第97話 氷風呂

 長い長い山越えを終えた。

 俺たちの旅も、最後の難関を越えたわけだ。

 それを祝うかのように、寒々とした岩と雪は消え去り、緑の生い茂る鮮やかな風景が戻ってくる。

 ついでに熱気と湿気も戻る。


「あついな」

「あついですねー」

「すげーあついな」

「あつすぎますねー」


 御者台でのデュースとの不毛な会話も戻ってきた。

 はあ、あつい。


「ご、ご主人。これは…いったい……」


 俺のすぐ後ろで新人従者のオーレがなまこのようにとろけている。

 暑いのが苦手だと言ってたから、さぞ辛かろう。


「ちょっとついてこい」


 オーレを連れて後部の家馬車に移る。

 こちらでは、フルンの新しい剣であるエンベロウブの鞘をカプルが作っていた。

 今はちょうど削りだした木を磨いているところらしい。

 その横でフルンが食い入るように眺めている。

 こんな揺れてる馬車でよく細工ができるもんだな。

 それを横目に風呂桶の蓋をとって確認すると、昨夜のお風呂のお湯がまだ張ってある。

 程よくぬるい。


「オーレ、ここで水浴びしてろ。少しは楽になるだろ」

「わかった」


 ふらふらと服を着たままザブンと飛び込む。


「……暑いからぬるいになった」


 服ぐらい脱ぎなさいよ、君。

 一旦、引きずり出して脱がせる。


「そうだ、氷の魔法が使えるんだろ? 氷を作って浮かべたらどうだ、もっと冷えるぞ」

「なるほど。ご主人、頭いい」


 そう言ってオーレは湯船の上に手をかざす。


「凍れ!」


 バシュッ!


