第193話 同棲
あの日以降、フューエルは領主の仕事で離れる時以外は、俺の家で暮らすようになった。
まあ、今までも寝る時以外はずっとうちにいたけど。
フューエルの家ほどの貴族ともなれば結婚はなかなか大変らしく、リンツ卿は随分前から根回ししていたようで反対こそ無いのだが、やはり正式には紳士の試練を終えて、国からも何らかの称号をもらい、名誉貴族的なものになってから、ということらしい。
俺としては別に毎日フューエルとイチャイチャできればそれでいいんだけど。
ただ、内輪でささやかな式をあげた。
リンツ卿が強く望んだからだ。
そうして俺は、妻と同時に両親も得た。
こういうのは、なんというか、気恥ずかしいものだな。
もっとも、フューエルの普段の態度は別に変わらないわけで、いつもどおりツンツンしている。
そんな彼女がアレの時にはおもいっきり甘えてくるところがいいわけだが、それはそれとして、ウクレなどは、奥様奥様といいながら、嬉しそうに身の回りの世話をしていた。
フューエルの屋敷にも、彼女の身の回りの世話をする人間は数人いて、今はそうした女中たちも通いでうちに来ている。
今朝も寝起きのフューエルの周りに何人か群がり、身だしなみを整えていた。
「フューエル。お姫様の身だしなみは大変だな」
「私など、マシな方ですよ」
そんな女中たちの親玉であるテナはというと、まず最初に一言、心のこもった声でおめでとうございます、と言い、ついで婚前に関係を持つなど如何なものかとたっぷりと絞られ、あとはそれまで通りだ。
ただし、俺達の呼び方が、奥様と旦那様に変わった。
ちょっと照れるな。
神殿の大掃除も終わり、ついでに我が家の大掃除も終わり、あとは年越しを待つばかりののんびりした年末。
俺はソファでフューエルと並んで座り、晩酌をしていた。
それだけなら以前と変わらないが、違うとすれば、給仕をする従者たちがおっぱいを出してるところぐらいかな。
「いつもこんな格好で相手をさせていたのですか」
「うん」
「またそんな嬉しそうな顔で……」
「だって、好きなんだもん、おっぱい」
「またそんな無邪気な顔で……」
「いいじゃないか」
「まったく……」
フューエルは呆れた顔で、自分のブラウスのボタンを外し始める。
「どうしたんだ?」
とあえて聞くと、頬を染めて恨めしそうな顔で、
「お好きなんでしょう? その……胸が」
そう言って、形の良い乳房をぽろんと取り出した。
俺は目一杯無邪気な顔で、
「うん」
と嬉しそうに返事をした。
俺が新婚生活を満喫している間、パン屋のハブオブはうつうつと過ごしていたようだが、ちょっと現状ではどうにもできんよな。
例の田舎の恋人が、もう少し近くに住んでいれば様子を見ることもできたんだが、ゲートを使っても丸一日かかる距離らしい。
そもそも、ゲートは高いしな。
感覚としては、場所にもよるがシーズン時に首都圏から沖縄に旅行にいく、ぐらいの価値がある。
しかも、田舎の人間は現金収入が少ない。
安く上げる方法もあるそうだが、あちらがまたすぐに出てくるのは難しいだろう。
そこのところは、エレンが盗賊のネットワークを駆使して調べてくれているらしい。
自分にできることがない時は、基本的に丸投げするのが俺のスタンスなので、丸投げしておいた。
で、当面の問題が解消した俺の目の前には、赤竜騎士団参謀ことローンが立っていた。
「おめでとうございます、これはエディからのプライベートなお祝いです」
そう言って立派な酒樽を差し出した。
まだ、公にしたわけではないのだが、エディだけには言っておかないとまずかろうと、伝えておいたのだ。
その名代として、ローンが来たわけだ。
「今すぐ駆けつけたいと、本人も言っていたのですが、いかんせん、大事な仕事が控えておりますので」
「まあ、なんだ。よろしく言っといてくれ」
「それと、これは私とポーンから」
と小箱を差し出す。
「なんだいこれは」
「スナヅルの肝を燻したもので、精がつくと評判だそうですよ」
