第449話 師弟でナンパ 前編
白いモヤの中。
いつものテーブルには見慣れない顔が増えていた。
女神ゲオステルことビジェンだ。
ただし、ちょっとだけ大人っぽい。
あくまで外見だけのようだけど。
「よく寝た」
寝ぼけ眼でつぶやくビジェンに、光る体の燕が、
「寝過ぎじゃない? そもそも、まだ寝ぼけてるでしょう」
そう尋ねると、
「誤差」
と答えるビジェン。
「たしかに、二億年も寝ていれば、誤差みたいなものですわね」
ストームも相槌を打つ。
「ま、複製品とはいえ、ウェルビネが一つ手に入ったのは良かったわね。コンフリクトの解消に、手持ちのコマだけじゃちょっと不安じゃない? ちゃんとマージの練習しときなさいよ。それで***、じゃなくてセプテンバーグの方はどうなのよ」
「私の方も順調ですよ。私の妹は優秀ですから」
「それより、最終的に世界をどう戻すか、ちゃんと決めたの、ご主人ちゃん」
「そうですよ、ご主人様が決めないことには」
そんな事言われても、何の話をしてるのかぐらい、先に説明してくれないと困るんだけど。
思わせぶりなことばかりいって肝心なところを説明しないとか、できの悪いサスペンスじゃねえんだぞ、ちきしょうめ。
などとぼやくうちに、また白いモヤに包まれていくのだった。
光の柱は、明け方まで光り続けたが、夜明けとともに消えていた。
スポックロンに調べてもらったが、例の竜の卵は消え、噴火の心配もなくなったようだ。
俺はと言うと、地上に戻るとまずはピビちゃんのもとにビジェンを連れていった。
涙の再開かと思いきや、
「バカビジェン! 今までどこ行ってたの!」
「ハーン、鼻」
「鼻ってなによ」
「ウーン、息するとこ」
「ムキーッ、人がどれだけ心配したと思ってるの!」
「ヌーン、知ってる、ピビ、すぐ泣く」
「泣くわよ! ビジェンのバカ!」
「オーン、ばか」
平和な会話にほっこりしたところで、領主の方には人をやって結果だけ報告し、俺はリエヒアを伴って宿に戻り、心ゆくまで思う存分主人としての権利を行使した。
性格の方がどれぐらいマッチョかを知る機会はまだないが、体つきは繊細な少女って感じで、実に良かった。
いやあ、ムキムキもいいんだけど、あまりギャップ狙いばかりされても困るしな。
その後、惰眠を貪ってから起き出すと、何やら宿の前が騒ぎになっていた。
聞けば朝のうちに号外がでていたそうで、北方大陸にて勇名を馳せる桃園の紳士、デール大陸においても大活躍、ボーゼヌを襲った噴火の脅威を女神より賜った神通力にて光の柱に封じ込め、街を救う。
などとデカデカと書かれていたそうだ。
で、俺が泊まっていると知った見物客が、宿の前にわんさと押しかけ大混乱と言うことだ。
またうっかり人助けをしてしまったようだなあ。
「あの騒ぎの中で、よくお眠りになれましたね」
キンザリスは少し呆れていたようだが、
「そうは言うけど、お前たちに明け方までさんざん絞られたせいだろう」
そう返すと、キンザリスよりもリエヒアの方が顔を赤くしていた。
これこれ、清楚系お姫様に求める反応ってのはこう言うのだよ。
でも、すぐにすれていくんだろうなあ。
窓から顔を出し、大衆の機嫌を取りつつ、ひと風呂浴びて、街をあとにする。
若旦那とその恋人は、友人であるリエヒアの去就に驚いていたが、両親らとともに駅まで見送りに来て紳士様万歳、姫様万歳などと泣きながら見送ってくれた。
ちょっと恥ずかしいな、ああいうのは。
リエヒアの父親である領主ランボアもまた見送りに来てくれた。
それだけでなく、特別車両の手配もしてくれていたので、最後に豪華な列車旅を堪能することができそうだ。
見送りの人々に手を振り、列車が出発する。
突然旅立つことになったリエヒアは、さすがに後ろ髪を惹かれる気持ちもあっただろう。
窓からいつまでも手を振っていた。
