第315話 朝の散歩

 俺たちが泊まるのは別荘の離れにあたるこじんまりとした屋敷で、長く使っていなかったそうだが、俺たちのためにわざわざ改装したらしい。

 リビングの壁もペンキを塗り直したばかりで、真新しい調度品も入っている。

 豪華すぎてエットやスイーダは居心地が悪いようで、可愛らしいワンピースを着て部屋の隅で立ち尽くしていた。


「どうした、ソファもふかふかだし、テーブルじゃお菓子が食べ放題だぞ」


 というとエットが泣きそうな顔で、


「でも、ここの絨毯、足が食い込む、すごい毛足がながいし、お菓子とかこぼしたらきっと拾えない、汚したら大変」

「ははは、ちゃんとお行儀よくする方法を、テナに教わっただろう」

「うん、でも、ここに来たら全部忘れた、あたま真っ白」

「しょうがないなあ、俺たちゃ生まれついての庶民なんだから、どうせ頑張ったって程々にしかできないぞ、諦めて怒られていこう」

「ご主人様、怒られ慣れてるけど、あたしはこまる」

「いや、俺だって怒られるとしんどいんだけどな、でもしょうがないじゃないか、だらしないんだもん」

「だもんじゃありませんよ!」


 そこにフューエルがやってきた。


「もう少し主人として貫禄のあることが言えないのですか」

「そこは俺に求められている要素じゃないだろう」

「まったく」


 呆れながらフューエルはエットとスィーダの手を引いて、自分と一緒にソファに座らせた。


「ほら、このお菓子はおばあさまの手作りなんですよ。いつもここに来ると、たっぷり用意しておいてくれるので、遊び疲れたあとはこれを食べて元気をつけるんです」


 と言って二人に手渡すと、恐る恐る食べ始めるが、やがてうまいうまいと元気になった。

 食い物でつるのがうまいな。

 俺も隣に腰掛けて一つつまむと、素朴な味でいける。

 すぐにテナが搾りたてのジュースを運んでくるあたり、実にブルジョアな趣味だなあ、と感じ入っていると、突然テラスに面したフランス窓が開いて、びしょ濡れのフルンと幼女トリオが飛び込んできた。