 爆音を立てて、湯船の水が凍った。

 全部。

 まるごと巨大な氷の出来上がりだ。

 でもって突然これだけの水が凍ったもんだから、体積が膨らんで木製の湯船も裂けた。

 あーあ。


「これはやってしまいましたわね」


 作業の手を止めて、カプルが凍った湯船を確認する。

 見事に側面が裂けていた。


「すまん、まさかこんなことになるとは」

「怪我がなくてよかったですわ」


 騒ぎを聞いて、アン達も顔を出す。


「魔法の量的な制御というのは、難しい物なのですよ」


 とアン。

 確かにペイルーンはデュースと同じく火の魔法を使うが、ほとんど丸焼きにするだけだしな。

 デュースが器用に地面を乾かしたりできるのは、ずば抜けた技量があってこそなのだろう。

 エンテルはむしろ魔力が少なすぎて、小さな氷を作るのがやっとというレベルなので、ちょっと冷やすぐらいがあるいみ全力なのだ。


「でも、これから氷の心配が要らなくなりますね。私にはちょっと負担が大きかったので」


 とエンテル。

 やっぱりしんどかったのか。


「下から見ないとわかりませんけど、おそらく修理に二日はかかりますわね。もっとも、これが溶けてからですけど」


 そういってしみじみと惨状を見下ろすカプル。

 氷の上ではオーレと、さらにフルンがはしゃいでいた。


「はあー、しあわせ、しあわせー」

「あはは、つめたーい、こおるー、つめたーい」

「しあわせー」


 楽しそうだな。


 というわけで、あとは任せて再び御者台に戻る。

 順調に街道を進むと、昼前にポントという町に出た。

 農村に毛が生えた程度の小さな町だが、賑わっている。


「ゲートがあると、それなりに人が集まるんですよー」


 とデュース。

 なるほどね。

 田舎でも特急が停まるかどうかで大違いだもんな。


 オーレの為の奴隷の首輪を買い求め、更に久しぶりに新鮮な食材を買い漁る。

 肉だけでなく、川魚やチーズ、その他もろもろが手に入った。

 この辺りはわりと土が肥えていて豊からしい。

 更に酒場で念願のアレを見つけた。


 アレとはもちろんビールだ。

 念願の黄金色の輝き。

 いとしの黄金水。


「そうそう、言ってましたねー。このオプール・ビールが飲みたいとー」


 とデュース。


「この街から北西に抜けてスローツ河を上ると原産地のオプール地方なんですよー。この辺りでなら手に入ると思ってましたが、ちゃんとありましたねー」

「ちょっと高いけどな」

「まあいいじゃないですかー、せっかくなので買いだめましょー」


 しこたま買い物して馬車に戻る。

 こちらではオーレとフルンが風呂桶から水を汲み出していた。


「オーレ、しでかした。お風呂、壊した」


 頭が冷えて、しでかしたことに気がついたらしい。


「まあ、たまにはそういうことも有るさ。俺もしょっちゅう失敗するからな」

「ご主人もか、よくないな」

「そうだなあ」

「よくない。しょんぼりだ」

「ああ、そうだな……」


 なんだか、俺まですごくダメな気がしてきた。

 オーレは感情表現が素朴すぎて影響される。

 もっといつも幸せでいてもらおう。


「よし、汲み出しが終わったら、改めて氷を作ってくれ」

「大丈夫か? また壊さないか?」

「そうだなあ……」

「それなら鉄のたらいが有りますわ」


 カプルが大きな鉄のたらいを出してきた。

 これなら行けそうだ。

 綺麗に洗って、水をはる。


「よし、頼むぞオーレ」

「分かった……。凍れ!」


 バシュっと再び凍る。

 巨大な氷のいっちょ上がりだ。

 エンテルのように飲み物をほどよく冷やすとは行かないが、これだけ氷があれば、いくらでも冷やせる。

 クーラーボックスも大きい物を作りなおしてもらおう。

 買ってきたビールを樽ごと冷やし、飲水の樽にも氷を入れる。

 暑い夏に冷たいものが有るのはいいなあ。


「役に立ったか?」

「ああ、ばっちりだ」

「そうか、よかった。しあわせだ」


 オーレにも幸せモードが戻ってきた。

 よかった。


 食事を待つ間に、リプルが早速氷でアイスを作っている。

 牛娘のリプルは自分の乳搾りの日課のほかは、モアノアについて料理修行の毎日だ。

 すでにたくさん料理を覚えたらしい。

 みんな成長してるねえ。


 感心してる間に、さっき買ってきた果物とまぜて、シャーベットの出来上がりだ。

 リプルがさっそくオーレに味見を頼んでいる。


「オーレ、味見してみて」

「うん、これ、食い物か?」

「そうよ、あなたの作った氷と、わたしのお乳でつくったの。おいしいよ」

「うん、食う」


 ぱくりと一口。


「んふっ! うまい! こおりが甘い、とろけるうまさ! すごい!」

「よかった、たくさん食べてね」

「いいのか? オーレ、どれぐらい食べていい? 半分か?」

「半分はだめだよ、みんなでわけないと」

「そうか、そうだな。仲間いっぱいだもんな、しあわせ分ける」


 楽しそうだな。

 ちなみにリプルとオーレは同い年だそうだ。

 年少組が一人増えたわけだ。

 ホロアは外見と年齢が一致しないもんだが、オーレは今のところ見たままだ。

 フルンとアフリエールが一つ下で、ウクレがひとつ上なんだよな、たしか。


 そういえば、年齢の話はするのに誕生日の話はしたこと無いな。

 俺も一人暮らしが長かったせいで忘れがちだったけど、少なくとも年少組ぐらいは祝ったほうがいいんじゃないのかなあ。


「誕生日……ですか?」

「そうそう、誕生日」


 アンに尋ねると、ピンとこないようだ。


「祝ったりしないのか?」

「しないですねえ。特別というわけでもないですし」

「そうなのか」

「だいたい、私達ホロアは満月の晩にまとめて生まれることが多いですね」

「決まってるのか」

「ええ。私とレーンは同じ石からちょうど一年違いで生まれました。人間や古代種はそれこそ種をつけた日に寄るのでしょうが、普通、年齢は新年に増えるものですから、その日に祝いますし」


