第23話 アリシア、銀製品に興味を持つ
降雪が収まるのに、それから3日がかかった。
その間、わたしたちは『バルオッティ』の街に足止めを食らう形になってしまった。別に行こうと思えばわたしの馬車で進めたんだけど、ソフィーさんが嫌がったので仕方なく……。
緊急事態以外では使いたくないんだってさー。快適な旅が約束されるのに変なのー。
まあ、3日間もあったので、街を一通り堪能することができたから良かったかな?
この辺りは銀の産出量が多いらしく、銀細工が一大産業になっていた。
銀食器、銀製の武器・防具などいろいろな品が比較的安価で手に入ったのでした。ラッキー♪
できるだけ純度の高い銀製品を手に入れておけば、あとでつぶして創り変えることもできるからねー。
「そういえばエデン。知ってたらでいいんだけど、魔族って、銀の武器に弱かったりする?」
銀の弾丸的なもので弱点を突いたりできるのかなー?
「そういう話は聞いたことないけど……」
「やっぱり違うかー。銀に弱いのって吸血鬼だっけ。吸血鬼ってどんなの? そもそもこの世界に吸血鬼っているのかな。吸血鬼とサキュバスって一緒?……夢魔? 魔族?」
ぜんぜんわからない……。
「吸血鬼って何? 血を吸う種族?」
ダメだ、エデンも心当たりなさそう。
そうなると、純銀の武器や防具はあまり持っていても仕方ないかなー。銀はすぐ錆びるし、硬度も低いし。
「なんだ、アリシアは銀製の武器に興味あるのか? 俺様が1つ解説してやろうか」
後ろから声をかけられて振り返る。
そこには見知った長身の男が立っていた。
「アークマン。こんなところでどうしたの? トイレなら外出て右のほうだよー」
「トイレは別に探してない……。俺様の話を聞いていなかったのか。解説してやろうと言っているんだが」
聞いていましたけど、別に話は聞きたくないなーと。いや、さりげなく頭を撫でるのやめて? 髪型乱れるし。
「銀の武器はいらないかなー。実用性なさそうだし。銀食器だけ買っておくからいいや。エデン、行こう」
と、早めに会話を切り上げて武器屋の出入り口のほうへと歩き出す。
「おお~い! せっかく有益な情報を話してやろうと言っているのに。銀の武器は使えるぞ」
「ん、そうなの?」
足を止めて振り返る。
まあ少しくらいなら話を聞いてもいいかな……。エデンを間に挟んでなら。もしくは筆談でなら。
「へぇー。じゃあ、アンデッド系の魔物には効果があるんだー」
「そうだな。俺様がいれば『ターンアンデッド』が使えるからそこまで重要度は高くないんだが、保険として銀製の武器を用意しておくのは悪くない」
アンデッド系の魔物には、物理攻撃・魔法攻撃ともに効果がない。通常の攻撃でも足止めくらいにはなるけれど、倒すとなると聖職者による浄化が必要になるのだ。
だけど、銀製の武器での攻撃のみ、浄化と似たような効果が得られる、ということらしい。銀って、そういうものなんだ? つまり吸血鬼に銀の弾丸を撃ち込むのと同じってこと?
「しかし武器よりも防具のほうが使い道はたくさんある」
「たとえばどんな?」
「まずは魔法防御の効果が付与しやすい」
「あれ? スノーバッファローの毛皮と同じ?」
先日、わたしが全部燃やして怒られたスノーバッファロー毛皮も、魔法防御の効果が付与できるという話だったけど。
「そうだな。スノーバッファローの毛皮は、繊維に練りこんだり、そのまま羽織ったりできるが、銀は金属に混ぜることができるから、効果は同じでも使い道が異なるわけだ」
「なるほどねー。盾とか、金属製の鎧に使うってことね」
「あ、ボクの手甲にも銀が使われているよ」
エデンが左腕を掲げて見せてくる。
「へえー。意外と身近でも使われてた。まずは、って言うくらいだから魔法防御付与以外にも何かあるの?」
「あるぞ。魔法反射の効果付与を追加できるのと毒耐性の効果も期待できる」
あれ、銀って意外と有用かも。
「魔法反射って、どの程度のランクの錬金術師なら付与できるものなの? あまり売り物の防具で付与されているのを見たことないかも」
お店で売っているのは魔法防御の付与してある防具ばかりだもんねー。
「ランクはわからんな。でも、銀製品を多く取り扱うこの街なら、付与できる錬金術師もいるんじゃないか?」
たしかにねー。
付与するところ見たいなー。そして、できることなら技の構造把握をして盗みたい。
「ねぇねぇ、錬金術師を探しに行こうよー。付与するところ見せてもらいたいよー」
「え、そろそろご飯の時間……」
エデンがお腹をさするのを無視して、アークマンの手をぎゅっと握る。
「お願い?」
首コテン。
「し、しかたないな! エデン、行くぞ!」
「え~、ごはん……」
ふっ、チョロい。
エデンは黙ってついてきなさい!
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