第304話 据え膳

 お偉いさんの会食というものは、緊張しつつも親睦を深めたり、重要な交渉をするものだと思うんだけど、今日のこの会食はひたすら緊張するだけで黙々と出された料理を食っていた。

 おかげで俺はきっちり料理を味わうことができている。

 実にうまい。

 例えば前菜に出たキノコのムースはびっくりするほどなめらかな触感に芳醇な香りが広がって、思わず皿まで舐めたくなるレベルだった。

 口直しに出されたワインも、微炭酸とスパイスの辛味できゅっと舌が締められたかと思うと、すっと喉の奥に抜ける爽やかさで次の料理に万全のコンディションで挑める塩梅だ。

 肉料理に至っては、とにかくすごくうまいんだけど、焼き方もソースもどうなってるのか想像がつかなかった。


「すごい肉だな、これ」


 思わず口にすると、隣りにいたフューエルも、


「ええ、レアのようで香ばしさも感じられて、見てください、この断面。まだらに火が通っていますよ。これがアクセントになっているのですね」

「どうやって焼くんだろうな。モアノアに真似できるかな?」

「魔法で焼くステーキがあるそうですが、これも……」


 とそこまで言ってから、場の雰囲気を思い出したのか、フューエルは一つ咳払いをしてから黙々と食べ始めた。

 仕方ないので、俺も食べよう。

 デザートを食べ終えても、話すことがないので料理人を呼んでみた。

 料理長は年配の男だったが、場の凍りつくような雰囲気に、何かしでかしたのではないかと緊張した様子だったので、


「シェフ、今日は見事な料理をありがとう。皆あまりの旨さに言葉をわすれて料理に集中してしまったよ」


 などと言いながら笑ってみせると、シェフは破顔して恐縮ですと頭を下げた。

 シェフが下がると、耐えきれなくなったのか、エディが大きくため息を付いてからこう言った。


「はー、まったく、ハニーはよく味わって食べられるわね」

「味合わないと、料理人に悪いだろう。ひいては農家や漁師にも申し訳が立たん」

「まったく屁理屈ばっかり。それで姉上、もとい閣下。そろそろ、本題に入ってはいかがです?」

「え、でも、お姉ちゃんは一緒にご飯を……」


 まだお姉ちゃんのままだった宰相閣下は、エディにじろりと睨まれると、咳払いをして宰相の顔になる。


「では、まずはこの度のご活躍により、この国の窮地が救われたことを、カリスミュウル殿下と、ク、ク、ククク」


 また顔が真っ赤になるお姉ちゃん。

 少なくとも、この神経の細さはエディとは似てないな。

 このウブさで宰相とかやってたら、実はすげーストレスたまってるんじゃ?


「クリュウ様に、感謝いたします」


 するとカリスミュウルがこう返す。


「うむ、我らは我らのなすべきことをしたまで。そもそも、迅速な陛下のご決断あったればこそ被害が抑えられたと言える。それに関して、閣下のご尽力があったとも聞き及んでおる」

「ありがとうございます、殿下」


 そう言ってから、潤んだ瞳でこっちを見る。

 なんか言わなきゃだめか。


「もともと私は私の欲するところがあって、あの場に居合わせたのです。結果的に民衆を救う一助となれたことは僥倖ではありますが、過分なお褒めを頂いては、恐縮するばかりです」

「そ、そ、そんな事はありません、あなた様のご活躍は、もはやこの国では知らぬものはおりませぬ。桃園の紳士の名は青の鉄人やオズの聖女とならぶ現代の偉人として語り継がれることでしょう」


 うっとりとした眼差しで熱っぽく語るお姉ちゃんに、ニッコリとうなずいて返事を返すと、ますます顔を赤くして俺を見つめ返す。

 照れるな。


「そ、それで、本日は今後の復興計画に関して、ご両人にお願い申し上げたく、内密の席を設けさせていただいたのです」


 回り道が多すぎたが、本題の方は予想通り、俺とカリスミュウルという救国の紳士の名を冠した復興財源を用意して新たな役所を作り、そこであれこれやるらしい。

 スラムだけではなく、壁の結界もなくなったし、試練の塔もある。

 復興と言っても、これらを上手く調整するとなると、一筋縄ではいかないだろう。

 これに関しては事前にエディやカリスミュウルとも相談しておいたので、先の試練の塔でみんなで稼いだ金の大半を提供することにした。

 提供と言っても、別にそれを被害者に直接ばらまくわけではない。

 これは種銭で、最終的には国の予算がごっぽり注ぎ込まれる。

 その金で例えば復興の土木工事をするわけだが、工事を請け負うのは土木ギルドだ。

 こういう場合、何故か不思議な事に遠くエツレヤアンの土木ギルドにたくさん発注が行ったりする。

 あそこのトップは、俺の従者の祖父が務めているが、多分偶然だろう。

 日本だと場合によっては手が後ろに回りそうな案件だが、ここではそうでもないらしい。


「ありがとうございます。今回は被害の中心がスラムということもあり、なかなか寄付の確保が難しかったのです。現時点で唯一私財を提供しても良いというのが……」

「キッツ家ですか」

「よくご存知ですね」

「個人的に、世話になっておりますので」


 領主の娘に惚れられているというのを世話になっていると表現するのは、かなり無理がある気もするけどな。


「ですが、紳士様も試練を終えた暁には国政に進出なさるのでしょう。資金はあれどもかの家が議席を得るのは、まだ時間がかかることでしょう。それにシャボア、コーデルの両家とも当家や他の伝統ある家系とつながりを深めつつあると聞き及んでおりますが」

「まさか、私はどこまで言っても、ただの田舎商人です。試練も大切な従者たちが仕えるにふさわしい主人としての誇りを示すために挑むまでのこと。旅を終えれば再び商人としてささやかな日々を送るつもりです」

