第63話 アリシア、真犯人を追う
「エヴァちゃんのおかげで、当面の時間稼ぎはできたね」
でもこれで終わりにしてはいけない問題だよ。
「真犯人を見つけないと……」
でも――。
「どうやってですか?」
ナタヌの素朴な疑問。
そして、わたしはそれに対する答えを持っていない。
「どうしようね……。ラダリィはこういうの得意だったりしない?」
諜報活動の範囲内? ラダリィって探偵さんみたいな仕事もしてそう!
「必要に駆られて組織的に調査業務に就くこともありましたが、基本的には王宮内の警備が主な仕事でしたから」
「あんまり経験はない?」
「申し訳ございません」
頭を下げるラダリィ。
「ぜんぜん! ちょっと無茶ぶりだったかなって思ってるし!」
「指示をいただければ成果は上げたいと思います」
「期待してまーす!」
ちゃんと動けそうな唯一のメンバーだし!
こういう時、ラッシュさんがいないと全部ラダリィ頼みになっちゃうね。
スレッドリーもナタヌも脳筋戦闘要員だからなー。
「私も成果をあげます! アリシアさんのために犯人ごと街の1つや2つはぶっ壊します!」
「俺も『成敗』するぞ。峰打ちは覚えた。『妖刀・アリシア』の使い方ももっとマスターする」
スレッドリーもナタヌも脳筋戦闘要員だからなー。
困ったな……。
≪すべては完璧なる私――アリシアの魂の片割れにお任せください≫
「魂は分け合ったつもりはないけれど、エヴァシリーズにはいつもお世話になっています」
実行部隊としても、ブレーンとしてもね。
だけどなー、エヴァシリーズを頼ってパストルラン王国全土を捜索する? さすがにそれはちょっとなー。もうちょっと何か作戦を考えたいよね……。
「まずは侯爵と子爵の周辺を洗うのが良いんじゃないか? アリシアの話によると、2人に接触した共通の人物が怪しいのだろう?」
脳筋のスレッドリーがまともなことを⁉
「たしかにそれはそうかも……。あれだけ複雑な『常識改変』スキルをかけるとしたら、さすがに遠隔では難しいだろうし、直接会っているだろうね。もしかしたら、定期的に重ね掛けしている可能性もあるかも……」
「それなら裏帳簿とやらをチェックし、帳簿が作られた初期の頃から2人と複数回接触している人物を洗い出そう」
「うん……それが良いかも!」
えーと、裏帳簿裏帳簿。
≪該当する人物は3人です≫
えっ、はや!
「もうチェックしたの⁉」
≪わたしは完璧なる存在なので、ドリーちゃんがその作戦を思いつく前からそのことに気づいていました≫
「そ、そう……」
後出しくさいけど。
「さすがミサトさんだな! もう調査まで済んでいるとは、さすがだ」
さすがって2回言った。
スレッドリーは手柄を取られて悔しくないのかな?
「殿下……閣下はそういうお方ではありません。アリシアも、それはもうご存じでしょう」
ラダリィ……なんでドヤ顔なのさ。
まあねー、ご存じですけどねー。なんでこんなに良い人なのか……。スレッドリーの横に立ったら、わたしの心が汚れているみたいじゃないのさー。それがすっごい嫌!
あとさ、ラダリィは的確にわたしの心を読まないで?
「それでミサトさん、3人の人物とはどんな者たちなんだ?」
ああっ、勝手に話を進行しないで!
それはわたしの役目!
≪まずは1人目ですが、ダレイノーム侯爵の元従者で、サンダマという人物です≫
「元従者ね。それならまあ、ゲノザリアス子爵と面識があってもおかしくはないかな? ほかの2人は?」
≪続いて2人目ですが、行商人のオタンジーという人物です。主に酒類を取り扱っているようです≫
「あー、ダレイノーム侯爵ってお酒好きっぽいもんね。さっきもワインをがぶ飲みしていたし」
≪最後の3人目ですが、ロズテスという人物です≫
「ん、そのロズテスは何をやっている人?」
≪御用聞き、もしくはよろず請負人とでも呼ぶのでしょうか。ダレイノーム侯爵のところに定期的に顔を出し、様々な仕事を受けているようです≫
「めっちゃ怪しいじゃん……。例えばどんな仕事が記録にあるの?」
≪表の帳簿にはなく、裏の帳簿にだけある仕事ですと、頻繁に長距離輸送を依頼していますね≫
「長距離輸送? 何の?」
≪『家畜用飼料』となっています≫
「家畜用飼料? この街でそんなものを取り扱っていたっけ?」
畜産なんて盛んじゃないし、そもそも原料になりそうな麦や野菜の畑なんてほとんど稼働していないし?
「ちなみに長距離って、どこに運んでいるの?」
≪『デオミンガル』という街です≫
「『デオミンガル』? 何かどこかで聞いたことがあるような……?」
≪『デオミンガル』男爵領『デオミンガル』は、非常に治安の悪い街として有名です。ちなみに暗殺集団≪シガーソケット≫の拠点があると言われています≫
ああっ、≪シガーソケット≫!
エイミーンさんの所属していた暗殺集団だ!
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