第7話 NPOを頼る

 精神科医にも行けなくなり、一層引きこもりが長くなりそうだった。自分でもそれでは行けないと思った。

 

 ふとネットで調べていると、地元に若者をサポートするNPOがあることがわかった。18~39歳までの若年層であれば通えるとのこと。引きこもりから2年目はここからスタートした。

 

 そのNPOは、初日から最初の半年は就職活動に向けて社会的実践を積むことを計画立て、僕に実践させた。ただ、僕はそれなりに就職活動をしてきた。挨拶をなん度も練習するとか、履歴書を書くとか、自己分析をするとか、今までそんなの何回もやってきたと思うものばかりだった。いまいちこれらのことが就職活動に単に繋がるとは思えなかった。

 

 担当の人には人との交流もした方がいいと、そのNPO内にある別の呼称の集いに参加することになった。そこは、バスケットやカラオケなどの様々にNPOの人を中心にそこに通所するメンバーが計画してやるところだった。ただ、ここが1番合わなかった。既存メンバーが既に輪を作っており、そういった輪に入ることは、僕にはとてつもなく難しいことだった。


 そもそも、友達と居ても、2人の時は話せて、3人とか5人とか奇数になると、ひとりぼっちになるのた。「話しかけていいのかな」と極度に緊張と不安に駆られる。それが、全く知らない他人で、しかもその他人たちはみんな仲がいいときている。これはもう居場所にするには難度があまりに高いのだ。


 それでも、なんとか会話の糸口を探そうと努力した。昔の俳優の格好をしていた人がいて、みんなに褒められていたので、自分も


「僕もその俳優さん知ってます。昔◯◯って映画に出てましたよね?」


と言ったりしてみたのだが、無視されてしまった。こういう反応をされると、ものすごくばつの悪い自己嫌悪として記憶に残り、ただですら人と話すのが苦手になっているのに、さらに回復が鈍ってしまう。


 やはり、既存の輪に入るのは難しい。そもそも、メンバー自体も私より1~2回り近く年上の人が多く、共通の話題というものも乏しい(そもそも同年代でも、その共通の話題が選ぶのに苦労するというのに)


 結局、半年ほど通い、僕は通所しなくなった。挨拶を大声でやれとか、職員にあったらまず挨拶とか、やたら挨拶ばかり厳しくするところも受け入れ難かった。


 その後、もう一つ別のNPOの門戸も叩いたが、こっちはもっと心象が悪かった。なんせ、毎月2万近く費用がかかるというのだ。それだけならまだいいのだが、ここではなく別の農家や工場などに行き、掃除や庭の手伝い、工芸品を作るなどの仕事を半日以上やらせられる。僕にはこれが搾取のように思えてならなかった。ただでさえ、こう言ったNPOは障がいを持つ人も通所させてるため、補助金も莫大なものだ。それでいて、無償で働かせ、あまつさえなけなしのお金から2万円も月に払わせるのだ。そこの所長が言うには


「親からお小遣いをもらっていると思って払ってくれ。」


と訳のわからない理屈を立てるのだ。小遣いを奪われるのに?と僕は思ってしまった。


 僕はこうして、そう言った類のNPOも頼る選択肢を人生から切り離すことにした。もちろん、良いNPOもあると思いたいのだが、福島にはそもそも母体数が少ない。障がいの有無などと条件として加味されるので、この時点では僕は障がいはない状態だった。


 ただ、ここまで異様にこだわりがあったり、他者とのコミュニケーションが苦手であったり、少しの失敗を大きく捉え、いつまでも重くのしかかるなど、明らかに障がいがあるのではないかと、思い始めた。そして、次の年、藁にもすがる思いで県の保健福祉事務所の相談に赴いた。

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