暴君幼女は愛されたい! テキトーにLUK≪幸運≫に全振りしたら、ステータス壊れちゃいました~女神様からもらったチートスキル『構造把握』『創作』を使って、玉の輿でハーレムな無双ライフ……スローライフを♪
第29話 アリシア、『ラミスフィア』侯爵領に思いを馳せる
第29話 アリシア、『ラミスフィア』侯爵領に思いを馳せる
わたしたち『パストルラン王国』の大使一行が目指す最初の目的地は、『ラミスフィア』侯爵領だ。スレッドリーのお姉様がお住まいになっているので、ご挨拶をしにね。
『ラミスフィア』侯爵領の中心都市『ラミスフィア』は、王都から北西方面に進んだところにある内陸部の街だ。
「ところで『ラミスフィア』って何が有名なんでしたっけー?」
連絡用の小窓を通じて後ろの客席に話しかける。
「なんだったかな……。たしか果物……?」
「『ラミスフィア』は山を切り開いて作られた都市です。林業が盛んで、国内で使用される木材の大半は『ラミスフィア』産です。木材加工の技術者が多く集まる地域でもあります」
ラダリィが解説してくれる。
「木材加工って何だ?」
「木は切り倒しただけですと、ただの丸太としてしか利用できません。切ったり削ったりして大きさや形を整えることで、多種多様な使い道が生まれるのです」
「あとは燃やしたりして木炭にしたりもするよねー」
木は万能だからね。
「でも木は食えないしな……」
スレッドリーがぼそりとつぶやく。
まあそうなんだけどね。でも林業の中心地ってことは、『ラミスフィア』が国を支える重要なポジションであることには違いないよ。お姉様が嫁いでいる時点でそれは明白だけどね。
「食べ物と言えば、『ラミスフィア』はブドウの産地としても有名です」
「あ、そうなんだ?」
「『ラミスフィア』のワインといえば、非常に芳醇な味わいと香りで人気を博していますね。値段が非常に高価なのでなかなか手を出すことはできませんが……」
と、少し残念そうなラッシュさん。
「スレッドリーのお姉様のところだし、良いワインをねだってみましょうよ。スレッドリーがかわいく頼めば、高級ワインを飲ませてくれるかも?」
全員が期待に満ちた目でスレッドリーに熱い視線を注ぐ。
わたしは成人したけど、まだちょっとアルコールを摂取するのには抵抗が……。あ、でも試飲はして、その人気の高いワインの味を『構造把握』しておけば、あとでコピー商品を……ふふふ。
「ワイン? ラッシュもラダリィも、あんなまずいものが好きなのか?」
「まずい……ですって?」
「殿下……」
2人は同時に目を見開いてぐるりと1周させた後、小さくため息をついた。
「お子様舌ですね」
「ええ、まだ殿下には早かったようです」
2人が顔を見合わせてから鼻で笑う。
わたしは子ども舌なのでノーコメントで。
「なんだ。あんなかび臭い飲み物よりも、ブドウジュースのほうがおいしいぞ!」
そーだそーだ!
スレッドリー、もっと言ってやれー!
「搾りたてのブドウをそのまま注いで飲む。カビさせたり発酵させたりするなんてもったいないと思わないか?」
フレッシュジュースこそ至高!
あー、早く『ラミスフィア』でブドウジュース飲みたいなー。馬車の速度上げよう!
ステルスレベルダウン。
エンジンに送る魔力量を2.5倍にアップ。圧縮率0.1%アップ。
≪到着予想日時が変更されました≫
3日後の正午から、2日後の正午へ。ヨシ! 待ってろー、わたしのフレッシュジュース!
* * *
「そろそろ日も傾いてきましたし、今日はこの辺りで野営しましょう」
ほんの少しだけ街道を逸れて、草原地帯に停車する。
野営するなら周りに人がいないほうがうれしい。
なぜって?
「この辺りは魔物の活動も比較的穏やかで安全だとは思いますが、念のため防護フィールドを展開しますね」
移動の合間に、野営の説明はしておいたので、防護フィールドを見て3人のあごが外れる顔を見る楽しみがないのはちょっと残念。
「一応もう一度だけ念を押して注意しておきますけど、防護フィールドの展開面には、内側からでも絶対に手や体を振れないようにしてくださいね」
これはフリじゃないので……。
「触ったらどうなるんだっけか?」
「死ぬ」
「触っただけで?」
「血液が蒸発して干からびて死ぬ」
これは冗談じゃないからね?
さすがに血液が蒸発したら、わたしでも助けてあげることはできないから。絶対に触らないように。
「ここを中心に半径20mほどの球状に展開していますから、この辺りの生活エリアにいれば特に気にすることはないので安心してください。それと、その外側半径20km四方には自動索敵用の魔道具を作動させておきますから、魔力を自動で感知してレベルの低い魔物は自動排除します。対人感知オプションもついているので、万が一、人が迷い込んできてもこちらで安全に対処するので気にしないでください」
「至れり尽くせりですね。さすがアリシア様です」
「護衛役である私の仕事がぜんぜんなくて困ります……」
安全面の確保は冒険者でもあるわたしの領分だからねー。
ラッシュさんも気にしなくていいのよ。
「ラダリィはいてくれるだけでみんなの癒しになるんだから、息を吸うだけでずっと仕事をしてるってこと!」
「そんな……。かわいくて美しいアリシアを前にして私なんかが……」
「そうだそうだ! アリシアはかわいくて美しい! ラダリィは……普通だな」
コラ!
女性を前にして普通とか、絶対言っちゃダメ!
ラダリィは親しみやすくてかわいいの! だから癒されるの! それとなんていったって、平均をはるかに超えるその魅惑のボディがね!
『構造把握』……眼福♡
「ひっ」
ラダリィが体を震わせて辺りをキョロキョロと見回しだした。
まさか不可視なはずの『構造把握』スキルが感知された? そんなバカなっ!
『構造把握』……眼福♡
「誰っ⁉」
あれ、やっぱり?
ラダリィって、スキル外スキル的な第6感を持っている、のかな……?
「みなさん、夕食の用意ができました。といっても食糧庫からアリシア様の料理を取り出して並べただけですが」
ラッシュさんが遠慮がちに頭を掻きながら言う。
「準備ありがとうございます! みんな、夕飯を食べてから順番にお風呂に入るよー」
こうして、楽しい楽しい小旅行の1日目が過ぎていく。
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