第215話 セプテンバーグ
「はぁ、いい湯だなあ」
俺は新年早々、二階のバルコニーに運び込んだ小さな風呂桶に湯を張って、雪景色を眺めながらのんびり朝湯を楽しんでいた。
「のどかなものですねえ」
隣で同じくまったり湯につかっていたフューエルも、とろけきった顔でつぶやく。
昨日の元旦は、二日酔いのままみんなで初詣に行ったり、フューエルの実家の方まで挨拶に行ったりとオーバーワークだったので、今日は朝から自宅でのんびりだ。
このあたりの住民、特に金持ちは、年が明けたら暖かい地方にバカンスに出かけるらしい。
フューエルの両親、つまり俺の義理の親でもあるリンツ卿も、今日から出かけているはずだ。
うちは全員で出かけるのも難しいので基本はここで過ごすが、後日、少しだけ顔を出しに行くことになっている。
エディも、しばらくは実家の方で過ごすと言って、昨日街を出た。
「忙しいから、一週間ぐらい親戚連中に愛想を振りまいたら、あとはまた通常業務よ。北方砦で大規模な演習もあるし。短い休暇だったわ」
などと言っていた。
俺も年末に何件かフューエルの親戚の所に挨拶回りに行かされたんだけど、なかなかしんどいな。
同じ親戚でもイミアの爺さんなどにたまに呼び出されて晩酌に付き合うのはそれなりに楽しいのだが、親戚ならなんでもいいというわけではなさそうだ。
親戚付き合いに縁のなかった俺としては、まだイマイチ判断のつきかねるところだな。
「ご主人様、燗ができましたよ」
牛ママのパンテーが酒のおかわりを持ってきてくれた。
「お、待ってました。やはり雪見酒には熱燗だな」
前割りした芋焼酎っぽい酒を、特製のおちょこに注いで、ぐびりとやる。
外気に冷えた頬が、ふわっと熱くなるのを感じる。
たまらんなあ。
「その芋のお酒、慣れると癖になりますね」
フューエルが暗に催促するので、俺のおちょこを渡してついでやる。
「おいしい」
頬を染めるうちの奥さんは、今日も色っぽいな。
「しかし、朝湯に朝酒とは、こんな贅沢もあるのですねえ」
そういってフューエルは程よいおっぱいを揺らしてお湯を波立てる。
ちなみに、今朝は朝寝もしたので、こんなことしてりゃ身代も潰しかねんな。
正月だけにしておこう。
昼からは、子どもたちが凧揚げをすると言うので、湖の西側に広がる草原に来ていた。
この辺りは雪がふる前は何度も遊びに来ていたが、こう寒くなるとなかなか難しい。
それでも子供達はたまにこの辺で遊んでいるらしい。
エットとオーレが競うように凧を上げ、撫子とピューパーが追いかけ回している。
こう言うときに一番騒ぎそうなフルンは、ウクレと一緒にすこし離れたところにいた。
フルンがかわいがっている子馬のシェプテンバーグに鞍をつけて人をのせる訓練をするらしい。
シェプテンバーグは見つけた時には怪我をしていたが、今ではその跡もなく、すっかり元気に育っている。
ただ、気性が荒いのか、フルンはなかなかうまく乗れないようだ。
馬のほうでは必死に振り落とそうとするのだが、フルンは運動神経が尋常では無いので決して落ちない。
ただ、落ちないだけで、乗れているとは言いがたい。
暴れ馬の上で、まるでロデオのように器用に乗りながら、フルンはウクレに叫ぶ。
「ねえ、シェプちゃん嫌がってるみたいだけど、降りなくていいの!」
「大丈夫、そのまま乗って! 意地の張り合いみたいなものだから、どっちかが根負けするまで続くと思って!」
ウクレも叫んで答える。
大変なもんだな。
まあ、すごくおとなしい太郎みたいな馬にも、まともに乗れなかった俺みたいな人間からすれば、今のフルンの曲芸はそれだけでおひねりを投げたくなる。
先の騎手失踪事件で知り合った調教師のアスレーテちゃんのお陰で、普通に歩かせるぐらいなら行けるようになってきたけど。
あいにくとフルンは見世物をやっているわけではないので、冷やかしは程々にしておこう。
かと言って、凧を追いかけ回すのも大変だし、俺はあたりを散策することにした。
ブラブラと雪を踏みしめながら歩いていると、目の前の大岩の上に白いものが立っていた。
真っ白い肌に真っ白い髪、さらに真っ白い全身タイツを着た、真っ白い少女だ。
よく見ると、僅かに浮いている。
なんだありゃ?
