第8話 欲張りな気持ち
「ねぇ、どうして私のことお姫さんって呼ぶの?」
「それはもちろん、君が俺にとってお姫さんだからだよ」
いつもの調子でにこやかに笑い、恥じらいもなくサラッと言われる。
「説明になってない…」
少しむくれて見せれば「ふふっ」と笑って
「物語に出てくるお姫様が君なんだ。ただそれだけ。俺にとって君はずっとお姫さんだから」
優しく私の頭を撫でた。
物語に出てくるお姫様と王子様。二人は困難を乗り越えて幸せになる。僕は誰でもない。ただ幸せになっているお姫様を見ているだけ。それでもいい。君が幸せならそれで。けれど、現実は見ているだけではダメなんだ。泣いている君を笑顔にするには見ているだけじゃダメなんだ。君のそばにいられるように生きるんだ。
僕は王子様じゃなくていい。君を笑顔にできるならなんだっていい。君のそばにいられるならどんな存在だっていい。
だって君は僕のお姫様だから。
初めて君を見た時からこの気持ちは変わらない。ずっとずっと。
なのにどうしてだろう。最近は……君の王子様になりたい。そんな気持ちが出てきてしまう。こんな欲張りは許されない。俺はただ…幸せな君を見ていたいだけ。幸せな君の隣に俺がいなくてもいい──そのはずなんだ……はず、だったんだ───。
いつか君が遠くへ行ってしまう……そんな気がして不安で苦しい。君が他の人といるのを見ると真っ黒な雲に覆われる。二人きりになるとその雲は晴れて全部忘れられる。君を笑顔にするだけじゃ……物足りない。君を幸せに──────────。
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