第10話 アリシア、熟成肉の作成設備を刷新する

 さっそく完成した回路を見てもらおうと、地下室の外で待っているケニーさんを呼びに行く。


「はい、改良できましたよー」


「えっ、もうですか⁉ 10分も経っていないのにどうやって……」


 ケニーさん、わかりやすくひっくり返って腰を抜かさないでくださいよ。

 それはせめて、実際に出来上がったものを見てからにしてね?

 

 さあ、中に入ってみてくださいよ!

 どうですかー?

 この美しく生まれ変わった魔力吸入回路の出来栄えは!


「ケニーさんの魔力量だと魔力蓄積用のタンクを満タンにするのはちょっときついと思うので、今回はわたしが先に補充しておきましたよ。今からいろいろ使い方を説明しますね。あとで簡単にまとめたメモは渡しますけど」


 このイスに座ると魔力が回路に流れ込んでタンクに溜まる仕組みになっています。そこのメーターが満タンになるまでって感じです。今は満タン状態です。これでだいたい4週間は持ちます。まあ、Cランクの魔法使いでも連れてこれれば、0から満タンにするまでに約30分ってところですかねー。


 1週間に1回くらい、だいたい25%ほど減るのを目安にして魔力を入れてもらうと安全です。こっちは予備の蓄積回路なので、万が一メインの回路が故障したりした時には自動で作動します。基本触らなくていいです。あ、でも表の看板にちょっとオプトアウト的な言葉を足しておきたいので、あとで対応お願いしますねー。


 あ、そうそう。一応設備に問題があったらわたしのところに通知が来るようにしておいたので、すぐにセコム(エヴァちゃん)を派遣して修理しますね。もちろん保証期間内は無料ですよ! 保証期間? 10年です!


「至れり尽くせりで……。そういえばここにいても魔力が吸い取られないので、少し体が軽くなりました」


 ケニーさんが首や肩を回してから、ほんのり笑顔を見せる。


「それは良かったですね。これで自由に外出もできますよ。あ、そうだ。ついでにちょっとだけ設備本体のほうにも手を入れちゃいました。風の当たり方がもう少し一定になるようにって感じで。嫌だったら元に戻しますので言ってください」


「いいえいいえ! こっちのほうがずっと良くなっているのが一目でわかります。こんなに一瞬で設備の問題点まで……」


 いやー、問題ってほどじゃなかったですけどね。

 ちょっとしたお節介ですよ。手を出したなら最後までってやつ?


「あとはフックを頑丈なものに変えておきました。広さ的には問題なさそうだったので、フックの数も10個に増やしておきました。これでこのスペースだけでも倍の熟成肉が作れますね!」


 遠方から買い付けを希望されている人たちにも売ってあげてくださいね。

 なんならわたしにもサンプルとしてください!

 お店でこの熟成肉の製法をパクりたいので、完成品もほしいです!


「それとメイン回路が若干老朽化していたので、少し補強しておいたのと、魔力の利用効率を上げるために少し組み替えなんかもしておきましたよ。想定と違う動作をしていたらすぐに言ってください。動作確認はしたのでたぶん大丈夫だとは思いますが、問題があればセコム(エヴァちゃん)がすぐに駆けつけますね」


「あの一瞬でそこまで……。アリシア様は底がしれない……」


 出た! 底がしれない! ラッシュさんと同じ口癖だ!

 もしかして『グレンダン』で流行りの言葉だったりする⁉

 めっちゃおもしろい!


「じゃあ全体良さそうなので、わたしはそろそろ食事に戻っても良いですか?」


 デザートが食べたいです。

 なんなら先にお肉のおかわりがほしいです。


「もちろんです! なんとお礼を申し上げて良いか……」


「そんなにかしこまらなくても大丈夫ですよー。ラッシュさんの古いご友人なんですよね? ラッシュさんにはいつもお世話になっているので、そのお礼って感じです」


「それは……ありがとうございます……」


「あ、でも1個だけお願いが!」


 ふふふ。

 ここまで手伝ったんだから、ちょっとくらいわがまま言ってもいいよね⁉


「なんでしょうか! 私にできることならなんでも!」


「私たち、ここ『グレンダン』に1週間くらい滞在する予定なんです。その間にもう1回くらいみんなでお肉を食べに来ても良いですか?」


 ここの熟成肉、とってもおいしいんだもん♪

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