あっけにとられてみていると、不意にタイツ娘がこちらを向いた。
目があった以上は話しかけないとな。
「こんにちは、お嬢さん」
「こんにちは、放浪者さん」
高く、か細い声で答える娘は、俺を見てニッコリ微笑む。
放浪者と来たか。
正体が気になるが、一々動じないのは俺のいいところだ。
「そこから、なにか見えるかい?」
「見えます。あなたにも、見えているのでしょう?」
「俺に見えてるのは、お嬢さんだけだよ」
「私にも、あなたが見えています」
「そりゃあ、ごもっともだ」
なんだか、妙な会話だな。
「ところで、ここは何という土地でしょう」
「ここかい? アルサの街さ」
「湖のあちらに見える、あの街のことですか?」
「そうさ」
「そうですか……大勢の人が見えます。随分と、地上は復興したのですね」
「復興?」
「二度も滅びを見たこの星が、灼熱の炎に沈んだこの大地が、今また、このように真っ白な雪に包まれ、緑の芽吹くときを待ち焦がれているさまを見ると、この星を闘神たちに委ねるという選択も、あながち間違いではなかったのですね」
「闘神?」
闘神ってなんだったっけ。
「あなたもご存知でしょう? 私達は二億年もこの地で見守っていたのですよ」
「二億年ってのは、長すぎて想像もつかないな」
「では、短ければ想像がつくと?」
「うん? いや、そうとも限らんな」
「物分りの良いことですね。でも、あなたは何をわかるというのです?」
「さあなあ、君はどうだい?」
「何もわかりませんよ、ただ、見ていただけ」
「何を見てたんだ?」
「この星が壊れるさまを、焼きつくされるさまを」
「君は……誰だい?」
「私はセプテンバーグ。天翔けるペレラールの騎士。あなたの従者に撃たれた、百万の騎士の一人」
そう告げると真っ白い体はたちまち霧のように広がって俺を包み込もうとする。
その刹那、シェプテンバーグにまたがり駆けつけたフルンが霧の只中に斬りつけた。
「やあっ!」
鈍い音とともに火花が飛び散り、たちまち霧が霧散して元の白いタイツ姿に戻る。
「ふふ、かわいい従者をお持ちなのですね。我が名を継ぐその馬に免じて、彼女の非礼は許しましょう」
「そりゃどうも」
「この地にてエムネアルとの宿縁を晴らすも一興なれど、我が舟も、かの鎧もすでになし。いかにして私は前世の誓いを果たすべきか」
「誰と約束したんだ?」
「大いなる世界の楔と」
「世界の楔?」
「あなたとて、放浪者なのでしょう。であるならば、誓いを果たすべきです」
「俺にできることなのかい?」
「すでになされていますよ」
「そりゃ良かった」
「私もいずれ、それをなすでしょう。ですが今はまだ少し、この星の風景にたゆたうとしましょう」
そう言うと、白いタイツ娘は白い霧に姿を変えて、舞い散る粉雪のように、そのまま空の彼方に消えてしまった。
「ご主人様、大丈夫!?」
白い彼女を睨みつけていたフルンが俺に駆け寄る。
「ああ、お前こそ大丈夫か?」
「うん、大丈夫だけど、死ぬかと思った。今の、めちゃくちゃ強い、たぶん、雷竜より強い! えーとね、まえに見た赤竜とか、あの時の神様の燕ぐらい強い……と思う!」
「まじか、そんなにか、なんか怪しいねーちゃんだなとは思ったが」
「うん、びっくりした。あんなの反則だと思う。私もあんなふうになれるかな?」
「そうなあ、どうだろうな。普通は難しいと思うけど、フルンは頑張るからなあ」
「頑張れば大丈夫かな?」
「そうだなあ、俺も主人としてあまり無責任なことは言えないが、フルンのがんばりには大いに期待しているな」
「うん、頑張る!」
「それよりも、シェプテンバーグはおとなしくなったじゃないか」
「あ、ほんとだ」
シェプテンバーグはフルンを乗せて、すっかり大人しくしていた。
フルンはそれに気が付かぬほどに緊張していたようだ。
馬に乗るという目的は果たしたので、今しばらく凧揚げを楽しんでから、みんなを連れて家路につく。
それにしても、さっきの白タイツは一体何だったんだ?