 ああ、いわゆる数え年か。


「ご主人様のお国では生まれた日を祝われるのですか?」

「そうだな」

「では、ご主人様だけでもお祝いしなくては」

「いやいや、俺も一緒に新年に祝ってくれよ」

「そうですか」


 なるほどねえ。

 まあ、皆でまとめて祝うのもいいよな。


 ポントの町で買い集めた食材が豪華な料理に生まれ変わって食卓に並ぶ。

 まだまだ蒸し暑い夏の夜だが、こんな時こそガッツリ食って力を付けないとな。


 ここのテント場は町から少し離れていて夜は静かだ。

 森を切り開いた広場になっていて、ところどころに大きな木が生えている。

 俺達はその木の陰に馬車を停めてある。


 他に泊まっているのは、三人組の中年の冒険者と、荷馬車を四台ほど連ねた商人だけだ。

 銘々が離れたところで幕営している。

 人数だとうちが圧倒的だな。


 しこたま食って焚き火のそばへ。

 俺の目の前では、木に吊るしたハンモックでフルンがぶらぶら寝ている。

 あれもカプルのものらしい。

 くそう、あんなのがあったのか。

 フルンは楽しそうなのをいつも先に見つけるなあ。


 しばらく順番待ちかと思ったら、フルンが降りてきた。


「蚊に刺されたー、かゆいー」


 みると腕やら太ももを噛まれている。


「ここもー」


 上着をめくるとおへその横にもぷっくりと赤いものが。


「痒そうだな」

「かゆい! でも、かいたらあとが残るからだめだってアンに怒られる!」

「ふぬ、蚊に刺されたら俺の故郷じゃお湯で暖めるんだ」

「え、そうなの?」

「どれ……こっちの蚊にも効くかな?」


 と焚き火にかかった鍋のお湯を汲み取り、手ぬぐいを浸す。

 アツアツのまま軽く絞って刺されたところにあててやる。

 しばらくすると、


「あ、治った! すごい! こっちもやって!」

「おう。ってよく見るといっぱい刺されてるな。だれか手ぬぐいとってくれ、あと二、三枚」

「はい、ただいま」


 牛娘のリプルが走って取りに行く。


「へえ、そんな方法で痒みが取れるんですね」


 隣にいたエンテルが驚く。


「うーん、理由は諸説あるんだけど、詳しいことはわからないらしいなあ。まあ、とにかく治るな。治らないって人もいるけど」

「そうなんですか」

「どうせ痒さなんて一時的なものだから、治ればそれでいいんだよ、たぶん」

「たしかに」


 しかし、蚊が出るとなるとハンモックはお預けか。

 代わりになにしてあそぼう、とあたりを見回す。


 食事を片付けた長テーブルではアン達が御札を作り、ペイルーン達が丸薬を作っている。

 ちょっと冷やかすか。

 冷えたオプール・ビールのジョッキを片手に、アフリエールの隣に腰を下ろす。

 金髪薬師美少女のペイルーンが切り分けた丸薬の元を、銀髪長耳美少女のアフリエールが手のひらで一生懸命、丸めていた。

 直径一センチぐらいの黒っぽいものだ。

 この後、さらにカチカチになるまで干す。

 これをそのまま飲んだり、砕いてお湯に溶かして飲むと、なんかに効くはずだ。


 手のひらでコロコロとやっているのを見ると、子供の頃、泥団子を作ったのを思い出すな。

 田舎の学校だったから、まわりも全部山だったし、良い土を探して硬さとか光沢とか競ったもんだ。

 それにしても、この小ささで手作業だときりがないな。


「大変そうだな、それ」

「はい。でも丁寧にしないとムラが出ちゃいますし」

「ふぬ、なんかもうちょっと良い道具とかあればいいんだろうけどな……」


 そういえば同じく子供の頃、友達の家がまんじゅう屋で団子を作る道具があったな。

 半円の溝が何本も掘ってあって、棒状に伸ばした団子のタネを横におき、同じく溝の有る蓋をかぶせて転がすと団子ができるって仕組みだ。

 それで泥団子を量産しようと持ちだして、あとでしこたま怒られたんだった。

 あいつも五年ほど前に結婚したって聞いたなあ。

 もう、子供ぐらいいるのかな?


