第3話 鹿島の煙草
※喫茶店の間取りを近況ノートに掲載しました。
2023年10月31日 「喫茶店の間取りを公開しました〜」
https://kakuyomu.jp/users/tyasaji_gyokuka/news/16817330666145044613
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小雨がパラつく木曜日、来店客もまばらな休憩時間。
スラリと長い足を組み、煙草を取り出す。
店内は禁煙なので、煙草を吸うときは外に出なければならない。
彼女は紙煙草しか吸わない。
煙草は火と煙と合わさって煙草だから。
彼女はマッチしか使わない。
木が燃えてできる炎が煙草を作り出すから。
彼女はメンソールの煙草は吸わない。
煙草の苦み、渋み、そういったものが好きだから。
煙草の銘は「
近所の煙草屋のオリジナルブレンドだ。
ウイスキーのようなスモーキーな香りを漂わせる、至極の一品。
他のメイドは吸わないので、残り香には気を遣う。
クラシカルなこのメイド服にも匂いをつけたくないので、室内に戻る前に無香料の消臭スプレーを振りまく。
この煙草の香りを嫌っているメイドはいないが、
ここの縁側は庇が深いので多少の雨でも気にならない。
個人的には肌寒い雨の日に吸う煙草が一番美味い。
雪に囲まれ、凍えるような寒さの中で吸うのも良い。
北国に生まれ、寒さが好きなこともある。
今日の仕事が終わったら、久しぶりに映画でも見ようか。
不本意ながらブランクから復帰した殺し屋が、世界中の殺し屋から狙われ、激闘を繰り広げる大好きな洋画。
前作を一気見して、最新作を上映している間にもう一度見に行くのもいいかもしれない。
喫茶店での仕事は好きだが、ここは静かすぎる。
やはり人間は銃声が鳴り響き、弾丸が飛び交う闘争の世界に身をおかねばならないのではないか。
私も、いつでも復帰できるように銃の手入れをする頃合いかもしれない。
…そんな訳のわからない妄想をしながら煙草をふかしていたが、
なんとなく
休憩時間はとうに終わっている。気がする。
携帯灰皿に燃えさしを押し込み、一息つく。
世の中の大抵のことは「気がする」で片が付く。
そんな気がする。
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