第26話 アリシア、推しを発見する

『さて、難しい話はここまでにしておこうか』


 難しい話って言っちゃった。

 女神様がそれで良いんですか?


『あとはなるようにしかならん。当たって砕けろだ』


 砕けたくないから準備を……。

 って、スーちゃんに言うのが間違いなのかも。助けてミィちゃん!


 ……あれ? 反応がない。


 ミィちゃん助けてください!


 無視ですかー⁉

 かわいいかわいいアリシアちゃんが泣いて祈ってるのにー!


『この件はスークルの仕切りですから、私は関与しません。武運を祈ります』


 女神様に逆に祈られちゃった!

 えー、だって作戦っぽい作戦もなしに当たって砕けろって言うんだよー。

 敵の正体もわかっていないから、有効な攻撃手段もわからないのにどうするのさー。


『スークルの脳筋パワーでなんとかしてもらうしかないでしょうね』


 脳筋!

 まさに脳筋だよ!

 ぜんぜん頭使っていないもの!


『失礼な。オレだってちゃんと考えている!』


 へぇー、たとえばどんなことを考えているんですかぁ?


『そのためにノーアを呼んでいるんだ』


 あー、そういえばまだノーアさんがいらっしゃっていないですね。

 まあそうか。ノーアさんが切り札。たしかにノーアさんがいれば何とかなりそうな気がしてきました……。


 作戦はノーア。


 わかりやすい。

 でもスーちゃんが脳筋なことには変わりなし!


『なぜだ! 完璧な作戦だろう?』


 完璧な作戦っぽいですけど、それってスーちゃんの手柄じゃなくてノーアさんの手柄だから……。


『こういう作戦行動はすべて指揮官の手柄だよ』


 それはずるくない?

 みんなで力を合わせて立ち向かおうよー。


『アリシアはニコニコしながら調印式を終えればいい。それがお前の仕事だ』


 まあそうですよね? みんながわたしのかわいさに見惚れている間にすべてうまく行く作戦、的な?


『……言っていて恥ずかしくならないのか?』


 急に素に戻るのはずるい!

 そこはお義姉ちゃん的な感じで義妹を甘やかしてくれないと!


『そ、そうか……。アリシアはかわいいな』


 お義姉ちゃん♡


≪そろそろこのデコボコ義姉妹コントを止める頃合いでしょうか? 直視できないです……≫


 コント言うな!

 お義姉ちゃんとのイチャイチャタイムを邪魔したら、いくらエヴァちゃんでも怒るよ!


「うらやましいです! 私も家族コントに混ぜてほしいです!」


「ナタヌまで……。コントじゃないからね?」


 わたし、けっこう真剣なのよ? 旅のせいでお義姉ちゃん成分が減っちゃっているんだから補給しないと!


「お、俺も……」


「姉妹って言ってるでしょ! スレッドリーは引っ込んでて!」


「す、すまん……」


 隙あらばすぐに便乗しようとしてくるんだから。

 そういうのはラッシュさんとやって……ってもういないんだった……。なんかちょっとごめん……。


「スレッドリー……ごめんね。会話に入ってきてもいいよ」


 1人にしたらかわいそうだった……。


「お、おう? あり、がとう?」


「殿下、混ぜてもらえて良かったですね。こちらのドレスに着替えて姉妹ごっこをどうぞ」


 いや、それレインお姉様の試作品のドレス!

 ラダリィ、なんで持ってきちゃってるの⁉


「そうか。またこれを着れば……」


「着れば、じゃないよ! 着なくて良いから。ラダリィも『見るに堪えない』とか言っていなかったっけ?」


 なんで積極的に着せようとしているのさ?


「それは……たまには気分を変えるのも良いかと?」


「なんで疑問形?」


 急にそわそわしだして、何か怪しいね……。


≪アリシア、ラダリィさんも日々成長しているということです≫


「成長?」


≪あの一件以降、女装×女装のジャンルにもご興味を持たれたようですよ≫


「え、エヴァ様! それは秘密にする約束のはずですっ!」


 うわっ、顔が真っ赤だ。

 エヴァちゃんの悪ふざけじゃなくてマジなやつ?

 ラダリィさん……スレッドリー(女装)×ヤンス(女装)で妄想を⁉


≪オホホホホ。約束など破るためにあるのですよ≫


 エヴァちゃん、それは普通にひどいよ?

 でもラダリィの秘密を教えてくれてありがとう!


「ラダリィさんが女装をねぇ。ナタヌ、どう思う?」


「私的にはなしよりのなしですが、ラダリィさんの趣味は尊重します!」


 きっぱり。

 まあ、女装しようが男は男だから、ナタヌの趣味じゃないよね。はっきりしていてわかりやすい回答をどうもありがとう。


「でも、ここに男性はスレッドリーしかいないけど、どうするの? 掛け算相手はどうするのかな?」


「そ、そこは……」


 ラダリィが向けた視線の先には――。


『オレか? オレには性別はないが……一応これでも女神ということになっているんだが?』


 そうでした! スーちゃんがいました!

 男装の麗人、もとい麗女神(?)だからありか……。むしろありありのありか!


「ラダリィ、すごく良いと思う! 推せるっ!」


「ですよね! アリシアにもわかってもらえてうれしいです!」


 スークル×スレッドリー……推せるっ!


 あ、でもどっちも受けだわ!

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