第25話 アリシア、義理の家族ができる

 王宮慰労パーティーが無事閉会。

 ポーションやら魔道具やらに対する王様からの追及もなかったので、なんとか逃げ切れたかと思った翌日……。


「アリシア、パーティーの準備、いろいろありがとうね。みんなとっても喜んでいたよ~」


 ニッコニコの笑顔をした王様に呼び出されていた。

 陛下との謁見と言えば『玉座の間』だ。きっとここは何十人、何百人の人たちが拝謁するための場所なんだと思う。ちょっと広すぎて緊張する……。


『パーティーはそんなに楽しかったのか? オレたち女神も呼んでくれれば良かったのに』


 そして当たり前のようにいるスーちゃん。戦いもないし、女神様は暇なのかな?


「そうですね。次はぜひスークル様たちをお呼びして、アリシアの異世界料理をご一緒に堪能したいものです」


「そんなそんな滅相もございません。女神様が参加されるパーティーなど前代未聞の出来事ですわ」


『お前たち、どっちも口調が変だぞ? いつも通り話せ』


 スーちゃんが怪訝そうな様子でこちらを見てくる。

 ちょっとラダリィのマネをしてみただけー。


「オホン。昨日のパーティーが大成功したのはとても良かったんだけど、今日アリシアを呼んだのは別件ね」


 うわー。やっぱりこれからいろいろ問いただされるのかな……。どうやって切り抜けよう。助けて、スーちゃん!


 ……無視⁉

 あなたの愛する義妹がピンチなんですよ? かっこよく助けてくれても良いんじゃないですか⁉


「例の異邦の国との交渉の件だよ。少し準備に手間取って遅くなっちゃったけどね」


「あ、そっちですか!」


 なんだー。

 昨日の今日で呼び出されたから、絶対チートスキルの追求だと思ったー。って、スーちゃん笑ってる! さっきはわかっていて無視したのね! ひどい! お義姉ちゃんひどいわ!


『ストラルドよ、詳しく話を聞かせてくれ。我が義妹も興味津々だそうだよ』


 スーちゃんがわたしに向かって小さくウィンクしてくる。

 今、我が義妹って言った⁉


『ああ、先日のロイスのパーティーでも迷惑をかけたからな。それくらいは良いだろう』


 えー、お義姉ちゃん♡


『なんだね、義妹よ』


 ホントにお義姉ちゃんだ♡

 風船みたいな実姉とは違って、スラッとしていてかっこいいお義姉ちゃん♡ 義姉妹の契りを結んだからには、これからは一緒に住まないといけないよね! 王宮に愛の巣を作ってもらう? それとも領地をもらって2人で暮らす? どうしようどうしよう♡


『いや……おまえがどうしてもと望んでいたから、義妹という肩書を認めるというだけであってだな……』


 子どもは男の子と女の子が1人ずつ♡

 ううん、やっぱり野球チームが作れるくらいがいいかも♡


『義姉妹というものを何かと勘違いしていないか? 女神と人の間に子は設けられないし、この世界に野球というスポーツは存在していないぞ』


 むぅ。

 何もかも否定しなくてもいいじゃない……。

 義理なら、ちょっとくらい爛れた関係になっても良いって、前世の知識にあるもん! 薄い本にはそう描いてあるって知ってるもん!


『ちょっとくらいって……。お前、その知識は相当偏っているぞ……』


「あの~? 2人だけの世界に入らないでくれないかな? ここには3人しかいないのに、ボクにだけ聞こえないように会話するのは淋しいよ……」


 王様が遠慮がちに抗議の声を上げる。


「す、すみません! スーちゃんがわからずやで!」


『おい! それは違うだろ! アリシアがエロい妄想ばかり垂れ流してストラルドを放置したせいだろ!』


「エロいって! エロいって思うほうがエロいんですぅ! お義姉ちゃんのエロ女神!」


『おまっ! オレはぜんぜんエロくないぞ! 女神の中で一番エロいのはミィシェリアだからな! 続いてマーナヒリン! 3番は……とくにいないな』


 あー、やっぱり!

 ミィちゃんのエロエロボディはやっぱりエロエロだからエロエロなのね! わたし、知ってた! マーちゃんもお酒飲んでエロいことしか言わないから知ってた! じゃあ、3番目がスーちゃんかな?


『私を巻き込まないでください』


『我も巻き込まないでほしいのぉ』


 ミィちゃんとマーちゃんから同時に抗議の声が。

 2人ともこんにちはー。


『スークルはむっつり』


『むっつりじゃの』


 2人の矛先がスーちゃんに向く。


『オレは女神だぞ! エロいことなんて考えたことない!』


 ふーん。


『ふ~ん』


『ふ~ん』


「ふ~ん」


『おい、ストラルド! お前調子に乗ってると破門にするぞ!』


「えっ、なんでボクだけ⁉ スークル様ひどいですよ」


「陛下♡ わたし、スーちゃんの義妹だから特別にえこひいきされているんですよ♡」


 ねー♡


「いいなあ。ボクも義弟にしてほしいですよ!」


『髭のおっさんを義弟にしたくはないな……』


「アリシアがかわいいからって贔屓してるんですか⁉ 女神様なのに容姿で贔屓なんてひどいですよ!」


 わたしがかわいいからですよ♡


『そうじゃない……。アリシアには迷惑や苦労をかけてしまっているから、それを労う意味もあってだな……』


 それと、わたしがかわいいからですよね♡


『我はアリシアを義娘するぞよ』


 わーいわーい! マーちゃんの義娘だ♡


「え~、アリシアだけ女神様たちにかわいがられてうらやましいなあ」


 ふふふ、わたしがかわいいからですよ♡

 陛下、ごめんね♡


 というわけでー、ミィちゃんはー?


『なんですか? 何もありませんよ⁉』


 えー、スーちゃんもマーちゃんも義理の妹や娘に迎えてくれたのに、わたしの初めての女神様は何もしてくださらないのー?


『私は信徒とそのような関係を結んだことはありませんから』


 前例がないってやつー? みんな好きだね、それ。


『あいかわらずミィシェリアは固いの』


「おっぱいは柔らかいのにね」


『けしからんの』


「けしからんの♡」


『まったく、けしからんな』


「けしからんですな」


 この流れ好きー♡ スーちゃんも王様も乗ってきてくれた♡


『まったくあなたたちは……』


「じゃあ、ここは間を取ってー、義嫁ってことでどう♡」


『なんですかそれ……』


 義理シリーズ、かな?

 だって「種族が違うー」とか言って、ホントのお嫁さんにはしてくれなそうだし? 義嫁ってことにすれば解決かな?


『もう好きにしなさい……』


 わーい! ミィちゃんの義嫁だー♡


『アーちゃん、良かったのぉ』


『良かったな』


「アリシアだけうらやましいよ……」


 へへ♡


「いっぱい義理の家族ができちゃった♡ 今日は気分が良いのでもう帰っていいですか♡」


「もちろんダメだよ。お仕事の話が残っているから、少しだけボクにも話させてね」


 王様がにこやかに微笑む。

 あー、忘れてた♡

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