流浪の冒険者じゃないんだから、昨日の今日で貴族のお嬢様がホイホイ男について家を出るのかといわれれば、そういうことをやっちゃう性格なんだろうなと言うしかないが、多分そういうことなんだろう。
それでも、当然のことながら身支度も完全ではないので、都で用事を済ませてこの国を去る時に、もう一度訪れることになっている。
リエヒア付きの侍女なども連れていくことになるようだし。
ラッチルの侍女もそうだが、貴族は嫁入り道具的な人や物が結構なボリュームでついてくるので、そういうのを受け入れるための屋敷を作る必要があるかも、とフューエルは言っていた。
まあ、そのへんは勝手にいい感じにしてくれるんだろう。
さて、残る目的は、ペルンジャを無事に送り届けるだけだが、それは建前で、残り僅かな時間でどうやってペルンジャを落とすかが最大のポイントだ。
ここで別れてしまうと、遠距離すぎて次にいつ機会があるかわからんからな。
そのペルンジャは、リエヒアと挨拶を交わしたあと、互いの問題について意見を交換していた。
「……それで、お怒りのこともお有りでしょうが、せめてルージャに謝罪と釈明の機会だけでも、与えてはいただけぬでしょうか」
真摯な態度で、友人のために頭を下げるリエヒアに対してペルンジャは少し困った顔で、
「私は実のところ、ルージャとは幼少の頃に挨拶をかわしただけで、巫女であるレイジャ様とも国を出る際にお言葉をかけていただいた程度なのです。ですから、怒ろうにも、相手がどういう人物であるかもわからぬままに、やり場に困っているというのが、正直な気持ちです」
「ペルンジャ様は、旦那様の大切な友人だと伺っております。そして血の誓いを交わしたものは、性格の相性も似るものだと聞きます。であれば私と仲の良かったルージャは、きっと間接的にあなたとわかりあえる人物だと思うのです。こじつけがましいとお思いかもしれませんが……」
「いえ、リエヒア様。実際、あなたとは初めて会った気がいたしません。スパイツヤーデで得た友人たちにも似た気安さを感じております。ですから、あなたのご提案を、お受けしようと思います。いずれにせよ、これは私が解決せねばならない、問題なのですから」
いずれにせよ仲介はいるのだが、俺の身内がその役を果たせるのならそのほうが都合がいいだろう。
リエヒアは繊細な外見とは裏腹に真正面から体当りするタイプのようだが、控えめなペルンジャ相手ならちょうどいいのかな。
ペルンジャがその気になったことで、巫女であるレイジャと、その孫ルージャとの面談がセッティングされることになった。
主犯のリズジャは、すでに島流しなので、でてくることはない。
あっちは預言者とその子分たちがなんかいいようにやってくれるんだろう。
その後もリエヒアがペルンジャと仲良くおしゃべりしてるので、最近影の薄いエリソームと会話する。
本来、ただの役人としてベルンジャの護衛の任にあたっていただけのはずの彼女は、上司らの謀反のとばっちりで、半奴隷状態でペルンジャのサポートをしているわけだが、まあ気の毒な身の上ではある。
ちなみに、捕らえていた上司を含む三人は、昨日は温泉宿に留まらずに、そのまま都に護送されてしまっている。
連れ回すのも面倒だったしな。
それもあって、エリソームは多少肩の荷が下りたようにも見える。
「この旅では全然お役に立てておらず、自分の無能さを悲観していたのですが、昨夜のあの出来事を目の当たりにして考えが変わりました」
「というと」
「紳士様は、想像以上に人智を超越した力の持ち主であり、私ごときがお役に立てる御方ではなかったのだと」
「そんなことはないと思うが、まあ俺自身も自分の力と言うか、周りの力と言うか、そういうのに振り回されっぱなしだからね。君にもとばっちりが行ってると思うと、申し訳ないぐらいだよ」
