第10話 ひなたが気持ちいい

 先生のところに通い1年ほど。僕は「自閉症スペクトラム症候群」の診断を受ける。


 そう思われる原因。一つに「想像力の欠如」。一つに「一点集中的な力を発揮できる時があること」。一つに「自分の世界が好きなこと」。一つに。。とスペクトラムというのは「複合的」という意味なので、原因は人それぞれで、そしていろんなものがあるということだ。


 僕の生きにくさ。人間が恐ろしいと思ってしまう。そして、自分の殻に篭りがちになる。大学まではそうでもなかったのだが、就活の転落から気がつけばまたひどく殻に閉じこもるようになった。


 もう一つ、僕は考えることはできても、そのことがあまりに点在し過ぎているために、その点を繋げて線にして意味を持たせることができないこと。これが僕の弱みらしい。色んなことに興味を持てる。勉強でも好き嫌いはそんなになかったし、新しい発見を色んなところに見つけられ、楽しいと思えた。


 ただ、それを論理立てるとかいう点で弱いのだ。「普通」の人たちは、そういったものを筋道を立てる、つまり線を引き、見た人になるほどこのような図を書いているのだと思わせられる。


 僕のは点だけしかない。その知識や分野の一部のさわりしか知らない。奥底まで知ってるものは数少ない。具体的には歴史とか漫画とかゲームとか、知識に隔たりがある。そういった隔たりをうまく繋げ、図にできない。点描という絵の技法はあるが、点だけで絵を描けてるわけではない。むしろ、宇宙に無秩序に広がる無数の星々を思い浮かべた方がいいだろう。


 ただ、それとても、古代から神や動物、物などに見立てて人は天に線を繋げ意味付けしてきた。僕も、そのように点を線に繋げられるようになれば、今よりももっと生きやすくなり、人と話すこともできるようになるかもしれない。


 しかし、今はまだその訓練の途中なのだ。知識を身につけること。そして、単にそれだけにとどまらず、線として結ぶこと。それが僕にとっての成長のようだ。


 僕は、今も家に引きこもっている。朝も昼もベットに寝て、今日生きることも明日生きていることも不安に思っている。


 それでと、晴れた日、太陽は僕を光だけでなく暖かさを与え、僕に生きる実感を教える。僕はひなたが好きだ。ひなたが気持ちいい。僕は生きてる。それだけでも今は幸せに感じる。あと一歩なのだ。

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