第201話 女中頭
ブルッと震えて目を覚ます。
頭までかぶっていたはずのフカフカの布団はどこにもなく、俺はへそを出して丸くなって眠っていた。
体を起こすと、いつの間にか足元で寝ていた撫子とピューパーが、俺の布団を巻き取ってしまったようだ。
獣人は大抵、丸くなって眠るがこの二人もその例にもれず、布団をかぶって小さく丸まっている。
この辺りは日ごろお嬢様然としているイミアなども同じで、今朝も部屋の隅っこのほうで丸くなって寝ていた。
俺は足元の撫子たちから余分な布団を一枚取り返し、こちらは寒さのせいで丸くなっていた隣のフューエルに布団をかけてやる。
「ううん……なんて恰好を……あなた、おやめに……むにゃむにゃ」
寝言か。
うちの奥さんはどんな夢を見てるんだろうな。
枕元の小さなランプを手に取り、時間を確認する。
時刻は朝の五時。
当然まだ真っ暗だ。
側においておいた綿入れを羽織って、台所に向かう。
そちらはすでにランプが灯っているので、誰か起きているのだろう。
覗いてみると、アンとテナが、お茶を飲んでいた。
「おはようございます、もう起きられるのですか?」
とアン。
「こう寒いと、一度目が覚めちまったら二度寝はきついな」
「たしかにそうですね。とは言え、年が明けるとますます寒くなるのですが」
「だろうな」
「夏の嵐もひどかったのですが、この冬は例年より冷え込みそうで、うちももう少し考えたほうが良いのでしょうね」
「そうだなあ。だいたい、この広いスペースをあの暖炉ひとつで温めるのは無理があるよな」
「熱の届かないところは、まったく温まっていませんよね。地下に寝室を用意したほうが、良いのかもしれませんが」
「あっちは情緒がなくて好みじゃないが、あんまりひどいようだと考えないとな」
アンと話す間に、テナがお茶を入れてくれた。
テナは綿入れの上から凝った刺繍のケープを羽織っている。
「さあどうぞ、ご主人様」
「おう、ありがとう。しかしお前たちもこんな早くから大変だな」
「ふふ、むしろ朝のこの時間が、一番リラックスできるのですよ」
「そういうものか」
「もっとも、あちらのお屋敷の下働きだとそうも行きませんが。しかし一度は引退したはずなのに、改めてこうして我が主人のために家の仕事をするというのは、実に満たされるものですね。やはり私はこの仕事が向いているようです」
テナは染み染みとつぶやき、お茶をすする。
たまにしぐさが年寄り臭い。
大根の酢漬けをボリボリ貪りながら、甘いお茶をすすっていると、テナが思い出したようにこう言った。
「そういえば、今日は午後から屋敷に行かれるのでしょう?」
テナの言う屋敷とは、街の東側にあるフューエルの家のことだ。
「ああ、開けっ放しもよくないとフューエルが言うものだからな」
「その通りです。ここの暮らしは快適ではありますが、あちらはあちらで、貴族にふさわしい暮らしの体裁、というものが整っております。ご主人様には、そうした経験も必要でありましょう」
「そんなもんかね」
「なに、ご主人様であれば、数回泊まれば、すぐに身につきますよ」
しばらくお茶を飲んでいたが、まだ夜の明ける気配はない。
夏場であれば朝練を始める前衛組も、今日はまだ寝ているようだ。
朝からお茶を飲みすぎたのか尿意を催して、トイレに向う。
この辺りの家が全部そうであるように、我が家のトイレも外にある。
かつては大変な苦労を持って用を足していたのだが、現在は仮設とはいえ立派な通路ができたので安心してトイレに行ける。
用を済ませて小さな窓から外を覗くと、湖の方に何かの気配を感じる。
外に出てみると桟橋に誰か立っていた。
手に持ったランプをかざすと、人影が振り返る。
白いくせっ毛が風に揺れた。
フルンだ。
「おはよう、ご主人様。早いね!」
「おう、フルンこそ早いな」
「うん! 最近は毎日バッチリ四時に目が覚める!」
「そうかそうか、しかしそこは寒くないか?」