 それはさておき、長テーブルの端で何かの図面を引いていたカプルに声をかける。


「こういう感じで、団子を作る道具が有るんだけどな」


 と説明してみる。


「仕組みはわかりましたわ。たしかに行けそうですわね」

「そうか、いけるか。じゃあ一つ頼むよ」

「試しに……そうですわね、もう少しつぶの大きい、モアノアの作る団子向けのもので試してみますわ」

「そうだな、あっちも大変そうだし」


 団子はフルンがパクパク食うからな。


「ちょうど蒸し器も新しいものを頼まれていましたの。明日にでもとりかかりますわ」

「頼むよ」


 カプルは再びペンを取り、図面に戻る。


「今は何やってるんだ?」

「これは御者台の改造のアイデアスケッチですわ」

「ほほう」


 と覗きこむ。

 何やら細々とスケッチが並んでいた。


 今の御者台は幅が二メートルほどで三人並んで座れる。

 奥行きも狭い。

 その上に同じスペースの天上があり、そこに小さな枠を作って見張り台となっている。


「構造的には、上の見張り台は前後に伸ばして今の倍にはできますわ」

「ほほう」

「下の日除けにもなりますし、そこに幌で屋根を張れば、嵐でもない限り雨の中でも見張れますわね」


 と言って絵を見せる。

 見た限り、スペースがシングルベッドからキングサイズぐらいまで広がってる感じだ。


「キャビンのポールを補強して足場にし、上を通れるようにもしますわ。もっとも、ここを通れるのは一部の方だけでしょうけど」


 つまりエレンやコルスらのことで、俺が通ると落っこちるわけだな。


「あとは、キャビンの中からの梯子をつけるだけなのですけど、垂直につけるか、斜めにして取り外すか、悩みどころですわ」

「階段箪笥とかどうだ? なんか収納が足りないってアンがぼやいてたし」

「階段箪笥とは?」

「こう、階段の下が引き出しのタンスになっててだな」


 祖母と住んでた家にあった気がするんだよな。

 それとも友達んところだっけ?