「ははは、ふたりとも手厳しいなあ」
「どういたしまして。ところで、正式なご婚礼はどうなさるのです? やはり試練を終えてからでしょうか」
「そうみたいだな。そういう面倒なのは勘弁して欲しいんだが」
「あなたの活躍を待っているものが、まだどこかにいるかもしれませんよ。隠居するには早いでしょう」
「そうかねえ」
「年末には、エディとともに改めてまいります。その時は、覚悟を決めておくのですね」
とニヤリと笑う。
「怖いこと言うなあ」
「では、本日はこれで」
そう言って、ローンは帰っていった。
覚悟と言われてもねえ。
それにしても、今日のローンは機嫌が良かったな。
ローンにやきもちを焼いてもらいたい気持ちが無いわけでもないというか、むしろあるわけだが、あんなふうに素直にお祝いされると、まったく相手にされてないみたいでちょっとショックじゃないか。
……贅沢を言い過ぎだな、戒めよう。
入れ違いに、自分の屋敷に戻っていたフューエルが帰ってきた。
「ご来客が?」
樽を見ながらそう尋ねる。
「いま、ローンが来て、エディからのお祝いだと」
「今朝うちの方にも、手紙が届いていました」
「なんて書いてたんだ?」
「秘密ですよ」
そう言ってフューエルは笑う。
「ところで、その小箱は?」
「これは何でも食べると精力がつく薬だってさ」
「まあ……」
とフューエルは顔を赤くする。
「それで、実家の方はいいのかい?」
「ええ。父が気を使ってくれたようで、しばらくは公務を控えろと」
「といっても、うちはもうやることないんだけどな」
「やることならあるでしょうに」
「そうだっけ?」
「そうですよ」
そう言って俺の腕を取る。
「まだ昼間だぞ?」
「昨日は朝からしていたではありませんか」
「まあ、そういう日もある」
「でしたら、今日は昼から頑張る日なんですよ。お風呂は湧いてるんですか?」
「いや、さっき掃除してたからもうちょっとかかるんじゃないか?」
「では、とりあえず、そのお酒をいただきましょう」
「それはいいアイデアだ」
巨人のメルビエが樽を軽々と抱えて奥に運び、その間に俺達はどこで飲むか考える。
「普段はどこで飲んでいたのです?」
「どこと言っても、ここもそんなに長くないしな。寒くなる前は、裏庭でもよく飲んでいたが」
「流石にあそこは寒いでしょう」
「となると、やっぱり暖炉の前か……」
そう言って部屋を見渡す。
床を起こして簡単な間仕切りで区切られただけの元倉庫は、場所によって様相が異なり、暖炉の前はソファが三脚ならんでいる。
その手前は食事用の長机と炬燵がならび、暖炉に向かって右手の二階へ続く階段の下は、絨毯とクッションが無数に並んで、普段年少組がゴロゴロと遊んでいるスペースだ。
今は皆働いている時間帯なので、誰もいない。
「あっちの奥に行くか」
フューエルの手を引いて、右手の奥に陣取る。
部屋の隅には、フルンが読み散らかしたのであろう本が数冊散らばっていた。
「まあ、こんなに散らかして。まだテナの教育はここまでは行き届いていないようですね」
と言いながら拾い集めるフューエルに、
「今後は、女主人の努めになるんじゃないか?」
「女……主人……」
そうつぶやいて急に手を止め、顔を背ける。
「どうした?」
「なんでもありません!」
「なんでもあるだろう」
回りこんで顔を見ると、真っ赤になっていた
「急に変なことを言うから、意識してしまったではありませんか」
「それぐらいでそんな可愛い反応されると、こっちが恥ずかしいぞ」
「ほっといてください」
ムキになって、本をバサバサと隅に積む。
「そう言わずによく見せてくれよ」
「悪趣味ですよ」
「でもそういうのは、今しか見られない反応だろう?」
「だから、余計に悪趣味なんです」
「ははは、まあそうかもしれん」
そんなことを話しながら、一角にクッションを積み上げて、深々と腰掛ける。
「ほら、おいで」
