第14話 アリシア、厄介事に巻き込まれる?
エイミーンさんという、美女(職業:暗殺者)を旅の仲間に加え、『ダーマス』に向けて馬車を走らせていた。
まあもう目と鼻の先だし、何事もなければ明日の昼には到着ね。
「アリシアさん! アリシアさ~ん! 助けてくださ~い!」
ナタヌが必死の形相で、馬車の御者席と客車の連絡用の窓をガンガン殴ってくる。
何事もなければ……。
って思っていたそばからまたトラブルですか? めんどうだなー。
「無視しないでください! 聞こえているのはわかっているんですよ!」
大事な馬車の窓が割れてしまうのでそれ以上殴らないで!
仕方ないので、後ろの小窓のほうに振り返ります……が……。
あ、エヴァちゃん。
ちょっと自動運転に切り替えるから、念のため周囲の安全確認よろしくね。
≪Yes. My Lady.≫
こういう時、ホント助かるー。
「ナタヌな~に? もしかして、1人乗客が増えたから、食べ物たりないとか?」
「それは大丈夫です。たくさん用意してくださったのでいくら食べてもなくなりません! しあわせです!」
「それは良かったねー。じゃあ、わたし運転に集中するからまた休憩の時にねー」
あー、良かった。トラブルは何もなかったー。
「アリシアさん! 食べ物のことじゃないです!」
そりゃ違うのは普通にわかるけど……。
「あの2人、何とかしてくださいよ! 馬車内の風紀が乱れて困ります!」
風紀ね……。
どっちかっていうと風紀を乱す側のナタヌが言うと含蓄がありますね。
でもその話をこっちに持ってこられてもなー。すっごくめんどうだなー。
「まあ、ほら、2人は11年振りの再会だし? ラッシュさんは記憶を封印されていたわけだし? エイミーンさんのほうはラッシュさんを殺そうとしていたわけだし?」
「だからって!」
「多少のイチャイチャは見て見ぬふりをしてあげるのが良い大人ってものなんじゃないのかな?」
良い大人が何なのかは知らんけど!
「2人だけずるいです! 私もイチャイチャしたいです!」
そっちが本音ですよね?
でもこの旅の間はダメって言われているからね……。
「代わりと言ってはなんだけど、そこで静かにお茶を飲んでいるラダリィさんとイチャイチャしてみるのはどう?」
ラダリィならかまってくれるでしょう?
「アリシア、聞こえていますよ。私には同性同士でイチャイチャする趣味はありません」
「男性同士のイチャイチャは好きなのにおかしいなー」
「そ、それは!……もう忘れてください!」
ふふ。ラダリィさんったら、慌てちゃってかわいいんだからもう。
このネタで一生強請れる!
「ところでスレッドリーは? 姿が見えないけど。もしかして、キャラが薄すぎて存在ごと消えた?」
「いいえ。ラッシュ様が殿下のことをまったくかまってくださらないので、少し拗ねて横になっていらっしゃいます」
エイミーンさんにラッシュさんを取られちゃった的な感覚なのかな。今だけちょっと貸してあげるくらいの度量は持ちなさいって。
まあ、ラッシュさんだって人間ですからねー。恋も仕事も大事なんですよ。恋なのかはわからないけどね。
≪ところでアリシア≫
何かな? ちゃんと代わりに運転してくれている?
≪なんせ私は7000の体を持つロボなので、マルチタスクはお任せください≫
また増えてる。
って、そういえばなんかロボを増やすための申請書が出ていたような。
≪『グレンダン』のお城にもエヴァシリーズをお手伝いとして働かせたいという話は、正式なルートで申請書を提出し、すでにアリシアの決裁も下りていますが?≫
忘れてた忘れてた。
レインお姉様とヤンスのお城を守ってね。みんなが快適に暮らせるようにしてあげてね。
≪もちろんです。ですが、今したいのはその話ではありません≫
それじゃあ、何かな?
≪エイミーンさんのことです。『ダーマス』に到着したら、ギルドに引き渡して報奨金を受け取るということでよろしかったでしょうか?≫
えっ……報奨金……?
ああ、そういえばエイミーンさんって、国家指定の指名手配犯なんだっけ?
≪懐が潤いますね♪≫
さすがにその発言は人の血が通っていないとしか……。
≪事実、通っていませんから≫
そういうことではなく心の問題というか……。
エヴァちゃんさ、冷静になって後ろの2人の様子をちゃんと見てからその発言して?
とてもじゃないけれど、エイミーンさんのことを賞金首としては見られませんって……。かわいそうだし。それにそんなことしたら、普通にラッシュさんに殺されると思いますよ?
≪私たちは良いとしても、国家指定の指名手配犯は、街に入れないと思います≫
あー、そっか……。
犯罪者を領内に入れないようにするのが、城門の役割で、門番のお仕事だよね!
どうしよう……。
このままだとこの馬車は『ダーマス』に入れない……。
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