「あはは、濡れた、びしょびしょ」


 と笑うフルンは水を滴らせていて、高そうな絨毯もびしょびしょだ。

 雨の中、何して遊んでたんだろうな。

 もちろん四人共テナに叱られて、そのまま着替えに連れ出されていった。


「怒られてた」

「うん、テナ怖い」


 うなずきあうエットとスィーダ。

 まあ、あそこまでやれば怒られるだろう。


「そういえば、カリスミュウルはどうしたんだ?」


 フューエルに尋ねると、


「さっき本邸に一緒に挨拶に行ったら親戚連中に捕まりまして、夕食までは離してもらえないのでは?」

「要領の悪い奴め」

「明後日はパーティを開くのですが、エディは間に合わないでしょうねえ」

「だろうな」

「なるべく、どうにかするとは言ってましたけど」

「どうにかならんのが、騎士様の辛いところだよな」


 巨人だの何だのと訳のわからん事件一歩手前のトラブルがいろいろ有るようだが、早く毎日イチャイチャしたいなあ。

 これだと以前とほとんど変わらんじゃないか。

 エディだって、あの脂の乗り切った体を持て余してるに違いないのに、たぶん。


 夕食は本邸の方でフューエルの両親や一部の親戚、うちからはフューエルやカリスミュウルの他に、デュースやエンテル、クメトスらがでて、晩餐となる。

 並べてみると、うちにも身分の差があるんだよなあ、と思う。

 家ではクメトスとスィーダは師弟仲良くご飯を食べることが多いが、こうした場で席をともにすることはないわけだ。

 むしろ庶民とは口も聞かない貴族のほうが多いといえる。

 そんな中で、リベラルな人間だけが俺と相性がいいというのは偶然ではないんだろうな。


 晩餐のメンツは二十人ほどで、給仕の人間はその倍はいる。

 俺もだいぶ慣れたけど、貴族だなあ、と他人事のように感じながら食う飯はたいして味がわからんな。

 親戚といえば、以前元宰相の葬式とやらでお世話になったカシュマルというおっさんが俺の対面だった。

 こっちにも別荘を持っているそうだ。

 聞くとなかなかの変わり者らしいが、話があうので、後日彼の別荘に招待されることになった。

 どうにか食事を終えて戻ってくると、カリスミュウルはげっそりしていた。


「これでは休暇に来たのか疲れに来たのか、わからんではないか」

「さっさと切り上げんからだよ」

「馬鹿者、それで親戚筋が気を悪くしたらどうする、貴族というのはことさらメンツを重んじるのだ」

「そりゃあ、そうかもしれんが、俺なんざ、『紳士というものは世俗の作法に疎いもので、不調法をお詫びします』とか最初にかましておくから、挨拶だけしたらいつでも逃げられるぞ」