「まあ、なんと奥ゆかしい。ですが権力というものがそれを許すでしょうか」


 お姉ちゃんはどもることは減ってきたが、身を乗り出してますます情熱的に話しかけてくる。

 エディがすっごくいらいらしてるのがわかるが、そういう彼女もたまには可愛いと言えよう。


「こう申しては逆説的ですが、世俗にとらわれぬからこそ、女神の盟友と呼ばれるのです。神が地上に不要な干渉をしないように、私もまたそうありたいと願っております」

「ああ、なんという美しいお覚悟なのでしょう。私も一国の宰相ではなく、一人の国民として貴方様のお力に立ちたいと、心より願うばかりです」

「ありがとうございます。あなたのような賢人のお力を得れば、私の進む道は常に明るく照らされることでしょう」


 俺とお姉ちゃんが中身のない会話を繰り広げる間、目の前にいたカリスミュウルは爪楊枝をテーブルの端にカリカリカリカリ叩きつけていた。

 スイカぐらい割りそうな勢いだが、残念ながら途中で楊枝が折れてしまった。

 代わりにカリスミュウルは給仕を呼んで酒を頼む。


「カリスミュウル、お前酒癖悪いんだから、あんまり飲むなよ」

「うるさい、今飲まずにいつ飲むというのだ」

「お前みたいにぐでんぐでんになるまで飲むと酒の味がわからんだろうが」

「普段はそんなに飲まぬ!」

「俺によだれ垂らした事忘れてるんじゃないだろうな」

「そんなことは知らぬ、なんせ前後不覚であったからな!」

「自慢するようなことか!」


 などとついいつものノリで話していると、お姉ちゃんが少し寂しそうな顔で、


「お二人はずいぶんと仲がよろしいのですね。やはり紳士同士、合い通じるものが……」


 するとエディがすねた顔で、


「そうよ、あの二人いっつも当てつけのように人の前でイチャイチャするんだから」

「まあ、エディちゃん、苦労してるのねえ。今はあなたの気持ちがよく分かるわ」

「なんだかこれからは姉上にも苦労させられそうな気がするわ」

「そんな冷たいことを言わないで、お姉ちゃん、こんなにあなたと会話できて、嬉しくて仕方ないのよ」

「紳士様のことは?」

「し、紳士様は、その、わ、わたしなんてもう年が」

「彼、千年生きた従者が二人もいるのよ。受肉した女神様に至っては、何万年生きていらっしゃるのだか」

「まあ、では女神様を従者になさっているという噂は、本当なのですか?」

「そうよ、信じがたいけど」

「ああ、やはり私などがお側に近づける存在ではないのですね」

「やめてよ、それじゃあ私もだめみたいじゃない」

「きっとそうよ、私達姉妹、所詮は金と権力にまみれた世俗の塵芥のようなものなのよ」

「やめて頂戴。まったく三十過ぎると女は愚痴しか言えなくなるって母上が言ってたけど、そのとおりね」

「ううぅ、どうせ私は三十路を過ぎた年増も年増、大年増よ!」


 仲のいい姉妹だなあ。

 後で聞いたが、この姉は十代の頃から政治の世界に進出し、エディも公務でしか会っていなかったので、厳格で真面目一徹、立派な姉とは憧れつつも、自分とは正反対だと思って避けていたらしい。

 幼い頃のことは、コアがどうこうとかで覚えていなかったとか。

 実際は、別の方向に正反対だったようだけど。

 大貴族ともなると、姉妹でもこういうすれ違いが起きるもんなんだなあ。

 まあエディが姉と仲良くなれたっぽいので良しとしとこう。

 仲のいい姉妹は美しいものだ。


 残念ながら、宰相閣下は用事があるそうで、そのあたりで会食はお開きとなった。

 時間はすべてを解決してくれるものだなあ、と思いつつ、帰路につく。

 エディの屋敷で普段着に着替えて一服していると、エディたちもやってきた。

 何も言わずに酒盛りを始める。


「はー、もう何だったのかしら、姉上があんな人だったなんて」


 と呻くエディに、


「いやあ、どう見ても君の姉って感じだったけどな」

「そうかしら? まあ、私もすごく身内ってきがしたけど」

「そうだろう」

「とにかく、私がマヌケだったわ。今回のことで決心したわよ」


 と手にしたグラスを掲げて、高々と宣言する。


「ハニーが試練に行く前に団長をやめてお嫁に行くわ! だから、そのつもりでいて頂戴」

「ずいぶん急だな。そういうのは男の方から言うものかと思ってたよ」

「ハニーの国じゃどうか知らないけど、ここじゃ違うのよ!」


 と言ってから、エディがカリスミュウルに、


「あなたはどうするのよ」

「なんの話だ」

「あなたを姉と呼ぶ気はないから、嫁に来るならあとにしなさいよ」

「なんでそういう話になる! 私は恋人でも何でも無いわ!」

「じゃあ、ほんとに国王になるつもりなの?」

「ベ、別にそうとは……」

「いいわよ? それならそれで、ハニーの代わりに権力を取るのなら、うちとしても、餞別代わりにあなたに入れるように働きかけるけど」

「だからどうしてそういう話になる」

「なるわよ、見てみなさいよ、今日の姉上を。あの人、絶対春で宰相をやめちゃうわ。うちじゃ最低三期九年、可能なら三十年は務まる逸材だと思ってたのよ、それが一期でやめちゃったら当然他所の家に宰相の座を渡したくないから誰かにお鉢が回ってくるじゃない。次は年寄り連中から引っ張ってこれたとしても、せいぜい一期程度、そうなると私に回ってくる可能性が高いのよ! そんなモノまっぴらごめんだから、今のうちに身を固めておくのよ! 他ならぬ紳士のパートナーなら世俗と縁を切っても面目が立つでしょう」

「それは貴様の都合だろうが」

「あなただっていい年なんだから、王になるつもりなら当然陛下がしかるべき婿を取らせるわよ、今好きな人がいるなら今くっついとかなきゃ次はないわよ!」

「わ、わ、わかっておる!」


 と言って顔を真赤にして俺を見る。

 みんなかわいいなあ。


「なったからには、もう少し団長として続けるつもりだったけど、いろいろあって十分懲りたわ。そもそも、今度の戦いでも女神様の加護があったからどうにかなったものの、あんなのがもう一度あったら、いつ死んでもおかしくないじゃない。私は未練を残して死ぬ気も、残される気もないわよ! なにか一つを選ぶなら、私はハニーを選ぶのよ!」


 エディのセリフにハッとした顔でカリスミュウルは、俺をじっと見つめる。


「わ、わたしは、わからんのだ。き、貴様のことばかり考えているのに、貴様のことをどう思ってるのか、まるでわからぬ」

「そういうのを恋っていうんだよ」

「そ、そうなのか……。一つ聞きたい」

「うん」

「貴様は……、私が必要か? 私がもし、今、貴様のところに行けば、それは多くの物、私が持っていると世間に思われている価値を捨てていくことになる、それでも、必要だと言ってくれるのか?」

「もちろん、必要だよ」

「なぜだ? それが……わからぬ、わからぬから、不安になる。必要とされたいのに……」

「そりゃあおまえ、好きだからだろう。好きになっちまったら、地位も名誉も捨て去って、添い遂げたいと思うもんだ。少なくとも俺はそう言うタイプでね、お前はどうだ?」

「わ、わ、わたしは……、私も、そうだ」


 と耳まで真っ赤にしてうつむく。


「じゃあ決まりね」


 決まったらしい。

 俺は受け身な性格でよかったなあ。

 一方のカリスミュウルは、まだワナワナと肩を震わせながら、こう言った。


「こ、告白されてしまった。宰相閣下もこのような気持ちであったのだろうか?」

「どうかしら、傍から見てると同レベルの反応よね」

「き、貴様はされておらんのか? こんなに緊張したのは初めてだぞ!」

「私がされた時もほんとはすっごくドキドキしてたんだけど、キスだけしてはぐらかしちゃったのよね」


 随分前の、祭りの最中のことか。

 あの時はまだフューエルともくっついてなかったので、だいぶモヤモヤしてたんだよな、じつは。


「よく耐えられたな」

「だからマヌケだったっていってるじゃない。先延ばししてもいいことなんてなんにもなかったわ」


 といって、ちらりとフューエルを見るが、こちらはすまし顔で黙っていた。

 強いな。


「とにかく……」


 とエディは一旦言葉を切ってから、こう続けた。


「私は来週ぐらいから黒頭に登るわ!」

「なんだそりゃ」

「前に話したでしょう。名前も失われた女神の神殿を探すのよ。幼い頃、私はコアが暴走気味で心が閉じていたの。それがある日女神様の声を聞いて、心が開いて、普通に暮らせるようになったのよ。黒頭の山頂にあるという女神様の神殿を探し、祀ることが私の騎士としての最大の誓いなの。だからそれさえやり遂げれば、晴れて引退できるというわけ」

