第28話 アリシア、小旅行に出かける
王様との密談により、ラダリィとラッシュさんには、片道3週間の小旅行に同行してもらうことになりました! 2人には急なお願いで申し訳ないけれど、おかげでわたしはすっごくハッピー♪
それでね、出発日は今日の予定だったから、2人には急いで旅の支度をしてもらって、今は王都の郊外に集合をかけたところだったりするわけですよ。ホントにごめんねー。でも馬車をピカピカにして、おいしい料理をたくさん用意して待ってるからね!
「あ、ラダリィだ。早いね!」
わたしが自慢の馬車(ジェットスキー)の最終メンテナンスをしていると、ラダリィが1人、集合場所に現れた。普段と変わらずメイド服のまま。小さな革袋を1つ持っているだけ。ずいぶん軽装だね。
「アリシア、お待たせしました。……これは馬車……なのですか?」
わたしの特製馬車を見て、ラダリィが目を丸くする。
「うんうん。わたしが創ったんだー。かわいいでしょ♡」
世界に1つだけの自慢の馬車――『魔力・波乗り式ジェットスキー改☆馬車客車一体型・ステルス機能付与ver』。今回はあんまり改造を施す時間がなかったので、前に『ガーランド』を行き来した時のままだけどね。
「おすすめポイントはねー。ここ! 客車の入り口の取っ手が両開きになってるの!」
入口が広いから乗り降りがしやすいんだよー。階段もなしのバリアフリー仕様!
「そ、そう……なんですね。これが馬車……? 馬は作り物なんですね……」
「うん、まあ、そうだねー。だから正確には馬車風の乗り物、かな? 実際は魔力で動いているし。あ、でもこのことは企業秘密だから内緒ね! 誰にも言わないでね!」
ひっそりこっそりの約束なので、わざわざ王都の外で待ち合わせしているって事情なわけですよ。走りだしちゃえば、馬車っぽく見えるはずだから大丈夫大丈夫♪
「アリシア様、遅くなりました」
「アリシア~! 言われた通りラッシュを連れてきたぞ」
ラッシュさんとスレッドリーの2人がやってくるのが見える。
遅い……。それにずいぶん荷物多いね……。
ラッシュさんだけで持ち切れず、後ろに1、2、3人も執事さんに荷物を持たせて連れてきている……。
「すみません。殿下の荷物が多く……。全部馬車に乗るでしょうか?」
「いったい何をこんなに……っていうのは、まあいいですね。王族ですからいろいろあるでしょうし。大丈夫ですよ。荷物はいくらでも積めます! 全部専用のアイテム収納ボックスに放り込めば平気なのでー」
わたしが普段使いするアイテム収納ボックスとは別に、馬車には荷物用と食材用のアイテム収納ボックスがあるから安心ですよ♪
ポイポイポイっと! ほら、全部入ったー。
「全員分の荷物を積み込み終わりましたね? じゃあ、さっそく出発しますよー。わたしは御者席に乗るので、3人は後ろの客車でゆっくりくつろいでくださいねー」
それではー、自慢の客車にご案内!
柔らかなソファー。ふかふかのラグ。豪華な食事を用意していますので、快適な旅を満喫してください♪
「こんな馬車初めて見ました……」
「私も初めてです……。やはりアリシア様は底がしれない……」
「おお、なんだか座りやすいイスだな~」
3人とも良い反応をありがとう!
そうやって素直に喜んでもらえるとうれしいな。ソフィーさんとか、なぜか苦い顔するしー。
「あ、そうだ。スレッドリー。最初の目的地は『ラミスフィア』侯爵領で良いんだよね? 3番目のお姉様のところの」
「……そうだったか?」
おい、予定くらい把握しておけ!
自分のお姉様のところでしょ!
「そうですね。『ラミスフィア』は王都と『ダーマス』とのちょうど中間地点に位置します。その次に立ち寄る予定の『グレンダン』は『ラミスフィア』のすぐお隣です」
ラッシュさんが横からフォローを入れてくれる。何かと苦労をおかけしますね。
「はーい。ありがとうございます」
実はこの旅は『ダーマス』に直接向かうのではなくて、北部にあるお姉様たちの領地に寄り道をしつつの旅なのです。3女『ラミスフィア』侯爵領、長女『グレンダン』公爵領を経由して3週間後に『ダーマス』へ向かう予定。
つまり、馬車での移動時間が短くできれば、それだけお姉様方のところに滞在する時間が長く取れるようになるわけで。観光もできちゃうからちょっとした小旅行気分なのよねー♪
「ゆっくり旅を楽しむとして、ざっくり3日で『ラミスフィア』に到着っていうところかなー」
最高速度を出せば、1日……いや半日で行けると思うけどね!
「3日ですか⁉ 馬での移動だと2週間……どんなに急いでも10日はかかると思いますが……」
そうねそうね。
普通ならラッシュさん言う通りですよ。
でもね、わたしの馬車は、何ていったって特別製ですから! またラッシュさんに「さすがアリシア様、底がしれませんね……」って言わせちゃうのかなー。ふふふ、楽しみ♡
「まあまあ、移動のことはわたしに任せておいてくださいよ。ラダリィもずっと固まってないで、後ろの冷蔵庫から飲み物を出したりしてくつろいでねー」
「は、はい!……冷蔵庫? これ? ひゃっ、冷たい!」
冷蔵庫を開けたラダリィが、中から漏れ出た冷気を顔に浴びて目を白黒させていた。
そっか、ラダリィは冷蔵庫も初めて見るんだっけかな? 冷蔵庫を使い始めたら、もう二度と冷蔵庫なしの生活には戻れないからね。なんでも冷えて、何でも新鮮! 恐ろしい魔道具ですよ!
「そっちの食糧庫のほうに調理済みの料理とか、お菓子とかも入っているから、みんなで適当に食べててねー。あ、もちろん夜ご飯が入らなくならない程度にね! それと昼間にお酒は禁止ですよー」
「熱々のナゲットクンが……。すごい……」
「お、なんだ? うまそうな匂いだな」
「これはすごい……」
3人とも反応が素直でかわいい♡
いいよ、好きよー♡
「じゃあ、出発進行!」
ゆっくりと慣らし運転しつつ、街道を進んでいきますかねー。
ヒャッハー! どけどけーい! アリシア様がお通りだぞーーー!
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