第6話 あなたを知りたくて

一之瀬さんとあのお店に行ってからしばらくして、私は一人でお店に来た。

「おう!嬢ちゃん。いらっしゃい!今日は一人で来たのか?」

明るく笑う店長さんは私が一人であることに気が付くと少し心配そうな顔をした。

「今日は……一之瀬さんのこと知りたくて。友達だって聞いたので」

「そうか!俺でよければ何でも話すぜ!」

私達が席に着くと染谷さんが飲み物を持ってきてくれた。

「あ…ありがとうございます」

「ごゆっくりどうぞ」

店長さんの分のコーヒーも置いてお店の奥へと入っていった。

「で?何が知りたいんだ?」

店長さんの問いになんて答えるかしばらく迷った。まず何を聞こう……?店長さんは何も言わず私を待ってくれた。

「えっと……一之瀬さんって昔からあんな感じなんですか?その…あんまり何も言ってくれないとか、何を考えてるか分からないけど優しくて…」

「そうだな…ノセは昔からあんな感じだな。よく分かんねぇとこばっかだけどめちゃくちゃいい奴だ。まぁつっても俺は高校時からの付き合いだからそれより前のことは知らねぇけど、あいつがめちゃくちゃあんたのこと大事に思ってることだけは確かだな!けどあいつ、よく分かんねぇけどなんか一人で抱え込む癖みてぇのがある気がすんだよな。だからもしそうなったらそばにいてやってくれ。あんたがいるのが一番うれしいだろうからな」

「そんな風には見えないですけど……」

「あいつはそういう振る舞いが上手いタイプなんだよ。まっ俺の勘だけどな」

そう言いながら豪快に笑う姿は初めて会った時と同じで、びっくりするけど少しだけ元気の出る笑顔だった。


それから少しして

「お姫さん!よかった…ここにいたんだね」

息を切らしてお店にやってきた一之瀬さんが私を見て安心していた。

すぐに息を整えて

「お姫さん、どうしてここに?」

「……一之瀬さんのことを聞きに…」

「俺のこと?」

「……少しでもあなたのこと知りたくて」

「…!」

恥ずかしくて目をそらしたけれど一之瀬さんの表情が気になってみてみればすごく驚いたような顔をしていた。

「一之瀬さん…?」

「うれしい…すごくうれしいよお姫さん。君が俺を知りたいと思ってくれてとっても……」

いつものさわやかな笑顔とは違う少しくゃっとした子供みたいな笑顔にドキッとする。そんな反応されるとは思ってなかった…。そういう顔はちょっと…ズルいと思う。一之瀬さん………。

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