「そのようにお情けをかけていただけるだけで、救われる思いです」
「旅ももうすぐ終わりだけど、もし恩を感じているというのなら、都についたら旨い店の一軒でも案内してくれると、嬉しいね」
「それぐらいでしたら、喜んで」
今一人、俺の新従者キンザリスが世話になっていた貴族の娘である鉄道マニアのキーム嬢は、昨夜温泉に浸かりすぎて、今日はバテているようだ。
「いやあ、ちょっと調子に乗って温泉をはしごしすぎましたね。その上昨夜のあれを見学してて寝不足ですし。それにしても、文字で読むのと目で見るのとは大違い、紳士様の起こす奇跡の凄さを目の当たりにして、驚くばかりですよ」
「俺も驚いてるよ。まあ、あんな立派な温泉街がおしゃかにならなくてよかった。リエヒアの故郷ともなれば、里帰りも兼ねて、ちょくちょく遊びに来られるだろうし」
「よいですねえ。本来北方との行き来など、生涯に一度できれば良い方で、行楽で海を渡るなどよほどの富豪でもなければなかなか。それよりも、この客車は良いですねえ。ガラーザの名工ホーバンスが手がけたデザインで、年代物ではありますが、現行のゴールドトレインより一つ前の型にも使用されたベースに……」
キームちゃんはうんちくを垂れ流す程度には元気なようだ。
今日の列車は十両編成の観光特急で機関車二両で引っ張っており軽快に走る。
後部二両が貸し切りの特別車両で、キームちゃんいわくいいやつらしい。
六人がけの個室がいくつもならんでいるんだけど、まあなんというかゴージャスなやつだ。
前の車両もすべて一等車で、金を持った観光客がほとんどだ。
列車旅は順調に進み、何事もなければ夜の九時頃には都につく。
まあ、一、二時間の遅刻は平常運転の範疇だと聞くが、時刻はちょうど昼飯時だ。
腹をすかせた食いしん坊の俺とカリスミュウル、さらにフルンやガーレイオンらと食堂車に向かう。
そこそこ混み合う中で、カリスミュウルと顔を突き合わせて昼間からワインを頼む。
「旅も終盤ともなると、少し調子が出てきたのではないか?」
「まあね、リエヒアとはうまくやれそうか?」
「やれねば困るのは貴様であろうが。とはいえ、あれは貴族とはいえ古代種でコア持ちであろう、さほど心配はいらぬと思うが」
「まあ、そうかもな」
「今朝、丁寧な挨拶を受けたが、私などに比べれば、よほどまっとうな貴族であろうよ。それで、あちらはどうなのだ?」
そう言って子どもたちのテーブルをあごで差す。
昨夜見つかったビジェンは、今はフルンたちと同年齢ぐらいの実体を持ち、一緒にご飯を食べている。
よくわからんけど、すでに俺の従者になっているらしい。
本人は、フーンとかホーンとかしか言わないので、よくわからん。
同じドラゴン族のホロアであるオーレ達ともなにか違う気がするし、種類が色々あるのかな?
そもそもドラゴン族ってのはすでに滅んだと思われていたと言うことしかわからないが、カラム77はビジェンを指して女神の生まれ変わりだと言っていたので、そのせいで違って見えるのかもしれない。
扱い的には多分、妖精と同じ枠だと思うので、目の届く範囲でほっとくのがベストかもなあ。
そのビジェンの育ての親とも言えるピビちゃんは、肉にかぶりつくビジェンの口元を拭ってやったり、水を注いでやったりとせっせと面倒を見ていて微笑ましい。
「ピビも連れて帰るのであろう?」
「そういう依頼だからな。子供らと仲良くしてるし、問題ないだろう。ガーレイオン同様、ゲストとしてしばらくは面倒を見るさ」
「そのガーレイオンはどうした?」
言われてみると、フルンたちのテーブルには居なかった。
姿を探すと、人の合間を縫って席を探している。
というか、席を探すふりをしてナンパしているようだ。
相席いいですか、などと声をかけている。
相手は年頃の若いプリモァ娘の二人連れで、顔が似ているから姉妹かな?
