第35話 アリシア、温泉に入る♡
「アリシア、よくいらっしゃいました。それにしても予定よりもずいぶん早い到着でしたね」
3番目のお姉様、ラミスフィア侯爵夫人が自らお城の門のところまで出迎えにきてくださった。やさしいお姉様、大好きー♡
「お姉様に会いたくて、急いできちゃいました♡」
「まあまあ。かわいい義妹だこと♡ 長旅はさぞ疲れたでしょう。そんなところに立っていないで、中に入ってくつろいでくださいな」
後ろに控えていた執事さんやメイドさんたちが、総出でわたしたちの手荷物を預かってくれる。ラダリィも、ここではお客様扱いされて、「あ、私は大丈夫です」なんて言って恐縮している姿が見られた。すごく新鮮!
「しばらくは滞在できるのよね? お部屋は用意してありますから、いつまででもゆっくりしてくださいな」
「ありがとうございます! そうですねー、もしよろしければ1週間くらいは滞在したいなーと。街の観光もしたいですし!」
あと温泉に入ったり、周辺の秘湯を探したりもしたいですし!
「ええ、ええ。ゆっくりしていってくださいね。木材とブドウ畑と温泉くらいしかない街ですけれど、活気があって民も皆楽しく暮らしています」
「温泉! 実はすっごく楽しみにしています!」
「あら。アリシアは温泉が好きなのかしら?」
「まだ話に聞いているだけで、実際には入ったことがないんですけどー。お姉様みたいにお肌つるつるになりたいです! ね、ラダリィ!」
温泉の話題が出たあたりから、だんだんと前のめりになってきているラダリィを巻き込んでいく。そんなに縮こまっていないで、一緒にお話しようよ。
「ラミスフィア侯爵夫人におかれましては、本当に美しいお肌をされていてうらやましい限りでございます」
硬い!
ラダリィめっちゃ硬いよ!
「あらやだ。ラミスフィア侯爵夫人だなんて他人行儀な呼び方ね。その呼称は私の愛しい閣下の前でだけにしてくださらない? 普段は『メルティ』と」
そう言ってメルティお姉様がわたしとラダリィに向かって微笑みかけてくださった。なんて気さくな方なの。
「メルティお姉様!」
「……め、メルティ様」
わたしの呼びかけに、緊張の面持ちのラダリィも続く。
「はい、よくできました♡ 2人には閣下が私のために特別に作ってくださった温泉施設に招待しますからね。こっちへいらっしゃいな」
「はーい♡」
わーいわーい! さっそく温泉だー! どんなお湯かなー。魔力増幅回復効果とかあるかな?
「あ、姉上。俺たちはどうしたら……」
「あらドリーちゃん、あなたも来ていたのね。それにラッシュもひさしぶりね」
メルティお姉様はスレッドリーのほうに視線すら向けない。わたしたちの時とは態度が180度……120度くらい変わった⁉
「メルティお嬢様。おひさしぶりでございます」
ラッシュさんが膝をつき、恭しく頭を下げる。
「お、俺たちも温泉に……」
「ドリーちゃん、ごめんなさいね。温泉施設は女性専用なの。男はそうね……外に井戸があるから、そちらでどうかしら」
「どうかしらと言われても……それは水では……」
「井戸で、どうかしら?」
ああ、強い。この圧力……。
五つ子が揃っていなくてもやっぱりお姉様はお姉様だったわ。ドリーちゃんじゃ勝てないって。
「あ、ありがとうございます……」
スレッドリーはもうそう言って下がるしかなかった。ちょっとかわいそうだけど、まあ、女性専用なら仕方ないよね! 気候も穏やかだし、きっと井戸水が冷たくて気持ちいいよ! じゃ、ドリーちゃんまたあとでねー♪
* * *
バスタオルを体に巻いて、いざ温泉へ♪
「こ、これはすごい!」
ここがお風呂⁉
お城の中が丸々温泉施設になったのかと思うくらい、めちゃくちゃ広い!
石造りの巨大な湯舟の真ん中から絶えずお湯が湧き出ているのが見える。天井もものすごく高くて……湯気が雲みたいになっていて上まで見えないよ!
「この壁、大理石ですか! 滑らかに磨かれていてとっても素敵ですね♪」
足元は滑らないように、逆に少しざらざらさせていて気が利いているね。
「気に入ってもらえたかしら? 逗留中はいつでも許可なく利用してかまいませんからね。そちらのお嬢さんも……そう、ラダリィだったわね。いつもドリーちゃんのお世話をしてくれている子。ちゃんと覚えていますよ」
「はい、ラダリィにございます。お世話だなんてとんでもございません。いつも陛下には過分なるご配慮をいただいております」
バスタオル1枚の姿でラダリィがペコペコと頭を下げている。頭に合わせて大変立派なものがぶるんぶるん震……うーん、おー、なんと……谷間が深い……。ちょっとだけちぎって持って帰るか……。
「あらあら……。ラダリィはいつになったら打ち解けてくださるのかしらね。私たち、実は気が合うと思うのよ? あなたがドリーちゃんをどのように教育してくれているか……王宮のことで私が知らないことがあるとでも?」
メルティお姉様が金糸のように細く輝く髪を結いあげながら、にやりと笑う。
お姉様、ホントにお美しい……。バスタオルを取り払って一糸纏わぬ姿に光が当たって……思わずため息が出ちゃう。
「アリシア。そんなに強く見つめられると私でも少し恥ずかしいですわよ」
メルティお姉様が背中を向けて腰をくねらせる。
いや、そっちのほうがさっきよりも背骨のラインとか……すごく扇情的で……ごちそうさまです!
「メルティ様。その……アリシアは女性に対しても、その……」
ラダリィが遠慮がちに申し出ながら、わたしのほうをちらりと見てくる。視線がぶつかると、そっと自身の胸を隠してきた。
ちょっと、わたしがそういう目でお姉様の裸を見てるみたいじゃないの!
「女性に対しても、ということは男性に対しても、なのよね?」
メルティお姉様が湯船に片足を差し入れつつ、小さな声でつぶやく。
「私の見立てでは、どちらも、のようです」
「そうなの……。困ったような、安心したような……」
「ですがアリシアは誰彼かまわず手を出したりはしませんのでご安心ください。口だけのヘタレですから」
メルティお姉様に続き、ラダリィもバスタオルを取ってから湯船に入っていく。
ラダリィさん、今日もキレッキレですわね! 言いたい放題じゃないのさ!
「わたしはヘタレじゃありませんー。行くときはガッと行っちゃいますからね! ガッ!」
湯船に勢いよく飛び込み、背後からラダリィの胸を揉みしだく。
「ちょっとアリシア⁉ やめっ、やめてくださいっ!」
「ここか? ここがわたしの悪口を言っているのか⁉」
ぬはぁー、めちゃんこ柔らかい……。
わたしのとは弾力が……くそぅ! けしからんけしからん!
「あなたたち、仲が良いのね。これから1週間、うんと楽しめそうだわ♡」
気づくと、メルティお姉様は、わたしたちから5mくらいは離れて安全圏からこちらの様子を眺めていた。
「アリシア! もういい加減にしてください! あっ♡」
やだっ!
ラダリィが泣くまで揉むのをやめないっ!
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