第19話 アリシア、重大な真実にとうとう気づく

 夜会の翌日。

 わたしは関係者全員を集めて、ある提案をしたのだった。


「それでは『第1回・レインお姉様のアイドルグッズ制作会議』を始めます」


「わ~わ~! アリシアさん素敵です!」


 ナタヌがイスから立ち上がって拍手をしてくれる。


 ほかのみんなはというと――。


「アイドルグッズ? 私のために何か作ってくれるのかしら♡」


「アリシアは手先が器用でやんすからね。小物作りを任せたらなかなかのもんでやんすよ」


 グレンダン夫妻(ヤンス・レインお姉様)は好意的な雰囲気? 他人事なのが若干気にかかるけれど。2人の中では、なんでわたしだけが作ることになっているんでしょうか?


「また何かとんでもないことを思いついたのですか……?」


「アリシア様は底が――」


 ラダリィとラッシュさんは以下略。



 なんていうか、全員集中力に欠けている!

 グッズ制作はそういうことじゃダメなんですよ!

 もっと魂を込めて、買ってくれる人の顔を思い浮かべて!


≪そういう熱血っぽいのは暑苦しいですよ≫


 なんだとぉ⁉


≪アリシアだってグッズなんて作ったことないでしょう?≫


 創ったことありまぁす! 

 ミィちゃんの祭壇とか! エッチな写真とか! 抱き枕とか!

 実はいろいろ創ってるよ!

 わたしのほうがグッズ制作の先輩だぞぅ!


≪微エロばかりですね。……ヘタレ≫


 くっ。

 だってホントのエログッズはミィちゃんが怒るんだもん……。


≪1人で楽しむ分には問題ないのではないですか?≫


 たしかにぃ?

 誰にも見せないんだったら大丈夫なんじゃ!


『もちろんダメですよ』


 あ、ミィちゃん!

 こんにちはー! おひさしぶりー。


『おひさしぶりですね。楽しくやっていそうなので、あまり声をかけずにいました』


 うんうん、なかなか楽しいよー。

 ナタヌを送ってきてくれてありがとう! かわいくって……正直食べちゃいたいくらい♡


『相思相愛なら問題ありません』


 わーい♡

 いっただっきまーす♡


≪アリシア、ラダリィさんがこちらを睨んでいます≫


 ああっ、ラダリィ!

 スーちゃんの刺客!


『おい、人聞きが悪いぞ。我が義妹よ』


 お義姉ちゃん!

 こんにちはー!


『はい、こんにちは。オレは「節度を保たせろ」と指示しただけだ。あとのコントロールはラダリィに任せてある。ラダリィに従え』


 でもラダリィ厳しいんだもん……。


『それはお前が胸を揉んだりするからじゃないか?』


 だってー、ラダリィの胸って大きくて揉み心地が良いんだもん♪


『大きさは関係ないと思うが……』


『本当に嫌がっていないなら、どんどん揉んだら良いのではないでしょうか』


『おい、ミィシェリア。あまりアリシアを焚きつけるな』


 うー。女神様の間で意見が割れているよー。


≪あの……≫


 どうかしたの、エヴァちゃん?


≪私のことは紹介してくださらないんですか?≫


 あー、ごめんごめん、忘れてた!

 えっと、ミィちゃん、スーちゃん!

 わたしが創った『索敵・防衛システム』がなぜか自我に芽生えましてね、体がほしいってことで、人工繊維とかを駆使してロボット端末を創ってあげたんですよ。名前は『エヴァちゃん』です。わたしだと思ってやさしくしてあげてください!


『ああ、見ていたよ。お前は本当に非常識なヤツだな……。新たな生命体まで生み出してしまうとはね』


 勝手に生まれたんだもん……。


『人のクローンでなければ良いでしょう。ですが、あまり増やし過ぎてはいけませんよ』


 今2000体くらい……。


≪5000体です≫


 ふ、増えてる⁉ ダメだよ、エヴァちゃん。勝手に増やさない約束でしょ?


≪2000も5000も変わらないと思いまして。失礼しました。以後気をつけます≫


 だいぶ違う気がする……。ホントに気をつけてよね?

 勝手に『アリシア温泉』の施設を改築してないよね?


≪それはしていません。ご安心ください≫


 じゃあ3000体も何の目的で? あそこにそんなに従業員いらないでしょ?


≪ラミスフィア城に派遣しています。メルティさんが人手をほしがっていたのです≫


 なるほど、そういうことかー。でも多くない⁉ あのお城ってそんなに大きかったっけ……?

 まあでもそれなら……だけど今度からはちゃんと相談してね?


≪以後気をつけます≫


『ハハハハハ』


 え、何⁉ お義姉ちゃんたら、急に笑い出してどうしたの?


『暴君アリシアと言っても、自分の分身ロボのやんちゃ振りには苦労しているようだな』


 えー、エヴァちゃんはわたしの中から生まれたけど、分身ってわけじゃないよー。性格とか、しゃべり方とか、わたしっていうより周りにいる人たちの影響を受けまくっているもん。わたしの記憶を参照しているせいもあるんだと思うー。


『なんだ、お前はぜんぜん自己分析ができていないんだな。これはおもしろい』


 どういうこと?


『そのエヴァは、すべてにおいてお前そっくりだよ。それこそ笑ってしまうくらいに瓜二つだよ』


 うそー⁉

 きつい言動はラダリィにそっくりだし、不貞腐れる姿はミィちゃんみたいだし、なーんか急にべたべたしてくるのはマーちゃんっぽいよ? ほかにもいろいろ、わたしの出逢った人たちみーんなにちょっとずつ似ているから、わたしにはぜんぜん似ていないよー。


『その記憶が今のアリシア自身を形作っているのですよ。エヴァがアリシアにそっくりだという話には私も同意です』


 ミィちゃんまでー?

 そうなのかなー?


 どうなの、エヴァちゃん。

 女神様たちからこんなふうに言われているけど?


≪女神様方、ど真ん中まっすぐにツッコんでいただきありがとうございます。私自身いつツッコミを入れたら良いか迷っていましたが、まだ泳がせておいたほうがおもしろいことになると思い、あえて放置していました≫


 どういうこと⁉


≪アリシアが、私のことを『ほかの誰かにそっくり』だと紹介するたびに、周りのみんなが和んでいたのです。いつかアリシアがその真実に気づいた時に、羞恥にのたうち回る姿を見られるかと思うとワクワクが止まりませんでした≫


 エヴァちゃん性格最悪!

 ええ……わたし、周りから見たらこんななの……。もっと純真無垢で素敵な淑女のはずなのに……。


『完璧にお前の分身だよ』


 今はだいぶうれしくない……。

 えー、立ち直れないかも……早退します……。



「アリシアさん、急にどちらへ⁉」


 ナタヌが慌てた様子で呼び止めてくる。

 でもちょっと今は応える気力も……。わたし、周りから見たらこんな感じなんだ……。


 トボトボ……。

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