「ふーん、まあ頑張ってくれ」

「ハニーにも手伝ってもらうわよ」

「まあ、山登りは趣味だしな」

「頼もしいわね。カリはこれからどうするの?」


 まだ顔が真っ赤なままのカリスミュウルは、


「やはり私は試練であろう、かくなる上は、ライバルではなく、パートナーとして、ともに試練に挑み、女神の寵愛を賜わろう。そしてその御前にて、永久の誓いを果たそうではないか」

「いいわね。じゃあ、そういうことだから、よろしくねフューエルお姉ちゃん!」

「うむ、よろしく頼む」


 話を振られたフューエルは、妻の貫禄なのか、二人の手を取って大きくうなずいていた。


「じゃあ、早速手付がわりに」


 と舌なめずりするエディ。

 え、今するの?


「ま、まて、エンディミュウム、私はまだ心の準備が」

「人生に準備する時間なんて無いのよ」


 そう言って俺は強引にエディにお姫様抱っこされると、そのまま奥のベッドルームまで連れ込まれてしまった。

 なにこのコンパでイケメンにお持ち帰りされる田舎娘みたいな展開。

 もうちょっとロマンチックに行かないものかと思ったが、腐れ縁が一線を越えるときというのは、こう言うものなのだろうか。

 などと考えつつ、長らく続いた恋人生活とライバル生活を、俺は一度に終わらせたのだった。




 いやあ、すごかった。

 ナイスボディだとは思ってたけど、三十近くまで内に溜め込んだ女の情熱が一気に溢れ出したかのようなエディと、純情な少女らしさと大人のしたたかさを持つカリスミュウルのダブルバインド攻撃で、歴戦の俺の息子もタジタジである。

 俺がそれなりに場数を踏んでるのと、二人が初体験だったからどうにかしのげたけど、将来的にはどうなってしまうのかと考えると怖くなるな、いやあ、怖い怖い。

 そもそも、なんか途中からエディに従者同然に使えてきたポーンと、カリスミュウルの従者である透明人形のチアリアールも混じってたし、フューエルとクメトスもいたので実にとんでもない状況だった。

 ちなみにローンとアンブラールはこの場にいなかったのと、そもそもあの二人は友人かつ部下として仕えていたので、プライベートまでナニするような関係ではないのだ、たぶん。

 余韻に浸りつつ、もうちょっとロイヤル級の肌身を堪能しようと手を伸ばすと、冷たいものにあたる。

 ゴツゴツしてザラザラしてる。

 はてなんだと目を覚ますと、薄暗い石造りの部屋に、一人で寝っ転がっていた。


「またかよ!」


 どうもこちらに来ると、すべてを思い出す。

 こうして別の世界に勝手に行き来するのが放浪者である俺の能力らしい。

 そしてそれは必要になったら必要な場所に勝手に行くものだという。

 ペレラールという星にいってからしばらくの間は、たぶん他所に行く必要がなかったんだろう。

 そして今、別の宇宙にいるはずのストームたちを探しに行く必要が生じたので、その能力が目覚めた、ということか。


 改めて周りをみわたす。

 どうやら古い石造りの建物で、神殿か何かのような雰囲気だ。

 砂漠の神殿の続きかもしれない。

 どこからも灯りがささず薄暗いが、目が暗所に慣れているのか、よく見える。


「へっくしょい!」


 思わずくしゃみが出た。

 結構寒い。

 奥の方から冷気が流れている。


「おーい、だれかいないか?」


 呼んでみるが返事はない。


「だれでもいいぞー、フルーン、ウクレー、あとだれだっけ、そうだ、パルクール、パルクールちゃーん、へっくしょん」


 もう一度くしゃみをした瞬間、鼻から光るなにかがニューっとでてきた。


「呼んだ?」

「おわ、お前どこからでてくるんだよ!」

「所構わず出るのが妖精に決まってるでしょ、このハナタレチン」

「まあいいや、パルクール、なんか寒いから、着るものはないか?」

「人を道具箱みたいに使われても困るんですけどー、だいたい服なんかいらないくせにー」


 と言いつつ、くるくる回ってふわっと手品のように、ダウンジャケットを出してくれた。


「おう、サンキュー」


 シャツの上から羽織ると軽いのに温かい。


「よし、さてどうしよう」

「それは私のセリフ! ご主人様は呼び出して何をさせたいのよ」

「それがわからんから聞いてるんじゃないか」

「なんてスカポンタンなご主人様……、まあいいや、アンカーがあるから、これをたどればいいんじゃない?」

「アンカー?」

「アンカーはアンカー、ほら、いっぱいある」


 パルクールがそういうと、目の前にポツポツと光る点列が連なっていた。


「紅のアンカーだから、これでいいんじゃない? ほら、行こう」


 促されるままに、光点をたどる。

 石造りの壁は、徐々に天然の岩石に変わり、やがて氷の壁へと変化していった。


「寒いな」

「寒いと思うから寒い、暑いと思えば暑い、ご主人様そんな事も知らないの?」

「じゃあ暑い暑い、暑いぞー」

「寒いのに暑いとか言ってるとばかみたい」

「世知辛いなあ、まったく、俺にどうしろというのだ」

「あ、なんか広いところにでたよ」


 狭い通路が急に開けたかと思うと、巨大な氷の空洞が広がっている。

 無限に続く氷壁には、何かの影が埋もれていた。


「なんかいっぱい寝てるね」

「そうだな、なんか見覚えのあるようなのがいっぱいだな」


 どうもこれはあれだ、判子ちゃんが貸してくれた闘神の本体とかいう大きなロボットに似たものが大量に氷漬けになっている。


「いっぱいあるー、一個借りてみる?」

「やめとけ、寝てるんだろう」

「そうだけどー」

「しかし、なんでこんなところにいっぱいあるんだ?」

「しらなーい」


 くるくると宙を舞うパルクールを追っていると、別の何かが目にとまる。

 光の塊だ。

 人型に輝く姿は見覚えがある。


「マスター、もうここまでおいでになったのですね」

「紅か」


 声の主は紅だった。

 ただし、人形の姿ではなく、先日のストームのように光り輝く姿だ。


「姉妹たちの墓所にようこそ。ここは我らアジャールの闘神が使命を終えて眠りにつく静謐の匣」

「なんで氷漬けなんだ?」

「それはマスターのイメージの問題です。何らかの宗教的概念と結びついているのでしょう。あるいは、ネールの妹たちの墓所からの連想かもしれません。実際にはインフォミナルプレーンで彼女たちの魂は圧縮され、眠りについています。このダミー空間を生成する時に、そうしたイメージに引きずられたのでしょう」