ちょっと情報をまとめてみよう。
ペレラールの騎士ってのは、ステンレスの遺跡とかを作った連中で、十万年ぐらい前までいたという古代人だよな。
前に発見した丸い飛行機に乗っていたらしいって話だったはずだ。
あんなものを作れるなら、すごい力を持っていてもおかしくはないのか。
あの時の赤竜だって捕らえていたようだし、それができるぐらいには強いということだろう。
しかし二億年ってのはなんだ?
いきなり桁が三つも飛んだぞ。
いくらなんでも二億年ってのは同じ文明を維持できる長さなんだろうか。
ちょっと想像できないんだが。
これが十万年ならまだあれだ、地球で言えば人類の祖先がアフリカを出て世界中に散らばったとか言われてる頃だよな。
だから、一度滅んだ文明が一からやり直すのにそれぐらいかかるんじゃないかなという想像もできなくもない。
だが、二億年となるとどうだ?
恐竜が、えーと六千五百年前に絶滅したんだんだよな。
恐竜はまあ、男の子はみんなだいすきだからなんとなく覚えてるけど、二億年前ってなんだろう。
ジュラ紀とかかな?
白亜紀とジュラ紀ってどっちが古いんだったっけ。
まあ何にせよ、それぐらいの気がする。
そう言えば、二度の滅びと言っていたな。
十万年前と、一万年前と千年前に色々あったような話は聞いたが、千年前のは黒竜がどうのこうのとかいう戦争で大変だったようだが、結局倒してるんで滅びってほどのイメージではないよな。
うーん、さっぱりわからん。
わからんが、さっきの子はまた来そうな気がするな。
大体、ああいう思わせぶりな子は勝手に盛り上がって勝手に結論を出したりするんだよ、たぶん。
振り回されないように、気をつけよう。
家に帰って、紅に話を聞く。
「セプテンバーグ、ですか。知りません。もっとも、私の前世……と言っていいのかわかりませんが、この体を得る以前の記憶は持っていないので、現時点では記憶にない、ということです」
「ふむ、まあそうだよな。じゃあ、燕はどうだ?」
と今度は燕に尋ねると、
「ペレラールの騎士ってことは、舟憑きのことでしょう」
「その舟憑きってのはなんだ?」
「えーとねえ、この星の……ご主人ちゃん風に言えば戦闘機かしら、宇宙戦闘機? それは舟とサポート用のロボットがセットだったのよ。それに騎士と呼ばれるパイロットが乗り込んで戦うのね。私達闘神はウェルビネっていう鎧、まあこれもロボットみたいなもんだけど、そういうガワを着て戦ってたんだけど……そもそも、私はこの星には来なかったはずだからよく知らないのよねー、今言った話も、もしかしたら他の記憶とごっちゃになってるかもしれないし。ここに来ないでなにしてたのかも覚えてないけど……」
「それってどれぐらい前なんだよ」
「さあ、十万年前に騎士が戦ったって記録があったんじゃなかったっけ? エンテルがそんなこと言ってなかった?」
「そうなんだけど、今日会ったそのセプテンバーグちゃんは、二億年前って言ってたぞ?」
「二億年ねえ、アジャールが滅びたのっていつ頃なのかしら」
「アジャール?」
「そうよ、私達の生まれた星よ、たぶん」
「ああ、そこから移ってきたから、アジアルの民っていうんだっけ?」
「だと思うんだけどはっきりしないからねえ。だから、私達が闘神として死んでる間が十万年ぐらいだったんじゃないかと思ったんだけど」
「それが二億年前だったんじゃないか?」
「じゃあ、その時に移民してきたの? さすがに二億年も文明は維持できないんじゃないかしら?」
「根拠はないけど、そう思うよな」
「生き延びたにしても、人の形を維持できなくてもおかしくないわよね」
「ふむ。わからないことを悩んでも仕方ない、判子ちゃんのところに行こう」
「来る必要はありませんよ」
例の如くいいタイミングで判子ちゃんが現れた。
「ほんとにいつも見張ってるのね、このスケベ!」
燕が挑発すると、判子ちゃんはムッとして反論する。