どうやら、うまくいったらしく、対面に腰を下ろした。
「ほう、頑張っておるではないか、貴様もあそこまでマメではないのではないか?」
「そうかもしれん。あのお姉さんの方、胸がでかくてアイツ好みだな」
「妹の方は同年代か、せっせと姉の方にアプローチしておるな」
気になるのでハイテク眼鏡を掛けて、盗み聞きしてみよう。
この眼鏡はつるの部分から骨伝導で音もなるのだ。
(……では試練の途中、お仲間をお助けするために海を渡って?)
(うん、師匠の従者の人が、えーとなんか困ってて、あとこっちでも困ってる人が居て)
(桃園の紳士様が慈悲深い方であると言う噂は我々の耳にも届いております。今日もボーゼヌで乗り換えの折に騒ぎを目にしましたが、聞けば桃園の紳士様のお力で火山を鎮めたとか)
(そう! 師匠はすごい、普通の人とはぜんぜん違う、他の紳士とも多分違って、なんかすごい!)
姉の方は無名の紳士という扱いづらい相手に社交的に接しているが、妹の方は訝しんでいるようだ。
(桃園の紳士様がすごいのはわかるけど、あなた、ほんとに弟子なの? 有名人の身内を語る人なんてどこにでもいるわよ)
(う、嘘じゃない、ほんと、ホントだから)
(別に疑うわけじゃないけど、あなたも女神様みたいな気配は感じるから、紳士ってのは本当なんだろうけど。そもそもあなた女の子じゃない。女の紳士なんてめったに見ないけど)
(師匠の奥さんも女紳士! お姫様だし、すごい。それに僕は男!)
(どう見ても……そういう男装とかって北じゃはやってるの?)
(これラティ、失礼でしょう)
(だってお姉様)
ガーレイオンも初対面の頃は身だしなみも整えてなかったので男の子っぽく見えなくもなかったんだけど、最近は従者のリィコォが細かく面倒を見ていて、髪もボブに切りそろえ、毎日キレイに櫛をあて、肌の手入れにクリームなんかも塗っているので、粗野な感じはほぼなくなっちゃってるんだよな。
だから、ちょっとボーイッシュな格好をしたかわいこちゃん以外の何者でもない外見になっている。
そんなガーレイオンが男だからとナンパしてきたら、訝しむのは当然だろう。
可愛い子供じゃなかったら、即通報されてる案件だよなあ。
そんな事を考えながら様子を見ていたら、列車が減速し始める。
車掌がやってきて、駅に到着する旨を告げる。
停車時間は三十分だとか。
一方のガーレイオンはまだ頑張っている。
(あ、相性だけでも見てください、おねがいします)
姉の方に食い下がるガーレイオンに、困った顔をしながらも、手を握ってくれたが、残念ながら光らなかったようだ。
(あなたも見て頂いたら、ラティ)
妹にも進めていたが、こちらはにべもなく断る。
俺ぐらいのモテ男になると、妹のほうが確率高そうじゃんと思ってしまうのだが、ガーレイオンはお姉さんの方のおっぱいに釘付けで、もちろん相手の方もよく分かっているようだ。
そんな様子を見ていたガーレイオンの従者リィコォは、お茶を飲む手をとめてため息をついていたが、俺と目があって苦笑する。
「ガーレイオンったら、いつもあんな調子で」
「あの子も頑張ってるんだよ。従者なら支えてあげないと」
「それはわかるんですけど、従者ってもっと使命とか野望とか、そういうのに共感して道を同じくする、みたいなものだと思ってたのに、あんなに鼻の下ばかり伸ばして」
「それは俺だってそうだから、非難はできないなあ」
「クリュウ様は、もっとしっかりなさってるじゃないですか」
「隣の芝は青く見えるものさ」
やがて列車が停まる。
コーロサーンと言う高原の駅で、高台から見る落差五百メートルの滝が名物らしい。
ホームに直結した吊橋を渡り、渓谷に設けられた展望台から滝を見下ろす。
「滝と言っても色々あるものだな、先に見た滝は、圧倒的と言うより他にない迫力であったが、こちらはこちらで谷底深く流れ落ちる一筋の柱が、まるで剣のように煌めきながら渓谷を切り裂いているではないか」
