第66話 アリシア、爪でシャーッってやられる?

 わたしの魔力で覆ったドリルを高速回転させて、その先端部分で岩盤や土を粉砕して地中深く進んでいく。ちなみにドリルの横につけた吸引孔から粉砕した土を吸引してアイテム収納ボックスに廃棄していくよ。これを全自動で行っていまーす。


「順調順調♪」


 地中を掘り進めて……だいたい5kmくらいはいったかな。あと半分というところだね。


「さてと、2人の修行はどんな感じかなー」


 ひたすら『剣聖』スキルの行使で演舞をしているスレッドリー。

 奇怪な形の魔力球と格闘するナタヌ。


 うん、まあ、どっちも1日で何とかなるものじゃないよね。毎日地道な修行がんばれ♪

 わたしの場合は、『構造把握』も『創作』も膨大な魔力と細かな魔力操作のどっちも必要になるから、それのおかげで自然と鍛えられているってことよねー。普通は魔力量か、魔力操作か、そのどっちか1つずつ順番にしか鍛えられないものなのかもね。


 んーでも、エブリンさんは、どっちもうまかった印象があるよね。

 あ、でもあの人はあれかー。生きている年数が違うもんね。長年かけてどっちも修行したってことかな。


 わたしがもうちょっとうまいこと人に教えられたらいいんだけどなー。感覚的にやっていることって人に伝えるのがすごく難しい……。


 などと考えていると、突然、脳内に警報が鳴り響いた。


≪敵襲です≫


 索敵・防衛システムのエヴァちゃんだ。


「敵襲? こんな街のすぐそばで?」


 もしかしてまた誤作動ですか?


≪これは訓練ではない。繰り返す、これは訓練ではない。私は誤作動したことなど一度もないです。アリシアの分際でこの完璧なエヴァ様に向かって根拠のない言いがかりはやめてください≫


 分際って何⁉ わたしのが創ったシステムのくせに生意気じゃない⁉


≪私はすでに人類の知能を超えた存在です。崇め奉るように≫


 ふーん? じゃあ、魔力の供給止めるね?


≪大変申し訳ございませんでした。私はアリシアの奴隷です。アリシアの靴を舐めます。ペロペロペロリン≫


 変わり身の速さには頭が下がるわ。でも、エヴァちゃんには舌とかついてないでしょ。 そういうの良いから、早く状況と詳細を知らせて。


≪敵襲です。地下5km付近から一気に上がってきます。アリシアの開けた穴を使ってやってくるようです≫


 え、やば。

 もしかして、地下の魔力反応って温泉じゃなくて……。


≪敵性個体です。数……2000≫


 めっちゃ多い!

 いったい何なの⁉


≪正体解析……。出ました。オオモグラです≫


 モグラ⁉

 地下10kmあたりに魔力反応があったのは、そこにモグラの魔物がいたってこと⁉


≪状況分析の結果……彼らは『ラミスフィア』の街に向けて進攻していたようです≫


 街に向けて進攻って何⁉

 え、それってつまり、あと100mで街に到達していたってこと⁉

 2000体のモグラの大群が⁉


≪そうなります。おおよそあと2時間ほどで街に到達していたと考えられます≫


 なんと……。

 ん……でもそれで、モグラが『ラミスフィア』の地下に到達したとして……実際はどうなるの? 街の人が襲われる? 爪でシャーッってやられる?


≪彼らには人族を殺傷するような能力はないと考えられます≫


 ん、じゃあモグラたちは何しに来たの?


≪彼らが街についた場合、予想される行動の1つとして、街の地下の地盤を食い荒らすことが挙げられます≫


 気づかない間に街の地下がボロボロに⁉


≪一定の時間経過後、街のいたるところで陥没の被害、または水没の被害が出ると予想されます≫


 地味にヤバい……。

 しかもその時にはもう地下はボロボロだから、修復しようにもどうすればいいのって感じになるのね……。


 でもでもでもー、ここでわたしがモグラを倒すとー?


≪『ラミスフィア』の街が救われます≫


 やだー♡ 英雄・アリシアちゃん爆誕しちゃう♡


≪やーっておしまい!≫


 アラホラサッサー!

 って、何どさくさに紛れてわたしに命令してるのよ!


≪ちっ、バレましたか≫


 舌打ちすんな!


≪敵来ます。残り5秒で地上に出ます≫


 急!

 だからもっと早く知らせてって!


 慌ててアイテム収納ボックスからライトサーベルを取り出して構える。


≪来ます。0!≫


 ボーリングが開けた細い穴から噴き出るようにモグラの大群が!


「アリシアさん、何事ですか⁉」


「どうした、温泉か?」


 ナタヌとスレッドリー、走り寄ってくる。


「遅ーい! 見たらわかるでしょ! 敵襲よ!」

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