第33話 アリシア、実況見分する

 朝までマーちゃんとチビエヴァちゃんたちのお楽しみ飲み会は続き――。


「そろそろ我は帰るのじゃ。満足したのじゃ。アーちゃんまたの」


 と言って、マーちゃんはふらりとどこかへ行ってしまわれた。


 残されたのは途中でつぶれた者たち。それはそれは死屍累々たる有様で……。


 まあ、うん……朝まで飲み会したらだいたいこんな感じになるか……。

 それにしても散らかって……。

 

 チビエヴァちゃんたちお疲れ様だね。ありがとね。


「あーい」「あーい」とかわいいお返事をして、エヴァちゃんのもとへと帰って行く。また接待の時にはお願いねー。


≪私も最後までがんばりましたが≫


「はいはい、えらいえらい。エヴァちゃんヨシヨシ」


 最後に残ったのはお酒が飲めないわたしとロボのエヴァちゃん(チビエヴァちゃんシリーズを含む)だけだもんね。

 張り切ってマーちゃんと一緒に飲んでいたナタヌも、わりと早めにつぶれて寝ちゃったし。結局逃げたヤンスとスレッドリーは戻ってこなかったね……。薄情なアイツらには、あとできついお仕置きをしよう。


 でも今は……ちょっと寝たいな。

 徹夜は疲れたよ。


≪おやすみなさい。私が後片づけを担当します≫


 ありがとうね。ホント助かるよ。

 

≪こんな時のためのお掃除メイドロボですから≫


 エヴァちゃんはお掃除メイドロボではないんだけどね。

 索敵・防衛システムだからさ。まあ……ちょっと限界だし、わたし部屋に戻るね。


 軽く今日の振り返りをしながら部屋に戻ろう。


 夜会も大成功、ついでに打ち上げも大成功。

 飛び入り参加のマーちゃんも楽しんでくれた。

 あとは口コミやグッズによって『グレンダン』の街のシンボル的な存在としてレインお姉様が人気になるといいなー。

 グッズの量産体制を築いてからヤンスに引き継げば、プロデューサーさんとしての役目も終えられるね。


 あー、疲れた……。

 なんだかとっても眠いんだ……。


 何とか自分の部屋にたどり着き、ベッドに潜り込んだところまでしか意識を保てなかった。

 


* * *


「おはよう。……それで? 誰かこの状況を説明してくれる?」


 しばらく仮眠を取ってから、夜会の跡地――大ホールに向かうと、何やらざわざわしている様子? わたしが寝ている間にちょっとした事件が起きていたみたい?


 その場にいたのは、エヴァちゃん、ラダリィ、ラッシュさん……それからヤンス、スレッドリーの5人だ。

 どうやらレインお姉様とナタヌは、それぞれの部屋でまだ寝ているらしい。


「誰かちょっと状況を説明してくれないかな? 何がどうしてこうなっているの?」


 こんな目を背けたくなるような……。

 ヤンス、スレッドリー……かわいそうに……。


「私も先ほど到着したばかりなのですが、私がここに来た時にはすでにこの状態でした。いったい誰がこんなことを……」


 ラダリィが口元を覆っている。

 演技……にしては自然すぎるね。ホントに驚いているみたいに見える。まあ、ラダリィはシロ。もともとこういう事件を起こすような人じゃない。


「私がここにやってきたのは、ラダリィさんのすぐあとだと思います。ですので、なぜこのような事態になっているのかわからず……。殿下……。お労しいお姿に……」


 ラッシュさんもシロっぽい?

 そりゃまあ、スレッドリーがこんな状態になっていたら、臣下としてはつらいでしょうよ。でも泣かないで? 一旦実況見分が終わるまでの辛抱ね?


 となると、残りの容疑者は――。


「というわけで、犯人はエヴァちゃんだよね。なんていったって、昨日の晩からずっとこの部屋にいるのはエヴァちゃんだけだし」


 状況証拠的にはクロ。動機も……まあクロでしょ。エヴァちゃんはいつもクロ。


≪私がここに来た時にはすでに……≫


「異議あり! わたしが寝る時からエヴァちゃんだけはここに残ったでしょ? その時のことを詳しく話して」


≪ちっ……。アリシアが寝たのは午前5時頃です。当時このホールに残っていたのは私、それに昨晩から眠ったままのレインさん、ナタヌさんの3人でした。チビエヴァシリーズは回収済み。マーナヒリン様もお帰りなった後でしたので、ほかには誰もいませんでした≫


「起きて行動できたのはエヴァちゃんだけね。続けてー」


≪酒瓶や食器、食べ残しなどを一通り片づけてから、お2人を抱えてそれぞれの部屋に運びました。午前6時半くらいだったと思います。まずはレインさん、それからナタヌさんの順でそれぞれの部屋に連れて行き、ベッドに寝かせてから、また再びこのホールへと戻ってきました≫


 ふむふむ。

 ここまではとくにおかしな点はなし。


≪私が戻ってきたのは午前7時頃です。ホールに近づくと、なにやら口論する声が聞こえてきたのです≫


 無人のはずのホールに誰かがいたってこと?

 そいつが犯人かな⁉

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る