「黒澤さんがいつも面倒を起こすからでしょう」
「あなたの存在が一番迷惑よ」
「自分たちのしたことを棚に上げて、良くもぬけぬけと」
「大きなお世話よ」
「それはこちらのセリフです」
相変わらず仲がいいが、それは置いといて、
「で、判子ちゃん。彼女はなんなんだ?」
「……彼女はこの星固有の存在であり、あなたのようなイレギュラーではありません。よって私が干渉する必要はありません」
「つまり、何も教えてくれないってこと?」
「そうです」
「そういわずに、ほら、さっきモアノアが作ったたい焼きがあるぞ、うまいぞー」
「むう、そのような安易な賄賂で私が折れるとでも」
「まあいいじゃないか、ほら」
と強引に口に突っ込む。
「あふ、あつ、な、にゃにを……もぐもぐ」
「ははは、うまいだろう」
「美味しいですね、ごちそうさまでした。それでは」
と言って、帰っていった。
「何しに来たのかしら」
と燕。
「この星の人間だから、頑張ってナンパしろってことじゃないかな」
「ご主人ちゃんって、たまに凄いわよね」
「そうかな?」
「惚れ直すわ。とにかく、お酒にしましょ、判子の顔見たら喉乾いちゃった」
「そりゃいいが、そもそも、なんでそんなにお前らって仲悪いんだ? 判子ちゃんはお前達が何かしたようなことを言ってるが」
「さあ、覚えてないからなんともいい難いわね。私はあいつらが敵だってことぐらいしか覚えてないし。いつも適当に売り言葉に買い言葉で言い返してるだけだもん」
「またそんないい加減な」
「ご主人ちゃん譲りのノリだと思うわよ」
「それもそうか、じゃあ酒だな、酒」
「そうそう、それが一番大切よ」
しかし、二人の言い様だと、わりと対等の敵だったようにも思えるよな。
でも、シーサだっけ、判子ちゃんの所属している組織かなにかは、ネトックの話ではこの宇宙の仕組みそのものに干渉できるようなそういう不条理な存在っぽいんだけど、それと渡り合える燕たちアジャールの女神ってのは、何だったんだろう。
よくわからんけど、やっぱり神様だったのかねえ。
翌日。
今日は朝から寝酒を決め込んでいると、紅がこんなことを言った。
「マスター、ここから南西に七十キロ、高度三万六千キロ前後の地点に何かのエネルギーを検知しました」
「何か?」
「わかりませんが、先の竜を上回るような膨大なエネルギーです」
「ははあ、ってことは先日のセプテンバーグちゃんかな?」
「私も、それを連想しました」
「しかし高いな。地球で言えば、静止軌道ぐらいじゃないのか?」
「そうです」
「どうやって行きゃいいんだ? 完全に宇宙だよな」
「どうしましょうか」
「困ったな」
「はい」
「それはさておき、そのへんになにかあるのか?」
「わかりません。距離が遠いことも有るのですが、エネルギーを検知する他は、何も見えません」
「ふむ」
「見えない、ということは私のセンサーで検知できないということです。それはすなわちなにもないということと同義ではありません」
「うん?」
「以前、地下遺跡で丸い舟を発見したことを覚えておいででしょうか」
「ああ、あったな、空飛ぶ奴」
「あれも見えませんでした。それと同等の何かがある、と言う可能性を考えています」
「根拠はあるのか?」
「直接的なものは。ただ、私の得た地理情報が正しいとすると、その場所はルタ島という島の上空です」
「ほほう、それはなんというか、非常に恣意的だな」
「はい。恣意的な偶然というものは、見方を変えると必然でもあります」
「よし、お前がそこまで言うなら、なんとかして宇宙まで行く方法を考えよう。俺も一辺ぐらい行ってみたかったんだ。ロマンだよな、宇宙って」
宇宙に行くとなると、宇宙船が要るわけだが、当然そんなものは持っていない。
空を飛ぶとなると、うちで言えばオーレやネールが空を飛べるが、二人共高度数百メートルが限度らしい。
ネールの話では、
