第44話 アリシア、どうしてこうなった?
すっごく楽しみにしていたロイスの結婚式。
「どうしてこうなった?」
どうやら結婚式自体は、スーちゃんの教会で行われるんだってさ。そこは新郎のゼルミス様と新婦のロイスの2人だけで参列者はなし。スーちゃんの前で誓いを立てるらしいのね。
そこまではそういうものなのかって感じで別にいいんだけどさー。
問題は王宮で行われるお披露目パーティーのほうね。
わたしも招待されていて、参加者は200人くらいのパーティーになるらしいんだけど……。
「なんで会場の手配だけで、料理の準備ができていないんですか⁉」
『オレはストラルドに言って場所は押さえさせたぞ』
得意げなスーちゃん。
いや、それだけだとガランとした会場に200人のお客さんが突っ立っているだけになっちゃうでしょ!
『もともとビーリングでパーティーをする予定だったんだろう? それをそのままこっちに持ってくればいいじゃないか』
それ、マジで言ってます?
会場の規模も、日取りも、何もかも変わっちゃっていて、しかも場所だって『ビーリング』から王都まで何日もかかるだよ? 日持ちする料理だってそんな長距離運べるわけないし。
『お前たちはいつもアイテム収納ボックスで運んでいるじゃないか』
「それは特別にお店の仕組みとして用意しているもので……ってそういうあたりのこと、ロイスと話して調整してたりとか?」
『してない』
「ちなみにロイスたちには何て言ったんですか?」
『オレに任せておけ。お前たちは5日後に王都に来い、とな』
めっちゃかっこいいけど、それって会場のセッティングだけじゃなくてそれ以外の料理何かの手配も全部やるって意味ですよね……。ロイスから何か細かく聞かれなかった? 料理やドレスをどうするかとか。
『ああ、聞かれたな』
その時なんて答えたの?
『細かいことは気にするな。王宮にすべてある、とな』
いや、だからセリフだけはめちゃめちゃかっこいい……。
でもね、結婚式は明日なわけで……。今日の午後にはロイスたちが王都に着いちゃうわけで……。
「このままだとロイスの結婚披露パーティーが台無しに……」
『会場の飾りつけは進んでいるぞ』
「あ、そうなんですね?」
『ああ、さっきストラルドに頼んだら、人手を出してくれてな。今日中にはなんとかなるだろ』
スーちゃんの無茶ぶりに振り回される国王様。
国の代表なのに不憫すぎる……。
『つまりお前がやるべきことは料理だな』
「なんとなく話の流れで察していましたけど、なんでわたしなんですか? 王宮には立派な宮廷料理人みたいな人たちがたくさんいるのでは?」
『マーナヒリンとリンレーが料理ならお前に任せれば大丈夫だと言っていたぞ』
マーちゃん、リンちゃん!
すっごいニコニコしながら言ってそう……。うん、褒めてくれること自体はうれしいけど、それとこれとは話が違うでしょ!
『ああ、心配するな。調理場も食材もすべて好きに使っていいと許可は取ってあるぞ』
「それはどうも……」
これはもう、わたしが料理する流れだわ。どうしよう。本格的な結婚披露パーティーで出すような料理って何を作ったらいいの? ぜんぜんわからないんだけど。
「宮廷料理人の人に相談しながら作ることって……?」
やはりここはプロの料理人に、パーティーにふさわしい料理がどんなものかを聞きながら進めたほうが良いよね!
『休暇を与えておいた』
「え?」
『創作スキルを使うんだろう? 誰にも見られたくないと思ってな。調理関係の勤め人にはすべて休暇を与えておいたぞ』
いや、その「オレ、良い仕事しただろ?」的な微笑みは何なんですか? わたし、誰にも相談せずに1人だけで200人のパーティー料理を作るってことですか? それって無茶すぎない?
『前世の知識をフル活用すればいいだろ。たしかウェディングケーキ、だったか。あれなんかは見栄えが良さそうだし、ぜひ頼む』
ぜひ頼むって言われてもなー。
なんかもう、やれるだけのことはやりますけど、どうなっても知りませんよ? しりぬぐいというか、なんか危ない時は全部お願いしますよ?
『ああ、すべてオレに任せておけ』
うーん。そういう返事だけはかっこいいのになー。
ホント大丈夫なのか不安になる……。
でも、とにかくパーティー料理を何とかするしかないよね。わたししかいないんじゃ、わたしがやるしかない。ロイスに恥をかかせちゃいけない!
ううーん。基本的にはいつも『龍神の館』で出していた料理と同じようなものになるのかな。あとはウェディングケーキか。とりあえず、厨房に行って食材を確認しようかな。
MP回復ポーションのある限り、基本すべての作業工程は省いて『創作』していくしかないよね。あと半日程度で全部準備を終えるには、量が多すぎて1つずつ作っていると絶対間に合わないし……。
あー、もう、どうしてこうなった⁉
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