第34話 アリシア、軽く謎解きをする?

≪私が戻ってきたのは午前7時頃です。ホールに近づくと、なにやら口論する声が聞こえてきたのです≫


 無人のはずのホールに誰かがいたってこと?

 そいつが犯人かな⁉


 ちょっとおもしろくなってきた! エヴァちゃん、話の続きをどうぞ!


≪私が足早にホールに入ると、口論をしていたのは、公爵閣下とスレッドリー殿下でした≫


 なんだ、この2人か……。

 新しい登場人物はなし、と。


「エヴァちゃんがレインお姉様とナタヌを部屋に運んでいるのと入れ替わりで、ヤンスとスレッドリーがホールにやってきていた、そういうわけね? エヴァちゃんがこのホールを出たのが午前6時半。戻ってきたのが午前7時。なるほどね?」


 たった30分間かー。だいぶタイミングが良すぎる気はするなー。

 まあでも、途中で逃げた2人だし、早起きしてホールにやってきてもおかしくはないかな。


≪朝っぱらから、うるさいなと思いましたので、お2人に「静かにしてください」と声をかけました≫


 うん、朝から口論は良くないね。

 ちゃんと止めに入ってえらい。


≪お2人ともひどく酔っていらっしゃったらしく、私の顔を見るなり「アリシアはどこだ」「レインはどこだ」と詰め寄ってこられたのです≫


 朝から酔っぱらっていた? まさかヤンスとスレッドリーって2人で飲んでたの? しかも徹夜で?

 そういえば2人ってなんか意気投合していたっけ。わたしたちにめんどうな打ち上げを押しつけてなんてやつらなの!


≪2人の男性に詰め寄られて、私は怖くなりました。震えながら「か弱い私に乱暴しないでください。お2人ともお休みになられましたから」と答えました≫


 うーん、急に演技がかって……ウソ臭いな。


≪すると「良いから早くアリシアとレインを出せ!」と私の胸倉をつかんで脅してこられて……もう怖くて怖くて……≫


 ふーん? それから?


≪気づいたらお2人が仲良くお休みになっていました≫


「やっぱり犯人はお前かーい!」


 これはどう見ても寝ている状態じゃないもんね。

 なんなら頬にくっきりとこぶしの跡があるし。

 2人とも、エヴァちゃんが殴って気絶させた状態ですよね?


 まあそれは見た瞬間にわかったんだけどさ……。


「そんなことよりもさ、なんで2人ともレインお姉様デザインのドレスを着せられているの?」


 いや、もうなんていうか……まったく似合っていないし、雑にスカートもまくれ上がっていて……とにかくひどいし……。


「見るに堪えません。おぞましい光景……」


 ラダリィさん、それ! おぞましい! 正解!


「酔っ払いに絡まれて殴って気絶させちゃったところまでは……まあいいよ。知らない人じゃないし、この2人なら2、3発くらいまでは許す。でもさ……さすがにドレスを着せるのはやりすぎじゃない?」


≪それは私ではないです。さすがに私にだって美的センスくらいあります。アリシアと一心同体なのですから、感覚はアリシアと同じなのですよ≫


 うーん、まあそう言われたらそうか……。

 じゃあこれはいったい……?


≪私がこのホールに戻ってきた時から、お2人は最初からそのドレスを着ていらっしゃいました≫


 え……マジぃ?

 お揃いのフリフリしたドレスを着た男たちがもみくちゃになっているところを目撃しちゃったってこと?


≪はい……。目が潰れるかと思いました≫


 動いているとそこまでの破壊力なんだ……。

 しっかしなんでドレスなんて着ていたんだろうね? 試作品だし、展示用だから酔っぱらってもいたずらはしないでほしかったんだけど……。


「これ以上はここにいるメンバーじゃわからないってことだよね。じゃあそろそろ2人を起こして真相を確認しよっか。このままじゃモヤモヤして解散できないもんね」


 目を背けつつ頷くラダリィ。

 顔を覆ってさめざめと泣くラッシュさん。

 険しい表情で横たわる2人を見つめるエヴァちゃん。


 さっさとこのバカげた事件を解決して朝食にでもしましょうか。


 ヤンスとスレッドリーの頭に治癒ポーションを振りかけていく。

 一応頬の打撲している箇所を中心にね。


 まあこれで傷は治ったね。

 ついでに解毒ポーションも振りかけておこうかな。酔っぱらって絡まれてもだるいし。


 よーし、あとは起こすだけだけど……。


「おい、起きろ!」


 ヤンスのお尻の辺りを蹴り上げてやると、その体がきれいに2mほど宙を舞う。たちまち重力によって体は引き戻され、そのまま激しくお尻が地面に叩きつけられる。その衝撃が目覚まし代わりってね♪


「いてててて……でやんす」


「おはよう。起きた?」


 自分のお尻をさするヤンスに声をかけてみる。


「ここはいったい……。ああ、ホールでやんすか。おいらのこの格好は……?」


 ヤンスは自分がドレスを着ていることに驚き、目を丸くしていた。あれ? 思っていたのと反応が違う?


「自分で着たんじゃないの?」


「何も覚えていないでやんす……」


 昨晩の記憶がなさそう。

 それは飲み過ぎだよ……。


「使えないなー。じゃあスレッドリーに聞こうかな。起きろ!」


 ヤンスと同じようにお尻を蹴り上げてスレッドリーを起こしていく。


「ああっ、殿下!」


 スレッドリーの体が5mほど宙を舞い、激しく縦回転しているのを見て、ラッシュさんが不安そうな声をあげる。


「大丈夫だってー。3回、4回、5回、6回、7回転で見事着地!」


 あ、お尻じゃなくて頭で着地しちゃった♪ シッパイシッパイ♪



『アリシア、いい加減にしろよ?』


 そっち行っちゃった? スーちゃんごめーんね♡

 

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