第23話 アリシア、パーティーに顔を出す
「そろそろパーティーが始まった頃かなー?」
厨房に1人。
わたしは椅子に腰を下ろして休憩中だ。
忙しさは、ロイスの結婚披露パーティーに比べれば大したことはない。なんせ今回は事前にしっかり準備して臨んでいますからね。ソフィーさんに頼んで、『龍神の館』の全自動調理器具も利用させてもらっているし、正直今回は余裕ですわー。ですわー♪
「まあとはいっても? パーティー会場のほうにも顔を出さないといけないよねー。陛下やお姉様方には挨拶もしないとダメだろうし」
厨房に籠ってるだけのほうが楽なんだけど、さすがにそうもいかないので、ローラーシューズショーが終わった辺りの時間に顔を出しに行きますかねー。それまでは残りの盛り付けをやっちゃおう。今日のメインディッシュはウナ重だ!
* * *
「みなさま、お楽しみいただいておりますでしょーか?」
パーティーも中盤に差し掛かった頃、様子を見に顔を出してみた。
みんな立食で楽しんでいるかと思いきや、わりとがっつりテーブルに着いてお食事されているんですね。ローラーシューズショーはどうやって見たのかな? しかしすごい人の数ね……。
「アリシア嬢、こちらへいらっしゃいな」
3番目のお姉様・ラミスフィア侯爵夫人が目ざとくわたしのことを見つけて呼び寄せてくれた。
「まあ、アリシア。来てくださったのね」
「今日もかわいいわね」
「ローラーシューズショー良かったですわ」
「アリシア、お料理ありがとう」
お姉様方、みなさまお元気そうで。
それぞれお隣にいらっしゃるのが旦那様でしょうかね。えーと、陛下にもご挨拶しないと。あれ? お席にお座りになっていない……。王妃様もいらっしゃらない?
「暴君、こっちだ!」
ん、エリオットの声。
どこだろうとキョロキョロ辺りを見回す。
「こっちだ!」
おお、いた。
エリオット何をして……ってホント何してるの⁉
慌ててエリオットのところに走り寄る。
「おう、暴君お疲れ様。今な、陛下と王妃様にローラーシューズを教えてるんだ」
「教えてるっす」
「王妃様。お手をどうぞ」
「あら、ありがとう」
白薔薇のお兄様ことエデンと王妃・サニモリス様が手を繋いで微笑み合っていらっしゃる……。なんだかんだで、王妃様とお会いするのは初めてだったりするわけだけど……。
「いや、どういう状況なの……?」
「アリシア。今日はありがとうね。サニーがさ、ローラーシューズにえらく興味を持っちゃってね。どうしても滑ってみたいっていうものだからさ」
「えっと、まあ、それは別にいいんですけど、ケガはしないでくださいね?」
「あら、あなたがアリシア=グリーンね? 初めまして、サニモリスよ。ラルちゃんとドリーちゃんがお世話になっているそうね。本当に助かるわ~」
ラルちゃん? ドリーちゃん?
「ボクとスレッドリーのことだよ。サニー。初対面の人の前で、いきなり愛称で呼んでもわからないと思うよ。ほら、もっと威厳を持った姿を見せないと」
ストラルド……ラルド……ラルちゃんってことですか。陛下ー。威厳がどうのとか、あなたが言わないでくださいよ……。陛下自身が今日は初っ端からオフの話し方になっていますからね? あれ? そういえばドリーちゃんの姿が見えないけどトイレかな?
「あら、私に威厳なんて求めないでくださいな。そういうのが嫌だからいつも公式の場では黙っているんですからね。ラルちゃんが何とかしてよね」
「え~、ボクだって苦手だよ。でもしかたなく王様っぽく振る舞ってるんだから、サニーもちょっとは王妃様っぽくがんばろうよ」
「そんないじわる言うなら、もう今後公式の晩餐会には出席してあげないんだからね!」
「それは困るよ~。これからもボクがなんとかするからさ、機嫌直してよ~。あ、そうだ。アリシアが作ってくれたプリンを一緒に食べようよ。あれはおいしいよ~」
甘いものでご機嫌を取ろうとする陛下。
いや、この夫婦……似た者同士か! しかしまあ、めちゃくちゃお似合いではあるんですけど、このはっちゃけた感じの王妃様はどっから探してきたんですか⁉
「私ローラーシューズが滑れるようになりたいの。プリンはラルちゃんだけで食べてきて!」
そっぽを向いてしまう王妃・サニモリス様。
陛下、ご機嫌取り失敗。残念!
「そんな~。じゃあボクも一緒にローラーシューズを学ぶよ。エリオットくん、セイヤーくん、エデンくん、ごめんね。もうちょっと付き合ってくれるかい?」
「もちろんですとも。ローラーシューズ普及もオレたちの仕事の1つですからまったく問題ないです」
え、そうなの?
ローラーシューズ普及もやってくれてたんだ? 知らなかったわ。
「サニモリス様。あまりチョビチョビ魔力を込めるとスピードが安定せず、うまく滑れませんよ。ローラーシューズには一気に魔力を溜めておいて、そこから定期的に取り出してスピードを安定させるイメージです」
初心者が陥りがちな問題ね。
魔力は燃料で、ローラーシューズには少量の燃料を溜めて置けるタンクがついている。そこの仕組みが頭に入ればもう滑れたも同然ですよ。
「わかったわ! こうね!」
これまでプスプスとエンストしていたのがウソのように、サニモリス様が滑らかにローラーシューズを滑らせることに成功した。
飲み込みがとっても早い!
「お上手です! 定期的にローラーシューズのタンクに魔力を足すのを忘れずに。コツはそれだけですからね」
「サニー。素敵だよ~。まるで踊り子さんみたいだ」
うっとりとした表情で見つめる陛下。
あれ? 陛下はお滑りにならないのですか?
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