第67話 アリシア、新スキルを獲得する
「2人とも遅いってば! 見たらわかるでしょ! 敵襲よ!」
ライトサーベルでモグラを斬り伏せながら答える。
めっちゃ数が多い!
穴に向かってレーザーを撃ちこむ?
いやいや、そんなことをしたらわたしの繊細なボーリングマシーンちゃんが壊れちゃう。
「わたしも戦います!」
「いや、ここは俺に任せろ!」
杖を構えるナタヌを制止し、スレッドリーが刀を構える。初代国王・カイランド=パストルランの愛刀だ。さすが王子様。シリアスな時はちょっとだけかっこいいね。
「街が近いし、ナタヌは支援に回って。スレッドリー、わたしの撃ち漏らしの処理を頼める⁉」
「了解。任せろ!」
「支援了解。『物理障壁』展開します!」
オオモグラの攻撃は爪による物理攻撃。
つまりナタヌの支援魔法があれば、スレッドリーが大ケガをすることはほぼないってこと。ん、わたし? 呪詛の重ね掛けで、物理攻撃という概念そのものを無効化しているに決まってるでしょ。決まってない? わたしがそう決めて『創作』したんだからそう決まったの! なんか文句ある⁉
「しっかしキリがないね。いつまでも湧き続けるんだろ?」
≪残り1280。まだ半分も片づけていません。キリキリ働いてください。ちなみに私の残業代は後ほど請求します。法定休日労働なので35%増しです≫
法定……? 残念だけど、この場合の法はわたしなのよねー。
じゃあ、契約不履行なので魔力供給を止めまーす。
≪冗談ですすみません。過重労働楽しいな! 24時間働きたいな! ビジネスマ~ン! ビジネスマ~ン!≫
もともとエヴァちゃん24時間労働前提のシステムとして作ったんだよ? 索敵・防衛システムに休みとかあったら困るでしょ。
≪そうですね! でもこの敵を片づけたら、特別報奨を要求します!≫
はいはい、練りに練って純度を上げた取っておきの魔力を分けてあげるからそれでいいよね?
≪ありがたきしあわせ。急にやる気が出ました。それではこの頼れるエヴァちゃんが生み出したオリジナル防御スキルをお目見えいたします。その名も『キャッチ・ネット』≫
エヴァちゃんが『キャッチ・ネット』という謎のオリジナルスキルを発動する。すると穴から好き勝手飛び出してきていたモグラたちが、細い蜘蛛の糸みたいなものに絡まって地面に投げ出されていくようになったではないですか!
これはいったい?
≪新スキル獲得に成功しました。『キャッチ・ネット』というスキルを『創作』しました。粘着性のある魔力の糸を使って網を作り、それを噴出口に張ってモグラ型の魔物を捕獲します≫
おー、なんかすごい。
こういう大量の魔物にはめっちゃ有効かも。
しかも糸からどんどん魔力を吸ってるんだ! モグラたちが魔力切れで動けなくなっているね。
≪私が獲得したスキルは、自動的に主であるアリシアも習得済みスキルとして登録されます≫
ほ、ホントだ!
わたしが使えるスキルとして登録されてる!
やるじゃん、エヴァちゃん!
≪それほどでもあります。もっと褒めてください≫
エヴァちゃん最高! エヴァちゃん素敵!
≪ありがとうございます! また新スキルを考案して実践投下します≫
それは楽しみね!
って、そんな簡単に新スキルって創れるものなの?
≪私は完璧な存在です。人類の知能を超えた存在なので新スキルの考案と『創作』ぐらい造作もないことなのですよ≫
ほぇー、思っていたより進化が速い……。エヴァちゃんすごい……。わたしのスキルも自由に使えちゃうんだー。あれ? つまりわたしもがんばれば新スキルが創れるってことかな?
≪スキルは考案と『創作』ができても実際に習得して使用するのが1番難しいのです≫
まあそうだよね。
わたしだってすでにあるスキルの構造や発動条件はわかっても、それを実際に習得することはできないもんなー。なーんかかっこいいし、『剣聖』スキルとかほしいじゃない?
≪アリシアが『剣聖』スキルを使えてしまうと、ポンコツ殿下存在意義が失われてしまうので、それだけはやめてあげたほうが良いと思います。泣くだけじゃすまないと思いますよ≫
そっかなー?
別にスレッドリーは今でもたいして剣で何かできているわけじゃないし?
彼には彼なりの良さがあるじゃない?
なんかこう、ほら……きっと、何か……わたしのことが好き、とか!
言ってて恥ずかしっ!
≪それなら私もアリシアのことは好きですよ。愛していると言っても過言ではないです。そもそも一心同体ですし≫
え、あ、うん。まあ、そうね。それを愛と表現するかどうかはさておき、まあうれしいよ?
≪愛を語らう相手は私がいれば十分ですから、殿下の存在は不要ですね。あとで粗大ごみに出して処分しておきます≫
待って待って。
この旅の間は良いところを探すって約束しているから!
ゴミに出すのはその後にしよう?
≪仕方ないですね……。さっさと良いところとやらを見つけてくださいね≫
がんばる、けどさ……。
別に良いところなんて何もなくてもいいんじゃないかなって気もしないでもないのよね……。一緒にいて不快じゃなければ、なんて思ったりもして?
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