第14話 アリシア、衝撃の結末に絶句する
「『デロン村』までたどり着ければ仲間がいる。そう信じて私たちは走ったわ」
これはいけませんよ! どう考えても死亡フラグ!
「幸いにも追っては来ず、私たちは『デロン村』までたどり着いた」
あれ? ナイス……フラグは?。
そうか村が! 村が全滅していたんですね⁉
「村は無事だったわ。私たちの作戦が失敗したことを伝え、防衛のパーティーメンバーも含めたパーティー再編成を行った。といっても、私たち3人が入って9人で動くしか選択肢はなかったけれどね」
あれ? 助かった……?
9人の編成は、これでアタッカーが5人。マジシャンが2人。プリーストが2人か。でもソフィーさんと一緒だったほうのプリーストの子は、MP枯渇でもうほとんど戦力にならなかったはずだよね。
「村での戦闘は被害拡大の恐れもあるから打って出ることになったの」
「非戦闘員が多いとゴブリンたちの思うつぼですからね。そもそも村の場所はまだ知られていないはず」
知られていたとしたら、おそらくとっくに襲われている。ゴブリンたちが近くの『チェンク山』に住み着いたのは偶然だったのだと思うし。
「私たちが村を出て、ほどなくして森の中でゴブリンたちと遭遇したわ」
「追ってきていたんですね」
「そうね……。すぐに乱戦になったわ」
視界の悪い森の中での戦闘はゴブリンたちのほうに分がある気がする……。急増のパーティーだし、やばい、かも?
「苦戦したけれど、死者は出さずに私たちはゴブリンに勝利した」
「おお? 意外な展開。苦戦しただけで。さっきは全滅しかけたのに」
防衛パーティーのほうに戦力が偏っていたとかそういうことかな?
「それがね、麻痺毒の効果があったみたいなのよね。ほんの少しだけど」
「あー、最後に投げ入れたやつを無理やり抜けてきたからかな」
「そう、おそらくね。なのでゴブリンたちの動きが少しだけ鈍かった。私たちの勝因はそれね」
なるほどー。
ほんの少しの反撃が勝敗を分けた。
わからないものですねー。
「どう? これが私の新人時代の苦い思い出。少しは楽しめたかしら?」
こちらを振り返ったソフィーさんの顔はちょうど逆光になっていて、その表情は覗えなかった。
「ええ、とても。ありがとうございました。大変良い教訓を得ました!」
「教訓ね。どんな教訓かしら?」
「最後までプリーストの子を守り切れば、自然と恋に落ちる!」
「……まったく。アリシアらしいというか……。ちなみにその時のプリーストの子がアークマンよ」
「えっ、ウソッッッッッッ⁉」
今度はわたしが後ろを振り返る。
目を見開いてアークマンを見ると、こちらに気づいたのか、微笑みながら片手を上げてきた。
「だって、え、えええええ⁉ さっきの話からして、若くて童顔でブロンドで細身で、でも脱ぐと着やせするタイプだねーって感じの守ってあげたくなるようなかわいい……ええええええええええええっ⁉」
「私そんなこと一言も言ってないわよ……」
おかしい。
わたしの聞いていたさっきの冒険譚はなんだったんだ……夢?
「というのは冗談でー、ロイスをもっと幸薄そうにしたような子だったんですよね? ね?」
「いいえ……まあ、もう20年も前の話だから、アークマンも今よりはもう少しだけ若かったわね。たしかに細かった、かもしれないわ……」
「ええ……ウソでしょ……わたしはいったい何を信じて生きていけば……」
ソフィーさんと死線を潜り抜けてきたプリーストがアークマン……わたしにがっつり色目を使ってくるあの人が……。
ちらっ。
まだこっち見て笑ってるよー。
「アリシアがどう思っているか知らないけれど、彼はなかなか優秀よ?」
「ソフィーさんが言うならそうなんでしょうね……」
スキル的にも『ヒールLv10』『ハイヒールLv5』『キュアLv2』『物理障壁Lv5』『魔法障壁Lv6』『ターンアンデッドLv8』と恐ろしいくらいにプリーストとして完成されているもんね……。
信じたくないけれど、ホントに歴戦の勇者なんだ……信じたくないけど。
「アークマンはギフトスキル以外にも数々のスキルを習得しているわ。スキルに興味があるなら話を聞いてみることね」
「うへぇー。そんなことが……」
あとからスキルを習得するにはギフト玉を手に入れるか、スキルの解放条件をクリアするための努力をし続けるか。
つまり後者のほうってことよね……。プリーストのスキルを習得したいならアークマンに聞け、か。
攻撃スキルを持たないわたしがもっとも教えを乞うべき相手、ってことよね……。
うわー……乗り気にならな過ぎてハゲそう!
ちらっ。
めっちゃ笑ってるよー。
前髪ふぁさーってしてるよー。
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