「うーん、体が暑いから平気」
筋肉が増えると体が発熱する感じというのはたしかにあるが、フルンの場合、相当だよな。
種族の違いかどうかはわからんが、燃費は良くないのかよく食べる。
すごく食べる。
食べるといえば、スィーダちゃんもよく食べる。
こう言っちゃ何だが、居候とは思えない食べっぷりだ。
遠慮されたほうが俺としても困るけど。
しかし、俺と出会う前のフルンもそうだったのだろうが、これだけ食べる子が、ろくに飯にありつけない状態でいたのは、辛かっただろうなあ、と思う。
俺としてはいつでも腹一杯にしてやりたいところだ。
あれだけ動いていれば、肥満の心配もないだろうし。
俺はちょっと心配したほうがいいかもしれない。
生活習慣病が気になり始めるお年頃だもんな……。
午後。
アルサの街の東の高台には貴族や金持ちの邸宅が並んでいる。
その中でも湖面沿いの一等地にあるフューエルの屋敷に、俺たちは向かっていた。
うちからだと舟を使ったほうが早いが、それだと裏口から入ることになるので、主人夫婦としては屋敷からよこした迎えの馬車を使う。
クメトスのような形ばかりの領主と違い、フューエルの実家はアルサの北東部一体のエサ地方を支配する大地主である。
と言っても俺の義父にあたるリンツ卿は領地を持っていなかったので、二人の妻、つまり俺の義母がそれぞれの生家から受け継いだ領地を所有している、という感じだ。
フューエルの母方の実家であるコーデル家は、アルサにほど近い土地を多く治めている。
メルビエの故郷である巨人の里もそのひとつで、今はうちの所領というわけだ。
言葉で説明するとややこしいな。
とにかく、領地はいろいろあって、その対外的な窓口としてここの屋敷は機能しているのだ。
開けっ放しにはできない。
「おかえりなさいませ、旦那様、奥様」
そう言って出迎えたのは、二人の男女で、そのうちの一人が屋敷の女中頭リアラだ。
年齢は俺より上だが、初対面の印象はクメトスよりも若く見えたぐらいだ。
幸薄そうな地味な顔で、性格もおっとりとしているが、その分人当たりもよく、屋敷の女中たちからは慕われていると聞く。
テナが鞭なら彼女が飴といったところか。
仕事は有能で、テナが太鼓判を押して彼女を後継に推薦したそうだ。
「奥様、大旦那様より書状が届いております。至急ご確認を」
そういったのは、今一人の白髪の老人で、フューエルの執事であるキップンだ。
彼はテナに次ぐベテランでもうすぐ定年だという。
屋敷には彼の他にも何人かの男手がある。
詳しいことはわからんが、屋敷ってのはでかくなればなるほど人が要るものらしい。
さらに地方だと兵隊も雇うので、この比ではないとか。
「わかりました。では、先に済ませましょう。リアラ、この人のことをお願いね」
そう言ってフューエルは自分の書斎に向かった。
なんかうちの奥さん、お仕事できそうだなあ。
あまり仕事のできない俺は、女中頭リアラの案内で、プライベートなリビングに通される。
ここは普段、フューエルが貴重な余暇を過ごす部屋だ。
結婚前はいつも俺のうちでダラダラと過ごしていたが、あの時間を作るために、彼女はだいぶ苦労していたそうだ。
屋敷の建つこの辺りは湖に面しており見晴らしも良い。
特にこの部屋は大きなバルコニーのある二階の小部屋で、調度品などは質素だが窓越しに見える湖は非常に開放的だ。
「では、ただいまお飲み物をお持ちします。しばらくお待ちください」
そう言って部屋を出て行くリアラ。
まったり目の口調が和むなあ。
俺は小さなソファに腰をおろすが、側に控えるアンとウクレは後ろに立ったままだ。
俺に付き従ったのはアンとウクレだけで、あとはうちで留守番している。
「お前たちは座らないのか?」
「ええ。ここでは家のようには行きません」
とアン。
「そんなもんか」
「テナにみっちりと仕込まれましたので」