「ふーん、よくわからんがお前の姉妹なら、とりあえず拝んでおくか」


 手を合わせてしばし拝む。


「ウクレとフルンに任せておいたのですが、うまく行かなかったようですね」

「そうらしいな、ウクレは下手だと言ってたし」

「ふたりとも生身でライズしたにしては、うまくやっているのですが」

「なんせでかいしな、特に乳が」

「ええ、羨ましい限りです。私にもあれぐらい立派な体を与えてくださればよかったのに」

「そりゃあすまん、しかし、あの人形の体は、バランスという点では申し分ないぞ」

「それを聞いて安心しました」


 紅は光る体で、わずかに微笑む。


「では参りましょうか、二人が探しています」


 紅に手をひかれると俺はふわりと浮き上がり、宙へと登っていく。


「マスターは多くを得ましたが、いまだその匣は満たされておりません。あなたの道のりは、まだ遠いのですから」


 やがて景色は真っ白に輝き、何も見えなくなった。




 目覚めると、目の前にすごいおっぱいがたゆたっていた。

 エディだ。

 うぅんと彼女が寝返りをうつと、巨大な塊が鼻先をかすめる。

 心の中で拝んでから振り返ると、小ぶりの可愛らしいおっぱいが天に向かってプルプルと揺れていた。

 カリスミュウルだ。

 こちらも幸せそうな顔でむにゃむにゃと眠っている。

 両方合わせると、いいバランスだな。


 ムクリと起き上がり、寝室を出ると、透明人形のチアリアールがいた。

 薄いキャミソールをまとっただけで、透明感が際立っている。

 こちらもさっき堪能したばかりだが、大事なところも透明なので、いろいろすごかった。

 くっついた部分が中でこんなことに、というのも衝撃的だったし、ウブなカリスミュウルだけでなく、フューエルあたりも感心してまじまじと見つめるものだから、つい張り切りすぎて大変だった。


「おはようございます、旦那様」


 彼女は俺のことを旦那様と呼ぶことにしたようだ。


「おはよう、今何時だい?」

「まだ夕方の五時ですよ」

「早いな、ずいぶん眠った気がしたけど」

「先ほど、エーメス殿が迎えに来て、フューエル様が宿営地に戻られました。皆をこちらに呼ぶか、あちらに戻られるか、決めておいてくれ、とのことでした」

「まあ、どっちでもいいけど。それよりのどが渇いたな」

「お水でよろしいですか?」


 との問にうなずくと、彼女はキャミを脱ぎ捨て素っ裸になり、手元のグラスから水を飲む。

 水は透明な喉元を通り、コアの光る胸のあたりで横によると、乳房のあたりにポコポコと流れ込んでいった。


「どうぞ」


 と言われるままに、吸い付いて水を飲む。

 なるほど、まさにこのために彼女は透明なのだなあ、と納得する素晴らしい趣向だった。


「ふう、うまかった」

「乳房を使ったのは、カリスミュウルが乳飲み子の頃以来ですが、メンテしておいたかいがありました」

「毎日でもお願いしたいね」

「お望みのままに。ですが、旦那様は相手をすべき娘が大勢いらっしゃるでしょう」

「そこだけが悩みのタネなんだ、贅沢な悩みだとおもうよ」


 滴るしずくをぺろりと舐めながらそういうと、奥から赤竜副長のポーンがやってきた。

 こちらはスポーツブラのような肌着を一枚身につけているだけで、あとは素っ裸だ。

 浅黒い肌から控えめにはえる毛が、大事なところを隠していて、色っぽい。

 手にした書類をテーブルに置くと、俺の隣に腰掛ける。


「もう起きたのですか、エディは?」

「まだ寝てるよ」

「あれほど励まれたわりに、まだ物足りませんでしたか?」


 と俺の大事な部分をちらりと見る。


「男は老いて枯れるまでは、年中欲求不満なのさ」

「では、私も退屈しなくて済みそうですね」


 ポーンの浅黒い肌は見かけ以上にきめが細かく、手に触れると吸い付くようだ。

 さっき堪能したばかりだが、そろそろ一ラウンド分ぐらいはチャージできたよなと思ったところで手が止まる。


「どうしたのです? エディがあなたのものになった時点で、私もあなたのもの。ためらう理由など無いでしょう?」


 と怪しく笑うポーンは、もちろん気がついているのだろう。

 入り口で大口を開けて固まっているローンに。


「な、な、何をしているのです!」

「あら、ローン。第二機動部隊の打ち合わせは済んだのですか?」

「ポーン! あなた、エディは!?」

「奥で休んでいますよ、カリスミュウル殿下と一緒に」

「一緒に! 私が国中を駆けずり回ってる間に、一体何を!」

「あら、あなたにも知らないことが、まだあるのですね。もちろん、愛を語り合っているのですよ」


 そう言ってポーンはオーバーに俺の耳にかじりつく。

 なんとなく知ってたけど、この二人、別に仲良くはないよな。

 エディへの忠誠心が同じぐらいってだけで。


「そうですか! ではどうぞごゆっくり!」


 ローンは手にした書類をテーブルに叩きつけると出ていってしまった。

 短気だなあ。

 入れ違いに体のあちこちを揺らしながら、エディが寝ぼけ眼で寝室から出てきた。

 乳や尻はでかいが、腹筋は割れてるし、二の腕やふくらはぎは筋肉で盛り上がっている。

 こういう体型は男によっては好き嫌いが分かれるだろうな。

 俺はもちろん大好物だ。


「なあに、誰か来てたの?」


 と寝ぼけるエディにポーンが、


「ローンが報告に来ておりました」

「あらそう、それで?」

「この世の終わりのような顔をして出ていきました」

「どうせ意地悪したんでしょう。あなた達、本当に仲が悪いわね」

「ええ、彼女のおかげで、無駄に他人に腹を立てる必要がありませんので」

「いい心がけだこと」


 そう言ってテーブルに散らかった書類に目を通してから、俺の隣に座る。

 入れ違いに立ち上がったポーンは、部屋から出ていってしまった。


「ほんとマヌケね、もっと早くこうしておくべきだったわ」


 そう言って腕を絡めてでかい胸を押し付けるエディ。


「やってみなくちゃわからんことは多いもんだよ」

「あら、じゃああなたはこれから何をしたいの?」

「めんどくさい事件の起きない世界で、ひっそりと暮らすのをやってみたいね」

「ハニーって道を歩けば事件にあたる気がするわよね」

「モテるのは女の子からだけにしたいんだけどな」

「いいわよ、これからは私がずっと守ってあげるから」

「でも仕事は忙しいんだろう」

「もうしばらくの辛抱よ」

「アテにしてるよ」


 イチャイチャしていると、カリスミュウルも寝室から出てきた。

 こちらも素っ裸だ。

 出てきた直後はまだ寝ぼけていたが、俺と目が合うと、急に顔を真っ赤にして前を隠す。

 わかりやすいやつだ。


「お、お主らだけか。フューエル殿はどうしておる」

「一旦、キャンプの方に戻ったよ」

「うむ、そうか」


 頷いて、ひょこひょことエディの反対側の隣に腰掛ける。

 カリスミュウルがチアリアールに水を頼むと、今度は普通にグラスを手渡した。

 ダイレクトに飲んでるところを見たかったのに。

 と思ったが、カリスミュウルにはまだ早かろう。

 チアリアールの手渡したガウンに袖を通しながら、カリスミュウルはこう言った。


「それで、明日都を発つのか?」

「まあそのつもりだけど、そっちはどうする?」

「無論、つ、ついていくが、その前にだな、寄りたいところがあるのだが」

「ネアル神殿か?」

「なぜわかる!」

「恋人ってのは、そういうもんなんだよ」

「ば、ばかめ……、だが、そうだ。こうなったからには、報告せねば……ならんからな」

「いいぜ、その前に、おふくろさんにもご挨拶していくか」

「そ、それは……その、心の準備が」

「今夜の内にしときゃいいだろ」

「う、うむ」


 一方のエディは、


「うちの身内はあの姉以外、みんな領地に引っ込んでるから、顔合わせは別の機会でいいわよ。まずはアルサに戻って、それからフューエルの別荘でしばらくバカンスと行きましょう。前に聞いてたけど、オズの聖女様もご一緒なさるそうよ」