手招きするとフューエルは黙ってうなずき、着ていたコートとカーディガンを脱いで、肌着一枚で俺により掛かるように腰を下ろす。
それだけだと寒いので、側に落ちていたひざ掛けに一緒にくるまった。
そこに頃合いを見計らって、パンテーとアン、ウクレとデュースが、今頂いたばかりの酒を移したデカンタと、軽いつまみを持ってきた。
それぞれが俺たちの周りに腰を下ろし、グラスを差し出す。
「では、乾杯」
グラスを合わせて、一口あおって、ふーっと息を吐く。
「渋いな」
俺が顔をしかめると、フューエルは笑って、
「よく味わうんですね」
「そうしよう」
もう一度、口に含んで舌で転がす。
渋いが、いい酒だ。
「ふぅ、美味しい」
そう色っぽくつぶやくフューエルを抱き寄せて、首筋に顔を埋める。
「もう、せっかちですよ。まだ飲み始めたばかりなのに」
「いや、いい匂いだなあ、と思って」
「ほんと、そういう変態趣味を、どこで覚えてくるんですか?」
「それは皆にもよく言われるよ」
「まあ、そうなのですか?」
フューエルが自分の前にいたデュースに聞くと、
「そうですねー、お仕えしてもう一年半ほどですがー、何度そのセリフを言ったことかー」
「では、私もこれから、何度も同じ目に会うわけですね」
「でしょうねー」
そう言いながら、デュースはフューエルに体を寄せる。
「ちょっとデュース、顔が近いですよ」
「ふふ、もっと近づけますよー」
そう言って、デュースはフューエルの唇を奪う。
「ん…んっ……、んはぁ……ちょっとデュース!」
「女同士の絡みもー、ご主人様のお好みですからー、こうして目の前で見ていただくのも、私達の勤めなんですよー」
「そ、そんなことまで!」
「私とのキスはー、嫌ですかー」
「い、嫌というか……考えたこともなかったので」
「あらー、ではもし私を従者にしていたらー、こうやってかわいがってはくれなかったのですねー」
「そ、それは……どうなんでしょう」
「ふふー、なかった未来を案じても仕方がないですねー」
デュースは体をはなして、再び目の前に腰を下ろす。
「私達もいただくとしましょうかー」
デュース達も酒盛りを始めた。
「奥様、このクッキー、美味しいですよ」
フューエルの隣に座っていたウクレが、彼女に手渡す。
「あら、本当。香ばしいバターがいいですね」
「はい」
「こっちの砂糖菓子もいいですよ、ほら、口を開けて」
とウクレの口に入れてやる。
楽しそうだなあ。
「アン、俺にもあれやってくれよ」
俺の隣で体を寄せていたアンにそうねだると、
「そこは奥様にねだるところでは?」
「それは後でいいよ」
「仕方ありませんね」
といって、手元にあったクッキーを、そっと口に咥えて差し出した。
さすがはアン、年季が違うぜ。
そうやってイチャイチャしていると、道場に行っていたフルン達が戻ってきた。
「あー、みんな昼間からご奉仕してる! 私もやる!」
「おう、おかえり。まずは汗を流してこい」
「うん!」
揃ってバタバタと浴室に消えた。
それを見たフューエルが、
「まだ、沸かしてなかったのでは?」
「あいつらはいつでも水で平気だよ」
「まあ……」
「頑丈だからなあ」
そんなことを言っていると、すぐにビショビショの体で飛び出し、出てきたところを台所にいたモアノアに怒られてまた引っ込んだ。
数分後、体を綺麗に拭いた、素っ裸の年少組が、ぞろぞろと周りに集まってくる。
「おまえたち、見てるほうが寒いぞ?」
「えー、そうかな? じゃあ、毛布かぶる」
と隅っこで固まり、フルン達は引っ張り出してきたすごろくで遊びはじめた。
ご奉仕してくれるんじゃなかったのか。
「そういえば、シルビーはどうしたんだ?」
不意に思い出してフルンに尋ねると、
「お家に帰ってるよ!」
「そうか」
「そういえば、帰る前に挨拶したいって言ってたけど、ご主人様ダンジョンに潜ってたから会えなかった」
「そうだったか、悪いことをしたな」
「年が明けたらまた来るって」
「ふむ」
彼女の実家は借金で大変らしいけど、大丈夫なのかな?