「地上から離れると、急速に魔力の衰えを感じます。覚醒状態で空をとぶことは、魔力で満ちた湖を泳ぐようなもの。空や海には、それが乏しいのです」
とのことだ。
前に遺跡で見つけた丸い飛行機が、ペレラールの騎士と関係があるのなら、あれが宇宙船なのかもしれないが、あそこから出せなければ意味が無いしな。
他に空を飛べるものとして、あのでっかいガーディアンがあるが、クロに聞いた所、
「宇宙ハワカラン、一万メートルグライガ規定高度」
「ちょっと難しいか。お前がいた遺跡にあった、あの丸い船はどうかな?」
「アレノスペックハ不明。ワカラン」
「うーん、何か宇宙まで行く方法はないかな?」
「宇宙カ、軌道エレベータガアル」
「ほほう、軌道エレベータってあれだろ、宇宙まで通じるエレベータ、ってそのままだな。どこに有るんだ?」
「軌道管理局ノ管轄、ツマリココ」
「軌道管理局の軌道ってその軌道だったのか。でも、そんなもの、この近辺では見当たらんぞ?」
「ソウナ、ナイナ、タブン、壊レタンジャナイカ?」
「まじかよ、他にはないのか?」
「知ラン、探セバ見ツカル……カモ?」
次に一番物知りそうなデュースに聞いてみる。
「軌道エレベータと言うのは聞いたことがありませんがー、天まで通じる塔のお話でしたらー、昔ラッドに聞いたことがありましたねー」
「ラッドって?」
「伝説の傭兵と呼ばれていたあの人ですねー」
「ああ、最近良く聞くな。ドラゴン……だっけか」
「南方のジャングルを旅していた時に、試練の塔に似た塔を見つけたそうですよー。彼がそこを何日もかけて登っていくと女神様が現れてー、彼を光るゴンドラに乗せて空の上まで運んだそうですよー」
「ほう」
「そこからはこの星が見下ろせたそうでー、ニヒルな彼が子供みたいに熱っぽくその様子を語っていたのが印象深いですねー」
「それで、どんなだったんだ?」
「丸くて青い星が足元に広がってー、そこは巨大な筒状の建物でー、星を取り巻くように伸びていたそうでー。今、思い出しましたけどー、ラッドはあれが天空の輪だったんじゃないかと言っていましたねー」
「なんだそりゃ?」
「以前ご主人様が言ってらしたでしょー、空に白い筋を見たとー」
「ああ、旅の途中のアレか、そうか、アレか」
軌道上にリング状に建造物を作るというのはSFとかで見た覚えがある。
まあ、この星ならそういうのがあってもおかしくないか。
「ってことは、南方のそこまで行けば、宇宙に上がれるかな」
「そうなんですけどー、場所がどこかわからないんですよー。彼以外からそんな巨大な塔の話は聞いたことがありませんしー」
「そうなのか」
「南方は険しい場所が多くてー、人が住める場所はほんの一部なんですよねー。ラッドぐらい頑丈な人間ならー、世界中どこでもいけたんでしょうがー、ちょーっと現代人には無理かもしれませんねー」
「こまったな」
しかし、そういう手段があるのなら、他にも残っているかもしれないな。
なにより、ここの基地が元は軌道エレベータだったんなら、それに関する情報もあるだろう。
ここのガーディアンと仲良くなれれば、そうした情報も手に入るだろうが、なんで話を聞いてくれないんだろうな。
俺が直接乗り込まないとだめか。
俺が行ってもダメかもしれないが。
やっぱり、基地の探索を早々にしなきゃならないんだろうなあ。
そもそも、宇宙に行くか地下に潜るかどっちか片方にしてくれよなあ。
もっとゲームみたいに順番にイベントを起こしてくれないと。
イベントとか言うなら、そもそも俺は女の子が出てくるイベント以外はノーサンキューなんだよな。
従者を増やすためなら、俺もやる気が出るんだけどなあ、とフェルパテットを従者にしてつくづく思ったわけで。
あの真っ白いタイツの子も、ナンパするには相当ハードルが高そうだし。
まあいい、酒でも飲むか、まだまだ正月は続くんだし。
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