「む、そういえば聖女はレイルーミアス現当主のご母堂であったな」

「それで、ハニーの予定は?」

「うーん、なにがあったっけ」


 首をひねって思い浮かべるが、いっぱいあってよくわからん。

 控えていたミラーを呼び寄せる。


「現在の予定を順不同で申し上げますと、まず話題に上がっておりました別荘での休暇、ストーム再召喚の検証、行方不明の人形師の探索、シルビー様、及びメシャルナ様、ララン様両名への援助、ノード18経由でアップルスターの探索、商店街拡張事業、魔界貿易路の開拓、ネトック氏からの捜索依頼、マザーの譲渡検討、行方不明のシャトル乗員の幼女探索などがあります」

「誰がするんだよ、それ」

「もちろん、オーナーの指示の下、我々が一致団結して解決に当たります。お役に立ちます」


 それを聞いたエディが柔らかいところをグリグリ押し付けながら、


「ハニーも結構忙しそうね」

「らしいな、知らなかったけど」

「とりあえずシルビーはどうするの?」

「塔の儲けの残りから、どっかの銀行に口座と後見人を用意して、彼女が一人前になるまできちんと金が回るようにしてやろうと思ってな」

「それがいいわね。ところでアップルスターの探索っていうのは? 空のあれ?」

「うん、宇宙船っていう、空の向こうまで行ける舟があってな、そいつで探検に行けって、壁の遺跡が言うもんだから」

「前から思ってたけど、ハニーって何者なの? 絶対、ただの紳士様ってだけじゃないでしょう」


 というとカリスミュウルが、


「それが放浪者ということなのであろう」

「放浪者って?」

「うむ、私も気になってわが家の歴史なども調べてみたが、どうやら紳士の家系というものは元をたどると放浪者と呼ばれる、神話につながる古き血の一族に至るようだ」

「どういうこと?」

「詳しくはわからぬが、星の彼方より来たりて、この地の土となった物の末裔という」

「女神様みたいに天の彼方から来たってこと?」

「まあ、そうだ。つまり貴様は、紳士の開祖のようなものであろう。どうなのだ、クリュウよ」


 俺の知ってることはそんなに無いんだけど、別の星から来たことや、この世界の歴史などをかいつまんで話してやる。


「つまり、ハニーはまったく別の星からやってきて、女神様もそうってこと?」

「厳密には違うけど似たようなもんだ、もっともお前たちのご先祖だって、たぶんそうだぞ」


 エディにそう答えると、カリスミュウルもうなずく。


「貴様とあの壁の中で聞いたことは、そういうことなのか。プリモァこそが本来のこの星の民で、我らもまた異邦人であると」

「そうなるな」


 二人共難しい顔をしてうんうんうなっているが、さっきまでスケベなことをしていたので、そばでそんな顔をされるとかえってムラムラしてくるよなあ。


「ところで、行方不明の幼女というのは、あのシャトルとやらで見つけた娘のことか? あれは内なる館に入れたのではないのか?」

「そうなんだけど、どっかいっちまって」

「あのような狭い場所で、どうすれば見失うのだ」

「いや、お前は狭いのか? 俺は広すぎてわけがわからんのだが」

「なんだと?」


 というので、三人でカリスミュウルの内なる館に入ってみると、たしかに狭かった。

 直径二十メートルほどの球形で灰色のドームに、小さな屋敷が一軒、建っていた。

 こいつ、こんなところで十年も引きこもってたのか。


「なんだ、何か言いたいことがあるのか?」

「いやあ、可愛いお家だと思ってな。自分で作ったのか?」

「まさか、はじめからここにあった。代々受け継がれるとのことだ」

「ふぬ、じゃあ俺の方に行ってみるか」


 改めて入り直すと、あまりの広さと無秩序さに驚くカリスミュウル。


「なんだこれは、完全に一つの世界ではないか」

「ははは、俺の懐の深さに、惚れ直しただろう」

「むう、癪ではあるが、たしかに貴様は、スケールだけは大きいようだな。しかし」

「うん?」

「何も身に着けずにこのようなところに立っていると、は、恥ずかしいではないか」

「開放的でいいじゃないか」


 そういってブラブラさせてみせると、鋭いローキックを食らった。


「やめい、なんという破廉恥な」

「俺はいつもこうなんだよ、早く慣れたほうがいいぞ」

「ばかものめ」


 プリプリ怒るカリスミュウルの隣でエディが何かを見つけたようだ。


「ねえ、あの丸いのは何?」


 見ると見覚えのない、灰色の大きな球が転がっている。

 中にいたミラーを探して尋ねると、数時間前に突然現れたという。

 もしかして、と思いついて近づくと、パラパラと崩れだし、中からカリスミュウルの内なる館にあった屋敷が現れた。


「なぜだ、どうしてこれがここにある!」


 驚くカリスミュウル。


「つまり、つながったんじゃないのか?」

「むう、これではまるで貴様に取り込まれたようではないか」

「だから言ったじゃないか、懐が深いって」

「やかましい」


 プリプリするカリスミュウルは、今度は隣でニヤニヤしていたエディに噛み付く。


「何を笑っておる」

「いやあ、もうそういう会話を見ても、ヤキモチ焼かなくていいのかと思うと、なんだかニヤけてくるじゃない」

「そういう問題か!」

「そういう問題よ。ま、やることいっぱいあるし、外に出ましょ」


 身支度をしてエディの屋敷を出て、宿営地に向かう。

 たどり着くと、新たな家族の誕生に皆が喜ぶ。

 エディなんかは今までも入り浸っていたので今更なんだけど、大事な一線を超えたみたいなのはあるよな。


「お疲れ様でした」


 ひときわ労うように出迎えたアンが、先にお伝えしておくことがあります、と前置きした上で、こう言った。


「今日の昼間、下調べを兼ねて、ストームへの呼びかけを行ったのですが、返事がありませんでした。御神体などを触媒に、時間をかけてやらなければ、現状では見込みは薄いでしょう」