「それで他の連中は置いてきたのか」
「それもありますね」
そう言ってアンは少し笑うが、すぐにすまし顔に戻る。
そこにリアラと女中二人が酒などを持ってきた。
女中二人は支度を終えるとすぐに下がり、あとに残ったリアラがグラスに高そうな酒を注いでくれる。
「ありがとう、いい香りだ」
「ライアーヌの十二年ものです。奥様のお気に入りですの」
「なるほどね」
そう言って口に含むと、まろやかなのに酸味が効いてほんのりしびれる味だ。
たしかに彼女が好きそうな味だ。
ソファに腰を下ろしてぼーっと酒を飲んでいると、非常に手持ち無沙汰なんだよな。
普通、家で飲むときは誰かの柔らかいところを揉みながら飲むし、たまに外でエブンツたちと飲むときはもっと馬鹿騒ぎするもんな。
これでせめてTVでもあればいいんだけど、当然、そんなものはないし。
「フューエルはここで一人で呑んだりしてたのかい?」
「最近は、旦那様のお宅に出向かれることが多かったので、うちではあまりお飲みになりませんでしたが、以前は時々」
「ふーん、どんなふうに?」
「そうですね、黙って本などをめくりながら……、たまに私か、テナが本家ではなくこちらに居る時は彼女が、話し相手を努めさせていただきました」
「なるほどね」
そう話すリアラは、俺の斜め向かいに立ったまま控えている。
俺よりは年上で、かろうじてまだ三十代だと聞いているが、真っ白い肌はもちもちできめも細かく、年齢を感じさせない。
あらためて見上げるとでかい胸がふわふわと揺れていて、非常に魅力的だが、すぐにテナの怖い顔が浮かび、慌てて視線を窓の外に移す。
「ちょっと曇ってきたな。今夜は荒れそうだ」
「本日は、旦那様もお泊りになられると聞いておりますが」
「うん」
「寝室のご用意もしてあるのですが、本当に奥様と同じお部屋でよろしいのでしょうか?」
「おかしいかい?」
「いえ、申し訳ありません。大旦那様も日頃寝室は別でございましたので」
「そうなのか。俺の故郷じゃ、夫婦は一緒に寝るもんだがな」
「従者は、その……夜もお側でつかえると聞きますが、妻は月の決まった時期に、子種を…いただくために、そういうことをするものだと……その……聞いておりましたので」
そう話すうちにリアラの地味目の顔は真っ赤になっていた。
なんかよくない雰囲気になってきたな。
ちらりとアンの顔を見るとすましたままだし、隣のウクレは目が合うと微妙に苦笑しただけだ。
つまり、この場は自分でどうにかしろというわけか。
「まあ、なんだ。その辺りは風習の差なんだよ。フューエルは俺に合わせてくれるから、俺も甘えているのさ」
「さようですか、ではそのように。でしたら、アンたちの寝室も別途用意しなくてもよろしいのでしょうか?」
「うん、そばに居てくれないと不便でね」
「かしこまりました。その……夜のこと以外でありましたら、屋敷のものを誰でもご自由に使役くださいますよう。我らはすでに、貴方様の女中でもありますので」
「ありがとう、頼りにしてるよ」
どうにか乗り切ったところで、フューエルがやってきた。
「ごめんなさい、ちょっと手間取って」
「親父殿はなんて?」
「先の大雨で流れた橋の工事で、費用の追加請求がどうのこうのと。事務仕事は得意でしょうに、最近何でも私に任せていたから勝手がわからなくなっているのでは」
「はは、頼りにしてるのさ」
「頼られるのは嬉しいのだけど、まだ隠居する年でも無いでしょうに……。リアラ、私にも頂戴」
そう言うと、リアラは、
「ただいま……」
と答えて準備をする。
その間にフューエルは俺の隣にどかっと腰を下ろして、腕を絡めてきた。
「ふふ、どうです? ここの眺めもいいものでしょう」
「ああ、天気が少し残念だが、絶景だな」
「初夏の新緑の季節は、対岸の山裾が綺麗に芽吹いて、それは美しいものなんですよ」
「それは楽しみだ」
「だけど、その頃にはあなたはルタ島に渡っているのでしょう?」