叙情的な感想を述べるカリスミュウルの背後では、まだガーレイオンがさっきの姉妹を口説いていた。
なかなか頑張るな。
もうちょっと手は出さずに様子を見守ろう。
そう思って滝を眺めていたら、従者になったばかりの温泉令嬢リエヒアが隣にすっとやってくる。
「どうです、コーロサーンの滝は?」
「いやあ、なかなか見事なもんだね。落差のスケール感がなんとも」
「都に出る際はいつもここに立ち寄り、季節ごとの景色の移ろいを眺めるのが好きだったのですが、異国に嫁げば、これも見納めかもしれません」
「そうだなあ。俺も故郷の景色を懐かしく思うこともあるが……」
「旦那さまは、聞けばこの世界ではないところからおいでだとか」
「驚くだろう。自分でもまだ、いまいち理解できてないんだけど」
「そのような遠い場所から私を迎えに来てくださったのだと思うと、胸の高まりを抑えられませんね」
「俺もそう思うよ」
「それで、ペルンジャ様のことは、どのようにいたせばよいのでしょう」
「どのように、とは?」
「旦那さまは、あの方を迎えにいらしたのでは?」
「そういうわけでは、ないんだけどな」
「では、そのおつもりはないと?」
「いや、つもりはあるんだけど」
「初めてお会いした私でもわかることですが、あの方は、旦那様がお声をかけるのを待っていらっしゃるのでは」
「いやあ、それがなあ」
「体が光らないからでしょうか」
「光ってりゃ、問答無用で連れ帰ってたかも知れないなあ」
「光らなければ、従者にはなさらぬと?」
「そんなことはないよ。古代種なら光らなかった従者も何人かいるし、アーシアル人なら元より光らんわけだが」
「では……」
リエヒアから目をそらして、滝を眺める。
俺にとっては観光地の一つでしかないが、リエヒアにとっては馴染んだ故郷の景色なんだろう。
ではペルンジャにとって、この国はどうなんだろうか。
「ペルンジャは、故郷であるこの国にあまりいい思い出がないようで、国に帰るときも、とても寂しそうだったんだよな。俺やお前が異国の地から故郷に帰るとなれば、きっと違う気持ちを抱くだろう」
「そうでしょうね」
「それでも戻ってきたということは、戻るだけの理由があるんだろう。それが貴族としての矜持か、他のなにかかはわからないが、その上で彼女は俺に助けを求めてきたんだ。かわいこちゃんに頼られれば助けるのが俺の矜持だが、やるからにはこの国を彼女の故郷として安らげる場所にするぐらいのことはしてやりたいんでね。連れて帰るかどうかは、その後のことだよ」
「それは、相当な大仕事ではないでしょうか」
「美人をナンパするのに比べれば、たいしたことではないと思うがなあ。みるといい、俺の可愛い弟子がどれほど苦労しているかを」
そう言ってガーレイオンに目をやると、まだ頑張っている。
「あの子は少し会話をしただけですが、かわいらしいお弟子さんですね」
「そうだろう。しかも志も高い」
「年上の豊満な女体に執着しているとか」
「師として導いてやらねばなあという使命感がふつふつと湧いてくるよ」
「それは確かに、大仕事ですね」
「そうだろう。だからまあ、あれだ。預言者の巫女などという半端なものに執着してる連中の目を覚まさせて、ペルンジャの憂いを取り除くなんてのは、それほどたいした仕事じゃないのさ」
「わかりました。では、私もそのご意思に沿うよう、手を尽くしましょう」
「なにかいいアイデアはあるかい?」
「アイデアなど不要です。ウルの教えにのっとり、この拳で障害をすべて排除するのみ、ですね」
そういってにっこり笑う。
あてにしてるよと答えると、観光客が動き始めた。
そろそろ戻る時間かな。
ガーレイオンにも声をかけてみよう。
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