「そうか」

「カーネ様とラケーラさんのご両人は、昼過ぎに都を発たれました」

「早いな」

「例のものは今しばらくお預けするとのことです」

「ふぬ」

「リースエル様も少し前にお発ちに」

「明日まで待ってくれればよかったのに」

「奥様もそうおっしゃっていたのですが、ここは寒くて肌に合わないとか。せっかくなので近郊の友人を訪ねてからまた別荘に戻られるそうです」

「ふむ」

「それから、つい先程キッツ家から戦勝祝にと贈り物が」

「受け取ったのか?」

「使者がローン様でしたので」

「あてつけかなあ」

「そこまではちょっと」

「しょうがねえな」

「他にもいろいろと問い合わせがあったそうですが、シャボア家の方で留め置いているとか」


 シャボア家は、フューエルの義理の母、つまり第一夫人の実家だ。

 第二夫人のコーデル家より、こっちのほうが家はでかい。

 後で本家の方に挨拶に行かにゃ、ならんだろうなあ。

 そういうのは、なるべく義父に任せてるんだけど。


「ひとまずそんなところですね。ところで今夜はどちらにお泊まりに?」

「女の子の家ででかい面できるほど、俺も大胆じゃないからなあ」

「そう思って、こちらで支度はしてあります。今、フルンがシルビーさんと、メシャルナさんたちをお屋敷の方に送っているところなので、おっつけ戻るでしょう」

「シルビーも今日はあっちか」

「繊細なお年頃ですから、居づらいのでは?」

「そうかもなあ」


 その分、ハメを外して破廉恥に行かせてもらおう。


 昼のうちに仕入れたものと贈り物で、キャンプスペースには山のように酒が積まれている。

 いくつかは近所におすそ分けもしたようだが、明日までには飲みきれまい。

 帰りの道中の分を差っ引いてもあまりそうだ。


 今朝は完全に廃墟の横で焚き火を焚いているだけだったのだが、昼の間にカプルが仕切って瓦礫を撤去し終えていた。

 余った資材で簡易の囲いを作り、馬車やコテージで目隠しをしてあるので、焚き火のある一角は、周りの目も気にしなくて良い。

 存分にイチャイチャできるだろう。

 俺は外で焚き火にあたってイチャイチャするのが好きなんだ。

 エディはフューエルやクメトスらと片隅のテーブルに陣取りすでに飲み始めていたが、カリスミュウルはというと、焚き火の前で一人で座っていた。

 従者たちは忙しく働くふりをしながら様子をうかがっている。

 透明人形のチアリアールは、支度をしに一旦家に戻ったらしい。

 こういうところに、日頃の根回しが響いてくるんだなあ、と思いつつ、アンに耳打ちすると、


「仕方ありませんよ、殿下は今までご一緒した際にもあまり口を利いたことがありませんでしたし、物怖じせずに話しかけていたのはフルンぐらいですが、あの子はまだ戻りません。ご主人様がどうにか」

「しかし、これからずっと一緒に暮らすんだぞ、こういうのは最初が肝心だから、すまんがお前がどうにかしてくれ。そのためにあえてエディも席を外してるんだろうし」

「わかりました。いずれこうなることはわかっておりましたし……それに、私も従者を束ねる立場です、ここで引くわけには参りません」


 と気合を入れて、酒肴を整えカリスミュウルの所に出向いていった。

 俺は燕を捕まえると、なにか用事でもあるかのようにコテージに潜り込み様子をうかがう。


「趣味悪いわね、ご主人ちゃん」

「そうは言っても、可愛いお嫁さんになる大事な子が、他のみんなとうまく打ち解けてくれるかっていうのは、今後の幸せな家庭生活に影響するだろうが」

「まあ私も気になるし、アンのお手並拝見といこうかしら」


 というわけで、のぞき見しつつ、念話を使って盗聴する。


(カリスミュウル様、簡単なものしか用意できておりませんが、ひとまずこちらで)

(う、うむ、アン……だったな、その、くるしゅうない)

(従者たちを束ねさせていただいております。主人同様、なんでもお命じください)

(うむ、その、よろしく頼む)

(エンディミュウム様同様、あなたをお迎えする日を、一同楽しみにしておりました)

(そ、そうか、そうかな、そうなら、その、そういうことも)

(さあ、まずは一献)


 と酒を注いでやるが、カリスミュウルの手はプルプル震えている。

 どのみち、あいつって王様とか無理だったんじゃ?

 でも、エディのねーちゃんもあれで宰相だしな。

 微妙にこぼしながら、グラスを空けると、アンに手渡す。


(お、お主にも、い、一杯しんぜよう。近づきの、いや、その、かための、その、なんだ、とにかく、ほれ)

(では、いただきます)


 と酌を受けて、グビリと飲み干す。

 アンが返したグラスを受け取りながら、カリスミュウルは周りを見渡して、


(もう少し、その、従者の数が居たような気がするが)

(明日には出発するため、まだ支度を進めております)

(そうか、私のせいで、その、居づらいのではないかと……)

(カリスミュウル様、私どもは日頃、町の商人として暮らしておりますので、王族に連なる貴方様のような貴人を前にすると緊張するのは多少は大目に見ていただきたく存じます。ですが、どうか貴方様も、必要以上に私どもに気を使わぬよう、お願いいたします。なんとなれば、あなた様はいずれ妻に、そして私どもは従者として、共に馬車の両輪のように主人を支える存在でありたいと、思いますので)

(そうか、そうだな、私はいつも尽くされるばかりで、歯がゆい思いであったが、これからはお主たちが、同じ目的に向かって共に歩んでくれるのだな)

(ええ、その通りです)

(よし、もうちょっと飲もう、付き合ってくれるだろう?)

(かしこまりました、では私もグラスを)


 アンはポケットから小さなグラスを取り出してニッコリ笑うと、仲良く飲み始めた。


「いやあ、アンもなかなかやるな」


 というと燕が、


「あれ、結構前からフューエルやテナと相談しながら、色んなパターンで何度も練習してたわよ」

「そうなのか、まあ練習は大事だよな」

「大変よねえ、私なんて女神とか崇められてる割に、あっという間に溶け込んでたでしょ」

「厚かましい人間は強いんだよ」

「まあ、厚かましくなきゃ自分で女神とか言わないわよ」


 それでいつも自分は女神じゃないって否定してるのかな?