本人は一皮むけて成長したように見えたけど、お金の問題は、安易に手を貸すわけにも行かんからなあ。
かと言って、今の彼女にどうこうできる問題でもないだろうし。
帰ってきたら、なにか相談に乗ってやれると良いけど。
話し終えると、フルンは再びすごろくに熱中する。
俺は空になったグラスに手酌で継ぎ足すと、ついでにフューエルのグラスにも注いでやった。
「どうも、私の考えていた新婚生活とはかけ離れているのですが……」
何杯目かの酒を飲み干したフューエルが、さらにおかわりを求める。
「そうかい?」
「だけどこれはこれで」
「うん?」
「良いものだと思いますよ」
そう言って俺の腰に手を回し、ぐっと寄りかかってきた。
俺はアンを抱いていた手を放してフューエルを抱きとめる。
そろそろ、次のステップかな。
白いモヤが広がる。
ああ、懐かしいな、この感覚。
だが足元に地面はなく、空には網目状の光の筋もない。
あるのは白いモヤだけだった。
「よう」
「まずはめでたいのう、主殿」
「もう会えないのかと思ったよ」
「いつでも会うておる。それが、今ではないだけのことじゃ」
「そうかな?」
「そうじゃよ。うつろいゆく時とともにあれば、いずれその時が来る」
「そしたらまた、別れもあるんだろう」
「人として妻を得て、あとは子を産み育て、やがて土に還る。そうした道もあるが……」
「それも……いいかな」
「そうじゃな、それも良い。じゃがその環を外れて真理へと至る道もある」
「ふむ」
「いずれの道を選べども、我らはともにある。お主は己が信じる道を進むが良い。我らは常に、お主に付き従おう」
「ああ……」
やがて心地よい安らぎに包まれて、俺は何もわからなくなってしまった。
目を覚ますとあたりは薄暗い。
すでに日が暮れているようだ。
だが暗い原因は目の前の巨大な非対称の塊だった
よく見ると、左はフューエルのおっぱいで、右はデュースのおっぱいだ。
そういえば、眠る直前まで目の前で堪能してたんだった。
眠っている二人を起こさないように体を起こすと、土間の方では料理人のモアノア達が忙しく働いている。
その様子をボーッと眺めていたら、フューエルが目を覚ましたようだ。
眠そうな頬にそっとくちづけると、幸せそうな顔で、俺の頬にキスを返す。
かわいいなあ、この奥さん。
「そろそろ、飯時みたいだぞ」
「さっきつまんで、そのまま寝ていたではありませんか」
「その前に、しっかり運動しただろう」
「あれは運動に入るのですか?」
「さあねえ。とにかく、一風呂あびるか」
「背中を流してくださるんでしょう?」
「背中と言わず、前でも横でも」
「本当に、どこでそういう発想を身につけるんでしょうね」
「さあなあ」
温めのお湯にゆったりとつかっていると、今、集会所から戻ったのであろうチェス組の四人、エク、プール、イミア、燕が入ってきた。
「あら、お邪魔だったかしら?」
という燕にフューエルが、
「いいえ、そろそろ生活の場に女体があふれていることに、慣れてきたところですよ」
「それは頼もしいわね、さすがはご主人ちゃんに嫁ぐだけはあるわ」
「ええ、多少は張り切らないと、なんせうちはバリエーションが豊富すぎますから、ただの貴族の娘では、埋もれてしまうでしょう?」
「そうよ、だからご奉仕したい時には、自分からアピールしないとダメなの。そこは奥様でも譲れないわね」
「覚えておきますよ」
そんな会話を聞き流しながら、俺は周りにあふれるおっぱいをボーッと眺めていた。
平和だねえ。
「エク。あなたはナアスス家の出なのでしょう?」
全員が湯船に浸かってから、フューエルがエクにそう尋ねた。
「はい、さようでございます、奥様」
「その……ナアススといえば、閨房術も巧みだと」
「仰るとおりでございます。必要であれば、うちの者には私の持てる技術を全て、レクチャさせていただいております」
「それで……なんですけど」
そこでイミアがフューエルに興味津々の体で尋ねる。
「奥様も、やっぱり凄いプレイとか興味あるのでしょうか?」
「いえ、そうではなくて……」
「奥様は、御懐妊なさるための術を、お聞きなさりたいのでございましょう」
とエク。
