第70話 アリシア、究極の選択を迫られる

「ふぅ……完成っと。エヴァちゃん、これでどうよ?」


 ミィちゃんそっくりだった外見をいじり回し、著作権フリーなオリジナルのNEWエヴァちゃんが完成した! 余は満足じゃ!


「わたし的にはめっっっっっちゃかわいいと思うんだけど、どうかなどうかな⁉」


≪なるほど……≫


 え、リアクション薄くない?

 もっと感動して涙を流す場面では?


≪アリシアの好みの女の子はこういう感じなんですね~という感想です≫


 うわー、コメント冷めてるー。

 良いじゃないのさー。中身だってわたしが創ったんだから、外見だってわたしの理想を詰め込みたいじゃないの!


≪それで……やさしくしてくれるなら別にいいんですけどねっ!≫


 おほー♡ ツンデレだ! ツンデレロボだ♡


≪それにしても……アリシアの好みの女の子はこういう感じなんですね~≫


 あれ、時間が巻き戻ったのかな⁉


≪たぬき顔≫


 タレ目って愛くるしい♡


≪低身長≫


 わたしより背が低いほうが絶対かわいい♡


≪巨乳≫


 わたしだけの♡ 毎日触りたいもん♡


≪あなたは思春期の中学生ですか≫


 この世界に中学生とかいませんー。

 だからセーフですー。


≪はぁ……≫


 せっかく人間っぽいボディを手に入れて最初にすることがため息⁉

 なんかもう少し感動の舞を踊ったりとかしないの……。


≪それは命令ですか?≫


 そういうのではなく……。


≪前世の記憶を参照。喜びのブレイクダンスを再生します≫


 うわっすごい!

 逆立ちしながらめっちゃ回ってる!

 頭どうなってるの、それ⁉


「あ、アリシアさん⁉ この方は⁉」


「おっと……いきなりブレイクダンスがお披露目になってしまった……」


 エヴァさん、それはちょっとインパクトあり過ぎの登場シーンですよ。


「えーと、索敵・防衛システムのエヴァちゃん。その個体端末的なやつです。仲良くしてあげてねー」


「めちゃくちゃ回ってますけど……故障ですか?」


 ナタヌが心配そうにブレイクダンス中のエヴァを見つめる。


「いや……なんか喜びの舞らしいよ?」


≪ぜんぜん違いますが≫


 エヴァちゃんのダンスがピタッと止まる。

 すごい、あんなに激しいダンスだったのに、まったく息が切れていない。さすがロボ。器用に飛び起きると、ナタヌとスレッドリーに向かって一礼する。


≪お初にお目にかかります。索敵・防衛システムのエヴァです。気軽にミサトさんと呼んでください≫


「おいー!」


「ミサト……さん? ミサト=エヴァさん?」


 元ネタを知らないナタヌが混乱してるでしょうが!


「おう、よろしくな。ミサトさん」


 スレッドリーが素直に受け入れてしまったよ……。


≪こんにちは、スレッドリー殿下。私はアリシアの唯一無二のパートナー・エヴァです。アリシアのことをすべて理解しているの私だけです。私たちはお互いの命を預け合う間柄ですので、決して私たちの間に割り込もうとしないでください。男なんて汚らわしい!≫


 うわっ、初対面なのにいきなり言葉のナイフで切り付けた⁉

 なんでそんなに敵意剥き出しなの⁉


「え、お、ああ……そうか……」


 さすがのスレッドリーでもちょっと引いてるじゃないのさ。今のはエヴァちゃんがちょっとおかしいよ?


「なんですって⁉ 唯一無二のパートナー⁉ 私もアリシアさんと将来を誓い合った仲なのですが⁉」


 うわー、ナタヌは負けてないなー。積極的に正面から攻撃を仕掛けていくー!


≪人間風情が……。その生意気な乳をもぎ取りますよ?≫


「えっ。乳って。そんな……見ないでください」


 ナタヌが胸を抱きかかえるように隠して、頬を赤く染める。


≪アリシアはですね、もったいぶって隠しているあなたの乳なんかよりも、自分で創った理想の乳――つまり私のおっぱいを揉みたい。毎日揉みたい。そう言っているのですよ≫


「それは違……違うからね⁉」


 ナタヌのも……ちゃんと揉みたいから!


「私……もったいぶってなんていません! アリシアさんが望むなら……良い、ですよ……」


 ナタヌが手を広げて受け入れのポーズ。

 で、でも今はラダリィから禁止されているから……。今もどこかで監視されているかもしれないから……。 


「アリシアはそんなに胸が好きなのか? だったら俺のも揉んで良いぞ」


≪ゴミ虫殿下はすっこんでいてください。今は百合百合しい会話の最中です。なんであなたはそんなに空気が読めないんですか? レーザーに焼かれて消滅しますか?≫


「なんだ……その……すまなかった……」


 スレッドリーが小さく謝り、それから一切口を開かなくなってしまった。


 エヴァちゃんさ、スレッドリーに対してだけあたりがきついって……。

 あ、これ、どう考えてもラダリィの影響だわ……。


「私はアリシアさんにすべてを捧げると、女神・ミィシェリア様の前で誓ったのです! だから私のすべてはアリシアさんのものです!」


 ナタヌが私の前に跪く。


≪女神様に誓わないとその体を捧げることもできないんですね。人間とは不便なものです。まあその点私はもともとアリシアの中から生まれ、アリシアとずっと一緒に生きてきた存在なので、今さら女神様に誓う必要もなく、一心同体なので私の勝ちですね≫


 エヴァちゃんも跪いてくる。


 両者一歩も引かない……。

 えっと……これは何の対決?

 わたしのことを取り合っている……わけでもなくて……わたしはどうしてあげたらいいのかな。


≪この拾ってきた小娘と、完璧なる存在の私。どちらを選ぶんですか⁉≫


「人間の私と血も通っていないロボットのどちらを選ぶんですか⁉」


 2人の美少女――エヴァとナタヌに迫られるわたし。

 えー、そんな究極の選択みたいなこと言われても……。

 

「どっちかなんて選べないよ……。2人のこと、どっちも大事だもん……」


 素直な気持ち。

 上も下もないでしょ。


「仕方ないですね。今回は引き分け……のようですね」 


≪仕方ありません。どちらかが選ばれるまで休戦、ですね≫


 なぜか笑顔で握手を交わす2人。

 今の流れで友情が芽生えたの⁉ どの辺りで⁉

 でも、わたしを抜きにして仲良くなるのはダメ……だよ?


 2人のおっぱいは、わたしだけのものだからねっ⁉

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