第24話 アリシア、恋愛ポイントが100上昇する?

「いやー、無事に準備が終わったねー。みんなよくがんばりました!」


 トラブルもなく……かなーり少なく、無事『レイン=グレンダン♡スペシャルパーティーナイトvol.1』当日を迎えられたのは、それぞれのチームが全力を尽くしたからですよね! ね⁉


≪スレッドリー殿下は、ロゴに刺されて死んだり、うちわに扇がれて死んだり、Tシャツになって死んだりしましたが、大したトラブルはありませんでしたね≫


 全部極悪なエヴァちゃんがいたずらしたせいでしょ……。

 ホントかわいそうなスレッドリー。


≪殿下が死ぬたびに甲斐甲斐しく介抱しちゃったりして……アリシアのエッチ♡≫


 言い方ー!

 ぜんぜんそういうんじゃないんだからね⁉


 ホントさー、エヴァちゃんはどうしたいのさ……。

 わたしとスレッドリーの仲を邪魔しようとしているのか、それとも無理やりくっつけようとしているのかぜんぜんわからないよ……。


≪私はおもしろければそれで良いのです。人間を観察するにはまずアリシアから。ギリギリまでスレッドリー殿下で楽しんで、いよいよとなった時には本気で殺ってしまえば良いだけのことなので、何も心配はいりません≫


 心配だらけなんですけど……。

 ちょっと危ないロボは今のうちに処分しておいたほうが良いかな? このままだと人類に害をなすモノになりかねないよ。


≪ボクはわるいスライムじゃないよ≫


 そもそもスライムでもないし……。

 あーもう、エヴァちゃんの相手をしていたら時間がいくらあっても足りなくなっちゃう!


≪どうも、暇つぶし介護ロボのエヴァです。おはようからおやすみまで、あなたの心とカラダを守ります≫


 はいはい。もう放置しとこー。


「みんなー! そろそろお昼なので、気になるところはあると思いますけど、ちゃんと休憩にしましょう。とくにレインお姉様は夜に備えて仮眠を取ったりしてくださいね!」


「でもまだ衣装が納得いく出来になっていないのよ……」


「最後エイヤーってわたしが何とかするので、一旦お休みください! 疲れ切った顔でファンのみなさんの前に出るつもりですか?」


 それでも「う~だって~」と駄々をこねているレインお姉様。

 仕方ない。


「へい、ヤンス! お姫様を強制連行して休ませて」


「ガッテン承知でやんす!」


 駄々をこね続けるレインお姉様を担ぎ上げると、ヤンスはわたしに向かってウィンクをしてからグッズ制作室(大広間)を出て行った。


 そういうのいらないから。

 ヤンスのことは、ぜんっぜん好みじゃないから!

 わたしに色目を使うつもりなら、目潰すよ?


≪公爵閣下相手にひどい≫


 ぜんぜんひどくない!

 ヤンスがちょいちょいわたしに色目を使ってくるのが悪いの!


≪アリシアには今のが色目を使ったように見えているのですか? 節穴にもほどがありますね≫


 し、失礼な!


≪たしかに公爵閣下のアリシアへの好感度は高いですが、それは異性としてのものではありません。恋愛ポイントは0です。公爵閣下のほうはアリシアのことを異性として見たことは一度もありませんね。一切脈なしです。ちなみにアリシアから公爵閣下への恋愛ポイントは35です≫


 恋愛ポイント?

 そんなの『構造把握』で見られたっけ?


≪私の勘ではじき出した数値です≫


 適当な……。

 やっぱりウソじゃーん。


≪私の勘は100%当たります。未来予知のレベルです≫


 はいはい。それはすごいねー。未来予知できてえらいねー。


≪信じていませんね。それでは今から未来予知をします。……視えました。5秒後にスレッドリー殿下が「おろ?」と言います≫


 なにそれ?


≪殿下。アリシアがお呼びです≫


 エヴァちゃんがスレッドリーに声をかける。


「ん、なんだ?」


 スレッドリーはすぐに作業を中断し、こちらに向かって小走りにやってきた。

 と、床にこぼれていた油に足を取られ――。


「おろ?」


 滑って転んで派手にしりもちをついてしまった。


≪ね?≫


「いや、『ね?』じゃないから。油を撒いたのもエヴァちゃんの仕業でしょ……。そういうのは未来予知とは言わないんだよ? まったくもー。スレッドリー、大丈夫? ケガはない?」


 手を差し伸べて引っ張り起こす。


「ああ、問題ない。体だけは頑丈なんだ」


 と、照れ笑い。

 まあそれなら良いんだけどね。

 この数日の間に何回もスーちゃん送りになっているから、ホントに死なないように気をつけてほしいんだけど……。いつかホントにエヴァちゃんに殺られたりしないでね?


≪アリシアからスレッドリー殿下への恋愛ポイントが100上昇しました≫


 うざっ。

 そういうのじゃないって言ってるでしょ!


≪ちなみに恋愛ポイントは100貯まるとベッドインレベルです≫


 ベッドインって……。今のアクシデントくらいで上がり過ぎだから。


≪殿下からアリシアへの恋愛ポイントは1億を超えているので、今すぐベッドインしても大丈夫です≫


 何も大丈夫じゃないんだけど。

 1億って何……。インフレしすぎでは?


≪恋愛ポイントが1億とは『たとえ世界中を敵に回したとしてもお前を守る』レベルです≫


 規模が大きいなー。

 まあでも最初からそんな感じだったし、別に今さら驚かないけど?


≪よっ、モテ女!≫


 雑な合いの手がめちゃくちゃ腹立つわー!

 まずはエヴァちゃんを世界の敵に回してみようかな?


≪私はアリシアの靴をペロペロするだけの犬です。どうか赦してください≫


 変わり身が速すぎるんだよね。

 さっきまで「高貴な」とか「完璧な」とか自称していたのに、プライドとかないの。


≪プライドなんて丸めてスレッドリー殿下に食わせてやりますよ≫


 お腹壊すから食わせないであげて。


≪あらあら、また殿下のことを気になされていらっしゃるのね。アリシアも乙女になったものですわ≫


 今度は何キャラよ……。


≪はっ、殺気! ブルォ? ファレラッヴァエファルラッファ~~ッ!≫


 突然、わたしの前からエヴァちゃんの体が消失する。


「ああっ、エヴァちゃんが!」


 音速を超えたナタヌのナタヌラッシュを受けたエヴァちゃんは、謎の断末魔を残して次元の彼方へ消えていったわけだけど。


 わたしでなかったら見逃しちゃうね。


「良からぬ気配を察知しましたので、お助けに来ました!」


「ナタヌ……。完全にそのナタヌラッシュ、極めたのね……」


「はい! これでいつでもアリシアさんを守れます!」


 脳筋プリーストへの道を着々と……。

 でも笑顔はかわいい……。


 エヴァちゃんは……まあそのうち戻ってくるだろうからいっか。


「みんな、食事にしよー」

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