「ええ、そうなのです。私ももう、二十歳を過ぎておりますから、遅いぐらいですし、その……」
「お気持はわかりますが、焦りは禁物でございます。子を宿すためには、心を穏やかにし、互いに慈しみ合うことが肝要でございます。そうした日々の営みの後にこそ、良いお子は宿るというもの」
それを聞いたイミアが、
「つまり、毎日楽しく……あのことをするということですか?」
「左様でございます」
「だったら、今まで通りでもよさそう……でもそうですよね、奥様ですから、跡継ぎを産んでいただかなければ」
「ですが、あまりこのようなことを言うのはなんでございますが」
エクはフューエルに改まる。
「紳士の跡継ぎを宿すというのは、これは非常に困難なお仕事でございます。その子種は女神に匹敵する高貴な血統。それを宿すには、我ら人の身というものは、その器があまりに小さすぎるのです」
「わかっている、つもりです」
「ですから、多くの妻や人の従者をおもちいただき、数の可能性にかけねばなりませぬ。奥様に於かれましては、自らのお子をと執着しすぎますれば、やがてそのことが災いとなるかもしれぬのです」
「ええ、そのことは、父を通してペーラー家より聞いています。紳士の血統に嫁いだ以上はたとえこの人の子を宿すのが他の腹であろうと、私は我らの子として、慈しむつもりです」
「結構なお覚悟でございます。であるならば、今宵より、少しずつ互いに慈しみ合う技を、お伝えさせていただきましょう」
「ええ、よろしくおねがいしますね」
なんか深刻な話をしてるな。
跡継ぎか。
自分に親の記憶がほとんど無いからか、逆に自分が親になるという自覚がないな。
だが、メルビエの姉は幸せそうにしていた。
あんな顔をフューエルがしてくれれば、それは幸せなことだろう。
フューエルが幸せなら、きっと俺も幸せなんだろうな。
しかし、それはそれとして、だ。
「水をさして悪いんだがな」
と話しかける。
「紳士ってのは、その、なんだ。そんなに種が薄いのか?」
それにエクが答えて、
「申し上げにくいのですが、見方を変えればそのような解釈も成り立ちますのでございます」
「ホロアはともかく、お前やウクレでもまったくかすりもしなかったのは、そういうわけか」
「左様でございます。私とて従者の義務として、あらゆる手段を講じて搾り取らせていただいておりますが、まずは投げたコインが地面に立つ程の可能性だとご覚悟いただいたうえで、お励みいただくよりほかありませぬ」
「頼りねえなあ」
そこでイミアが、
「私も運が良ければ子供を作れるのでしょうか?」
「さあ、聞いたことはないのですが、人と合いの子をなせる獣人であれば、可能なのでは?」
フューエルの答えを聞いたイミアは、
「でも、獣人では家は継げませんね。女の子なら従者にできるでしょうか?」
「おまえ、自分の子どもとエッチなことをしろと」
「え、でも、そういうものではないのですか? 従者の子は、大半が女で従者になると」
「いいのかそれは」
「さあ、よく知りませんが……」
そこでエクが、
「プリモァならともかく、獣人のようにコアの強い種族はまず合いの子は生まれにくいのですが、それでも生まれた場合、その時点で血を引いておりますゆえに、いわば契約したまま生まれてくるようなことが多いものでございます。あるいは古代種のコアに該当するものをまったく持たずに生まれてくれば、契約が成り立たぬのでありますが、そちらのほうがまず珍しいことでございます」
「そうなのか、いや、でも理屈はわからんでもないな。血で契約が結ばれるんだもんな」
「はい。もっとも血族の従者とは奉仕の関係を結ばぬ場合も、ままございますれば、そこはご主人様のご裁量しだいてございます」
「ははあ」
なんだかややこしいな。
まあいいか。
俺はフューエルを膝に抱きかかえてこう言った。
「まあなんだ、気負わずにのんびり行こうぜ」
「ほんと、のんきな人ですね、あなたは」
「俺のチャームポイントだからな」
「そのようですね」
そう言ってフューエルは俺の顔に胸を押し当てたまま、抱きしめてくる。
俺は無心で、その柔らかい感触に浸るのだった。
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