「そうだった。お前は来ないのか?」
「それはどこまでも付いて行きたいけど……下手をすれば何ヶ月も離れることになるから、難しいですね」
「そうか」
「うちの従者たちがついていれば、あなたのことは心配ありませんけど」
「俺はお前のことが心配だよ」
「大丈夫ですよ、今までもずっと一人でここで過ごしたのですから」
「一度家族が増えると、そうはいかんだろう。俺だって少し前まで、家族も使用人もなしに、ほんとに一人で暮らしてたけど、今じゃとても考えられんからな」
「あなたの故郷にも、興味はありますけど……」
そうやって話すフューエルにリアラがグラスを差し出す。
それを受け取りながら、
「どうしたのです、リアラ。顔が赤いですよ?」
「いえ、なんでもありません」
「なんでもないことはないでしょう」
そういうフューエルの脇をつつく。
「お前があんまりベッタリ俺に甘えるから、照れてるのさ」
「私が?」
そう言って自分の姿を見るフューエル。
腕を絡めて胸を押しあて、長い足は俺にすり寄せている。
どう見てもいかがわしい。
「あ、こ、これは……」
慌てて姿勢を正して、座り直す。
「つい、あちらの家のノリで行くところでした」
「あの、奥様。おじゃまでしたら、私は下がりますが」
「いえ、大丈夫です。こちらこそごめんなさい、ちょっと羽目をはずしすぎましたね」
その場は取り繕ったものの、なんとなくぎこちないまま、まったり過ごす。
すでに日は沈み、西の空が僅かに赤らむほかは、闇に包まれてしまった。
それでも窓から見える山並みのシルエットなどは、なかなかのものだ。
ところで、対岸に見える小さな灯りは、なんだろう。
漁船とは違うようだが。
尋ねてみると、
「あれは白象砦の灯りですよ」
「ああ、あのへんか。なんか随分近くに見えるな」
「昼間だと逆にほとんど見えないのですけど。あれは遠くまで届くように篝火を炊いているのでしょう。今夜もクメトスはあそこに居るのでは?」
「そうだったな」
最近は、クメトスにもすぐに連絡がつくようにミラーを一人、同伴させている。
定期的に実家に帰るメルビエも同様だ。
こちらの屋敷にも、三人常駐しているので、どこにいても連絡がつく。
現代だと半ば当たり前な、リアルタイムに連絡がつく仕組みっていうのは、やはりどんな社会でも便利なものだ。
クロックロンにも可能なことなので、今後は街なかのいたるところに忍ばせて置くのはどうかとエレンなどは言っていたが、それはそれでどうなのかという気もする。
執事のキップンが食事の支度ができたと伝えに来た。
立派な食卓で食べる立派な食事は悪くはないのだが、いささか味気ないな。
そんな思いが顔に出ていたのか、フューエルがこう言った。
「あなたはもう少し、お行儀の悪いお食事のほうが好みのようですね」
「なに、たまには変化があるのもいいものさ。あくまで、たまにはね」
「私も、あまり屋敷を開けすぎるのもどうかと思うのですが、私がいないと、寂しいのでしょう?」
すまし顔でそんなことを言うフューエル。
「よくわかってるじゃないか」
「ところで、年末の予定なのですけど」
「うん?」
「カスターロの大叔父に挨拶に行くことになると思いますので、よろしくお願いします」
「ふむ」
「そこで、ゲートを使うことになるのですが、なんでもゲートの使用に問題があるとか?」
「ああ、そうなんだ」
と、以前あったことを話す。
どういう仕組みかは分からないが、突然、地球の俺の部屋に飛ばされちゃったんだよな。
「あなたの故郷に、ゲートを使って行けるのですか? それならばぜひとも……」
当然のようにフューエルは興味津々となる。
「気持ちはわかるが、次も帰ってこられるかどうかわからんからなあ。好奇心で、そんな博打は打てないだろう」
「たしかに、よく考えれば大問題ですね。しかしその、あなたは故郷に未練などは……ないのですか?」
