』(注1)、『エクスマリーンズ』。

 ちなみに『エクスマリーンズ』はアメリカ海兵隊の退役軍人がメンバーと言われているが、実態はれっきとしたアメリカ軍の現役軍人、それも特殊部隊員だろうと言われている。



 階層間は階段で繋がっており、新たな階層ではゲートキーパーと呼ばれるモンスターが階段前で下の階層に下る階段を守っている。

 ゲートキーパーは非常に強力なモンスターだが一度撃破されるとそれ以降リスポーンせず、階段の使用は自由になる。

 要するに、攻略チームの仕事は階段を見つけてその前に居座るゲートキーパーを撃破することになる。


 web小説などでは、こういった大物をたおすと宝箱が現れるが、今のところそういった情報はないようだ。



 荷物の運搬にはクローラーキャリアと呼ばれるバッテリー式の履帯付き車両を有料で借りることができる。


 クローラーキャリアの形状は幅が90センチ、長さが3.5メートルと細長い。

 中央部で上下左右に折れる構造で階段の上り下りや急角度の方向転換も可能ということだ。

 幅が90センチしかない理由は、ダンジョンの出入り口の幅が2メートルしかなく、さらにダンジョン出入り口や階段は原則右側通行で、入り口の左側はダンジョンから出てくる者のために常時開けておく必要があるためだそうだ。

 なおクローラーキャリアは1トンまでの物資を運搬でき、時速5キロで120時間走行できる。

 バッテリーは着脱式なので予備バッテリーを積んでいけば可動時間はその分の伸びるがレンタル料は予備バッテリー分高くなる。


 クローラーキャリアの台数はそれほど多くないしレンタル料も高いためCランク以上の冒険者が主に利用している。



 あとダンジョン関連の規則として、

 武器**はダンジョン出入口のあるダンジョンセンター内の武器預かり所に預けなければならず持ち出しは禁止。

 ほかのダンジョンに移動する場合などは武器を持ち出す必要があるが、そういった場合は事前に申請する必要がある。

 ダンジョン出入口から武器預かり所までの指定区域を越えて武器を持ち出した場合は普通に銃刀法違反になる。

 もちろん防具はこの限りではない。


 火器、爆薬、火薬、劇薬類は使用禁止。罰則あり。


 ダンジョン内で発見したものは原則として持ちだし禁止。罰則なし。

 もちろん武器に類するものを拾得した場合は武器預かり所に預けるか売却する必要がある。

 なお、武器販売所で売られている武器にはIDが振られており、購入者(冒険者)の免許証と紐づけされている。


 ダンジョン内で見つかった武器類について、売却せず本人などが使用する場合、武器預かり所で刻印(通常レーザー刻印)されるかタグが取り付けられて使用者の免許証と紐づけされる。




注1:東京ボンバーズ

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