第25話 アリシア、王都に降り立つ
「あー、やっと王都に着いたー」
きっかり1時間後、第6近衛騎士団の人たちと合流して、早速王都に向けて出発したわけだけど。馬車に揺られ、そして馬車に揺られ、それから馬車に揺られること、たっぷり3日間……。ようやく王都到着したわけですよー。
しっかし退屈だったなー。わたしの馬車なら半日で着くのにね。近衛騎士団の人たちが用意してくれた馬車の中でテトリスするのにもすっかり飽きちゃったよ……。途中でぷよぷよモードにしてやったわ! だってさー、1人きりで箱の中に閉じ込められてさー、誰も話し相手になってくれないし……。
まあ、でもさすが近衛騎士団と言うべきなのかな。すっごく強くて頭の良いお馬さんをたくさん抱えているのね。お馬さんたちに何を聞いても「まだ走れます。風よりも速く走れます」しか言わないの。ちょっとかわいそうだから、休憩中にこっそり栄養剤をあげて回っちゃった。でもぜんぜん無理してないんだってー。優秀なお馬さんたちは、「近衛騎士団所属の軍馬としてのプライドがどうの」って言ってた。なんか違う意味で大変そうだけど、がんばれって思いました。まる。
「謁見は3日後の予定だ。それまでは王宮内の貴人の間に逗留いただく」
ゴリラ騎士団長さんがわたしの手を取って、馬車から降りるのをエスコートしてくれる。
おお、ここが王都! ってもう、王宮の敷地内だった! 見渡す限り、すっごいきれいな庭園だ! 王宮って聞いてなかったらずいぶん広い公園だなーって思っちゃうかも。隅々まで手入れが行き届いてて、色とりどりのきれいな花でいっぱいだー。さすが王宮、スケールが大きい!
「ありがとうございます。わりと余裕がある日程ですねー。3日もあるんだったら、ちょっと王都を見て回ったりしてもいいんですか?」
「もちろんだ。部下に案内させよう」
「いやいや、そこまでしていただくわけには。適当に1人で見て回りますよー。わたし、ただの平民の小娘ですよ? もっと雑に扱ってくださいよ」
貴族様のご令嬢じゃあるまいし?
「女神・スークル様より、『国賓待遇』でと仰せつかっている。そのようなわけにはいかない」
恭しく頭を下げるゴリラ。
うへぇー。
スーちゃん、それはやりすぎだよー。
『4神の加護を受け、未来の賢者の石候補としての太鼓判を押されているお前が、国にとって重要でないわけがないじゃないか。甘んじて受けよ』
買いかぶりすぎだよー。
わたしなんて、ちょっとラッキーなだけの普通の転生者だよ? ひっそりと静かにしあわせな暮らしをしたいだけなのになー。
『言動と行動が合ってない』
むぅ。
たしかに……ちょっとだけ派手なのも好きだけど! でも、そんなに注目されるのもくすぐったいというかー!
『そんなことよりもだ』
そんなこと⁉ わたしの人生設計の話なんですけど⁉
『ロイスの結婚式は5日後に王都で、その後の結婚披露パーティーは王宮内で執り行うことに決定した。お前は王への謁見の後もそのまま逗留しろ』
えっ、王宮で⁉ 5日後ってことは、謁見の2日後ってことで合ってますか?
『そうだ。謁見が今から3日後、そのさらに2日後が結婚式だ』
ほぇー。
まあ、ロイスの結婚式に出られるなら何でもいいです! 調整ありがとうございます!
『これからビーリングとロイスたちをそちらに向かわせる。ほかの結婚披露パーティーに出席する者たちも同様だ。ちなみに結婚式自体はオレの神殿で行われる。当人たち以外は入ることができないから、お前たちが参加するのはその後の王宮で行われる結婚披露パーティーだよ』
なるほどー、そういうものなんですね! 知らなかったなー。結婚披露パーティーですね! 女神様ってそういう手配もスマートにこなしちゃうんですねー。
『ああ、これくらい余裕だ』
『余裕ではないでしょう。手配したのはすべて私です』
あ、ミィちゃん! こんにちは! うん、なんかちょっとそんな気はしてたー。スーちゃんってば、そういうの苦手そうだもん。
『適材適所だ。誰がやっても結果は変わらないのなら、必ずしも自分でやる必要はない』
ずるっこだー。ミィちゃんにちゃんとありがとうって言いましたか?
『ミィシェリア、ありがとう』
『はい、どういたしまして』
スーちゃんえらい! ちゃんとお礼が言える女神様ってステキ! さすがお義姉ちゃん♡
『そうか。気をつけておこう。義姉とは認めていないがな』
じゃあわたし、しばらく王都を散策して珍しいものでも見つけようかなー。
あ、そうだ! ミィちゃんの神殿にも行ってみたい! どこにあるのかな?
『そこの者たちに尋ねると良いでしょう。王宮から遠くない場所にありますよ』
わーい。荷物置いたら遊びに行くね!
王都のミィちゃんはどんな感じかなー。
『お待ちしていますね。どんなと言われても、並列稼働しているだけなので、私は私です』
ふーん。本体が王都のミィちゃんってわけでもないんだ?
『どれも本体であり、どれも分身でもあります。区別はありませんよ』
変な感覚!
あえて場所は聞かずに、あとで王都の街をぶらぶらしながら探そうーっと。3日間も暇だからね。
「騎士団長様。とりあえず王宮の中を案内していただけますか?」
首を傾げて、コテリ。
ゴリラ団長のほうに向きなおり、かわいくお願いをしてみる♡
「お任せを」
くそぉ。このゴリラ、顔色一つ変えないなー。
15歳になったわたしの美少女ぶりならイチコロだと思ったのに。まだまだ修行が足りないというのか……。ロイスに色気の出し方を教えてもらわないと……。
ゴリラ団長に案内され、王宮の建物内に足を踏み入れた瞬間、後ろから大きな声で呼び止められた。
「アリシア~! ようやく参ったか~!」
ん、こんなところでわたしの名前を呼ぶのは誰?
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