「そりゃあ、なくはないけど、なんせあっちには身寄りがないからな。墓参りは済ませてきたし、あとはこっちの世界で事足りるのさ」
「そうですか。しかし、ゲートが使えないと、この先何かと困りますね。都に出ることもあるでしょうし」
「それに関しては、アテがあるにはあるんだがな」
「というと?」
ついで判子ちゃんについて話す。
「そういえば、あの売り子さん。あなたと同郷という話でしたね。ということは、やはり異世界から来た、ということなのですね」
「そうなんだ、たぶんだけど」
「たぶん、というのは?」
「俺はよくわからないけど、異世界から飛んで来る能力を自分自身が持ってるらしいんだよな。自覚はないんだけど。けど、判子ちゃんは何らかの技術で世界を飛び越えるらしいんだ。つまり、そのことに関して分析出来るだけの知識や技術があると思う」
「では、彼女に確認してもらえば良いのですね」
「そうなんだけど、あの子はなんにも教えてくれないんだよな」
「なぜです?」
「俺が断片的に得た情報から推測するにだな、彼女は俺みたいに勝手に世界を移動する人間を監視する仕事についているらしいんだ。だから、彼女は俺の監視者であって協力者ではないというわけだ」
「そうなのですか? 彼女もてっきり、あなたに気があるものだと」
「そう見えたか?」
「ええ、見えました。だから以前も尋ねたでしょう。庶民で妻に迎える者はいないのかと」
「それって、判子ちゃんの事を聞いてたのか」
うーん、俺からしたら、悪意こそないものの、特別好かれてる気もしなかったんだけど。
それを言ったらフューエルも似たタイプだったし、合い通じるところがあるのか。
じゃあ、その路線で押してみれば……ダメだろうな。
そもそも、フューエルはいつそこまでチェックしてたんだろうな。
ローンの妹であるエンシュームちゃんのことも知ってたし。
油断も隙もないなあ。
「しかし、それでは彼女から情報を得るのは難しいのでは?」
「うん、そこで今一人、異世界人がいてだな」
「まだいるのですか」
今度は本屋のネトックのことを話す。
「あの本屋は、フルン達と買いに入ったことがありましたが……それでは、あの商店街には三軒並んで異世界人が住んでいるのですか」
「そういう見方もできるな」
「呆れたものですね。ツバメやクレナイも、その身に宿す魂は女神様のものだと言いますし、幼いころの私は伝説の雷炎の魔女を間近に見ただけで、自分がおとぎ話の主人公になったような気がしたものですが、今や異世界から来たという紳士様を我が伴侶として居るのですから」
「俺だって見知らぬ土地に突然やってきて、こんな美人の嫁さんとごちそうを食えるようになるとは思わなかったよ」
「お上手です事。その調子でこれからも従者を増やすおつもりでしょう?」
「相手が望むならなあ」
「それで、エディのことはどうするのです?」
「なんで今、そんなことを聞くんだよ」
「今、ここの真下に居るのでしょう?」
「らしいな」
「それを手紙で知らせてきたのでしょう」
「そうだな」
「でも、交渉は予定より長引いているそうですが」
「そういう噂もあるな」
「ならばなぜ、すぐに会いに行かないのです」
「やっぱり、行くべきだと思うか?」
「当然でしょう」
「まあ、そんな気はしてたんだ。でも、魔界はよくわからんからなあ」
「それはまあ、そうなのですが」
「仕方ないな、明日家に帰ったら、相談してみよう」
「それが良いですね。私も同行できそうなら付き合います。一度本格的に魔界を歩いてみたかったのですよ。と言っても年内は無理でしょうが」
「好奇心が旺盛なことで」
その夜は、屋敷のふわふわのベッドでふわふわと楽しんだ。
シャミがベッドも作っているはずだが、完成はいつかなあ。
楽しみなことだ。
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