第73話 アリシア、『アリシア・アスレチックパーク』を体験する

≪は~い。元気に挨拶できた良い子のみんな~。私はエヴァお姉さんだよ~! よっろしっくね~♪≫


 それにしてもエヴァちゃんって、日に日に表情が豊かになるね。

 もうぱっと見、普通の人間にしか見えないよ。どんどん進化していてすごいなー。


≪さっそくみんなに、この『アリシア温泉』の楽しみ方を説明しちゃうよ~≫


「きゃ~、エヴァお姉さん! お願いしますわ~」


 最前列に熱狂的なファンの方がいらっしゃいますね……。メルティお姉様はノリが良い……。


≪今日はまだ営業開始前なので、『アリシア・アスレチックパーク』は、見学だけになっちゃうけど許してね~。従業員たちが最終的な安全面のチェックを行っているので、その様子を少し見に行こう! みんな~、ちゃんとお姉さんについてきてね~≫


「は~い!」


 え、だるっ。

 いきなり温泉で良いじゃないの。アスレチックも見て回るの?



≪ここが『アリシア・アスレチックパーク』の入り口になりま~す。『アリシアパーク』の名物アトラクションがこちら!≫


 その人差し指はどこを指してるの?

 ごちゃごちゃした何かの器具?


≪名物アトラクション『ALICIA』は<チャレンジコース>と<エンジョイコース>に分かれているよ~。<チャレンジコース>の全エリアをクリアすることができれば、賞品として『アリシア温泉』の温泉エリアに入り放題になる年間パスポートが手に入りますので、ぜひチャレンジしてね~!≫


 なるほどねー。

 そうやって子ども連れでやってきた親にも、ガチでアスレチックをやらせようってことなのね。まあ、汗かいたほうが温泉は気持ちいいから、まあそういうのも良いのかもね?


≪じゃあ~、今日は『ALICIA』の<チャレンジコース>を少しだけ紹介しちゃうよ~。お手本として、エヴァ5号が1stステージに挑戦するから、みんなで応援してね~≫


「1stステージ?」


≪<チャレンジコース>は1stステージ、2ndステージ、3rdステージ、ファイナルステージと全部で4ステージに分かれているよ~。それぞれに制限時間があるから、一気に攻略していこうね≫


 うーん?

 どこかで聞いたことがあるような……?


≪1stステージは、最初からいきなり難所だよ。まずは5段跳びだ! 角度45度に立てかけられた足場の板が4枚。左右に2枚ずつ飛び石のように立ててあるから、それをリズムよく5段飛びで向こう岸まで飛び移るコースだよ。下の灼熱温泉地獄に落ちないように注意してね~≫


「灼熱温泉地獄……ですか?」


 ラダリィが身を乗り出して確認しようとする。


≪ダメダメ! 危ないよ。もしこの灼熱温泉地獄に落ちたりしたら……大変なことになるからね~≫


「ど、どうなるんですか……?」


 怯えているナタヌの手を握ってあげる。


≪下はドロドロのマグマだからね……。たちまち、髪の毛1本残らずに溶けてなくなってしまう……かもしれないよ~≫


 めっちゃホラーじゃん。

 ダメでしょ、そんな危ない施設。即刻営業停止!


 あれ……でも灼熱温泉って言っておきながら、ドロドロのマグマって? そういう怖さを演出して、緊張感を持たせているだけだよね。どうせ温いお湯なんだ……いや、あっつ! 近づくだけで熱気がすごい……。


≪でも簡単だよ~。要は落ちなければいいだけ! ほら、見て見て~。エヴァ5号が軽快なステップでクリアしていきました~。はい拍手~!≫


「「すご~い!」」


 メルティお姉様とナタヌが手を叩いて喜んでいた。


「あんな子ども騙し、誰でも飛べるだろう」


 スレッドリーが鼻で笑う。

 ほ~ら、そういうこと言わないのー。せっかくショー的に見せてくれてるんだから、ちょっとは楽しみなさいよ。


≪あれあれ~? 舐めた口を利く悪いお子様がいるみたいだね~。そこの金髪の子! スレッドリーくん!≫


「なんだ? 俺か?」


 名指しされて、自分を指さす。


≪そうそう、キミだよ~。そんな簡単だって思うなら、ちょっとこの5段飛びに挑戦してみてよ~≫


「ちょっとちょっとエヴァちゃん⁉」


 まだ安全面のテスト中なんでしょ?

 生身の人間は危険なんじゃない?


「え、でも灼熱温泉地獄なんだろ……」


≪あれあれ~? 誰でも飛べるのに、まさかビビってるの~? へいへい、王子がビビってる~≫


「む、そういうわけではないが……」


≪ビビってる男ってかっこわる~い。こんな口だけビビりチビり野郎と結婚したいって思う人なんていないよね~≫


 ここぞとばかりに煽ってらっしゃる……。

 エヴァちゃんさ、もう最初からスレッドリーにケンカを吹っ掛けるつもりだったでしょ……。


「ドリーちゃん!」


「姉上……俺は……」


「アリシアの前で恥をかいたまま引き下がるつもりですか?」


 って、こういう展開になりますよねー。

 スレッドリーも余計なことを言わなければ、あと少しは生き永らえたのに……。まあ、次のステージか、その次のステージ辺りでは強制イベントが発生していたんでしょうけどね。


「わかりました。やります……」


 スレッドリーがゆっくりと立ち上がる。おー、ほどほどにがんばれー。

 と、わたしの隣に座っていたナタヌも勢いよく立ち上がる。


「わ、私もやります! やらせてください!」


 まあ、わたしに良いところを見せようとしたら、スレッドリーだけってわけにもいかないから、こうなりますよねー。2人とも、ホント死なないでね?

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