「ふん、私は紳士である前に貴族として育ったのだ、そこまで割り切れるか!」

「じゃあ、どうしても困ったときだけ、何かサインを出せよ、そしたら助けてやるよ」

「ほう、それは良いな、どんなサインだ?」

「うーん、じゃあ親指を鼻に当てて手のひらをひらひらと」

「……すごく馬鹿にされている気がするのだが?」

「そういうジェスチャーだからなあ、こっちの世界でも通じるんだな」

「貴様に相談したのが間違いであったわ」

「そうは言ったってお前、ガキじゃないんだからそこまで面倒見きれんよ」

「まあよい、では婚約者が一人にするとメソメソ泣くので目が離せませんの、などと言い訳するとしよう」

「そいつはおすすめだ、実に説得力がある」

「うむ、我ながら名案だ」


 俺たちが間の抜けた会話を繰り広げているよこで、幼女トリオは一生懸命お絵かきしていた。

 牛娘のピューパーは特にお絵かきが好きだからな。

 今はテーブルに置いた山積みの果物を描いていた。


「お、うまそうに描けてるじゃないか」

「うん、でも、光沢がたりない、あと構図も良くない」

「難しいことを言うなあ、いつの間にそんなに勉強したんだ?」

「カプルに特訓してもらってる、カプル先生」

「サウじゃないのか」

「サウの絵はむずかしい。最初は変な絵だと思ってたけど、カプルに絵を習ってちょっとわかった。サウの絵はむずかしい絵。私にはまだはやい」

「はやいか」

「うん、そう」


 話しながらも熱心に描き込んでいる。

 形の捉え方は微妙な気がするが、光の照り返しなどうまく描けている。

 それ以上のことは絵心のまったくない俺にはさっぱりわからんな。


 少し離れたところでは、年少組が暖炉の前に寝転がって読書に勤しんでいた。

 家からいっぱい本を持ってきたらしい。

 俺とカリスミュウルも一緒に寝転んで本を読む。


「ははは、実はこうして床に寝っ転がって本を読むのは小さい頃からの夢だったのだ」


 とカリスミュウル。


「いかんせん、そんなことをするとチアリアールにつねられるからな。流石に貴様のところに来てからは何も言わなくなったが」


 部屋の隅にミラーと並んで控えているチアリアールをみると、何も言わずに立っていた。

 でもあれは、なにか言いたそうな顔だなあ。

 透明で顔色はわからんけど。


 その後、フルンたちはおばあちゃんと一緒に寝ると言って、隣接するリースエルの屋敷に行き、幼女トリオもお絵かきをやめて眠ったようだ。

 雨はすでにやんでいたので、テラスにソファを出して夜景を楽しむ。

 ここいらはすこし高台になっていて、林の切れ目から海が見える。

 不快ではない程度に湿度もあり、虫が鳴いていて、なんだか日本の夏を思い出すな。


「良いところではないか、カープル島は初めてだが、やはり南の島は過ごしやすいな」


 とカリスミュウル。

 ここはゲートがなければ船で何日もかかるそうで、更に南のデール大陸との交易船は、補給のためにこの島を経由することが多いとか。

 コーヒー豆の輸入業者であるフリージャちゃんの乗る船は、すでにここを過ぎてアルサに近づいている。

 彼女の船が入港するときには、いったん帰って出迎える予定だ。


 しばしまったりして寝室に移る。

 二階には客室も含めた寝室が六つほど並ぶ。

 慣れない土地で疲れたのか、その日はさほどハッスルもせずに、早々に眠りに落ちてしまった。


 目を覚ますとなんだか明るい。

 もう朝かと思ったが、どうやら月が出ているようだ。

 雨はすっかり上がったらしい。

 隣ではフューエルがおとなしく寝息を立てているが、反対側のカリスミュウルは、上下逆さまになって、俺の股ぐらに顔を突っ込んだまま眠っていた。

 欲張りな奴め。

 起こさないようにベッドから出て、カーテンをちらりとめくって外を眺める。

 月明かりに照らされた草原の風景は幻想的だ。

 遠くに見える海にも、月の反射がキラキラと瞬いている。

 ふと視界のはしで何かが動いた。

 昼間通り抜けた森の方だ。

 じっと眺めていると、木々の合間にチラチラと動く白いものがある。

 遠くてよくわからないが、シーツを頭からかぶった人間のようにも見える。

 変質者かな?