「それより……」

「うん?」

「最近、ご主人ちゃん、どっか行ってない?」

「どっかって?」

「うーん、まあいいけど、早くストームを連れてきなさいよ、こう言うときは昔なじみが恋しくなるのよ。あんな奴でもね」

「まあ、がんばるよ」


 とはいえ、何をどうすりゃいいのかは、わからんのだけどな。

 頃合いと見て出ていくと、機嫌の良くなったカリスミュウルが、アンと仲良くやっていた。


「何をしておった。貴様がおらねば、皆が退屈するであろうに」

「うちは俺が居なくても回るようになってるんだよ」

「たしかにそのようだな、皆優れた従者ばかりではないか」

「俺の薫陶が行き届いてるんだよ」

「ふん、大した自信ではないか」

「これからはお前もしっかり教育してくれよ、未来の女主人なんだろう」


 とからかうと、顔を真赤にして酒を吹き出した。


「ば、ば、ばかもの、そう言うことを、この、ばかもの!」

「ははは、かわいい奴め」


 同じネタでもフューエルとは反応が違って楽しいな。

 そこに昨日従者になったばかりの元女将パルシェートがやってきた。


「ご主人様、遅くなりました。調理場を借りに行っていたもので」


 と言って、できたての料理を並べてくれる。


「ほう、うまそうではないか。どれ、一口」


 舌を鳴らすカリスミュウルに、緊張した面持ちのパルシェートが、


「は、はじめまして、昨日従者になったばかりのパルシェートです、さっきフルンに聞いたんですけど、今度ご婚約なされたカリちゃん……さん、ですよね?」

「カリ……う、うむ、まあそうだ、よろしく頼む」


 カリちゃんさんって略し過ぎだろう。

 でもフルンは天性のタラシなので、距離感のとり方が絶妙なのだ。

 たぶんカリちゃん呼びが、一番喜ぶバランスなのだろう。


「ご主人様は紳士様だし、奥様は割と大きな領主様らしいってあとから知って、ホントびっくりしてたんですけど、あの、あなたは、どこでお知り合いに?」

「そ、そうだな、私は、ダンジョンで、その、冒険のさなかに」

「そうなんですか、やっぱり冒険者さんなんですね! それっぽい格好をされてましたし。もうひとりのエディさんってかたも、騎士見習いって前に伺ってるんですけど、やっぱりダンジョンで知り合ったんでしょうか。ご主人様も、試練に備えて、冒険の修行をなさっていたそうなので」

「うむ、まあそんなところだ、たぶん、うむ」

「私、ずっと宿屋ばかりで働いてて、冒険者さんはよく知ってるんですけど、ダンジョン自体は見たこともなくて……、あ、それより、冷める前にどうぞ!」

「よし、いただこう」


 誰もパルシェートに話してなかったのか。

 アンは笑いを押し殺しているが、新人同士打ち解け合おうとしているパルシェートに、いま真実を伝えるのは酷なので、このまま冒険者仲間のカリちゃんとして相手をしてもらおう。

 そうしてしばらくちびちび飲んでいると、フルンが帰ってきた。


「ただいま!」

「おうおかえり、フルン」

「カリちゃんもただいま! もうずっと一緒に暮らすんでしょ!」


 と飛んでいってカリスミュウルの手を取る。


「う、うむ、よろしく頼む」

「あとで一緒に遊ぼ! ちょっとエディにも挨拶してくるね!」


 今度はエディの方に飛んでいく。


「ただいまエディ!」

「あら、おかえりなさいフルン、シルビー達どうだった?」

「うん、ちゃんと送ってきた。ポーンもあとから来るって」

「あらそう、ありがと。あなたも一緒に食べる?」

「うーん、今日はカリちゃんと先に遊ぶ」

「じゃあ、あとで一緒にご奉仕しよっか」

「うん、私下手だけど。エディはうまそう」

「あら、私のほうが多分下手よ。だってさっき初めてしたんだもの」

「大人なのに!」

「そうよお、だからいろいろ教えて頂戴」

「わかった!」


 なんの話をしてるんだろうなあ、と思いつつ、聞こえないふりをして酒を飲む。

 まああれだ、エディはあのすごいボディで情熱的に迫ってくるんだけど、初めてだけあってそういう上手さはまったくなかったな。

 でもポテンシャルがすごいので、エクの手ほどきでも受ければ、あっという間に大変なことになるだろう、俺が。

 ぴゅんと戻ってきたフルンは、カリスミュウルの隣に座ると、ご飯を食べだした。


「おいしい!」


 というと、カリスミュウルもうなずいて、


「うむ、なかなか良い」

「カリちゃんって、普段もっといいもの食べてないの?」

「良いものがうまいとは限らん」

「そっかー、そうだよね。フューエルのお屋敷の料理もすごく美味しいけど、家でみんなで食べるほうがもっと美味しい」

「そのとおりだ」

「ねえ、カリちゃんも一緒に試練にいくんだよね。別々にやるの?」

「いや、ともに行きたいと思っているがな」

「良かった、そしたらご主人様とカリちゃん、一緒に守れるもん」

「そうだな、頼りにしているぞ」


 それを聞いていたパルシェートがフルンにおかわりを渡しながら、


「試練って、塔のことですか? 今日も登ってたみたいだけど」

「ううん、紳士の試練。春になったら行くでしょ、ルタ島ってとこ」

「ええ、そう聞いてるけど」

「カリちゃんも紳士様だから、ご主人様と一緒にまとめて試練に行くの」

「え!? カリちゃん、紳士?」

「そだよ、えーとカリスミュウルちゃん。王様の妹の娘で、えーと殿下で紳士なの」

「か、カリスミュウル、殿下!? 新聞に乗ってた?」

「うん」

「ひ、ひぃ……」


 と後退りして平身低頭するパルシェート。


「知らぬこととは申せ、ご、ご無礼の段、平にご容赦を」

「よせ、か、家族になるのであろうに、そのようなことを、フルンも黙っておればいいものを」


 というとフルンが、


「えー、駄目だよ、家族なんだから、ちゃんと言わないと」


 と笑う。

 うむ、やはりフルンは大物だな、堂々と正論を通す。

 俺は小物なので、酒を飲んでやり過ごそう。


「貴様もなにか言え」


 返事に困ったカリスミュウルが俺に当たる。


「しょうがねえな、パルシェート、ちょっとこっちに来なさい、カリスミュウルもこっちだ」


 と左右に座らせる。


「これでどうしようというのだ」


 と問うカリスミュウルに黙って酒を手渡す。


「こうして仲良く飲むんだよ、ただそれだけだ」

「むう、よかろう」

「でも酔いつぶれるなよ、あとでお楽しみがなくなるからな」

「ば、ばかめ」

「ほら、パルシェートも」

「は、はい、いただきます」


 そうやって飲み始めると、やがて様子を見ていたのであろう他の従者たちも集まってきた。

 あとはまあ、いつもの感じだ。

 誰が増えても、最終的にはこうなる。

 相性ってやつは体が光ろうが光るまいが、あるんだよ、たぶん。

 順番に隣の従者をとっかえひっかえしているうちに、デュースが回ってきた。


「おう、今日は飲んでるのか?」

「そうですねー、いつまでも病人みたいな扱いも困りますしー」

「ふぬ」

「昼間壁の病院を訪れてもう一度見てもらいましたがー、大丈夫だということでしたしー」

「そりゃよかった。しかし、どうしてお前の心臓は作り物だったんだ?」

「うーん、記憶に無いんですけどー、手の空いてた他のホロアの子たちも一緒に見てもらったんですがー、作り物なのは私の心臓だけだそうでー」

「いちおう明日出発前にみんなで健康診断やっとくか。それより、もう少し質のいい心臓に変えられるそうだが、どういう経緯でそうなったのかがわからないと、安易に手術もできないよな」

