第17話 アリシア、仲間たちから責められてキレる

「みんなー! ご飯できてますよー!」


 スノーバッファローの解体を終えて、待つこと10分少々。

 ようやくソフィーさんたちの馬が声の届く距離までやってくる。


 遅いなーもう。

 お肉冷めてきちゃったから温め直しが必要だよー。


「派手に爆発が起こっていたみたいだけど……無事、のようね……」


 恐る恐るといった具合に、ソフィーさんが確認してくる。

 さすがのソフィーさんの視力でも、レーザー攻撃による爆発はちゃんと見えなかったのかな?

 

「まったくもう、遅いですよー」


「スノーバッファローは……?」


 エデンが刀の柄に手をかけながら、首を振って周囲を確認している。


「ぜーんぶ、お肉になりました♡」


 こちらの即席の石焼プレートの上に乗っているのが、先ほどまで元気にそこら辺を走っていたスノーバッファローくんでございます♪


「肉……」


「みんなが遅いから、全部解体してアイテム収納ボックスにしまっちゃったよー」


「アリシア……スノーバッファローの角は?」


 ソフィーさんが尋ねてくる。


「角? 倒す時に頭ごと吹っ飛ばしたのでないですよ?」


「スノーバッファローの角は高く売れるのよ……。粉にして飲むと健康に良いと貴族の間でもてはやされていてね」


「ええー⁉ そういうのは早く言ってくださいよ!」


 漢方薬みたいなものかー。

 あー、全部消えてなくなっちゃった……。次の群れを狩る時には傷1つつけないように注意しよう!


「暴君……スノーバッファローの毛皮は?」


 今度はマッツだ。


「毛皮? 皮ふのこと? ざらざらしていてソファは作れそうにないし、防御力も低そうだったし、何にも使えそうにないから全部燃やしたよ」


 同じ牛っぽい魔物のミノタウロスに比べると全体的に質が悪そう。


「スノーバッファローの毛皮は、魔法防御の効果が付与しやすいから、魔職のローブに練りこむんだよ……」


「ええっ⁉ そういうことは早く言ってよ! 全部燃やしちゃったよ!」


 なんでみんなあとから重要な情報を出してくるのさー。次の群れを狩る時にはきれいに皮を剥ぐように注意しなきゃ!


「暴君幼女……スノーバッファローの脳みそは?」


 今度はスキッピー。


「だから頭はぶっ飛ばしたって言ってるでしょ! お前の頭には脳みそ入ってるのか⁉」


 もおぉぉぉぉ! いつも温厚なわたしでも、同じことを何度も聞かれたらキレるぞ!


「スノーバッファローの脳みそを食べると、心が穏やかになるって言われてるんだぜ……」


 知らんがなっ!

 あんな鼻息が荒くて凶暴な生き物の脳みそを食べて、心穏やかになるわけないでしょ!


「暴君……」


 と、アークマンが声をかけてくる。


「今度は何っ⁉」


 アークマンをにらみつける。


 今度は何⁉

 血を飲んだら不老不死になれる? それとも蹄を食べたら足が速くなる?


「いや……お疲れ様。1人ですべて倒すなんてさすがだね、って……」


「あ、うん。……ありがと」


 って、変な空気になるじゃんか!

 ちょっとはおもしろいこと言えよ!


「あー、もう! 全部解体したので、スノーバッファローは肉しかないですー! ほかは消し飛んだり燃やしたりしたんで何もないです! 以上! 文句ある⁉」


 文句があるヤツは体の構造を創り変えて、スノーバッファローにしてやろうか⁉

 解体するのに『構造把握』したから、細部まで再現できるんだぞ!


 反論は何もないな、ヨシ!


「よろしい。では楽しい楽しい食事の時間にしますよー。全員、おとなしく席に着け!」


 ソフィーさんをはじめ、一同は素直に石焼プレートを囲んで丸くなって座る。


「エデン。みんなの飲み物とお皿を準備して」


「Yes、暴君!」


 エデンは飛び上がるように立ち上がると、キビキビとした動作で食事の準備を始めた。

 よしよし、えらいね。エデンだけはスノーバッファローにしないでおいてあげよう。


「じゃあ、軽く表面を焼き直していきますね」


 おいしくなーれ、おいしくなーれ♪


「焼けたらドンドン渡していくから、冷めないうちに召し上がれー」


 まずはソフィーさん。

 ここは年功序列ね。


 ソフィーさんはスノーバッファローのステーキ肉をナイフで大きめにカットし、さっそく口の中に放り込んでいく。


「ん、ありがとう。とってもおいしいわ♡」


 よしよし。

 お店に出せるほどの肉の量はないと思うけど、まかない料理には十分ね。


 はいはい。みんな、そんなもの欲しそうな顔しないの。焼けたら順番に渡しますからね。

 

 はい、次は……アークマンね。



 こうして、わたしたちの旅は続いていく。

 まだ片道の半分くらいだからねー。がんばっていこう!

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