 関わるとろくなことがなさそうな気がしてきたので、見なかったことにして、俺はベッドに潜り込んだ。




 翌朝。

 ベッドに飛び込んできたフルンたちに叩き起こされた。

 今朝はビーチの方まで散歩に行くのだ。

 テラスで朝食のベーコンエッグをおかわりし、ゆっくりとコーヒーを楽しんでから別荘を出た。


 雨上がりの朝の小道は文字通りキラキラと輝いている。

 芝生にはみっしりと水滴がついていて、少し道をそれると靴が濡れてしまうので慎重に歩いていたのだが、うっかり水たまりを踏んでしまったので、開き直って走り出した。

 俺が走ると喜んでフルンたちもついてくるから、調子に乗って俺も更に走る。

 おかげでビーチまでの三キロほどの道のりをあっという間に走り抜けてしまった。


「ぜえ、ぜえ、い、息を切らしてるんじゃ、散歩にならんな」


 あえぐ俺の手をとったエットが、


「ご主人様、ちゃんと朝ごはん食べた? ごはん食べないと体力ない」

「むしろ食べすぎてしんどい気もするな」

「大丈夫? やすむ?」

「いや、もう大丈夫だ。それよりも海が綺麗だな」


 眼の前に広がるビーチは、大きくはないが真っ白な砂浜で、夏場に海水浴でもすれば、最高に気持ちいいだろう。


「うん、すごい綺麗! およぐ?」

「いやあ、まだ寒いだろう」

「そうかな?」

「まあ、今日のところは散歩だけにしておこう」

「うん!」


 エットと手をつないで砂浜を歩く。

 砂を踏んできゅっきゅと音がするたびに、エットのしっぽが可愛く揺れる。

 少し先ではフルンとスィーダがくるくると走り回り、ちょっと遅れてオルエンとリプルが楽しそうに会話しながらついてくる。

 バカンスって感じだなあ、などとよくわからない感想をいだきながらビーチを抜けると、今度は小さな漁村に出た。

 浜辺には漁師小屋がいくつか並び、沖には船が出ている。

 この辺は何がとれるんだろうな。


 海岸から切れ込んだ小道に沿って進むと、街道に出た。

 集落は少し奥まったところのようで、ここには小さな茶店がある。

 今も馬車の御者が休憩していた。

 おそらくは別荘地に人を運んだ帰りなのだろう。

 走ってのどが渇いたので、なにか冷たいものでも頼もうと店に入ると、しわくちゃの婆さんが出てきた。


「おやいらっしゃい、別荘の人かね?」

「そう見えるかい?」

「見えないねえ、だけど、連れてるお嬢さんがたは、いいおべべを着ていらっしゃる。あんた、お供の書生さんかね?」

「似たようなもんでね、駆け出しの商人さ。親戚の招待でちょいとね」

「ならせいぜい、売り込むこったね、ここいらは立派な貴族様や大商人が大勢いらっしゃる、おかげで村も潤うってもんだよ」

「そりゃあ、あやかりたいね。ひとまず、この子達になにか冷たいものを、あとエールかワインはあるかい?」

「若いうちから朝酒はいかんよ、名物のサイダーがあるから、あんたもそれにしときなさい」

「じゃあ、そいつを」


 出されたサイダーは、ちょっと古びたグラスになみなみと注がれていて、キンキンに冷えている。

 炭酸がきゅっと効いて、刺激的だ。

 しかも飲んだらどんどんゲップが出てきて、大変なことに。

 キツすぎだろう。


「あはは、すごい、口から泡が出る!」


 などとフルンたちは盛り上がっているし、オルエンはゲップを抑えようとすごい顔で頑張っている。

 あとでカリスミュウルにも飲ませてやりたいところだな。

 ちなみに、俺が正体を隠してるっぽいときは、フルンたちも気を利かせてそれに合わせてくる。

 例えば安易にご主人様と呼んだりしないとかだ。

 別に隠すつもりはないんだけど、必要もないのに誤解を解くのも面倒だよな。

 たとえば海外で中国人かと聞かれれば素直に日本人だと答えるし、そこに他意はない。

 ところがこれが紳士となると、俺は神にも等しい特別な存在だって言ってるみたいでいかがなものかと思うわけだ。

 無論、相手がマウント取ろうとしてくる嫌な貴族とかなら先手を打って紳士アピールするのもやぶさかではないが、そもそもそういう相手とは関わらないに限る。

 ようするに、俺は未だに紳士であることを持て余しているんだろう。


 その後、店の婆さんに村の名所などを聞いたりして過ごしていると、日焼けした健康的な少女がやってきた。


「ばあちゃん、港に船が入るって。行ってくるけどなにか用事ある?」

「いいやあ、ないねえ、気をつけて行ってきな」

「うん」


 と元気よくうなずいてから、こちらに気がついて、いらっしゃいませ、と丁寧に挨拶する。

 小さなおしりを小気味よく揺らしながら走り去る日焼け少女を眺めながら、婆さんに尋ねる。


「お孫さんかい?」

「そうだよ、あれの両親は貨物の船乗りでね、島の沿岸を一周しながら荷物を運ぶ船なのさ。別荘地に卸す食料なんかも、あれで運んでくるんだよ」

「へえ、たしかにゲートからも遠いし、馬車じゃ無理があるよな。港はどのへんだい?」

「道沿いに歩けば三十分でつくよ」

「それぐらいなら昼飯前には戻れそうだ。どれ、ごちそうさん。こいつでお孫さんに、おやつでも」


 と少し多めに払うと、


「こりゃあ、どうも。途中峠でイノシシに気をつけるんだよ」