「そうですねー、でもここ数十年のことではないと思いますけどー」

「しかし、そんな大事なことを忘れるかね?」

「普通の人だって五十年も経てばほとんど忘れてますよー」

「まあ、そうかもしれん」

「しかしー、カーネも知らないとなるとー、あとは誰か知ってそうな人はー」

「例の晴嵐の魔女ってのはどうなんだ?」

「うーん、知ってますかねー、昔一度だけマーネと一緒に会いに行ったことがー、アレはなんの用事でしたかねー?」

「頼りないなあ」

「それ以外で長生きだとー、ポワイトンなら何かおぼえてるかもー、でも彼にはあまり会いたくないですねー、面倒なのでー」

「誰だい?」

「赤光の騎士と言ってー、ゴウドンと並ぶ強さの歴戦の騎士ですがー」

「面倒なのか」

「そうですねー、リースエルが付き合いがあるのでー、彼女を通して聞いておいてもらいますかー」

「昼のうちに聞いときゃよかったな」

「そうですねー」


 何にせよ、デュースは元気そうだ。

 一通り従者の相手をしたので、フューエルを呼んでみる。


「今日は無理に私の相手をしなくてもいいんですよ?」

「貫禄を見せるじゃないか」

「それはまあ、いろいろと駆け引きというものがあるんですよ」


 と笑うと、その隣りにいたエディは、


「まあ、怖い。お手柔らかに頼みますわ、フューエルお姉さま」

「あなたにお姉さまと呼ばれる方が怖いですよ。そう言うのは、内向きにはなしにしましょう」

「そうねえ、昨日今日の付き合いじゃないし。ハニーがアルサについてからの付き合いだもんね」

「ええ、まさか私のほうが先に落とされるとは」

「あなたのほうがちゃんとアプローチしてたからよ」

「そう言われると、返す言葉がないのですが」

「ちゃんと仲良くしていきたいじゃない。まだあと何人、妻を取る気か知らないけど」

「エディは誰か心当たりが?」

「ローンの妹さんが怪しいって聞いてるけど」

「エンシューム嬢でしょう、お会いしたことはないのですが」

「立場的には、仲良くしづらいわね。誰か仲介してくれればいいんだけど、ローンに負担はかけたくないし。もっとも、妹のために最近実家に顔だしてるみたいだけど」

「先程、キッツ家の名代として贈り物を持ってこられましたが」

「そう言う趣味の悪さは、一級品よね。そういえば、メリーはどうするのかしら、しばらく手紙も届いてないのよね」

「元白象団長殿ですね。クメトスも連絡がないと心配していましたが」

「まあ、便りがないのはいい便りなのよ。他には?」

「従者の候補はいるのですが、これはまた帰ってから。それ以外だと、そもそもローンさんはどうするんです?」

「さあ、意識してるみたいだけど、あの子、昔うちの方から縁談を進められたときは結婚する気はないって言ってたのよね。そこはハニーに口説いてもらうしかないでしょ。そういえば、あの子、えーと」

「誰です?」

「ほら、隣のよく行く、ルチアの店で働いてるバイトの」

「ああ、ハンコですね」

「彼女、今回の戦いの最中にいきなり現れて、私達を塔の上まで運んだじゃない。ゲートもなしにあんな魔法、見たことないんだけど」

「ゲートの魔法というものは、昔デュースから聞いた覚えがありますが、それはそれとして、彼女はなんでも、クリュウの故郷から来たとか」

「そうそう、ルチアからそう聞いてたから、てっきり昔の恋人が追いかけてきたのかと思ってたんだけど」

「私もそう思ってたんですけど、違うようですね。そういえばこの人の出自のことは?」

「聞いた聞いた、なんでも別の星から来たって、びっくりよね。あ、じゃああの子もやっぱり?」

「そうなんです。別の星から来たとか、ツバメたち女神と敵対関係にあったとか、そう言う話を聞いています」

「そうなんだ、彼女てっきりハニーに気があると思ってたんだけど」

「ええ、どう見てもそうとしか思えないのですが、神々に匹敵する存在であるのなら、我々の常識で測れる相手ではないのでしょうね」


 この会話も判子ちゃんが盗み聞きしてると思うと、面白いな。


「ほんと驚くことばかりね。まあいいわ、他には?」

「そうですね、あとは、私の姪子のレアルコアが光ったことが」

「紅白戦のときに会った子?」

「ええ、そうです、エマヌイール・リーストラムというのですが」

「リーストラム家なのね、あそこの家風は閉鎖的って聞いてるけど、そう言えばお兄さんは婿に行ってたんだっけ?」

「そうなんです。兄も入り婿ですし、紳士とは言え、あの子を手放すかどうか疑問だったのですけど、あなたとカリスミュウルが来たからには、状況は変わってくるでしょう?」

「そうなるわよねえ。それにそういう素性の娘さんなら別だけど、今後絶対、色んな所から押し付けてくるから気をつけなきゃ駄目よ」

「それはもちろん……と言いたいところですが、なんせこの人は」

「そうよねえ」


 と二人揃ってジト目で見つめてくる。

 よせよ、尻がむず痒くなるぜ。

 そもそも、そう言う話は俺の聞こえないところでやるべきじゃないのか?

 仕方ないので、話を逸らす。


「おい、カリスミュウル。お前も混じって、女房らしい話題を弾ませたらどうだ?」

「どうせ私は、そこまで世間のしがらみもなければ、そもそも有力者と面識もないのだ。そう言う話題は二人に任せておけばよかろう」

「じゃあ、お前は普段何してたんだよ」

「決まっとろうが、試練に備えていたのだ」

「そういや、虹の橋とやらの痕跡は見つかったのか?」

「いや、まったく」

「俺が思うに、虹の橋は空にあるんじゃないかと思うんだよな」

「空?」


 軌道エレベータからなにから、現状での予想を語って聞かせる。


「だから、いまアップルスターがある場所に、地上に降りる道があるんじゃないかと思うんだよ。まあ、それでなくても、宇宙船が手に入れば直接ルタ島に行けるとは思うんだけど」

「なぜそれを早く言わん、ならば一刻も早く試練に向かうべきではないか」

「いや、春に行くつもりで準備してるし」

「何というのんきなやつだ」

「他にもいろいろあるんだよ、体のない従者にちゃんとした体をもたせた上で連れていきたいとか、件の女神を連れ戻したいとか」

「うむ、そうであったな。たしかに順序としてはそちらが先であろう」

「エディの退団の件も片付けなきゃならんしな。まあなんだ、試練自体はこのメンツならどうにかなるだろうから、慌てなくてもいいだろ」

「当然だ、他の紳士共がどれほど優れておろうが、我らの敵ではない」

「そうそう、だからのんびり構えとこうぜ」


 たっぷりと酒と会話を楽しみ、場所を移す。

 コテージの内装を取り払い、こじんまりしたスペースに毛布とクッションを敷き詰めた、特製のご奉仕スペースだ。

 壁に沿うように裸のミラーたちが並び、部屋の四方には、同じくパルシェートを含む裸の従者たちが控えている。

 そして、要所に配置されたランプが、裸体をいやらしく彩っている。

 こういう素晴らしい演出を考えるのはカプルの仕事だ。

 相変わらず俺の望むものを確実に提供してくれるな。

 惜しむらくは最高に俺の口にあうモアノアの料理がないところだが、それは後日の楽しみとしておこう。

 部屋の中央に腰を下ろし、エディやカリスミュウルを左右に侍らせ、これからしっぽりと長い夜を楽しむのだ。

 いやあ、楽しいなあ。

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