第54話 アリシア、ラダリィに守られる
「3回戦の勝負はラダリィの勝ちで……」
ナタヌのことを贔屓したい気持ちはあるけれど、ここは公正なジャッジを心がけて……。
「当然の結果です」
「私の負け……ですか……」
すまし顔のラダリィと、愕然とした表情で膝をつくナタヌ。
勝者と敗者。
あまりに対照的な2人の姿がそこにはあった。
「まあ今回はねー。だってさ……ナタヌったらそんなエロい体していて、わたしの体形イジリ……マイナス100万ポイント!」
そこを笑って流せるほど、わたしは大人じゃないのですよ!
えーえー、細いマッチ棒みたいな体形で悪かったわねっ!
「私は変わらぬアリシアさんの体が好きで……夜な夜な……」
「はいストーップ! ナタヌ……それはひさしぶりのわりにちょっと飛ばし過ぎだから! そういうのは……もうちょっと小出しにして?」
そういう話題はせめて2人きりの時とかにね?
わたしのことが好きなのは分かったけど、みんなの前でアピールされ過ぎるとちょっと醒めちゃうっていうか……。
「なるほど、ここまでとは……。旅の間に何か間違いがあっても困りますね……。わかりました。この旅の間は、私がアリシアと夜を共にするということでバランスを取りましょうか」
ラダリィがため息交じりに頬に手を当てる。
「えーと、ラダリィさん? それは何のバランスですか……」
「わかりませんか? ナタヌ様が加わったことで、少々状況が変わってまいりました。ヘタレ殿下がアリシアに夜這いをかけることは億に1つもないことですが、ナタヌ様は……どうでしょうか……?」
チラリ。
ナタヌがめっちゃモジモジしている……。
うん……わたし、普通に襲われちゃいそう。うれしいにはうれしいんだけど、まだ覚悟というものが……。モジモジ。
「押しに弱いアリシアを1人放っておいたら、近いうちに……。つまり、監視役として私が同衾することで、一方的に殿下が不利な状況になるのを防ぐ……とともに、アリシアが安心して眠りにつけるようにするのがよろしいかと」
「同衾って……。ようは同じ部屋で寝泊まりするってことよね? それだけよね⁉」
「アリシアが望むならその先までもお相手しましょうか」
「ダメです!」「ダメだ!」
ナタヌとスレッドリーが慌てて否定する。
ハハハ。2人とも甘いなー。まーたラダリィの冗談に引っ掛かったりしてー。
「私もさすがに女性との経験はございませんが……そこの2人よりはリードできるのではないかと。ご安心ください」
「えっ、冗談じゃなかった⁉ そんなのちっともご安心できないんですけど⁉」
「怖いのは最初だけです。一度経験してしまえばあとは……ふふ♡」
「ふふ♡」って何⁉
どうしようどうしよう。このままだとラダリィと一夜を……。
「そうだ! 一番安全そうなラッシュさんと一緒に!」
「わ、私ですか⁉」
この中で最も安全な人物!
聖騎士様ならわたしを守ってくれるはず!
「ダメです!」「ダメだ!」「それはどうかと思います」
一斉に否定されてしまった……。
「申し訳ございません……。殿下を差し置いてそれは……」
ラッシュさんがすまなそうに頭を下げてくる。
うー、ラッシュさんにもお断りされてしまった……。良い案だと思ったのに……。でも冷静に考えて、ラッシュさんは男性だし、安全そうに見えてもやっぱりダメですよね……。
「アリシア、安心してください。先ほどのことは、アリシアが望めば、の話ですよ。望まなければ同じ部屋で寝泊まりするだけのことです」
「ホントに? 何にもしない……?」
「ええ、何も。私は幸いなことに相手に困っておりませんから」
モテ女の余裕発言だ!
人生で一度は言ってみたいセリフ!
『わたし、相手には困っておりませんから』
やだ♡ ラダリィさんってば、かっこいい……。
「アリシアがムラムラしてどうしようもない時には、2人には内緒でお相手して差し上げますよ、と申し上げたまでです」
ムラムラって……。
チラッ。
いやいやいや。そんなことは……。ない、よ?
「ナタヌ様、ついでに殿下。少なくともこの旅の間、抜け駆けはなしでお願いします。スークル様からも言付かっておりますので、どうかよろしくお願いいたします」
スーちゃんがそんなことを⁉
わたし、お義姉ちゃんから守られていたのね♡
「私はミィシェリア様から『タイミング次第で行っちゃえ♡』と言付かっているのですが!」
義嫁はわたしを守ってくれていない!
むしろ積極的にけしかけていらっしゃる⁉
「私がアリシアと同じ部屋で寝泊まりすることでタイミングはないと考えてください。これはアリシアの心の整理をする時間を取るという意味でも重要なのです。旅が終わり、アリシア自身が結論を出した後に改めてタイミングを見計らっていただければ幸いです」
わたしが心を整理する時間。
そうだ。この旅はそう位置付けて出発したんだった……。
ラダリィがフォローしてくれるならゆっくり考えられるね。ありがとう。
「アリシアさんのためなら……ガマンします」
「お、おう……」
2人もありがとう。
この旅の間に、2人の良いところをいっぱい見つけるね。
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