 そういって送り出してくれた。


 ダラダラと街道を進む。

 街道と言っても、綺麗にならされてはいるが土の道で都会のそれとは大違いだ。

 ここをまっすぐいくと、ゲートのある北テライサまでいくのだが、港はそれよりはずっと手前だ。

 途中で道が海の方に別れているので、そちらに進むとしっかりした港に出た。

 ちょうど大きな帆船が二隻停泊している。

 大きい方は南方に向かう交易船で、水などの補給に立ち寄ったらしい。

 もう一つが例の貨物船だ。

 今もどんどん積荷を降ろしている。

 人足に紛れて、昨日の天気予報の男が馬車に荷を積んでいた。

 ひと仕事終えたところで、俺に気が付き声をかけてくる。


「あんた、リースエルの大奥様のとこの馬丁さんでねえか、散歩かね?」


 書生の次は馬丁か、社会的にはどっちのほうが立場が上なんだろうな。


「まあね、そいつが昨日言ってた仕入れの品かい?」

「んだ、おたくにもぎょうさん持ってくだで、大奥様が飲みすぎねえように、見張ってるだよ」

「気をつけるよ」

「そいえば、お嬢様はもうきたっぺか?」

「お嬢様?」

「大奥様のお孫さんだべ、小せえ頃からようけ走り回ってただども、近頃はめっきりべっぴんになって、なんでもえれえ貴族様だかとご婚約なさったそうだべ、めでてえだべな」


 残念ながら、そのお嬢様の婚約相手は目の前の馬丁風な男だけどな。


「なにいってるの、エドおじちゃん」


 どこからともなく現れたさっきの日焼け少女が男に話しかける。


「お嬢様のご婚約相手は、かの桃園の紳士様よ、もう何度もこの国をお救いになった偉大な紳士様なんだって」

「はー、そりゃあすげえな、なんぞお祝いすんべ」

「そうしたいけど……、あなたさっきお店にいた人ね、レイルーミアス家の使用人さん?」


 と俺に話しかける。

 さっきは幼く見えたが、十代の半ばぐらいかな。

 仕草は子どもっぽいが、思ったよりしっかりしているようだ。


「まあね、サイダーはうまかったよ」

「ありがとう、村の数少ない名産なの。すごい炭酸でしょう」

「うん、びっくりした」

「リースエル様には、前に婆ちゃんの膝を治してもらったの。一時期は歩けないほどだったのに、最近はまたお店に出られるようになって、本当に感謝してるのよ」

「そりゃあなにより」

「ねえ、あなた、紳士様って見たことある? どんな人?」

「どんな人と言われても……、なんか、紳士っぽい……のかなあ?」

「えー、それじゃあわかんないよ」

「俺もよくわからんなあ、そもそも、紳士ってなんなんだろうな」

「そんなこと聞かれても、紳士様っていうぐらいだから、やっぱり紳士っぽいんじゃ?」

「でもほら、女神の盟友とか言うけど、別にそんなに神々しくもないし、なんかこう、ふつう……かなあ」

「うーん、そんなはずないんだけど。そういえば、お嬢様はいらっしゃってるの? 他の貴族様と違って、フューエルお嬢様は、私なんかにも声をかけてくださって」

「優しいお嬢様だからなあ」


 自分で言ってて吹き出しそうになるのをぐっとこらえる。


「そうよね、私もいつか都に行って学問を納めれば、あの半分ぐらいは、お上品になれるのかなあ」


 とうっとりした眼差しで語る少女の肩をパコーンと叩いて、雑貨屋の男は、


「あはは、まずその日焼けをどうにかしねえと、お上品はむりだべ」

「もう、おじさんだって真っ黒じゃない」

「そうだべ、これが労働者ってもんだべ、貴族様とは違うもんだ」

「そりゃあ、わかってるけどさあ」


 この男も、ちょっと愚鈍という噂だったが、動きがのっそりしてるだけで、頭はしゃっきりしてそうだな。

 その後、少女は船の両親と食事を摂ると出ていき、残った俺は雑貨屋の男の馬車に乗せてもらって帰路についた。

 別荘に帰ると、フューエルがテラスで酒を飲んでいた。

 まだ昼前なのになあ。


「おかえりなさい、ビーチにしてはずいぶん遅かったのですね」

「港まで船を見にな」

「あら、どうでした?」

「立派な港じゃないか。でかい船が二隻も停まってて」

「二隻? 島の貨物船は一隻しかなかったと思うのですが」

「片方は南方に行く貿易船らしいぞ」

「珍しいですね。それならもっと南のチレあたりに行くと思うのですが」

「ふーん、あと茶店の孫娘にもあったよ、なかなかチャーミングな娘だな」

「ミーシャオですね、確かご両親が船に乗っていたかと」

「そういってたな」

「茶店のメサオさんはどうでした? おばあさんの方ですが」

「そっちも元気そうだったよ。すごい炭酸を飲まされたな」

「ああ、あれは慣れていないときついでしょう」

「あとでカリスミュウルにも飲ませる予定なので、秘密にしといてくれ」

「またそういういたずらを。その折は私も同行しようかしら?」

「そいつはいいな」

「ところで、お昼はバーベキューというのをするのでしょう? モアノアたちが支度をしていましたよ」

「そうだった、俺もがんばらんと」


 昼は俺自ら腕をふるって、クールなバーベキューをキメる予定なのだった。

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