「ははあ、昔、オブルイエンの古い屋敷で見ましたわ。なるほど、いいですわね。階段の下はデッドスペースになりますし」

「お、いけそうか?」


 カプルはサラサラと何かをスケッチしていたが、首を傾げる。


「うーん、階段として最低限の幅を確保すると、ちょっと狭くなりすぎますわね」

「そうか」

「むしろ、これは家馬車の方につけるべきですわ」

「あっちも梯子で登りにくいもんな」

「元々、屋根裏は物置代わりに使っていましたの。今のように部屋として使うなら、階段があったほうがいいですわ」

「そうかもな」

「他には、何かございます?」

「そうだなあ……」


 そういえば、先の竜退治の時は、アフリエールたちが危なかったんだよな。


「いつ馬車が襲われるかもしれないし、戦えない連中が隠れる安全なシェルターみたいなのを作れないかな」

「シェルター、避難小屋のことですの?」

「まあ、そうだ。たとえば馬車の床下に、鉄で覆った小部屋を作っといてさ、襲撃とかされた時に、危なそうな連中に隠れててもらうんだ」

「なるほど、そういうものも必要ですわね。山の上でも襲われましたし」

「そうだろ」


 などとカプルとリフォームの相談を進める。

 なかなか楽しいな。

 この馬車も、半年も経つとすっかり我が家ってかんじだからな。


「あとはテントですわね。とくに大きいテントは底がありませんから、雨の時は水浸しですわ」

「そうだよなあ」

「上げ底にするのが基本ですけど、いっそこちらにベッドを持ち込むほうが良いかもしれませんわね」

「そうか」

「あくまで睡眠と物を置くスペースにしておけば、都合がいいですわ」

「たしかに、くつろぐのは家馬車があるもんな」

「そうですわね。こちらももう少し小綺麗に改装いたしますわ。でないと、ご主人様にくつろいでいただけませんもの」


 今でも十分いけてるけどな。


「相互の行き来をする屋根もつければ、秋の長雨でも対応できますわね」

「そりゃ助かるな」


 梅雨時は、馬車と焚き火のタープとテントの移動の度にちょっと濡れてたからな。


「今までは、売り物の内職もテントでやってたんだけど、それは家馬車の屋根裏にした方がいいかもな。薬草を干したりもあっちでやってるし」

「そうですわね。乾燥用の棚などもつくりつけておけば、良いと思いますわ」

「あら、いいわね」


 とペイルーンが手を休めて会話に加わる。


「乾燥は場所も時間も食うから大変なのよねえ」

「そのようですわね。風通しの良い所に、専用のスペースを用意する方向で考えてみますわ。といっても、馬車の中だとむずかしいのですけど」

「お願いするわ。さて、ちょっとお茶でも入れて休憩しようかしら。昼間、ハーブも摘んでおいたから、あれでも淹れてくるわ。アフリエールも今夜は上がっていいわよ」


 そう言って、ペイルーンは家馬車に入る。


「では、こちらも終わりましょうか。ウクレ、お疲れ様。もう休んでいいですよ」


 とアン。


「お疲れ様でした」


 頭を下げるウクレに、アフリエールが、


「いこうよ、ウクレ。フルンがしびれを切らしてるよ、きっと」

「うん」


 そう言って二人は、小さいテントの方に走っていった。

 よく働くなあ。

 俺も頑張って酒を飲まないと。

 と思ったら、すでにジョッキは空だった。


「お代りを用意しましょうか?」


 後片付けをしながらアンが聞いてくるが、遠慮しておく。

 ペイルーンの淹れるお茶をいただくとしよう。


「お姉さま、ウクレはだいぶうまくなりましたね」


 アンのとなりで御札の確認をしていたレーンが、アンに話しかける。


「一年たらずでこの成長です。彼女の信心の賜物でしょう」

「実に心がこもっています。ネアル様の祝福も受けていますし、もう少し精霊力があれば、神聖呪文も使えると思うのですが」

「最近はお薬で安定しているようですけど、あの娘の精霊力は不安定なようですから、下手に魔法の修行をして影響が出るのも不安ですね」

「たしかに。もっとも修業によって自分でコントロールが効くようになるかもしれませんよ」

「そうですね。肉体的にはもう成人と言ってよいのですけど、むずかしいですね。あなたはどう思います、レーン」

「実は、本人に尋ねられました。自分でも魔法を使うことができるだろうかと」

「まあ、そうなんですか?」

「はい。さきごろ狩りを許されて、外でもご主人様のお役に立てることがわかって、彼女なりに嬉しかったのでしょうね! フルンのように剣を振るえないが、弓なら多少は心得がある。もし、回復魔法の一つもできれば、更にお役に立てると、彼女なりに考えたのでしょう!」

「そうですか……」


 とアンは少し考える素振りを見せる。


「どうしました、お姉さま」

「いえ、あの娘の深い忠誠心はとても頼もしいのですけど、それゆえにあの子が人間であることが、この先どう影響するのか、と思いまして」

「大丈夫ですよ! きっとご主人様が何とかしてくださいます。ね、ご主人様!」


 レーンが俺に話を振るので、どーんと胸を叩いて、


「おう、任せとけ」


 と答えておいた。

 まあ、人間だと何がまずいのかよくわからんが。

 相性とかの話しなら、俺が嫌われないようにしてればいいんだよな、たぶん。


 そこに、お茶を入れてペイルーンが戻ってくる。

 いい香りのハーブティをすすりながら、子供用テントを覗くと、ランプ越しのシルエットで楽しそうにしているのがわかる。

 いいねえ。

 楽しくやってりゃ、世の中どうにかなるからな。

 ま、大丈夫だろ。

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